追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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5巻

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 第一話 暗中模索


 十年前、グラフィール王国に、ある一人の少女が生まれた。
 彼女は両親の顔も知らず、スラム街に身を置いて生きてきた。
 しかし、その少女は特別であった。スラムでは目立つ白銀の髪に、誰も見たことのないような瞳の色。
 スラムで暮らして数年が過ぎ、少女は盗みをして捕まった。しかし、異質な瞳の色が彼女を救った。少女は国王の目に留まり、王宮に引き取られたのだ。
 それからしばらくして、少女は魔力に目覚め、未来予知の力を得た。すると、次第に少女を信仰する者が増えていった。
 しかし、少女の心情は複雑であった。王宮での暮らしは、日に日に苦しくなっていく。
 そんなある日、彼女は夢を見た。自分より少し年上に見える、少年の夢だ。
 それはまぎれもなく予知夢であった。
 少年の様々な言動には、目を見張るものがある。何より、その紫の髪と瞳に心がかれた。
 少女は、少年に会いたくなった。
 彼は、自分よりもっと特別な存在に違いない。
 やがて何度も予知夢を見るうちに、ふいに気づいた。
 ――少年は、自分のであると。
 それは、ほとんど直感に等しいものだった。
 だが、少女はその直感に従って生きてきたのだ。
 待っていて。今から会いに行くから。


「お兄様……!」

 少女の名はスミレ。
 名前の通り、彼女の瞳はスミレ色に輝いていた。


 ◆ ◆ ◆


 髪と瞳の色が気持ち悪いとうとまれ、英雄ムーンオルト家を追放されたアレク・ムーンオルト。
 両親が嫌っていた紫の髪と瞳は魔法で金色に変えて、今は「サルト」という姓を名乗り、トリティカーナ王国の英雄学園に通っている。
 トリティカーナ国王いわく、紫の髪と瞳は、かつて地上最大の危機を救った天使と同じ特徴なのだという。その力を利用しようと画策する者から、狙われる可能性もある。
 だから、アレクの正体を知るのは一部の者だけだ。
 時折、事件に巻き込まれてしまうこともあるが、双子の兄弟ガディとエルル、同級生のユリーカ、ライアン、シオン達と一緒に、楽しくにぎやかな学園生活を過ごしている。



 季節はそろそろ冬へと移り、寒さが際立ってきたある日。
 初等部二年Aクラスの担任アリーシャが勢いよく教室の扉を開けると、生徒達は盛大に顔をしかめた。

「はいはい、みんな注目ー! そんな嫌そうな顔しなーい! 先生、泣いちゃう!」

 さほど心のこもっていない、泣いちゃう宣言。アリーシャも、生徒達のこの反応には慣れっこなことがうかがえる。
 アリーシャの手には、テスト用紙があった。

「予告してた通り、今日はテストです! 筆記テストは七十点以上を取ってね! じゃないと補習だよ!」

 アリーシャは発破をかけるようにそう言い、さっそくテスト用紙を配り始める。
 緊張した空気の中、筆記テストが始まった。



「終わった……俺の人生は終わった」

 筆記テストが終了し、死んだ魚のような目をして遠くを見つめるライアン。その姿を見て、アレクは苦笑いした。
 やはり今回のテストも、ライアンは補習になりそうだ。

「もう俺、勉強向いてねぇよ。うん」

 そうつぶやいたライアンに、アレクが声をかける。

「そんなこと言わないで、ライアン。向き不向きはあるけどさ、補習、頑張がんばろう?」
「すでに補習受けること前提かよ……」

 アレクの中途半端ななぐさめにライアンが項垂うなだれていると、ユリーカとシオンがやってきた。

「テスト、どうだった?」

 ユリーカの問いかけに、アレクとライアンが答える。

「まあ、いけたかな」
「俺はムリ。シオンは?」
「わ、私も大丈夫そう……」
「げぇ! どーせっ、俺だけ補習なんだぁ!」

 ユリーカは成績優秀なので、聞くまでもない。頭を抱えるライアンだったが、そろそろ次のテストの項目――魔力測定の時間である。
 のんびり話している暇はないのだ。

「ごめんね、ライアン。もう移動しないと」
「うぅ」

 四人は、魔力測定がおこなわれる体育館へ向かう。
 移動中も、引き続き落ち込むライアンに、ユリーカとシオンが慰めの言葉をかける。

「補習、頑張りなさいよ」
「頑張ってね、ライアン」
「……また補習前提。俺が七十点以上取れてると、誰も思わないわけ?」

 いや、それはないと思う。
 アレク、ユリーカ、シオンの考えは一致したが、三人ともあえてここは口に出さないでおく。
 その時、アレクはふと去年のことを思い出し、ある疑問が浮かんだ。

「あのさ、シオン。去年テストを受けた時、みんな慣れてるように見えたんだけど、どうして? みんな、テストは初めてだったんじゃないの?」
「あっ、それはね。私達、入学式の時にテストを受けてるの。テストを年に二回やるのは、初等部一年生だけなんだけど……二回目だったから、内容もわかってたんだ」

 シオンの言葉を聞き、アレクはなるほどとうなずく。
 そうこうしている間に、体育館に到着した。
 すでに他の生徒達も集まっていて、測定待ちの列を作っている。四人は、列の最後尾に並んだ。

「俺、もうちっと魔術を使えるようになりたいんだよね! こう、ぶわーっと」

 ライアンがそう言うと、ユリーカも同意する。

「私も。もっと使えるように、魔力が増えてるといいんだけど」
「ユリーカは、今の魔力で充分だろ!?」
「いや、足りないわよ」
「マジか」

 魔力は成長過程において、身長や体重の増加と同様に増えていく。子供時代は、一番しろがあるのだ。
 去年の測定からどのくらい増えているか、四人はドキドキしながら順番を待つ。
 列は順調に進んでいき、やがてアレク達の番がやってきた。

「はい、次の人ー」

 アリーシャにうながされ、まずはシオンが前に出る。

「あの、先生。今年は機械じゃないんですね」

 去年とは違い、魔力測定の機械が置かれていない。どうやら人が測るようだ。
 シオンの問いかけに、アリーシャは遠い目をしながら答える。

「あー……覚えてる? 去年の魔力測定」
「……あっ」

 そこでシオンは、小さく声を上げた。

「お察しの通り、機械はあんまり信用できない状況になっちゃったの。アレク君はもちろん、ガディ君やエルルさんもいるし。この三人は、大分だいぶ規格外だから」
「なるほど……そうだったんですね」

 アリーシャの答えを聞き、シオンだけでなく、ユリーカやライアンも納得の表情を浮かべた。
 すさまじい魔力量に加えて、全属性を持つアレク。
 昨年は測定器の故障も疑われ、アレクは結局、王宮に仕えている魔術師に魔力を測定してもらったのだった。

「どうも。私、ベルと申します。よろしくお願いします」

 青髪を三つ編みにした、真面目そうな女性が挨拶あいさつをする。昨年、アレクの魔力を測定してくれた魔術師だ。
 シオンは、微笑みながらお辞儀をした。

「こちらこそ、よろしくお願いします」
「では、失礼して……」

 ベルの指先がシオンのひたいかすめる。

「えっと、魔力5000、属性は風と地と聖ですね」
「去年より2000も上がってる!」

 嬉しそうな表情を浮かべて、シオンは飛び上がった。
 ベルはその様子を微笑ましげに見つめながら、次の生徒ライアンに目を向ける。

「よろしくお願いしますっ!」
「はい、測らせていただきます。……魔力4000。属性は炎、風、闇ですね」
「すげぇ……俺、今までは全然伸びなかったのに、1400も上がってる」

 感動しつつも、信じられないというような様子で、ライアンはつぶやいた。
 次の生徒は、ユリーカだ。

「よろしくお願いします」
「では、失礼して……魔力9000、属性は風、炎、水、聖ですね」
「えっ……そ、そんなに上がったの?」

 極端に跳ね上がった魔力に戸惑いながら、ユリーカは横にれる。
 そして、ついにアレクの番がやってきた。

「よろしくお願いします……あの、去年もお世話になりました」
「覚えていてくれたんですね、アレク君」

 一年ぶりの再会にテンションが上がり、アレクはにっこりと笑った。
 ベルはアレクの額にそっと指を当て、小さく息を吐く。

「……魔力、280000。全属性です」
「やった!」

 無邪気に喜ぶアレク。

「80000も上がってる」

 周りの生徒達は、アレクのことを規格外の存在として認識しているので、特に思うことはない。
 いや、いて言うならば、流石さすがはあの双子の弟だと思ったくらいだ。
 ちなみに双子の兄ガディと姉エルルの魔力量は、アレクには劣るおとものの、技量でねじ伏せてきた彼らだ。そこらの者には負けない。
 この最強きょうだい達の猛進もうしんは、どこまで続くのか。
 途方もないなと感じ、生徒達は考えることをやめたのだった。


 ◆ ◆ ◆


 無事、魔力測定は終了し、体力テストへ移る。
 運動場にやってきた生徒達は、見慣れない光景に首を傾げた。

「何これ?」
「いろいろ、置いてあるね」

 そんな生徒達の疑問に、アリーシャが答える。

「今年から追加されたの。障害が設置されてるでしょ? どこまで行けるかを試すの」

 運動場には小さな池が作られていて、丸太が浮かんでいる。その先にはぶらぶらと揺れるロープが張られ、石が大量に敷き詰められているゾーンもある。踏むと痛そうだ。
 完走までのタイムを測るわけではないらしい。どこまで進むことができるかを試されるという時点で、難度は高そうだ。

「誰が一番にやりますか?」

 挑発するように問いかけるアリーシャ。

「私がやります」

 真っ先に名乗り出たのは、ユリーカであった。
 ぐっ、ぐっ、と軽く準備運動をしてから、勢いよく飛び出す。
 ユリーカは運動神経が良い。
 もしかしたら、難なく完走してしまうかもしれない――生徒達がそう思った矢先のことであった。
 つるりと丸太で足を滑らせて、ぼちゃーん! と池に落下する。

「ユリーカ~!?」

 ずぶ濡れになったユリーカに、シオンが慌てた様子で駆け寄る。

「こんな体力テスト、横暴おうぼうだわ」

 ユリーカは悔しそうにつぶやく。

「ユリーカ、思いっきり滑ってたな!」
「……」

 ライアンの空気を読まない一言にピキリと青筋を浮かべ、ユリーカは彼の腹にこぶしを一発叩き込む。

「ぐぇぅ!?」

 ライアンはその場にうずくまり、もだえた。

「ひ、ひでぇ……」
「自業自得よ」
「さ、次は誰がやる?」

 気を取り直して尋ねるアリーシャだが、ユリーカが早々に脱落したこともあり、生徒達は遠慮がちに後ずさる。

「あの……僕、やります!」

 アレクが勇気を出して手を挙げた。

「アレク君ね」
「はい!」

 ユリーカがあんなにあっさりと終わってしまったのだ。
 アレクも気合を入れねばならない。
 フゥと息を吐いて、地面をった。

「うわっわ!」

 丸太の上で滑りかけるが、何とかこらえる。
 この先の足場へ着地するには、丸太の上から池を飛び越える必要がある。
 アレクは思い切り飛んだが、わずかに足りなかったようで――

「あーっ!」

 マズい! と思わず目をつぶる。
 しかし、体がフワリと浮遊感に包まれ、気づいた時には足場に着地していた。

「……?」

 ジャンプ力が足りず、アレクは確実に池へ落ちるはずだった。
 それなのに……事態が呑み込めず、ポカンとしていると、アリーシャの声が聞こえてきた。

「アレク君ー?」
「あっ、ごめんなさい! 先に進みます!」

 慌てて走り出したアレクだったが、次の障害で失敗してしまい、リタイアとなったのだった。


 ◆ ◆ ◆


「ライアン、すごいね。完走できるなんて」
「うう、私は一つ目でダメだったよ~」

 ライアンは持ち前の運動神経を活かして完走し、少々運動が苦手なシオンは最初の障害で手詰まりとなってしまった。
 ライアンは、意外そうにアレクを見る。

「俺、アレクなら全部いけると思ってたんだけど。去年は、体力テスト一番だっただろ」
「あー……去年はさ、ゴリ押しできるのが多かったじゃん?」

 去年のテスト内容は、五十メートル走のタイム測定やボール投げの飛距離測定などだった。
 アレクが恥ずかしそうに言う。

「僕、兄様と姉様にきたえられてたからさ、そういうのはいけるんだけど……バランス感覚とかあんまりなくて。で運動神経が凄い! ってわけじゃないんだ。だから、やったことがないスポーツとかは、あんまり」
「……五十メートル走、五秒台だったよね?」

 シオンの確認に、アレクは「うん」と頷く。

「走るのだけはいけるんだ!」
「そうなんだ……」
「まあどちらにせよ、今回の体力テストは俺の勝ちだからな!」

 ライアンにそう言われ、アレクは「僕も、他では負けない!」と返す。
 と、その時。


「お兄様ー!」


 ボフン、と一人の少女がアレクに抱きついた。
 アレク達は思わずポカンとした表情を浮かべてしまう。
 そんな四人には構わず、抱きついてきた少女はアレクに向かって早口でまくし立てた。

「とってもかっこよかったです! お兄様はやっぱり素敵ですね! 私、ずっとお兄様に会いたかったんです! さっき池に落ちそうになった時には、スミレが魔法で助けたんですよ。気づいてくれましたか?」

 どういうことだ、お兄様とは。
 困惑を隠し切れないアレクに、ユリーカが尋ねる。

「……アレク君、妹いたの?」
「うぇっ?」

 アレクは裏返った声を出しつつ、首を横に振った。

「いないはずだけど……」
「私、スミレと申します!」

 少女がパッと顔を上げた。
 白銀の髪がふわりとなびき、少女の顔があらわになる。

「えっ」

 アレクは、思わず声を上げていた。
 少女の瞳がスミレ色だったのだ。
 アレクが持つ、本来の瞳の色――美しいその紫を薄く溶かしたような、スミレ色。

「わっ……紫?」

 シオンに続けて、ライアンも声を上げる。

「なんだよ、その色! 初めて見たぞ!」
「ちょっと、ライアン。失礼でしょう」

 ライアンをたしなめるユリーカの声で、アレクは我に返る。
 少女はスミレ色の瞳をキラキラさせ、アレクを見つめて微笑んだ。

「学園長先生に会わせてくださいませ。お願いします!」


 ◆ ◆ ◆


「……ううむ、よくわからなかった。すまない、もう一度説明してもらえるかい?」

 ユリーカ達とは一度別れ、少女を連れて学園長室を訪れたアレク。
 さっそく事情を説明したのだが、学園長はそう繰り返すばかり。
 ちなみに今日の学園長は、中肉中背の一般的な男性の姿だ。英雄学園の学園長を務めるフィースは、変身体質のため毎日外見が変わるのだ。
 とても学園を治める者に見えないせいか、少女は意外そうな顔をしたが、さほど興味はないらしく追及することはなかった。
 なかばパニック状態の学園長を見て、アレクは困ったように言う。

「学園長先生、もう五回目ですよ」
「しかし……その目の色。アレク君と無関係には思えないんだけどね」

 アレクにスリスリと顔を擦りつけ、甘えてみせる少女。学園長の表情は深刻げだ。
 知らないうちに、どこかで妹が生まれていたのだろうか。アレクはそんなことを考えていた。

「ええと……スミレさんって言ったかな?」
「はい!」

 学園長の問いかけに、少女スミレは元気に答える。

「君はどこから来たの?」
「グラフィールからです!」
「グラフィールかぁ」

 グラフィールといえば、トリティカーナ王国の第一王女である聖女ミラーナの留学先だ。トリティカーナ同様、四大王国のうちの一つで、南に位置している。
 両国は、距離がかなり離れている。まさか、スミレ一人で来たなんてことはあるまい。


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