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2巻
2-2
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ガブリッ!
「いたぁーーー!?」
「ぴゅーっ!!」
ユニコーンはアマノスの指に、歯を突き立てた。
アマノスが痛がってブンブンと手を振るが、しっかり噛みついて放そうとしない。
「やめて! ユニコーン!」
『親さま……』
アレクが制すると、ユニコーンはおとなしく指を噛むのをやめた。
アマノスは荒い息をしながら、ユニコーンを思い切り睨みつける。
「何て凶暴な奴だ!」
その言葉が気に入らなかったのか、ユニコーンは角をアマノスに向けて低い声で威嚇する。
『うるさい……!! 親さまとぼくを離ればなれにさせるなんて、許さない……!!』
アレクに止められなければ、お前なんてミンチにしてやる、と言わんばかりの表情である。
国王はユニコーンの態度を見て、大きくため息をついた。
「アレク君。ひとまず、ユニコーンを預かっておいてくれないか? ユニコーンは気性が荒い。下手に近づけばただでは済まないだろう。アマノスのようにな」
その言葉を待っていたとばかりに、学園長が国王に言う。
「わかった。じゃあ、そういうことで」
「アレク君、シルファに会っていかな……」
「さよなら」
アレクが答える暇すら与えず、学園長は凄まじいスピードで瞬間移動で去っていった。
国王は盛大にため息をついた。学園長と良好な関係を結ぶのは難しそうである。
執事長とメイド長は、どうして二人がそこまで仲が悪いのかと疑問に思いつつ、その場を後にした。
◆ ◆ ◆
アレクは学園に戻った後、召喚獣達の部屋にユニコーンを置いてくるよう学園長に言われて、その教室に来ていた。
アレクが来たことに気がついて、聖霊のクリアとフェンリルのリルが近づいてくる。
「珍しい子を連れているわね、どうしたの?」
「そいつは誰だ?」
『親さまっ、この人達は?』
「……えーっと」
三者から質問され、アレクはまず誰から紹介すればいいのかと迷った。
リルはユニコーンの発した言葉に引っかかりを覚えたらしい。
「『親さま』とはアレクのことか? まだ幼子のせいか、念話なのだな」
リルはユニコーンを見つめて、ふむふむと頷いた。
ユニコーンは興味深そうに、尻尾をパタパタと左右に動かす。
「ふぅん、聖獣か……久しぶりに見たわ」
クリアはふわふわと浮かびながら、ユニコーンに手を伸ばした。
頭をそっと撫でると、ユニコーンはくすぐったそうに目を細める。
クリアを見ていて、アレクはふと出会った時のことを思い出す。クリアは「二百年待っていた」と言っていたが、それほど長生きしていたということだろうか。
そんな長い間、闇に囚われながらどうやって生きていたのかと考えたところで、横からユニコーンがアレクの服の裾を引っ張った。
『親さま! この人達、誰? 早く教えて!』
「ごめん……紹介がまだだったね」
すると、リルがユニコーンに向き直り自己紹介を始める。
「はじめまして、ユニコーン。私はリル。見ての通りフェンリルだ」
『リル、小さい?』
「……今はわ・ざ・と! 小さくなっているだけだ」
リルは若干ムッとしたのか、「わざと」を強調して答えた。
召喚獣の部屋は広いが、小さい姿のほうが過ごしやすいので小さくなっている。
クリアはストンと地面に降り立って、ユニコーンに向かって軽く礼をした。
「はじめまして、私はクリア。氷の聖霊ね」
『よろしく!』
翼を軽くはためかせながら、ユニコーンは嬉しそうに返事をした。
リルが前足でアレクをつついて聞く。
「なあ、アレク。ユニコーンとは、まだ契約していないのか?」
「……あ」
すっかり忘れていた。召喚獣とするならば、名前を与えて契約しなければならない。
学園長には「アレク君の好きにしてもらって構わない」と言われたので、契約しても問題はないはずだけど、とアレクはユニコーンに目を向けた。
「……ぴゅう?」
吸い込まれそうな青い瞳は、今もアレクにまっすぐ向いている。
小首を傾げるその姿は、愛らしい以外の何物でもなかった。
「名前……」
アレクは困って、じっとユニコーンを見つめる。
(……目、宝石みたいだ。まるで、サファイアのような……あ!)
アレクはその瞳を見て、パッと思いついた名前を口にした。
「君はサファ! これからよろしくね!」
『……サファ!』
自分の名前を呼び、ユニコーン――サファは嬉しそうに笑った。
ズズッと、リルやクリアの時と同じく大量の魔力がアレクから抜け出し、サファに吸い込まれる。
これで契約完了だ。
『親さま、よろしく~!』
サファは元気にヒヒィンと鳴いて、翼をはためかせた。
第二話 双子、危機に遭遇する
ミーンミンミンミンミン……
「……ふぅ。街はやっぱり暑いね」
まだ朝であるにもかかわらず、容赦なく照りつける太陽に目をくらませながら、女性は微笑んだ。
闇色の髪と瞳をしており、頭部には猫耳が生えている。
「……あのバカ弟子どもが。何やってんだい」
フゥゥ~……と大きな息を吐く女性。
汗をタオルで拭い、果物を出してかぶりついた。
「さて。久しぶりにバカ弟子どもに会いに行くとするか」
◆ ◆ ◆
春から夏に季節が移り変わった影響で、学園の購買には冷たいものが増えた。
相変わらず賑やかなそこには、学園に通う銀髪の双子――ガディとエルルの姿もある。
ガディとエルルは、二人の友人とともに購買に並んでいた。
一人はアトラスという、ブラウンの髪に眼鏡をかけた少年。ガディとエルルがアレクの授業参観を覗きに行った時、迎えに来た人物だ。
もう一人はマイナルという少女で、青い髪と瞳をした、英雄学園では珍しい平民の生徒である。
当然、マイナルには貴族にありがちな嫌味や権力意識などなく、そんな自然体な彼女と双子は馬が合い、自然と行動をともにするようになった。
「エルル! 今日は冷たーいものを食べようよ!」
「わかってないわね、マイナル。夏だからこそ汗を流すんでしょ? 冷たいものはデザートだけよ」
そんな会話をしていたエルルは、突然寒気に襲われた。
「ッ!?」
「? どうしたの?」
急に顔色が悪くなったエルルを見て、不思議そうな顔をするマイナル。
「!?」
「え? ガディも?」
見れば、ガディも青ざめている。
冷や汗をかき始める双子を見て、マイナルとアトラスは戸惑いを隠せない。
「いや……なぜかいきなり胃が痛くなっただけだ」
「気のせいかしら……異様に喉が渇くわ」
二人はそれぞれ違和感を覚える部位を押さえ、顔をしかめた。一方のアトラスは目を丸くしている。
「驚いた……まさか君らが、体の不調を訴えるなんて」
「アトラスは俺らを何だと思ってるんだ」
ガディはそう言うが、普段の様子から考えれば、アトラスの言葉はもっともだといえた。
マイナルが二人を心配して声をかける。
「どうする? 胃が痛いのならお昼ご飯を食べるのやめたら? それか、せめて消化にいいものを……」
「いや、問題ない」
ガディとエルルは自動販売機に学生証を押し当てた。
自動販売機が淡く光った後、ボスンッという音とともに料理が落ちてくる。
この自動販売機は、学生証についているコードをかざすことで、物が買えるシステムになっている。金のチャージはそれ専用の機械で行うことができるという、今のところ英雄学園にしかない便利な魔道具であった。学園長が開発したものらしい。
商品を注文し終わり、四人全員が自分達の座れる席を探す。
キョロキョロと辺りを見回すと、ガディとエルルはとある人物を見つけた。
「あれ? 兄様、姉様?」
「「アレク!」」
二人はアレクを見つけて目を輝かせた。
豹変した双子を見て、アトラスとマイナルはいつものことながらやはり驚く。
「二人があんな態度になるなんて……!!」
「本当、溺愛って凄いよね……」
一方、購買のカウンターでは、一人の女性が注文していた。
「あのー、草餅一つ」
「お客さん……生徒じゃないなら、あっちじゃないと頼めませんぜ」
英雄学園の食堂や購買は一般にも開放されているが、部外者は専用カウンターに行く必要がある。
「ああ。悪い」
女性は冒険者風のボロボロの服を着ていて食堂ではやや浮いていたが、とにかく目を引くのはその耳だ。猫耳だろうか、三角の耳がピコピコと動いている。
「? 何だ? あの人……」
アレクと一緒に食堂に来ていたライアンが女性を見つけて、目をしばたたかせた。
――同じくその女性を見つけた双子は、猛烈な冷や汗をかいている。
だが、アレクは嬉しそうな顔をしていた。
「た、体調不良の理由はこれだったのか……!!」
「に、逃げる、わよ……!!」
双子はこっそりその場を後にしようとした。が――
「おっと。逃げるなんていい度胸じゃないか」
まるでそこにいるのを最初からわかっていたかのごとく、ガシッと双子の襟首を掴む猫耳女性。
二人は悲痛な叫び声を上げた。
「「ギャアアアアアアッ!!」」
「出会い頭に悲鳴なんて……師匠は寂しいなぁ」
「し、師匠?」
戸惑うアトラス達に、女性は微笑んだ。
「はじめまして! 私はこのバカ弟子達の師匠のクーヴェルだ!」
「ご、ごめんなさい師匠……その、逃げようとなんてしてないわよ?」
「ようエルル。相変わらず嘘が下手くそだな。せめて笑い方は気をつけようぜ?」
クーヴェルと名乗った女性に指摘され、焦るエルル。どうやら頬が引きつっていたらしい。
すると、アレクが嬉しそうにクーヴェルに抱きついた。
「お師匠様!! 会いたかった!!」
「おーおー。アレクは相変わらずか」
「あ、アレクの師匠!? ってことはめちゃくちゃ強い……!?」
そう言うライアンに、クーヴェルはニィ、と笑う。
「そりゃあ私、獣人だし」
ピョコンと突き出た、艶やかな毛並みの長い尻尾を振るクーヴェル。
クーヴェルは猫の獣人で、一般に獣人は人間よりも身体能力に秀でている。
そんなクーヴェルは、ライアンに目をつけたらしい。
「どうだい坊や、私のところに来て修業しないかい?」
「強くなれるか!?」
「少なくとも今よりはね」
クーヴェルの誘いに目を輝かせるライアン。しかし、それをガディが止めた。
「やめとけ」
「な、何で!?」
「俺は犠牲者を出したくない」
「犠牲者だなんて……人聞きの悪い」
クーヴェルの言葉に青ざめたガディに代わって、エルルが説明をする。
「師匠は本当に恐ろしい人よ……!! 魔物がうじゃうじゃいる森に人を放り込んだり、猛毒を持つ魔物がいる海に投げたり……命の保障はできないわ!!」
「怖っ!?」
ザザッと物凄い勢いでライアンが後ずさった。
クーヴェルは残念そうな顔をしたが、ぼそりとガディが囁く。
「それに……師匠が弟子と認めるのは『例外』の奴のみだろ? コイツを『例外』に仕立て上げるつもりか?」
「そんな面倒なことはしない」
ブスッと膨れたクーヴェルを見ながら、アレクが尋ねる。
「そう言えばお師匠様。どうして英雄学園に?」
「そうだよ、そうそう! お前ら……」
クーヴェルは指先をガディとエルルに突きつけ、大声で問い詰める。
「お前ら、何でムーンオルト家をりだ……」
「わーわーわー!!」
クーヴェルの質問は、アレクの叫び声によってかき消された。
「とりあえずお師匠様はこっちへ! 兄様と姉様も早く!」
そそくさとその場を退場する四人であったが、友人達は首を傾げるばかりだった。
四人は誰にも話を聞かれないように、端のほうの席に座った。
もっとも、クーヴェルが来たとなると、落ち着いて昼食など食べられない。
「それで、どーしたんだ?」
モグモグと満足そうに草餅をほおばるクーヴェルに、アレクは小さな声で言った。
「お師匠様……僕達、ムーンオルト家出身だってことを隠してますから」
「え? ああ、ごめん」
クーヴェルはサラッと謝った。
先ほどクーヴェルが口にした言葉を予想し、ガディは尋ねる。
「本題は、なぜ俺らがムーンオルト家を出たのかってことか?」
「話が早いね! 風の噂で聞いて、確かめに来たんだ」
草餅を一旦皿に置いて、クーヴェルは愉快げに笑った。
「お前ら、とうとう家を出たんだな」
「もっと早くそうするべきだったと思うけどね」
エルルが返事して料理を口にした。
するとクーヴェルは不思議そうな顔をして問いかける。
「お前ら……出てったんなら、何でこの学園に通えてるんだ? ここは金持ちしか通えないだろ。お前らなら実力は問題ないと思うけど」
「学園長のコネと、自分達で稼いだ金で」
「へえ。お前らも色々やってんだな」
ふむふむと興味深そうに頷くクーヴェル。それから、ニヤリと笑った。
「じゃあ、せっかく会ったし、久しぶりに腕を確かめるためにアレでもやりますか……」
「あ、アレ!?」
怯えるガディ達三人に、クーヴェルはにこやかに笑った。
「よし! 狩りに行くぞ!」
◆ ◆ ◆
『狩り』というのは、クーヴェルの遊戯の名であった。
まず、ひとっ走りして山奥に入り、山を流れる川の近くまで来る。
この時点で常人は二、三時間かかるが、四人は慣れているため一時間で着くことができた。
そこは、修業時代の三人がクーヴェルとよく来ていた場所だ。
山の中腹辺りまで登ると、クーヴェルは川を指差し声を張り上げる。
「よし! お前ら! まずは魚取れやっ!」
「「……はぁ」」
「はーい!」
双子は返事代わりにため息をつき、アレクのみが大声で返事をして川に雷魔法を放つ。
ドッガシャアアアアン! という猛烈な衝撃音が響いた後、魚がプカーと水面に浮いてきた。
それをガディとエルルが掴み取って持ってくると、クーヴェルは魚を数える。
「んー、こんくらいでいいか」
クーヴェルは自らの前に並べられた魚を満足そうに眺め、続けて弟子達に指示を出す。
「一人ずつ何か取ってこいー。ちなみに多めにな?」
「はい!」
「「…………」」
師匠に従順なのはアレクだけ。双子は顔をしかめたが、文句は言えないのでひとまず黙って行動を開始する。
三人が草むらに飛び込んで獲物を探している間に、クーヴェルは取った魚を調理することにした。
「ファイアボール!」
手のひらからボールサイズの炎がボッと飛び出し、クーヴェルの顔をぼんやりと照らす。
それを木くずに放つと勢いよく炎が上がり、クーヴェルは近くの地面に魚を突き刺した木の棒を立てた。そうして、焼き上がるまでじっくりと待つ。
「……あいつら、随分と素直じゃなくなったな」
双子の反抗的な態度を振り返る。
「これはいわゆる反抗期かねー」
クーヴェルはニヤリと口元を緩ませた。
自分の子供の成長を見守るような気持ちがある一方で、反抗期をどうやってねじ伏せるか考えると楽しくなってくる。
「おい、師匠。獲物を取ってきたぞ」
仏頂面でクーヴェルのもとに帰ってきたのは、ガディであった。
ガディが獲物を地面に置くと、ズズゥン……という音がして、砂煙が舞い上がる。
それは、焦げ茶色のゴワゴワとした毛並みを持つ巨大な獣――熊だった。
「ほう……熊とは、結構なもん取ってきたな」
「うろついてたからな」
クーヴェルの楽しそうな視線を躱すように目を逸らすガディ。
「師匠ー。取ってき……ああ。今日はガディが先みたいね」
エルルが抱えているのは数々の野菜であった。取れたてのせいか、泥まみれである。
それを見てクーヴェルは顔をしかめた。
「あー、エルル。野菜洗ってくれや」
「……人使いの荒い」
「何て?」
「何でも」
エルルがすまし顔で頷いたちょうどその時、アレクも戻ってくる。
「お師匠様~! 取ってきました!」
ニコニコ笑うアレクが抱えているのは、木の実や薬草だ。
「よしよし! 今日はこんくらい!」
クーヴェルは並べられたものを見て、満足そうに頷いた。
「スキル〔解体〕」
クーヴェルがそう唱えると、ガディが狩ってきた熊がシュルンとブラックホールのような空間に収納された。
しばらくしてボフンッと煙が立ち、熊がまさに解体された状態で出てくる。
「熊肉ってわりと旨いんだよなー」
「……作るのが師匠じゃなきゃ、ですが」
「はいはい次ー」
ガディの言葉を無視して、クーヴェルは熊肉を一口大に切り分ける。その大きさはバラバラで、クーヴェルの不器用さが表れていた。
「スキル〔収納〕、鍋」
クーヴェルは〔収納〕を使い、空中から鍋を取り出した。鍋に水魔法で水を投入すると、先ほど熾した火の周りに石を組んで土台を作り、その上に鍋を置く。
「野菜切れたかー?」
「できたわよ」
鍋にエルルが切った野菜と、熊肉も一緒に加える。そしてアレクが取ってきた薬草やら何やらを入れて煮た。
鼻歌交じりで料理をするクーヴェルを眺めながら、エルルはガディに声をかける。
「……ねえ、ガディ。師匠の調理、止めたほうがよくない?」
「そんなことしたら爪で引っ掻かれるぞ」
そこにアレクもやってきた。
「兄様、姉様」
「何だ? アレク」
「師匠、何であんなに料理下手なんだろうね?」
「さあ……」
「できたぞー!」
双子とアレクの会話など知る由もなく、クーヴェルは鍋を地面に置いて、焼いていた魚を差し出した。魚は真っ黒に焦げている。クーヴェルはこの焼き加減が好きらしいが、とても体に悪そうだ。
鍋には何やら黒々とした物体が浮いていた。クーヴェル独自の味付けをしていたので、個性的な味わいになっているのは間違いない。
ちなみに残したら、「何残してんだー!」とクーヴェルの鉄拳が飛んでくる。
クーヴェルだけがご機嫌で食べ始めた。
「いっただっきまーす!」
「「「い、いただきます……」」」
嬉しそうに食べるクーヴェルを横目に、三人は料理を一口。
「くおお……」
「む……ぐ……」
「に、にが…」
悶える三人をよそに、クーヴェルは食事を楽しんでいた。
「どーひた! もっふぉ食べえ!」
「「「…………」」」
これが、『狩り』という遊戯の正体であった。
「いたぁーーー!?」
「ぴゅーっ!!」
ユニコーンはアマノスの指に、歯を突き立てた。
アマノスが痛がってブンブンと手を振るが、しっかり噛みついて放そうとしない。
「やめて! ユニコーン!」
『親さま……』
アレクが制すると、ユニコーンはおとなしく指を噛むのをやめた。
アマノスは荒い息をしながら、ユニコーンを思い切り睨みつける。
「何て凶暴な奴だ!」
その言葉が気に入らなかったのか、ユニコーンは角をアマノスに向けて低い声で威嚇する。
『うるさい……!! 親さまとぼくを離ればなれにさせるなんて、許さない……!!』
アレクに止められなければ、お前なんてミンチにしてやる、と言わんばかりの表情である。
国王はユニコーンの態度を見て、大きくため息をついた。
「アレク君。ひとまず、ユニコーンを預かっておいてくれないか? ユニコーンは気性が荒い。下手に近づけばただでは済まないだろう。アマノスのようにな」
その言葉を待っていたとばかりに、学園長が国王に言う。
「わかった。じゃあ、そういうことで」
「アレク君、シルファに会っていかな……」
「さよなら」
アレクが答える暇すら与えず、学園長は凄まじいスピードで瞬間移動で去っていった。
国王は盛大にため息をついた。学園長と良好な関係を結ぶのは難しそうである。
執事長とメイド長は、どうして二人がそこまで仲が悪いのかと疑問に思いつつ、その場を後にした。
◆ ◆ ◆
アレクは学園に戻った後、召喚獣達の部屋にユニコーンを置いてくるよう学園長に言われて、その教室に来ていた。
アレクが来たことに気がついて、聖霊のクリアとフェンリルのリルが近づいてくる。
「珍しい子を連れているわね、どうしたの?」
「そいつは誰だ?」
『親さまっ、この人達は?』
「……えーっと」
三者から質問され、アレクはまず誰から紹介すればいいのかと迷った。
リルはユニコーンの発した言葉に引っかかりを覚えたらしい。
「『親さま』とはアレクのことか? まだ幼子のせいか、念話なのだな」
リルはユニコーンを見つめて、ふむふむと頷いた。
ユニコーンは興味深そうに、尻尾をパタパタと左右に動かす。
「ふぅん、聖獣か……久しぶりに見たわ」
クリアはふわふわと浮かびながら、ユニコーンに手を伸ばした。
頭をそっと撫でると、ユニコーンはくすぐったそうに目を細める。
クリアを見ていて、アレクはふと出会った時のことを思い出す。クリアは「二百年待っていた」と言っていたが、それほど長生きしていたということだろうか。
そんな長い間、闇に囚われながらどうやって生きていたのかと考えたところで、横からユニコーンがアレクの服の裾を引っ張った。
『親さま! この人達、誰? 早く教えて!』
「ごめん……紹介がまだだったね」
すると、リルがユニコーンに向き直り自己紹介を始める。
「はじめまして、ユニコーン。私はリル。見ての通りフェンリルだ」
『リル、小さい?』
「……今はわ・ざ・と! 小さくなっているだけだ」
リルは若干ムッとしたのか、「わざと」を強調して答えた。
召喚獣の部屋は広いが、小さい姿のほうが過ごしやすいので小さくなっている。
クリアはストンと地面に降り立って、ユニコーンに向かって軽く礼をした。
「はじめまして、私はクリア。氷の聖霊ね」
『よろしく!』
翼を軽くはためかせながら、ユニコーンは嬉しそうに返事をした。
リルが前足でアレクをつついて聞く。
「なあ、アレク。ユニコーンとは、まだ契約していないのか?」
「……あ」
すっかり忘れていた。召喚獣とするならば、名前を与えて契約しなければならない。
学園長には「アレク君の好きにしてもらって構わない」と言われたので、契約しても問題はないはずだけど、とアレクはユニコーンに目を向けた。
「……ぴゅう?」
吸い込まれそうな青い瞳は、今もアレクにまっすぐ向いている。
小首を傾げるその姿は、愛らしい以外の何物でもなかった。
「名前……」
アレクは困って、じっとユニコーンを見つめる。
(……目、宝石みたいだ。まるで、サファイアのような……あ!)
アレクはその瞳を見て、パッと思いついた名前を口にした。
「君はサファ! これからよろしくね!」
『……サファ!』
自分の名前を呼び、ユニコーン――サファは嬉しそうに笑った。
ズズッと、リルやクリアの時と同じく大量の魔力がアレクから抜け出し、サファに吸い込まれる。
これで契約完了だ。
『親さま、よろしく~!』
サファは元気にヒヒィンと鳴いて、翼をはためかせた。
第二話 双子、危機に遭遇する
ミーンミンミンミンミン……
「……ふぅ。街はやっぱり暑いね」
まだ朝であるにもかかわらず、容赦なく照りつける太陽に目をくらませながら、女性は微笑んだ。
闇色の髪と瞳をしており、頭部には猫耳が生えている。
「……あのバカ弟子どもが。何やってんだい」
フゥゥ~……と大きな息を吐く女性。
汗をタオルで拭い、果物を出してかぶりついた。
「さて。久しぶりにバカ弟子どもに会いに行くとするか」
◆ ◆ ◆
春から夏に季節が移り変わった影響で、学園の購買には冷たいものが増えた。
相変わらず賑やかなそこには、学園に通う銀髪の双子――ガディとエルルの姿もある。
ガディとエルルは、二人の友人とともに購買に並んでいた。
一人はアトラスという、ブラウンの髪に眼鏡をかけた少年。ガディとエルルがアレクの授業参観を覗きに行った時、迎えに来た人物だ。
もう一人はマイナルという少女で、青い髪と瞳をした、英雄学園では珍しい平民の生徒である。
当然、マイナルには貴族にありがちな嫌味や権力意識などなく、そんな自然体な彼女と双子は馬が合い、自然と行動をともにするようになった。
「エルル! 今日は冷たーいものを食べようよ!」
「わかってないわね、マイナル。夏だからこそ汗を流すんでしょ? 冷たいものはデザートだけよ」
そんな会話をしていたエルルは、突然寒気に襲われた。
「ッ!?」
「? どうしたの?」
急に顔色が悪くなったエルルを見て、不思議そうな顔をするマイナル。
「!?」
「え? ガディも?」
見れば、ガディも青ざめている。
冷や汗をかき始める双子を見て、マイナルとアトラスは戸惑いを隠せない。
「いや……なぜかいきなり胃が痛くなっただけだ」
「気のせいかしら……異様に喉が渇くわ」
二人はそれぞれ違和感を覚える部位を押さえ、顔をしかめた。一方のアトラスは目を丸くしている。
「驚いた……まさか君らが、体の不調を訴えるなんて」
「アトラスは俺らを何だと思ってるんだ」
ガディはそう言うが、普段の様子から考えれば、アトラスの言葉はもっともだといえた。
マイナルが二人を心配して声をかける。
「どうする? 胃が痛いのならお昼ご飯を食べるのやめたら? それか、せめて消化にいいものを……」
「いや、問題ない」
ガディとエルルは自動販売機に学生証を押し当てた。
自動販売機が淡く光った後、ボスンッという音とともに料理が落ちてくる。
この自動販売機は、学生証についているコードをかざすことで、物が買えるシステムになっている。金のチャージはそれ専用の機械で行うことができるという、今のところ英雄学園にしかない便利な魔道具であった。学園長が開発したものらしい。
商品を注文し終わり、四人全員が自分達の座れる席を探す。
キョロキョロと辺りを見回すと、ガディとエルルはとある人物を見つけた。
「あれ? 兄様、姉様?」
「「アレク!」」
二人はアレクを見つけて目を輝かせた。
豹変した双子を見て、アトラスとマイナルはいつものことながらやはり驚く。
「二人があんな態度になるなんて……!!」
「本当、溺愛って凄いよね……」
一方、購買のカウンターでは、一人の女性が注文していた。
「あのー、草餅一つ」
「お客さん……生徒じゃないなら、あっちじゃないと頼めませんぜ」
英雄学園の食堂や購買は一般にも開放されているが、部外者は専用カウンターに行く必要がある。
「ああ。悪い」
女性は冒険者風のボロボロの服を着ていて食堂ではやや浮いていたが、とにかく目を引くのはその耳だ。猫耳だろうか、三角の耳がピコピコと動いている。
「? 何だ? あの人……」
アレクと一緒に食堂に来ていたライアンが女性を見つけて、目をしばたたかせた。
――同じくその女性を見つけた双子は、猛烈な冷や汗をかいている。
だが、アレクは嬉しそうな顔をしていた。
「た、体調不良の理由はこれだったのか……!!」
「に、逃げる、わよ……!!」
双子はこっそりその場を後にしようとした。が――
「おっと。逃げるなんていい度胸じゃないか」
まるでそこにいるのを最初からわかっていたかのごとく、ガシッと双子の襟首を掴む猫耳女性。
二人は悲痛な叫び声を上げた。
「「ギャアアアアアアッ!!」」
「出会い頭に悲鳴なんて……師匠は寂しいなぁ」
「し、師匠?」
戸惑うアトラス達に、女性は微笑んだ。
「はじめまして! 私はこのバカ弟子達の師匠のクーヴェルだ!」
「ご、ごめんなさい師匠……その、逃げようとなんてしてないわよ?」
「ようエルル。相変わらず嘘が下手くそだな。せめて笑い方は気をつけようぜ?」
クーヴェルと名乗った女性に指摘され、焦るエルル。どうやら頬が引きつっていたらしい。
すると、アレクが嬉しそうにクーヴェルに抱きついた。
「お師匠様!! 会いたかった!!」
「おーおー。アレクは相変わらずか」
「あ、アレクの師匠!? ってことはめちゃくちゃ強い……!?」
そう言うライアンに、クーヴェルはニィ、と笑う。
「そりゃあ私、獣人だし」
ピョコンと突き出た、艶やかな毛並みの長い尻尾を振るクーヴェル。
クーヴェルは猫の獣人で、一般に獣人は人間よりも身体能力に秀でている。
そんなクーヴェルは、ライアンに目をつけたらしい。
「どうだい坊や、私のところに来て修業しないかい?」
「強くなれるか!?」
「少なくとも今よりはね」
クーヴェルの誘いに目を輝かせるライアン。しかし、それをガディが止めた。
「やめとけ」
「な、何で!?」
「俺は犠牲者を出したくない」
「犠牲者だなんて……人聞きの悪い」
クーヴェルの言葉に青ざめたガディに代わって、エルルが説明をする。
「師匠は本当に恐ろしい人よ……!! 魔物がうじゃうじゃいる森に人を放り込んだり、猛毒を持つ魔物がいる海に投げたり……命の保障はできないわ!!」
「怖っ!?」
ザザッと物凄い勢いでライアンが後ずさった。
クーヴェルは残念そうな顔をしたが、ぼそりとガディが囁く。
「それに……師匠が弟子と認めるのは『例外』の奴のみだろ? コイツを『例外』に仕立て上げるつもりか?」
「そんな面倒なことはしない」
ブスッと膨れたクーヴェルを見ながら、アレクが尋ねる。
「そう言えばお師匠様。どうして英雄学園に?」
「そうだよ、そうそう! お前ら……」
クーヴェルは指先をガディとエルルに突きつけ、大声で問い詰める。
「お前ら、何でムーンオルト家をりだ……」
「わーわーわー!!」
クーヴェルの質問は、アレクの叫び声によってかき消された。
「とりあえずお師匠様はこっちへ! 兄様と姉様も早く!」
そそくさとその場を退場する四人であったが、友人達は首を傾げるばかりだった。
四人は誰にも話を聞かれないように、端のほうの席に座った。
もっとも、クーヴェルが来たとなると、落ち着いて昼食など食べられない。
「それで、どーしたんだ?」
モグモグと満足そうに草餅をほおばるクーヴェルに、アレクは小さな声で言った。
「お師匠様……僕達、ムーンオルト家出身だってことを隠してますから」
「え? ああ、ごめん」
クーヴェルはサラッと謝った。
先ほどクーヴェルが口にした言葉を予想し、ガディは尋ねる。
「本題は、なぜ俺らがムーンオルト家を出たのかってことか?」
「話が早いね! 風の噂で聞いて、確かめに来たんだ」
草餅を一旦皿に置いて、クーヴェルは愉快げに笑った。
「お前ら、とうとう家を出たんだな」
「もっと早くそうするべきだったと思うけどね」
エルルが返事して料理を口にした。
するとクーヴェルは不思議そうな顔をして問いかける。
「お前ら……出てったんなら、何でこの学園に通えてるんだ? ここは金持ちしか通えないだろ。お前らなら実力は問題ないと思うけど」
「学園長のコネと、自分達で稼いだ金で」
「へえ。お前らも色々やってんだな」
ふむふむと興味深そうに頷くクーヴェル。それから、ニヤリと笑った。
「じゃあ、せっかく会ったし、久しぶりに腕を確かめるためにアレでもやりますか……」
「あ、アレ!?」
怯えるガディ達三人に、クーヴェルはにこやかに笑った。
「よし! 狩りに行くぞ!」
◆ ◆ ◆
『狩り』というのは、クーヴェルの遊戯の名であった。
まず、ひとっ走りして山奥に入り、山を流れる川の近くまで来る。
この時点で常人は二、三時間かかるが、四人は慣れているため一時間で着くことができた。
そこは、修業時代の三人がクーヴェルとよく来ていた場所だ。
山の中腹辺りまで登ると、クーヴェルは川を指差し声を張り上げる。
「よし! お前ら! まずは魚取れやっ!」
「「……はぁ」」
「はーい!」
双子は返事代わりにため息をつき、アレクのみが大声で返事をして川に雷魔法を放つ。
ドッガシャアアアアン! という猛烈な衝撃音が響いた後、魚がプカーと水面に浮いてきた。
それをガディとエルルが掴み取って持ってくると、クーヴェルは魚を数える。
「んー、こんくらいでいいか」
クーヴェルは自らの前に並べられた魚を満足そうに眺め、続けて弟子達に指示を出す。
「一人ずつ何か取ってこいー。ちなみに多めにな?」
「はい!」
「「…………」」
師匠に従順なのはアレクだけ。双子は顔をしかめたが、文句は言えないのでひとまず黙って行動を開始する。
三人が草むらに飛び込んで獲物を探している間に、クーヴェルは取った魚を調理することにした。
「ファイアボール!」
手のひらからボールサイズの炎がボッと飛び出し、クーヴェルの顔をぼんやりと照らす。
それを木くずに放つと勢いよく炎が上がり、クーヴェルは近くの地面に魚を突き刺した木の棒を立てた。そうして、焼き上がるまでじっくりと待つ。
「……あいつら、随分と素直じゃなくなったな」
双子の反抗的な態度を振り返る。
「これはいわゆる反抗期かねー」
クーヴェルはニヤリと口元を緩ませた。
自分の子供の成長を見守るような気持ちがある一方で、反抗期をどうやってねじ伏せるか考えると楽しくなってくる。
「おい、師匠。獲物を取ってきたぞ」
仏頂面でクーヴェルのもとに帰ってきたのは、ガディであった。
ガディが獲物を地面に置くと、ズズゥン……という音がして、砂煙が舞い上がる。
それは、焦げ茶色のゴワゴワとした毛並みを持つ巨大な獣――熊だった。
「ほう……熊とは、結構なもん取ってきたな」
「うろついてたからな」
クーヴェルの楽しそうな視線を躱すように目を逸らすガディ。
「師匠ー。取ってき……ああ。今日はガディが先みたいね」
エルルが抱えているのは数々の野菜であった。取れたてのせいか、泥まみれである。
それを見てクーヴェルは顔をしかめた。
「あー、エルル。野菜洗ってくれや」
「……人使いの荒い」
「何て?」
「何でも」
エルルがすまし顔で頷いたちょうどその時、アレクも戻ってくる。
「お師匠様~! 取ってきました!」
ニコニコ笑うアレクが抱えているのは、木の実や薬草だ。
「よしよし! 今日はこんくらい!」
クーヴェルは並べられたものを見て、満足そうに頷いた。
「スキル〔解体〕」
クーヴェルがそう唱えると、ガディが狩ってきた熊がシュルンとブラックホールのような空間に収納された。
しばらくしてボフンッと煙が立ち、熊がまさに解体された状態で出てくる。
「熊肉ってわりと旨いんだよなー」
「……作るのが師匠じゃなきゃ、ですが」
「はいはい次ー」
ガディの言葉を無視して、クーヴェルは熊肉を一口大に切り分ける。その大きさはバラバラで、クーヴェルの不器用さが表れていた。
「スキル〔収納〕、鍋」
クーヴェルは〔収納〕を使い、空中から鍋を取り出した。鍋に水魔法で水を投入すると、先ほど熾した火の周りに石を組んで土台を作り、その上に鍋を置く。
「野菜切れたかー?」
「できたわよ」
鍋にエルルが切った野菜と、熊肉も一緒に加える。そしてアレクが取ってきた薬草やら何やらを入れて煮た。
鼻歌交じりで料理をするクーヴェルを眺めながら、エルルはガディに声をかける。
「……ねえ、ガディ。師匠の調理、止めたほうがよくない?」
「そんなことしたら爪で引っ掻かれるぞ」
そこにアレクもやってきた。
「兄様、姉様」
「何だ? アレク」
「師匠、何であんなに料理下手なんだろうね?」
「さあ……」
「できたぞー!」
双子とアレクの会話など知る由もなく、クーヴェルは鍋を地面に置いて、焼いていた魚を差し出した。魚は真っ黒に焦げている。クーヴェルはこの焼き加減が好きらしいが、とても体に悪そうだ。
鍋には何やら黒々とした物体が浮いていた。クーヴェル独自の味付けをしていたので、個性的な味わいになっているのは間違いない。
ちなみに残したら、「何残してんだー!」とクーヴェルの鉄拳が飛んでくる。
クーヴェルだけがご機嫌で食べ始めた。
「いっただっきまーす!」
「「「い、いただきます……」」」
嬉しそうに食べるクーヴェルを横目に、三人は料理を一口。
「くおお……」
「む……ぐ……」
「に、にが…」
悶える三人をよそに、クーヴェルは食事を楽しんでいた。
「どーひた! もっふぉ食べえ!」
「「「…………」」」
これが、『狩り』という遊戯の正体であった。
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