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マズいのでは?
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それからしばらく経って、ロマドへ到着しました。
あれからエリクル様は何事もなかったように過ごしておりまして、ロールも気にしていない様子を取り繕っておりました。
こちらから見ればそのちぐはぐ感は否めないものなのですが、険悪になっていいことなどありません。
ロールは幸い、自衛ができるほどの実力があります。
私とロールで目を光らせながらエリクル様を見張っておりましたが、彼は何一つ怪しいことはしませんでした。
そして、ついたロマドなのですが。
「これは、ちょっとあれだね」
風魔から見える光景を見下ろして、エリクル様はやりづらそうな顔をします。
何やら揉めていると思って見てみれば、獣人の方と入国の係の人が言い争っていました。
「何で入れないんだ!」
「申し訳ありませんが、しばらくは獣人の方はご遠慮いただいております」
「そんな!」
そんな会話が、獣人の方の悲痛な叫びと共に聞こえてきます。
「ロール……」
このままでは、ロールが入れません。
困りましたね。
すると、旦那様がロールに向かって指を振りました。
「え?」
「これでいい」
気づけば、ロールの見た目は人間の少女へと変わっていました。
驚いて自分の頭を触り、ウサギの耳がないことに気づいて涙目となります。
「あ、アルジェルド様……!? わ、私の耳は!?」
「安心しろ」
「何がですか!?」
「それ、変身魔術ですね」
「へ? 変身魔術?」
書物で見たことがあります。
変身魔術とは、幻術をレベルアップさせた、姿を変える魔術です。
それは使われた本人ですら、自らの姿が変わったと錯覚するほど。
時間が経てば戻る魔術ですから、心配はいらないでしょう。
「大丈夫ですよ。旦那様は、ロールが入れるように魔術をかけただけです。時期に、元に戻ります」
「戻るんですね! よかったぁ……」
ほっと胸を撫で下ろすロールを見てわかる通り、獣人の方は自分の耳や尻尾を誇りに思っています。
本能とも取れるような自身の象徴ですので、誰かに害されなくなったとすれば、その相手を地獄まで追いかけると言われています。
消されれば泣き喚くだけではすまないでしょう。
「どうして……ロマドとアストロは、仲が良かったのに……」
絶望するようにポツリと自分の口から出た言葉に、ロールは目を見開いて口に手をやりました。
「わ、私、なにを」
「どうやら戻ってきてるみたいだね」
ロールちゃんの記憶が。
そう言うエリクル様の顔は、後ろからでは見えませんでした。
風魔を降り、受付へと向かいます。
「お客様の方に、獣人の方はいらっしゃいませんね」
「なにをそんなにピリピリしてるんだい?」
「知らないんですか」
受付の人がキョロキョロと辺りを見渡すと、こっそりと声を潜めて教えてくれました。
「アストロとロマドが今、一触即発状態なんですよ。喧嘩っていえばわかりやすいですけど、そんな生やさしいものじゃありません」
「そんな……!」
ロールが絶句するのを見て不審に思われたのか、受付の人はロールを上から下へ見ました。
しかし怪しい点が見当たらなかったのでそのまま続けます。
「アストロの国民が入って暴れられたらしょうがないんでね、今は獣人の方をお断りしてるんです」
「………」
やはり、思うところがあるんでしょう。
ロールの顔色は悪くなっていきます。
「ラティ様……」
「ロール。しっかりしてください。アストロに行けば、きっとわかります」
「は、はい」
その様子は、ロールを護衛として雇った当初を想起させます。
しかし、次には毅然としてロマドへの入り口を睨みました。
「記憶、取り戻します。そうしないと、いけない気がします」
「……そう」
「………」
私達を無言で見つめるエリクル様。
そのエリクル様に旦那様が注意を向けていたことに、私達は気付きませんでした。
あれからエリクル様は何事もなかったように過ごしておりまして、ロールも気にしていない様子を取り繕っておりました。
こちらから見ればそのちぐはぐ感は否めないものなのですが、険悪になっていいことなどありません。
ロールは幸い、自衛ができるほどの実力があります。
私とロールで目を光らせながらエリクル様を見張っておりましたが、彼は何一つ怪しいことはしませんでした。
そして、ついたロマドなのですが。
「これは、ちょっとあれだね」
風魔から見える光景を見下ろして、エリクル様はやりづらそうな顔をします。
何やら揉めていると思って見てみれば、獣人の方と入国の係の人が言い争っていました。
「何で入れないんだ!」
「申し訳ありませんが、しばらくは獣人の方はご遠慮いただいております」
「そんな!」
そんな会話が、獣人の方の悲痛な叫びと共に聞こえてきます。
「ロール……」
このままでは、ロールが入れません。
困りましたね。
すると、旦那様がロールに向かって指を振りました。
「え?」
「これでいい」
気づけば、ロールの見た目は人間の少女へと変わっていました。
驚いて自分の頭を触り、ウサギの耳がないことに気づいて涙目となります。
「あ、アルジェルド様……!? わ、私の耳は!?」
「安心しろ」
「何がですか!?」
「それ、変身魔術ですね」
「へ? 変身魔術?」
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それは使われた本人ですら、自らの姿が変わったと錯覚するほど。
時間が経てば戻る魔術ですから、心配はいらないでしょう。
「大丈夫ですよ。旦那様は、ロールが入れるように魔術をかけただけです。時期に、元に戻ります」
「戻るんですね! よかったぁ……」
ほっと胸を撫で下ろすロールを見てわかる通り、獣人の方は自分の耳や尻尾を誇りに思っています。
本能とも取れるような自身の象徴ですので、誰かに害されなくなったとすれば、その相手を地獄まで追いかけると言われています。
消されれば泣き喚くだけではすまないでしょう。
「どうして……ロマドとアストロは、仲が良かったのに……」
絶望するようにポツリと自分の口から出た言葉に、ロールは目を見開いて口に手をやりました。
「わ、私、なにを」
「どうやら戻ってきてるみたいだね」
ロールちゃんの記憶が。
そう言うエリクル様の顔は、後ろからでは見えませんでした。
風魔を降り、受付へと向かいます。
「お客様の方に、獣人の方はいらっしゃいませんね」
「なにをそんなにピリピリしてるんだい?」
「知らないんですか」
受付の人がキョロキョロと辺りを見渡すと、こっそりと声を潜めて教えてくれました。
「アストロとロマドが今、一触即発状態なんですよ。喧嘩っていえばわかりやすいですけど、そんな生やさしいものじゃありません」
「そんな……!」
ロールが絶句するのを見て不審に思われたのか、受付の人はロールを上から下へ見ました。
しかし怪しい点が見当たらなかったのでそのまま続けます。
「アストロの国民が入って暴れられたらしょうがないんでね、今は獣人の方をお断りしてるんです」
「………」
やはり、思うところがあるんでしょう。
ロールの顔色は悪くなっていきます。
「ラティ様……」
「ロール。しっかりしてください。アストロに行けば、きっとわかります」
「は、はい」
その様子は、ロールを護衛として雇った当初を想起させます。
しかし、次には毅然としてロマドへの入り口を睨みました。
「記憶、取り戻します。そうしないと、いけない気がします」
「……そう」
「………」
私達を無言で見つめるエリクル様。
そのエリクル様に旦那様が注意を向けていたことに、私達は気付きませんでした。
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