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番外編 エリクルとロールの日記
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XXX年 1日目
ラティアンカ嬢とアルが日記を書いているという。
そのことを揶揄ったら、僕にまで日記を押し付けてきた。
一緒に渡されたシャルロッテが嬉しそうだったから、まあ使うことにする。
ぼちぼち書いていこう。
XXX年 7日目
ラティアンカ嬢とアルには息子がいる。
名前はティアル。
由来は2人の名前をいじったとか何とか。
まぁ、その息子の話だが、息子は凄いくらいアルに似ていた。
まだ5歳だが、成長速度が凄まじい。
両親に似て賢く、美形でーー魔術が達者。
まず順に上げていこう。
ティアルは5歳に関わらず、大人と同じように話すことができた。
いや、子供ならではの柔軟な思考で、時には大人すらも上回ってみせたのだ。
これには僕も驚いた。
僕も賢いほうだったけど、ここまでじゃなかったから。
次に、顔なんだけど……アルにそっくり。
生写しか、生まれ変わりってレベル。
白雪の肌に漆黒の髪、長いまつ毛。
2人が並べばアルが2人いるような錯覚に陥る。
よく笑うから見分けはつくのだが。
それに瞳の色は確実にラティアンカ嬢のものである。
晴れ晴れとした空の色。
将来その色は、一体どれだけのご令嬢を落とすのだろうか。
次だ。これが一番の問題点。
魔術が使えすぎる。
下手をすれば、アルより才能がある。
つい最近、魔術が暴走して屋敷の一室が吹っ飛んだらしい。
子育てが初めての2人は、それはもう手を焼いている。
僕らもたまに手伝いにいっているが、なかなか大変そうだ。
しかしそれを上回るレベルの幸せなのだろう。
ちなみにラティアンカ嬢のお腹には、もう一つの命が宿っている。
女の子だそうだ。
XXX年 35日目
シャルロッテが「護身術です!」とか言って、ティアルに武術を仕込み始めた。
これには思わず参ったが、筋がいいらしく、ぐんぐんとティアルは成長している。
天才児とはこのことか。
いや、そうとうなレベルの子供が生まれてくるだろうという、予想はしていたが……想像以上だ。
シャルロッテのことを「師匠」と呼び出したから、ちょっと面白い。
XXX年 63日目
「いい加減私に落ちてくれませんか?」とかシャルロッテが言ってきた。
同棲を始めてもう随分と経ってしまったことに、そこで気がついた。
そろそろ頃合いだったのかもしれないな。
でも。
まだ、落とされてやらない。
べぇと舌を出せば、不満げにシャルロッテはそっぽを向いてしまった。
3日は拗ねられた。
XXX年 105日目
ティアルはたまに僕達の家に一人でやってくる。
空を飛べるからだ。
両親に無許可で飛んでくるものだから、毎回叱られている。
なのに懲りない。
しっかりしてほしいのだが。
それにシャルロッテとしての根底が残っているおかげで、口の悪さが着々とティアルに移りつつある。
僕もついうっかり漏らしてしまうことがあるから、十分に気をつけなければ。
このままでは、不良息子に秒速ゴールである。
XXX年 132日目
僕はひょっとしたら、ラティアンカ嬢に全力で謝らねばならない時が来たのかもしれない。
ティアルの口が悪い。
幼い頃の僕を想起させるようなものだ。
どこで覚えた。そこまで漏らしてないはずだぞ。
やけに賢いのが祟ったのか、そういうのがカッコいいと憧れるのも早かった。
アルは物凄い殺気飛ばしてくるし。
いや、ほんと、ごめんって。
◆ ◆ ◆
XXX年 1日目
ラティ様に日記をもらった!
ラティ様からの贈り物。大事に使おう。
XXX年 6日目
ラティ様には、新しい赤ちゃんがお腹の中にいる。
女の子っていうから、また新しいおもちゃとか、服とか、揃えなければならない。
アルジェルド様は親バカみたいで、いろんなものを買い与えてはラティ様に叱られてる。
ティアルも呆れていた。
XXX年 35日目
ティアルの師匠になったよ!
ティアルは筋がいいから、私の言ったことすぐできるんだよね。
弟子に追い越される日も遠くはないのかな。
いや……そんなことないはず。
自分で言うのもなんだけど、私は生まれ持った頑丈な体がある。
はずなんだけど、やっぱり不安になる。
ティアルほどの天才児を、私は知らないから。
追い越されたくないなぁ。
XXX年 64日目
エリクル様がなかなか私に靡いてくれない。
ちょっと拗ねてみせている最中なのだけど、大した反応も見られない!
頑張ってるんだけどな。
XXX年 134日目
あれだけ綺麗な礼を、私は久しぶりに見たかもしれない。
エリクル様が全力でラティ様に頭を下げていた。
理由は、エリクル様の口の悪さが、ティアルに移っちゃったから。
いや、少しは私のせいでもあるけどさ。
エリクル様、もう演じる必要がないって気が緩んでて、たまに口が悪いんだよね。
でも本当にたまにだし、移るなんて思ってなかった。
しかし、私達は忘れていたのだ。
ティアルが賢い子供であることを。
語彙を増やし、ものの見事に口を悪くしたティアル。
その、ラティ様。本当にごめんなさい。
責任持って矯正しますので。
◆ ◆ ◆
「日記帳終わった~……」
「私もです! 新しいの買いましょう!」
シャルロッテがこちらに駆けてくる。
日記帳を見直せば、ほとんどマルシム家と僕達のことである。
特に多いのがティアル。
ティアルの口の悪さはすぐに直った。
何とも、シャルロッテ曰く「愛のムチ(意味深)」で、何とかしたらしい。
ちなみにムチの正体は、立てなくなるレベルの稽古であった。
あんだけボロボロにして大丈夫なのだろうか。
将来的にティアルは立派な紳士に育つと思いきやーーーちょっと口の悪さは残っている。
親であるアルはもちろんながら、ラティアンカ嬢もなかなかの不器用である。
ティアルにもそれは受け継がれ、自分の考えを伝えるのが少々不得意な子になってしまった。
今はできすぎた顔面で誤魔化しているが、どうなるのだろうか。
それは、僕にはわからない。
続きます~
ラティアンカ嬢とアルが日記を書いているという。
そのことを揶揄ったら、僕にまで日記を押し付けてきた。
一緒に渡されたシャルロッテが嬉しそうだったから、まあ使うことにする。
ぼちぼち書いていこう。
XXX年 7日目
ラティアンカ嬢とアルには息子がいる。
名前はティアル。
由来は2人の名前をいじったとか何とか。
まぁ、その息子の話だが、息子は凄いくらいアルに似ていた。
まだ5歳だが、成長速度が凄まじい。
両親に似て賢く、美形でーー魔術が達者。
まず順に上げていこう。
ティアルは5歳に関わらず、大人と同じように話すことができた。
いや、子供ならではの柔軟な思考で、時には大人すらも上回ってみせたのだ。
これには僕も驚いた。
僕も賢いほうだったけど、ここまでじゃなかったから。
次に、顔なんだけど……アルにそっくり。
生写しか、生まれ変わりってレベル。
白雪の肌に漆黒の髪、長いまつ毛。
2人が並べばアルが2人いるような錯覚に陥る。
よく笑うから見分けはつくのだが。
それに瞳の色は確実にラティアンカ嬢のものである。
晴れ晴れとした空の色。
将来その色は、一体どれだけのご令嬢を落とすのだろうか。
次だ。これが一番の問題点。
魔術が使えすぎる。
下手をすれば、アルより才能がある。
つい最近、魔術が暴走して屋敷の一室が吹っ飛んだらしい。
子育てが初めての2人は、それはもう手を焼いている。
僕らもたまに手伝いにいっているが、なかなか大変そうだ。
しかしそれを上回るレベルの幸せなのだろう。
ちなみにラティアンカ嬢のお腹には、もう一つの命が宿っている。
女の子だそうだ。
XXX年 35日目
シャルロッテが「護身術です!」とか言って、ティアルに武術を仕込み始めた。
これには思わず参ったが、筋がいいらしく、ぐんぐんとティアルは成長している。
天才児とはこのことか。
いや、そうとうなレベルの子供が生まれてくるだろうという、予想はしていたが……想像以上だ。
シャルロッテのことを「師匠」と呼び出したから、ちょっと面白い。
XXX年 63日目
「いい加減私に落ちてくれませんか?」とかシャルロッテが言ってきた。
同棲を始めてもう随分と経ってしまったことに、そこで気がついた。
そろそろ頃合いだったのかもしれないな。
でも。
まだ、落とされてやらない。
べぇと舌を出せば、不満げにシャルロッテはそっぽを向いてしまった。
3日は拗ねられた。
XXX年 105日目
ティアルはたまに僕達の家に一人でやってくる。
空を飛べるからだ。
両親に無許可で飛んでくるものだから、毎回叱られている。
なのに懲りない。
しっかりしてほしいのだが。
それにシャルロッテとしての根底が残っているおかげで、口の悪さが着々とティアルに移りつつある。
僕もついうっかり漏らしてしまうことがあるから、十分に気をつけなければ。
このままでは、不良息子に秒速ゴールである。
XXX年 132日目
僕はひょっとしたら、ラティアンカ嬢に全力で謝らねばならない時が来たのかもしれない。
ティアルの口が悪い。
幼い頃の僕を想起させるようなものだ。
どこで覚えた。そこまで漏らしてないはずだぞ。
やけに賢いのが祟ったのか、そういうのがカッコいいと憧れるのも早かった。
アルは物凄い殺気飛ばしてくるし。
いや、ほんと、ごめんって。
◆ ◆ ◆
XXX年 1日目
ラティ様に日記をもらった!
ラティ様からの贈り物。大事に使おう。
XXX年 6日目
ラティ様には、新しい赤ちゃんがお腹の中にいる。
女の子っていうから、また新しいおもちゃとか、服とか、揃えなければならない。
アルジェルド様は親バカみたいで、いろんなものを買い与えてはラティ様に叱られてる。
ティアルも呆れていた。
XXX年 35日目
ティアルの師匠になったよ!
ティアルは筋がいいから、私の言ったことすぐできるんだよね。
弟子に追い越される日も遠くはないのかな。
いや……そんなことないはず。
自分で言うのもなんだけど、私は生まれ持った頑丈な体がある。
はずなんだけど、やっぱり不安になる。
ティアルほどの天才児を、私は知らないから。
追い越されたくないなぁ。
XXX年 64日目
エリクル様がなかなか私に靡いてくれない。
ちょっと拗ねてみせている最中なのだけど、大した反応も見られない!
頑張ってるんだけどな。
XXX年 134日目
あれだけ綺麗な礼を、私は久しぶりに見たかもしれない。
エリクル様が全力でラティ様に頭を下げていた。
理由は、エリクル様の口の悪さが、ティアルに移っちゃったから。
いや、少しは私のせいでもあるけどさ。
エリクル様、もう演じる必要がないって気が緩んでて、たまに口が悪いんだよね。
でも本当にたまにだし、移るなんて思ってなかった。
しかし、私達は忘れていたのだ。
ティアルが賢い子供であることを。
語彙を増やし、ものの見事に口を悪くしたティアル。
その、ラティ様。本当にごめんなさい。
責任持って矯正しますので。
◆ ◆ ◆
「日記帳終わった~……」
「私もです! 新しいの買いましょう!」
シャルロッテがこちらに駆けてくる。
日記帳を見直せば、ほとんどマルシム家と僕達のことである。
特に多いのがティアル。
ティアルの口の悪さはすぐに直った。
何とも、シャルロッテ曰く「愛のムチ(意味深)」で、何とかしたらしい。
ちなみにムチの正体は、立てなくなるレベルの稽古であった。
あんだけボロボロにして大丈夫なのだろうか。
将来的にティアルは立派な紳士に育つと思いきやーーーちょっと口の悪さは残っている。
親であるアルはもちろんながら、ラティアンカ嬢もなかなかの不器用である。
ティアルにもそれは受け継がれ、自分の考えを伝えるのが少々不得意な子になってしまった。
今はできすぎた顔面で誤魔化しているが、どうなるのだろうか。
それは、僕にはわからない。
続きます~
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