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交差した思惑。
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「……つまり、お父様には何も伝えられていないと」
「うん! 何も!」
「神子を殺してこいって言われただけよ」
この子達は本当に利用されるがままここに来たようです。
兄の内の1人に、エリクル様と一緒に飛ばされてきたのだとか。
「わかりました。ありがとうございます」
「神子のところ、連れてって!」
「行く!」
ぴょんぴょんと興奮した様子でその場を飛び跳ね、2人は私に急かしました。
すると、レオン様が訝しげに2人をギロリと睨みます。
「いいのかよ」
「神子に危害を加えないと約束できますか」
「うーん……うん! する!」
「わかりました」
「やったぁ!」
「おい」
「大丈夫です。約束を破るようには見えませんし」
「ったく……念のため拘束するぞ」
レオン様が兵士さん達に指示を出し、2人の手を縄でぐるぐる巻きにします。
何だか、彼らは真剣なのですが……こう、犯罪臭がしますね。
「うう、きつい」
「我慢してはくれませんか? 少しだけ」
「わかってるよお姉さん。私達、怪しいもんね」
縄で縛られることに不満は漏らしますが、暴れることはありませんでした。
素直に私についてきてくれます。
「エリクル様とはどんな関係で?」
「今日初めて会った!」
「見たことのないお兄さんね!」
「エリクル様に、辞めるように言えますか?」
「うん、言えるよ。神子が怖くなかったら」
この2人は仮にも王族です。
あちら側についているのなら、無視はできない存在でしょう。
「俺が先に歩く。離れるなよ」
レオン様が冷気を放出させながら、周りの警戒を怠らずに進み始めました。
といっても城内に蔓延っていた魔術人形達の活動が停止したせいで、これといった敵はいませんが。
「敵といえば……女神教の方達はどこにいったんでしょう」
「さぁな。どっかで伸びてんじゃねぇのか」
「そうだといいのですか」
その時、金属が擦れる音が耳に届きました。
レオン様が走り出したのでついていくと、そこにはエリクル様が座り込み、騎士の方がエリクル様の首元に剣を突きつけていました。
「ははっ……さすがこの国一の騎士。強いや」
「切っちゃダメですよ、騎士様」
「ハドル……シャルロッテ様の指示がなければ、殺しているところだ」
どうやら修羅場のようです。
入りづらい雰囲気に迷っていると、2人がエリクル様に駆け寄っていきました。
「「エリクル!」」
「あれ? 姫様達」
「終わり! お終いよ!」
「計画お終い!」
「えぇ?」
困惑して2人を見つめるエリクル様でしたが、私と目があうと「ああ……」と声を漏らしました。
「ラティアンカ嬢か。ある意味一種の才能だね」
「どういうことですか」
「人を絆すのが上手いってこと」
パチーン! と、大きな音を立てて、ロールがエリクル様の手をパーで叩きました。
ポカンとするエリクル様に、ロールは凄む勢いで言います。
「いくらエリクル様でも、ラティ様を侮辱することは許しません」
「侮辱じゃないさ。尊敬だよ」
「嘘をおっしゃらなくても」
私が嘘だと指摘したことに更に驚いたようで、エリクル様は不思議そうに首を傾げます。
「癖ですよ。嘘をつく時の癖」
「アルか。余計なことを言ってくれたもんだ」
「癖を直してから言ってください」
「ぐうの音もでないや」
情けない、といった様子で笑うエリクル様に、ロールはようやく聞きたかったことを口にしました。
「聞かせてください……エリクル様。何で、裏切ったんですか?」
「ーー知りたいのかい」
「凄く」
「本当に?」
咄嗟にエリクル様の瞳が曇りました。
まるで深淵を覗いているような気分になって、その変わりように思わず唾を飲みます。
「何で、ですか」
「……それは」
エリクル様が何かを言いかけた、その時でした。
「動くな!!」
野太い声がつんざいて、振り返ればーーそこには女王様と女神教の人達がいました。
「動けば女王の命はないぞ……!」
喉元に小刀を突きつけ、そう吠える男性。
ぶわりと辺りに殺気が充満しました。
しかし捕らえられているのは女王様。
下手に動くことはできません。
「チッ……我が国の兵は何をやっているのだ!!」
「ラティアンカ様……それに、シャルロッテ。どうか私を見捨ててください」
女王様が縋るように、静かに言いました。
「こうして自害する暇もなく、情けなく捕まったのです」
「だ、ダメです!! 見殺しなんて」
「お願いです」
「喋るな!!」
男性の持つ小刀がブルブルと震え、女王様の柔い肌に傷をつけました。
ツゥ、と鮮血がその首を伝ったのを見て、限界だったのでしょう。
「わかった……!!」
血を吐くように、レオン様が叫びました。
それに顔面を蒼白にさせたのは女王様でした。
「レオン……」
「ごめん、ごめん……!! でも、俺は、クソババァ……母さんが、大事だ…………」
「レオン兄ィ、私もそうする」
降伏を示すように、ロールも両手を上げました。
つられて、兵士さん達も剣を置き、騎士の方も屈辱に顔を歪ませながらも剣を捨てました。
するとどこからか女神教が大勢やってきて、私達を拘束します。
「魔術でも使おうものなら、今度こそ女王の命はない」
「……何が目的だ」
「女神の魂の保管場所を教えてもらおう」
女神の魂。
この国に安置されているという、護られているもの。
それをきっと、ロールに入れるつもりなのでしょう。
「死んでも言えません」
女王様は頑なに口を割ろうとしません。
どうやら知っているのは女王様だけのようです。
痺れを切らしたのか、女神教の方の1人がレオン様の腕を掴みました。
「1人ずつやる。言え」
「……………」
「なら」
「わかりました」
本当に小さな声で、ポツリと女王様はつぶやきました。
うつむいているのでその表情はわかりません。
「城の……地下です」
「案内しろ」
非常にマズいことになりました。
頼れるのはーー現在別行動中のマオ様のみです。
マオ様、どうか気づいてください。
この先の未来を読むため神経を集中させようとしましたが、激しい頭痛がそれを阻みました。
何度も使っている慣れない能力ですので、頭が言うことを聞いてくれません。
「早く……早く、女神様を」
「女神様、ああ、我らの」
血走った目でそう言う女神教の彼らは、取り憑かれた信徒そのものでした。
「うん! 何も!」
「神子を殺してこいって言われただけよ」
この子達は本当に利用されるがままここに来たようです。
兄の内の1人に、エリクル様と一緒に飛ばされてきたのだとか。
「わかりました。ありがとうございます」
「神子のところ、連れてって!」
「行く!」
ぴょんぴょんと興奮した様子でその場を飛び跳ね、2人は私に急かしました。
すると、レオン様が訝しげに2人をギロリと睨みます。
「いいのかよ」
「神子に危害を加えないと約束できますか」
「うーん……うん! する!」
「わかりました」
「やったぁ!」
「おい」
「大丈夫です。約束を破るようには見えませんし」
「ったく……念のため拘束するぞ」
レオン様が兵士さん達に指示を出し、2人の手を縄でぐるぐる巻きにします。
何だか、彼らは真剣なのですが……こう、犯罪臭がしますね。
「うう、きつい」
「我慢してはくれませんか? 少しだけ」
「わかってるよお姉さん。私達、怪しいもんね」
縄で縛られることに不満は漏らしますが、暴れることはありませんでした。
素直に私についてきてくれます。
「エリクル様とはどんな関係で?」
「今日初めて会った!」
「見たことのないお兄さんね!」
「エリクル様に、辞めるように言えますか?」
「うん、言えるよ。神子が怖くなかったら」
この2人は仮にも王族です。
あちら側についているのなら、無視はできない存在でしょう。
「俺が先に歩く。離れるなよ」
レオン様が冷気を放出させながら、周りの警戒を怠らずに進み始めました。
といっても城内に蔓延っていた魔術人形達の活動が停止したせいで、これといった敵はいませんが。
「敵といえば……女神教の方達はどこにいったんでしょう」
「さぁな。どっかで伸びてんじゃねぇのか」
「そうだといいのですか」
その時、金属が擦れる音が耳に届きました。
レオン様が走り出したのでついていくと、そこにはエリクル様が座り込み、騎士の方がエリクル様の首元に剣を突きつけていました。
「ははっ……さすがこの国一の騎士。強いや」
「切っちゃダメですよ、騎士様」
「ハドル……シャルロッテ様の指示がなければ、殺しているところだ」
どうやら修羅場のようです。
入りづらい雰囲気に迷っていると、2人がエリクル様に駆け寄っていきました。
「「エリクル!」」
「あれ? 姫様達」
「終わり! お終いよ!」
「計画お終い!」
「えぇ?」
困惑して2人を見つめるエリクル様でしたが、私と目があうと「ああ……」と声を漏らしました。
「ラティアンカ嬢か。ある意味一種の才能だね」
「どういうことですか」
「人を絆すのが上手いってこと」
パチーン! と、大きな音を立てて、ロールがエリクル様の手をパーで叩きました。
ポカンとするエリクル様に、ロールは凄む勢いで言います。
「いくらエリクル様でも、ラティ様を侮辱することは許しません」
「侮辱じゃないさ。尊敬だよ」
「嘘をおっしゃらなくても」
私が嘘だと指摘したことに更に驚いたようで、エリクル様は不思議そうに首を傾げます。
「癖ですよ。嘘をつく時の癖」
「アルか。余計なことを言ってくれたもんだ」
「癖を直してから言ってください」
「ぐうの音もでないや」
情けない、といった様子で笑うエリクル様に、ロールはようやく聞きたかったことを口にしました。
「聞かせてください……エリクル様。何で、裏切ったんですか?」
「ーー知りたいのかい」
「凄く」
「本当に?」
咄嗟にエリクル様の瞳が曇りました。
まるで深淵を覗いているような気分になって、その変わりように思わず唾を飲みます。
「何で、ですか」
「……それは」
エリクル様が何かを言いかけた、その時でした。
「動くな!!」
野太い声がつんざいて、振り返ればーーそこには女王様と女神教の人達がいました。
「動けば女王の命はないぞ……!」
喉元に小刀を突きつけ、そう吠える男性。
ぶわりと辺りに殺気が充満しました。
しかし捕らえられているのは女王様。
下手に動くことはできません。
「チッ……我が国の兵は何をやっているのだ!!」
「ラティアンカ様……それに、シャルロッテ。どうか私を見捨ててください」
女王様が縋るように、静かに言いました。
「こうして自害する暇もなく、情けなく捕まったのです」
「だ、ダメです!! 見殺しなんて」
「お願いです」
「喋るな!!」
男性の持つ小刀がブルブルと震え、女王様の柔い肌に傷をつけました。
ツゥ、と鮮血がその首を伝ったのを見て、限界だったのでしょう。
「わかった……!!」
血を吐くように、レオン様が叫びました。
それに顔面を蒼白にさせたのは女王様でした。
「レオン……」
「ごめん、ごめん……!! でも、俺は、クソババァ……母さんが、大事だ…………」
「レオン兄ィ、私もそうする」
降伏を示すように、ロールも両手を上げました。
つられて、兵士さん達も剣を置き、騎士の方も屈辱に顔を歪ませながらも剣を捨てました。
するとどこからか女神教が大勢やってきて、私達を拘束します。
「魔術でも使おうものなら、今度こそ女王の命はない」
「……何が目的だ」
「女神の魂の保管場所を教えてもらおう」
女神の魂。
この国に安置されているという、護られているもの。
それをきっと、ロールに入れるつもりなのでしょう。
「死んでも言えません」
女王様は頑なに口を割ろうとしません。
どうやら知っているのは女王様だけのようです。
痺れを切らしたのか、女神教の方の1人がレオン様の腕を掴みました。
「1人ずつやる。言え」
「……………」
「なら」
「わかりました」
本当に小さな声で、ポツリと女王様はつぶやきました。
うつむいているのでその表情はわかりません。
「城の……地下です」
「案内しろ」
非常にマズいことになりました。
頼れるのはーー現在別行動中のマオ様のみです。
マオ様、どうか気づいてください。
この先の未来を読むため神経を集中させようとしましたが、激しい頭痛がそれを阻みました。
何度も使っている慣れない能力ですので、頭が言うことを聞いてくれません。
「早く……早く、女神様を」
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