探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず

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エリクルside

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僕はロマドの勇者の末裔の1人として、第四王子としてロマドに生まれ落ちた。
え? 兄妹だったのかって? 知らなかった?
そりゃあそうだよ。僕、本当に才能なかったもん。
それに体が弱かった。
生まれた時から落ちこぼれの烙印を押されて、存在を隠されて生きてきた。
多少なりとも他の兄さん達は才能があったからね。僕はお荷物だったのさ。
5歳になってある程度物事がわかってきた時、自分の母親が平民の出ということを知った。
平民の子で才能なし。もう王子って名乗る資格ないよね。
というわけでナメられて、後宮の隅の方で育ったよ。
まあ僕、これでも賢いほうだったからさ。
周りの人を出し抜いて、騙して生きてきた。
8歳の頃にロールちゃんが生まれたって聞いたね。王様、凄く焦ってたよ。神子が生まれた、もう勇者の時代は終わるのかってね。
変だよね。ロマドはアストロと長年の協力関係のおかげでここまで大きくなれたのに。
女神が勇者を愛して、女神が世界の悪役になったのに。真実が漏れることを恐れたんだ。
この頃にはロマドは完全に男尊女卑の国家が根付いていたからね。
まあ面倒だったんだろうよ。
僕はようやく風の魔術を習得して、やることないからそれでよく遊んでた。
12歳までは完全にただの置物だったんだけど……ある日、王様に呼ばれた。
何事だって顔を出してみれば、アストロに留学しろって言ってきてね。びっくりしたよ。僕なんて見捨てられたとばかり思ってたから。
でも、その先に続いた言葉ーー命令が問題だった。
神子を観察し、随時その様子を報告すること。そして神子を絆してくること。
12の子供に与える命令じゃないだろって思ったさ。
まあでも留学して、後宮抜け出せるならいっかってよく考えもせずにアストロに向かったさ。
アストロはいい国だよね。
男尊女卑もないし、みんな楽しそうだ。
僕は一応王子っていう身分を抱えて留学したから、女王様にはとってもお世話になったよ。
ロールちゃんに会わせてもらえた。
4歳だったかな? めちゃくちゃ可愛かったよ。今も可愛いけど。
でもまあその頃から神子っていうレッテルがついて回っててね、命狙われることも多かったんだよ。
女王様は何を思ったか、僕をロールちゃんの護衛に指名したんだ。
いや、嘘でしょって思った。
いくら友好国といえ、他の人を差し置いて護衛なんて。
女王様は僕ーーロマドの王子と、ロールちゃんにパイプを作りたかったみたいだね。
ロールちゃんが生きて、頼れる人を増やすために。
そんなことに気づきもせず、報告楽だしいっかって世話焼いてたら……まあ、絆されたよね。
絆してこいって命令だったはずなんだけど、僕がロールちゃんに絆されちゃった。
ロールちゃんのこと妹みたいに思ってたし。
護衛してる時はハドルって名乗ってた。
ロマドの王子だってバレたら面倒だし、このほうが切り替えができたからね。
レオン君とマオ君の小さい頃? よく覚えてるよ~。ロールちゃん含めてもろとも全員ひねくれてて、可愛かったなぁ。
15になる頃に、ロマド裏切ろって思った。
スパイみたいな感じで送り込まれたけど、二重スパイになってやろ。
そんな感じで女王様に、ロマドの思惑全部ぶちまけた。
もしかしたら信用されずに護衛から外されるかなーって思ったけど、女王様は受け入れてくれてね。
そっから僕、二重スパイなんだ。
楽しかったけどそろそろ王宮に戻るように指示が出されてね、ロールちゃん達と別れた。
王様と会って、アストロの情報をうまいことぼかしながら、嘘と本当を混ぜながら報告したんだ。
そしたらすっかり僕のこと王様は信じてね。
よくやったって褒めてたよ。面白いね。
その頃には僕、風の魔術がやたら上手でね。
バカにしてた兄さん達も見返した。
まあでも僕に王族の席は用意されていなかったわけだから、王様に志願して王宮を出ることにしたんだ。
肩身狭かったし。
それに、王様がロールちゃんのことを脅威だと見なしたら、すぐに暗殺者をアストロに送るつもりだったからね。
力をつける必要があったのさ。
それから1人で活動して、定期的に女王様と連絡取りつつも、風の魔術について勉強してた。
18で、ナジクでアルに会ったね。
未来の世界一の魔術師になるって言われてたアルに興味があって、打算目的で近づいた。
呆気なくバレて驚いたよ。
アル、君、心が読めたりする? あ、心が読めるのはルシフェル王子の千里眼か。
そこから僕がアルを気に入って、親友になった。
最初は本当に利用するだけのつもりだったんだけど、どうにもアルといると楽しくてね。
それからアルと学び合って名前を挙げた。
アルは世界一の魔術師に、僕は風の貴公子とかいうちょっと恥ずかしい名前だったけど、ここまで来たんだなぁと思うと感慨深いものだったよ。
ラティアンカ嬢とも会えたし、そこそこ楽しい毎日だった。
僕ね、いつかラティアンカ嬢にロールちゃんを紹介できたらと思ってたんだ。
ラティアンカ嬢は尊敬できるし、おまけに美人さんだしね。何より心が綺麗。ロールちゃんもきっと気にいるし、仲良くできると思ってた。
まあラティアンカ嬢にアストロに来てもらわなきゃいけないから、誘うに誘えなかったけど。
23歳になった時、事件が起きた。
女王様が焦った様子で連絡してくるから、何事かと思ったよ。
そしたらロールちゃんの能力がいよいよ女神に近くなってきたらしくて、神様と意思疎通まで始めたとか言い出してさ。
それが判明したのが国のど真ん中で、龍の神様がアストロを気づかず踏み潰しそうだったから、ロールちゃんが声をかけて止めたとか聞いたよ。
凄い能力だと思うけど、国民はもちろん、旅行客とかに見られていたのもマズかった。
僕は王様に、王宮に戻ってこいと言われた。
王宮に戻れば、ロールちゃんの暗殺部隊に加わるように指示された。
冗談じゃない。ロールちゃんを殺すなんて、できるもんか。
だから僕は、アストロについたら、暗殺部隊を1人残らず片付けてしまおうと考えた。
ロマドで何か行動を起こしたら、王様に感づかれて捕まるからね。
もろもろ企んでたところ、声をかけてきた子がいて。
マルドゥアだよ。僕の弟の1人。
マルドゥアはこの国をひっくり返して、王様になるつもりだと言っていた。
僕はそれに協力することにした。
ロールちゃんを殺させないためには、王様を討ち取る必要があったから。
作戦は程遠いモノだったけど、ひとまず今回の暗殺計画を引っ掻き回して、王様に怪しまれないように立ち回ること。
それが重要だった。
そして風魔に乗り込み、アストロについて、適度に暴れた。
それから素っ気なく失敗したフリをして、暗殺者を女王様に引き渡して、ロマドに1人戻ろうと思ってたんだけどね。
非常事態だった。
僕達の他に、もう1つ部隊があったみたいで。
その部隊にロールちゃん達は襲われて、ロールちゃんは消えてしまった。
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