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思い出すほど。
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ーーお前は我が家には不必要だ。
役に立たない、女。
自然とギリリ、と奥の歯が悲鳴を上げました。
昔、元父から言われた言葉を思い出し、非常に不愉快な気分です。
こうしてロールが拳を振るうのを見ていれば、歯痒さがどうしても湧き出てくるのです。
ロールとエリクル様が会う未来を見て、とめようと走ったのですが間に合いませんでした。
あの子に辛い思いをさせたくはないというのに。
それでもロールは、心配ないと言って笑うのです。
「エリクル様、動かないでください! 私は一発……いえ、気が済むまで殴れたら満足ですので!」
「かなり物騒じゃないかい? それに、そっちの騎士は殴るだけで済ませてくれなさそうだし」
とんでもない殺気を放ち、騎士の方がエリクル様に斬りかかります。
それを風の魔術でいなす姿は、さすがとしか言えないくらいで。
「……」
物語の主人公みたいに、力があればどれだけよかったのでしょうか。
怒り任せに全てを解放して、暴走できてしまえば。
なのに私にあるのは、未来を見るという厄災に近い能力だけ。
「……おい! ラティアンカ! 危ねぇ!」
レオン様の声がして、ハッと我に返りました。
横を見れば魔術師が迫ってきていて、私は動けず呆然とそれを眺めたままでーーパキン、と人形が氷で覆われました。
レオン様の魔術でしょう。
「ったく、気をつけろよ」
「すみません」
「ここを離れるぞ。お前、足手纏い」
「……はい」
「まーまー、ヘコむなって」
バンバンと背中を勢いよく叩かれますが、気持ちは沈んでいます。
どうにかして役に立てないものかと模索していると、ボソリとつぶやかれたレオン様の独り言が耳に入ってきました。
「………人形か? それ」
人形。
先ほど襲ってきたのは魔術師のはず。
慌てて凍っている魔術師を確認すれば、それは精巧に作られた陶器の人形でした。
旦那様がおっしゃっていたことが頭を過ぎります。
「人形、操術」
ロマドにそのような能力を操る、魔術師がいると。
旦那様は予想していました。
その魔術師を叩けば、人形操術は壊れると。
私は目を瞑って、未来を見てみることにしました。
まるで、光の海を進むような感覚の中、探しているものを掴もうと集中していると、一つの未来を見つけました。
「あ……」
2人の少女が、玉座の間で女王様を前に笑っている姿。
女王様は臣下に何かを叫ばれながらも、降伏の意を示しました。
しかしことりとそれに不思議そうに首を傾げ、少女達は人形操術をやめることはありませんでした。
もっと、詳しく探らなければ。
手前の未来を探れば、2人の少女がいたのはロールの部屋でした。
無邪気に神子であるロールの部屋を楽しんでいるように見えます。
「っ」
ここで激しい頭痛が襲い、思わずその場に蹲りました。
この能力は精神に多大な負荷をかけますので、当然の結果でしょう。
「おい!?」
焦ったレオン様の呼び声が聞こえたので、頭痛を無視して言います。
「レオン様、人形操術の使い手を見つけました」
「ほんとか!?」
「はい。ロールの部屋です。そこまで、連れて行ってはくれませんか」
「わかった!」
レオン様が走り出したので、私も立ち上がってそれについていきます。
去り際にチラリと盗み見たロールの顔は、どこか吹っ切れたようにも見えました。
あの子はどこまで強いんでしょう。
辛いだろうに。苦しいだろうに。
私も恋の苦しみは、いっとうわかっているはずなのに。
あの子を送り出してしまった。
「……ごめんね、ロール」
それでも、あなたがやりたいことをやってくれることを願います。
元凶を叩くため、足を止めることはしませんから。
役に立たない、女。
自然とギリリ、と奥の歯が悲鳴を上げました。
昔、元父から言われた言葉を思い出し、非常に不愉快な気分です。
こうしてロールが拳を振るうのを見ていれば、歯痒さがどうしても湧き出てくるのです。
ロールとエリクル様が会う未来を見て、とめようと走ったのですが間に合いませんでした。
あの子に辛い思いをさせたくはないというのに。
それでもロールは、心配ないと言って笑うのです。
「エリクル様、動かないでください! 私は一発……いえ、気が済むまで殴れたら満足ですので!」
「かなり物騒じゃないかい? それに、そっちの騎士は殴るだけで済ませてくれなさそうだし」
とんでもない殺気を放ち、騎士の方がエリクル様に斬りかかります。
それを風の魔術でいなす姿は、さすがとしか言えないくらいで。
「……」
物語の主人公みたいに、力があればどれだけよかったのでしょうか。
怒り任せに全てを解放して、暴走できてしまえば。
なのに私にあるのは、未来を見るという厄災に近い能力だけ。
「……おい! ラティアンカ! 危ねぇ!」
レオン様の声がして、ハッと我に返りました。
横を見れば魔術師が迫ってきていて、私は動けず呆然とそれを眺めたままでーーパキン、と人形が氷で覆われました。
レオン様の魔術でしょう。
「ったく、気をつけろよ」
「すみません」
「ここを離れるぞ。お前、足手纏い」
「……はい」
「まーまー、ヘコむなって」
バンバンと背中を勢いよく叩かれますが、気持ちは沈んでいます。
どうにかして役に立てないものかと模索していると、ボソリとつぶやかれたレオン様の独り言が耳に入ってきました。
「………人形か? それ」
人形。
先ほど襲ってきたのは魔術師のはず。
慌てて凍っている魔術師を確認すれば、それは精巧に作られた陶器の人形でした。
旦那様がおっしゃっていたことが頭を過ぎります。
「人形、操術」
ロマドにそのような能力を操る、魔術師がいると。
旦那様は予想していました。
その魔術師を叩けば、人形操術は壊れると。
私は目を瞑って、未来を見てみることにしました。
まるで、光の海を進むような感覚の中、探しているものを掴もうと集中していると、一つの未来を見つけました。
「あ……」
2人の少女が、玉座の間で女王様を前に笑っている姿。
女王様は臣下に何かを叫ばれながらも、降伏の意を示しました。
しかしことりとそれに不思議そうに首を傾げ、少女達は人形操術をやめることはありませんでした。
もっと、詳しく探らなければ。
手前の未来を探れば、2人の少女がいたのはロールの部屋でした。
無邪気に神子であるロールの部屋を楽しんでいるように見えます。
「っ」
ここで激しい頭痛が襲い、思わずその場に蹲りました。
この能力は精神に多大な負荷をかけますので、当然の結果でしょう。
「おい!?」
焦ったレオン様の呼び声が聞こえたので、頭痛を無視して言います。
「レオン様、人形操術の使い手を見つけました」
「ほんとか!?」
「はい。ロールの部屋です。そこまで、連れて行ってはくれませんか」
「わかった!」
レオン様が走り出したので、私も立ち上がってそれについていきます。
去り際にチラリと盗み見たロールの顔は、どこか吹っ切れたようにも見えました。
あの子はどこまで強いんでしょう。
辛いだろうに。苦しいだろうに。
私も恋の苦しみは、いっとうわかっているはずなのに。
あの子を送り出してしまった。
「……ごめんね、ロール」
それでも、あなたがやりたいことをやってくれることを願います。
元凶を叩くため、足を止めることはしませんから。
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