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超大規模依頼編
第十八話 ベターな展開
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「アレク君、おまたせしました……」
ハウンドが馬車を預け終わり、アレクが待っているはずの場所へ戻るもアレクは消えていた。
意外そうな顔をしてハウンドは己の頬をポリ、と掻く。
「てっきり真面目そうな子だと思っていたけど……これは相当苦労する」
アレクを弟にもつガディとエルルの心労は計り知れないものであろう。
しかしその二人も他人を振り回して生きていくタイプであるので、案外似ているきょうだいなのかもしれない。
どうしたものか、と考えたその時、悲鳴を上げながら人々がこちらに向かって駆けてきた。
「にっ、逃げて!! 急いで!!」
「わああああああああ!!」
騒ぎはまるで火の手のように広がっていき、やがて町中に広がっていく。
突然の展開にハウンドは辺りを警戒する。
「ああもう……帰りたい!」
今にも泣き出しそうなハウンドであったが、ここはひとまず逃げる人々とは反対方向へと走る。
「っ、何と」
町の中に魔物が何匹か侵入していた。
何人かはもうやられてしまったようで、住人達が地面に倒れ伏している。
「町の警備兵さんがやられたんだ……ああ、怖い。僕なんかにできるわけないじゃん。最悪だよ」
「がぁああ!」
ブツブツと独り言を呟くハウンドに、魔物達が牙を剥いて襲い掛かる。
ハウンドは肺に息を溜めると、思い切り魔物に向かって叫んだ。
「ーーーー!!」
正確な発音が聞き取れない、爆弾のようなその叫びは辺り一面の魔物を消し飛ばす。
わん、と音が反響した後、その場は一気に静かになった。
「………」
ハウンドは倒れている住人の一人に近寄ると、その手を握って涙した。
「救ってあげられなくてごめんなさい……僕はやっぱり疫病神だ」
ハウンドは立ち上がると、生存者を探して歩き始める。
この町の雰囲気が変わった。
きっと他にも魔物が町にのさばり始めたのだろう。
「やだなぁ……戦いたくないなぁ。大悪魔なんておっかないし」
ブツブツ、ブツブツ。
ハウンドが紡ぐ言葉に、答える者は誰もいない。
懸念点は、魔物へ向けた叫びで一般人に影響を及ぼしていないか、である。
ハウンドの声は聞く者全てを対象にしているため、効力を絞ることができない。
魔物へ向けた発声ではあるものの、人体にもある程度は影響を及ぼすものだ。
「誰か巻き込んでないといいんだけど……ああ、怖い」
うつむきがちなその視線は、発言とは対照的にギラギラと光っていた。
◆ ◆ ◆
一方、アレクとガディは黒の鱗を持つ魔物と対峙していた。
両者共に緊迫した状況が続くも、先に動いたのは魔物のほうであった。
「がぁああ!」
「!」
大きく魔物が吠えた瞬間、鱗が剣のようにこちらに飛んでくる。
アレクが前に出て木の魔法を発動し、盾を作ってそれらを防ぐ。
「兄様!」
「わかってる」
ガディがすかさず木を駆け上がり、そのまま魔物に飛びかかった。
ギャリィン! と金属同士がぶつかるような、嫌な音が響く。
「かてぇなっ……」
魔物の鱗に短剣が通らない。
しばらく均衡していたものの、魔物の尻尾が足元に振るわれ、ガディはそのまま体制を崩す。
「あっ!」
アレクが思わず叫ぶも、ガディは払われた反動を利用し蹴りを魔物へ喰らわせた。
あまりの硬さにガディの足に痺れが走る。
「っ」
「ガアア!」
魔物がガディの腕に噛み付いた。
アレクが魔物に向かって木を伸ばし、捕らえようとすると魔物はガディから口を呆気なく離す。
そのままガディが一旦引いたので、アレクはガディに駆け寄った。
「兄様、傷出して!」
「すまない、助かる」
ガディの抉れた腕をアレクが急いで治療する。
すぐに魔物が突っ込んできたので、アレクが目眩しとして光の魔法を使った。
「ギャアアアアッ!!」
ここで思いがけないことが起こった。
魔物の体がジュウ、と音を立てて焼けたのだ。
予想外の弱点に、ガディは面白そうに笑う。
「黒色の魔物が苦手なものが光とか、割と定番なもんだな」
「兄様! 光魔法を剣に付与するから、それでお願い!」
「任せろ」
ガディの剣にアレクの出した光が灯り、強化される。
魔物が逃げ出そうと背を向けたところで、ガディは剣を真っ直ぐに振り下ろした。
「ギャアアアアッ……」
断末魔を上げ、魔物がそのまま倒れる。
ほっと一息ついたアレクにガディが言った。
「いよいよ本格的に始まったらしい。大悪魔を探すぞ」
「待って兄様」
ガディはアレクに呼び止められ、不思議そうな顔をして振り返る。
「僕は怪我してる人の治療をしながら行くから、先に行ってて」
「治癒魔法を使って行くなら、俺もーー」
「大悪魔が暴れてるかもしれないでしょ。兄様に先に行ってもらったほうがいい。大丈夫、すぐに追いつくよ」
アレクの言い分にしばらく黙り込んだ後、ガディは頷く。
「わかった。任せたぞ」
ガディが屋根に上がって走り去った後、アレクは気合いを入れるために頬を叩く。
「よしっ……!」
ここから自分がどれだけ頑張れるかが、勝負のつけどころだ。
アレクも路地から抜け出し、負傷者がいないかを探し始めた。
ハウンドが馬車を預け終わり、アレクが待っているはずの場所へ戻るもアレクは消えていた。
意外そうな顔をしてハウンドは己の頬をポリ、と掻く。
「てっきり真面目そうな子だと思っていたけど……これは相当苦労する」
アレクを弟にもつガディとエルルの心労は計り知れないものであろう。
しかしその二人も他人を振り回して生きていくタイプであるので、案外似ているきょうだいなのかもしれない。
どうしたものか、と考えたその時、悲鳴を上げながら人々がこちらに向かって駆けてきた。
「にっ、逃げて!! 急いで!!」
「わああああああああ!!」
騒ぎはまるで火の手のように広がっていき、やがて町中に広がっていく。
突然の展開にハウンドは辺りを警戒する。
「ああもう……帰りたい!」
今にも泣き出しそうなハウンドであったが、ここはひとまず逃げる人々とは反対方向へと走る。
「っ、何と」
町の中に魔物が何匹か侵入していた。
何人かはもうやられてしまったようで、住人達が地面に倒れ伏している。
「町の警備兵さんがやられたんだ……ああ、怖い。僕なんかにできるわけないじゃん。最悪だよ」
「がぁああ!」
ブツブツと独り言を呟くハウンドに、魔物達が牙を剥いて襲い掛かる。
ハウンドは肺に息を溜めると、思い切り魔物に向かって叫んだ。
「ーーーー!!」
正確な発音が聞き取れない、爆弾のようなその叫びは辺り一面の魔物を消し飛ばす。
わん、と音が反響した後、その場は一気に静かになった。
「………」
ハウンドは倒れている住人の一人に近寄ると、その手を握って涙した。
「救ってあげられなくてごめんなさい……僕はやっぱり疫病神だ」
ハウンドは立ち上がると、生存者を探して歩き始める。
この町の雰囲気が変わった。
きっと他にも魔物が町にのさばり始めたのだろう。
「やだなぁ……戦いたくないなぁ。大悪魔なんておっかないし」
ブツブツ、ブツブツ。
ハウンドが紡ぐ言葉に、答える者は誰もいない。
懸念点は、魔物へ向けた叫びで一般人に影響を及ぼしていないか、である。
ハウンドの声は聞く者全てを対象にしているため、効力を絞ることができない。
魔物へ向けた発声ではあるものの、人体にもある程度は影響を及ぼすものだ。
「誰か巻き込んでないといいんだけど……ああ、怖い」
うつむきがちなその視線は、発言とは対照的にギラギラと光っていた。
◆ ◆ ◆
一方、アレクとガディは黒の鱗を持つ魔物と対峙していた。
両者共に緊迫した状況が続くも、先に動いたのは魔物のほうであった。
「がぁああ!」
「!」
大きく魔物が吠えた瞬間、鱗が剣のようにこちらに飛んでくる。
アレクが前に出て木の魔法を発動し、盾を作ってそれらを防ぐ。
「兄様!」
「わかってる」
ガディがすかさず木を駆け上がり、そのまま魔物に飛びかかった。
ギャリィン! と金属同士がぶつかるような、嫌な音が響く。
「かてぇなっ……」
魔物の鱗に短剣が通らない。
しばらく均衡していたものの、魔物の尻尾が足元に振るわれ、ガディはそのまま体制を崩す。
「あっ!」
アレクが思わず叫ぶも、ガディは払われた反動を利用し蹴りを魔物へ喰らわせた。
あまりの硬さにガディの足に痺れが走る。
「っ」
「ガアア!」
魔物がガディの腕に噛み付いた。
アレクが魔物に向かって木を伸ばし、捕らえようとすると魔物はガディから口を呆気なく離す。
そのままガディが一旦引いたので、アレクはガディに駆け寄った。
「兄様、傷出して!」
「すまない、助かる」
ガディの抉れた腕をアレクが急いで治療する。
すぐに魔物が突っ込んできたので、アレクが目眩しとして光の魔法を使った。
「ギャアアアアッ!!」
ここで思いがけないことが起こった。
魔物の体がジュウ、と音を立てて焼けたのだ。
予想外の弱点に、ガディは面白そうに笑う。
「黒色の魔物が苦手なものが光とか、割と定番なもんだな」
「兄様! 光魔法を剣に付与するから、それでお願い!」
「任せろ」
ガディの剣にアレクの出した光が灯り、強化される。
魔物が逃げ出そうと背を向けたところで、ガディは剣を真っ直ぐに振り下ろした。
「ギャアアアアッ……」
断末魔を上げ、魔物がそのまま倒れる。
ほっと一息ついたアレクにガディが言った。
「いよいよ本格的に始まったらしい。大悪魔を探すぞ」
「待って兄様」
ガディはアレクに呼び止められ、不思議そうな顔をして振り返る。
「僕は怪我してる人の治療をしながら行くから、先に行ってて」
「治癒魔法を使って行くなら、俺もーー」
「大悪魔が暴れてるかもしれないでしょ。兄様に先に行ってもらったほうがいい。大丈夫、すぐに追いつくよ」
アレクの言い分にしばらく黙り込んだ後、ガディは頷く。
「わかった。任せたぞ」
ガディが屋根に上がって走り去った後、アレクは気合いを入れるために頬を叩く。
「よしっ……!」
ここから自分がどれだけ頑張れるかが、勝負のつけどころだ。
アレクも路地から抜け出し、負傷者がいないかを探し始めた。
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