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シャルロッテの誕生。
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シャルロッテ様が生まれたのは、今から約15年前のことです。
シャルロッテ様は、生まれてすぐに神子と判断されました。
……ああ、神子とはどのようなものか、ですか。
確かにここ、アストロは他の国の神子の意味とは少し異なりますからね。
ここで言う神子は、『女神の体』を持つ者のことです。
意味がわからない? はい、私も最初は半信半疑でした。
女神と勇者の童話はご存知ですよね。
その童話の中の女神と勇者は実在し、現に隣の国であるロマドでは勇者の子孫がおります。
アストロは実は、女神の魂を匿う国です。
女神は本当は、世界を滅ぼそうとなんてしていなかったんです。
勇者と手を取り合い、彼と協力して生きていこうとしたんです。
ですが、人間の悪意により彼女の魂は穢れてしまいました。
そこで女神は魂だけの存在となって、長い眠りにつくことにしたのです。
世界の穢れを一身に引き受け、眠ったのです。
勇者は反対しましたが、彼女は人々に自身が邪悪な存在であることと、それを勇者が倒したことを植え付けました。
まあ、要するに洗脳ですね。
そんな怖い顔なさらないでください。女神だって思うところはあったのでしょう。
しかし彼女は限界だったのです。
そして、生まれたシャルロッテ様には、女神と全く同じ体の機能が備わっていました。
ご神体をそのまま持って生まれたようなものです。
シャルロッテ様はウサギの獣人ですが、力がありますよね? それに、他の神と会話ができる。それはひとえに女神の力そのものなんですよ。
そう、私から言わせてもらうに、恵まれた力を持っていたシャルロッテ様は……少々、性格が曲がってしまわれまして。
神子であるというだけで担ぎ上げられ、邪魔に思われた者から命を狙われる。
そんな生活を続けていましたので、シャルロッテ様は疑心暗鬼になられてしまいました。
ええ、先ほど臣下達は驚いていたでしょう。
貴方様が無事に帰ってこられたこともですが、そのあまりの変わりように目を剥いていました。今思い出しても笑ってしまいますね。
ああ、お察しの通り、私はあの人達のことはあまり好きではありません。
女神教とはご存知ですか? 女神を信仰する宗教のことです。
この世界で女神は悪として扱われているため、大っぴらに信者を名乗ることはあまりしません。
この国だけは別ですので、自分は女神教徒だと喚いていますがね。
その女神教に入信した者達が、シャルロッテ様を祀り上げたんですよ。
女王様はシャルロッテ様のことを可愛がっていましたが、その子供である王子様には凄い嫌われっぷりで……シャルロッテ様と顔を合わせて、喧嘩ばかりなさっていました。
シャルロッテ様がいなくなられたのは四ヶ月前。
世話役であるアンナと城外を歩いていたところです。
魔術師が突如やってきて、魔術でシャルロッテ様達を襲ったーーと聞いております。
獣人は魔術を使えませんので、慣れないものだったのでしょう。
シャルロッテ様は行方不明になり、アンナは強い後悔を抱いておりました。
いえ、シャルロッテ様のせいではありません。
どうか気に病まないでください。
私はこの事件の犯人を、隣の国の者である勇者の子孫関連の者。そして、王子一派の仕業だと考えております。
なぜって? 『女神の体』と全く同じ性能を持つシャルロッテ様が、唯一女神の魂を受け入れることができるからです。
女神が体を取り戻してしまえば、勇者の偽りの栄光が正されてしまうかもしれない。
今の地位が惜しいのでしょうね、子孫達はどうにかしてシャルロッテ様を壊したいみたいです。
バカですよね。悪印象を意図的に抱かせたのは、女神自身であるというのに。
それに王子は自分ではなく、シャルロッテ様が国民に慕われることを面白く思っていませんでした。
シャルロッテ様は目の敵にされていましたからね。
疑いがかけられているのは、その2組です。
それと、これに加えて厄介なのが女神教の一員達です。
シャルロッテ様を女神の入れ物にしようと目論んでいます。
女神と同じ体を持つなら、女神の魂に耐えられるだろうと。
彼らは盲目的に女神を愛しているのです。
ええ、気味が悪いくらいにね。
シャルロッテ様が記憶喪失になられた原因はよくわかりません。
頭を打ったのか、そういった術にかかってしまったのか。
記憶が戻ってきてる? なら、ここにいればきっと思い出すでしょう。
女王様に会ってきてはどうでしょうか。
シャルロッテ様を心配しております。
女王様は、シャルロッテ様をまるで我が子のように愛しておりましたから。
メリアさんの話を一通り聞き終えた後、私達はその女王様へ謁見することになりました。
本来なら現状のこの国の獣人と人間で、かなり冷え切った関係性ですので会える立場ではないのですが、ロールの恩人だということは受け入れられているようです。
私達もぜひ、と勧められました。
女王様が待つ、王位の間へ足を進めます。
「何だか壮大なお伽話を聞いてる気分です」
「やっぱり現実味がない話ですよね」
先ほどメリアさんが語った話を思い出して、ゆっくりと理解しようとします。
ロールも自分のことではなく、他人、もしくはお伽話を聞いている気分のようです。
「いや、現実味はあるよ」
「エリクル様?」
「な?」とエリクル様が、旦那様を小突きました。
旦那様は無反応です。
「だんまりはやめたらどうだ」
「……………」
「加護持ちも多くいる中、世界一の魔術師になれたアルジェルドならわかるだろう。この世界にロールちゃんみたいな存在がいることを」
「え!?」
「ロールみたいに、壮大な話じゃない」
不機嫌そうに口を開いた旦那様でしたが、何か知ってるご様子です。
「わ、私みたいな人達がいるんですか!?」
「………いる」
「そうなんですか!」
「といっても、女神の体を持つなんて、初めて聞いた。俺が知ってるのは、せいぜい神の生まれ変わりと呼ばれる者達だけ」
「そっちのほうが凄くないですか?」
「神が弱体化して、人間に生まれ落ちたんだ。誇れることじゃない」
「弱体化………」
キャパオーバーになったみたいで、ロールからプスプスと煙が上がります。
何だか複雑な話ばかりですので、目眩がしますね。
「ロール。女王様に会えるんですよ」
「でも、どんな方なんでしょう」
「ロールのことを大切にしてくれたと思います」
「神子として?」
「それは会ってみないとわからないですがね」
女王様ですし、神子としてロールを大切にしているのかしら。
それとも、ただの娘として愛しているのかしら。
うんうんと悩んでいる間に、もう謁見の間の目の前へときていました。
シャルロッテ様は、生まれてすぐに神子と判断されました。
……ああ、神子とはどのようなものか、ですか。
確かにここ、アストロは他の国の神子の意味とは少し異なりますからね。
ここで言う神子は、『女神の体』を持つ者のことです。
意味がわからない? はい、私も最初は半信半疑でした。
女神と勇者の童話はご存知ですよね。
その童話の中の女神と勇者は実在し、現に隣の国であるロマドでは勇者の子孫がおります。
アストロは実は、女神の魂を匿う国です。
女神は本当は、世界を滅ぼそうとなんてしていなかったんです。
勇者と手を取り合い、彼と協力して生きていこうとしたんです。
ですが、人間の悪意により彼女の魂は穢れてしまいました。
そこで女神は魂だけの存在となって、長い眠りにつくことにしたのです。
世界の穢れを一身に引き受け、眠ったのです。
勇者は反対しましたが、彼女は人々に自身が邪悪な存在であることと、それを勇者が倒したことを植え付けました。
まあ、要するに洗脳ですね。
そんな怖い顔なさらないでください。女神だって思うところはあったのでしょう。
しかし彼女は限界だったのです。
そして、生まれたシャルロッテ様には、女神と全く同じ体の機能が備わっていました。
ご神体をそのまま持って生まれたようなものです。
シャルロッテ様はウサギの獣人ですが、力がありますよね? それに、他の神と会話ができる。それはひとえに女神の力そのものなんですよ。
そう、私から言わせてもらうに、恵まれた力を持っていたシャルロッテ様は……少々、性格が曲がってしまわれまして。
神子であるというだけで担ぎ上げられ、邪魔に思われた者から命を狙われる。
そんな生活を続けていましたので、シャルロッテ様は疑心暗鬼になられてしまいました。
ええ、先ほど臣下達は驚いていたでしょう。
貴方様が無事に帰ってこられたこともですが、そのあまりの変わりように目を剥いていました。今思い出しても笑ってしまいますね。
ああ、お察しの通り、私はあの人達のことはあまり好きではありません。
女神教とはご存知ですか? 女神を信仰する宗教のことです。
この世界で女神は悪として扱われているため、大っぴらに信者を名乗ることはあまりしません。
この国だけは別ですので、自分は女神教徒だと喚いていますがね。
その女神教に入信した者達が、シャルロッテ様を祀り上げたんですよ。
女王様はシャルロッテ様のことを可愛がっていましたが、その子供である王子様には凄い嫌われっぷりで……シャルロッテ様と顔を合わせて、喧嘩ばかりなさっていました。
シャルロッテ様がいなくなられたのは四ヶ月前。
世話役であるアンナと城外を歩いていたところです。
魔術師が突如やってきて、魔術でシャルロッテ様達を襲ったーーと聞いております。
獣人は魔術を使えませんので、慣れないものだったのでしょう。
シャルロッテ様は行方不明になり、アンナは強い後悔を抱いておりました。
いえ、シャルロッテ様のせいではありません。
どうか気に病まないでください。
私はこの事件の犯人を、隣の国の者である勇者の子孫関連の者。そして、王子一派の仕業だと考えております。
なぜって? 『女神の体』と全く同じ性能を持つシャルロッテ様が、唯一女神の魂を受け入れることができるからです。
女神が体を取り戻してしまえば、勇者の偽りの栄光が正されてしまうかもしれない。
今の地位が惜しいのでしょうね、子孫達はどうにかしてシャルロッテ様を壊したいみたいです。
バカですよね。悪印象を意図的に抱かせたのは、女神自身であるというのに。
それに王子は自分ではなく、シャルロッテ様が国民に慕われることを面白く思っていませんでした。
シャルロッテ様は目の敵にされていましたからね。
疑いがかけられているのは、その2組です。
それと、これに加えて厄介なのが女神教の一員達です。
シャルロッテ様を女神の入れ物にしようと目論んでいます。
女神と同じ体を持つなら、女神の魂に耐えられるだろうと。
彼らは盲目的に女神を愛しているのです。
ええ、気味が悪いくらいにね。
シャルロッテ様が記憶喪失になられた原因はよくわかりません。
頭を打ったのか、そういった術にかかってしまったのか。
記憶が戻ってきてる? なら、ここにいればきっと思い出すでしょう。
女王様に会ってきてはどうでしょうか。
シャルロッテ様を心配しております。
女王様は、シャルロッテ様をまるで我が子のように愛しておりましたから。
メリアさんの話を一通り聞き終えた後、私達はその女王様へ謁見することになりました。
本来なら現状のこの国の獣人と人間で、かなり冷え切った関係性ですので会える立場ではないのですが、ロールの恩人だということは受け入れられているようです。
私達もぜひ、と勧められました。
女王様が待つ、王位の間へ足を進めます。
「何だか壮大なお伽話を聞いてる気分です」
「やっぱり現実味がない話ですよね」
先ほどメリアさんが語った話を思い出して、ゆっくりと理解しようとします。
ロールも自分のことではなく、他人、もしくはお伽話を聞いている気分のようです。
「いや、現実味はあるよ」
「エリクル様?」
「な?」とエリクル様が、旦那様を小突きました。
旦那様は無反応です。
「だんまりはやめたらどうだ」
「……………」
「加護持ちも多くいる中、世界一の魔術師になれたアルジェルドならわかるだろう。この世界にロールちゃんみたいな存在がいることを」
「え!?」
「ロールみたいに、壮大な話じゃない」
不機嫌そうに口を開いた旦那様でしたが、何か知ってるご様子です。
「わ、私みたいな人達がいるんですか!?」
「………いる」
「そうなんですか!」
「といっても、女神の体を持つなんて、初めて聞いた。俺が知ってるのは、せいぜい神の生まれ変わりと呼ばれる者達だけ」
「そっちのほうが凄くないですか?」
「神が弱体化して、人間に生まれ落ちたんだ。誇れることじゃない」
「弱体化………」
キャパオーバーになったみたいで、ロールからプスプスと煙が上がります。
何だか複雑な話ばかりですので、目眩がしますね。
「ロール。女王様に会えるんですよ」
「でも、どんな方なんでしょう」
「ロールのことを大切にしてくれたと思います」
「神子として?」
「それは会ってみないとわからないですがね」
女王様ですし、神子としてロールを大切にしているのかしら。
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