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ロールside
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「ちょっと待って、やっぱり僕がついていったほうが……」
「私一人で十分です。エリクル様は、ラティ様を守ってください」
ついていこうと言ってくれたエリクル様の言葉を断り、私一人でそのまま向かった。
王子様とのデートの時はどうやら隠れて護衛が見ていたらしいが、今回ばかりはラティ様が一人になってしまう。
ラティ様が心配だし、おまけに今の状態でエリクル様と二人きりになったら集中できないだろうなって思う。
「そう?」と言って引いてくれたので、てこずることはなかった。
「ここが食材……龍の蜜と呼ばれる果実がなる木のある谷であります」
「………」
係の人が指差す先ーー相当遠くに、果実、龍の蜜がなっている。
ここから先は、油断をすれば谷底に真っ逆さまだろう。
「あの。どうか、お気をつけて」
「……大丈夫ですよ。このくらいの谷、どうってことないですから」
心配して損した。
だって、このくらいの谷なんて、ビアンカの花を取りに行った崖より断然安全だもの。
グッと足に力を込めて、地面を蹴った。
「あっ!」
後ろで係の人が声を上げたけど、気にしている余裕はない。
そのまま全速力で駆け、足場を蹴りながらその木のなる上の部分へと降り立つ。
「つきました! 取りますね!」
「………」
ポカン、と口を開けて、係の人が凝視してくる。
獣人の身体能力をナメてもらっちゃ困る。
そのまま果実をむしれば、木がポゥと光って、足場が崩れた。
慌てて壁を蹴って係の人の元まで戻れば、係の人は何も言えないまま呆然と私を見ていた。
「あの?」
「……っ、すみません。とんでもなく重要なことを言い忘れてっ」
「木が光ること?」
「それもそうなんですが……果実をむしれば、木がそのまま根を張る地面と共に劣化するんです。だから足場である地面も崩れました。言わずに本当に申し訳ありません」
「まあ、いいですけど……全部終わりましたし」
反応を見る限り、わざとじゃないだろうけど……そんなに珍しいことだったんだろうか。
「獣人を見るのは初めてで?」
「い、いえ。我が国は、獣人の国アストロと関係の深い国です。貴方様の能力が他の獣人よりも圧倒的に優れていたので……驚いてしまいました」
「? まあ確かに、身体能力はあるほうですけれど、そこまでですか?」
「はい。とても、素晴らしいです」
そこまでベタ褒めされれば悪い気はしないけど、変な感覚がついてくる。
私、そんなに優秀じゃないと思うんだけど。
「次、お願いします」
「まだあるんですか……あ、いや、いいんですよ」
係の人がとても申し訳なさそうな顔をしたので、首を横に振ってみせる。
少し長引きそうだな。
ラティ様、何してるのかしら。
◆ ◆ ◆
ラティアンカside
「ヒイロへようこそ! 私達はあなた方を歓迎いたします!」
ロールと離れてから、私達はまず高級そうな宿へと案内されました。
まるで貴族の方が使うような宿に、歓迎してくださっていることが本当に伝わってきます。
「ところで、これからのご予定はお決まりでしょうか」
「ああ、風魔の整備をしてもらいたいね」
「了解しました! 風魔の整備場へ案内しますね!」
宿に荷物を置いて、続けて整備場へ向かいます。
「職人さーん!」
「ああ、いらっしゃい!」
「!!」
そこでとても驚きました。
エリクル様も大きく目を開いています。
だって、整備員として出てきたのは。
「お客さんかい? アタシに任せな!」
女の人だったんですから。
「私一人で十分です。エリクル様は、ラティ様を守ってください」
ついていこうと言ってくれたエリクル様の言葉を断り、私一人でそのまま向かった。
王子様とのデートの時はどうやら隠れて護衛が見ていたらしいが、今回ばかりはラティ様が一人になってしまう。
ラティ様が心配だし、おまけに今の状態でエリクル様と二人きりになったら集中できないだろうなって思う。
「そう?」と言って引いてくれたので、てこずることはなかった。
「ここが食材……龍の蜜と呼ばれる果実がなる木のある谷であります」
「………」
係の人が指差す先ーー相当遠くに、果実、龍の蜜がなっている。
ここから先は、油断をすれば谷底に真っ逆さまだろう。
「あの。どうか、お気をつけて」
「……大丈夫ですよ。このくらいの谷、どうってことないですから」
心配して損した。
だって、このくらいの谷なんて、ビアンカの花を取りに行った崖より断然安全だもの。
グッと足に力を込めて、地面を蹴った。
「あっ!」
後ろで係の人が声を上げたけど、気にしている余裕はない。
そのまま全速力で駆け、足場を蹴りながらその木のなる上の部分へと降り立つ。
「つきました! 取りますね!」
「………」
ポカン、と口を開けて、係の人が凝視してくる。
獣人の身体能力をナメてもらっちゃ困る。
そのまま果実をむしれば、木がポゥと光って、足場が崩れた。
慌てて壁を蹴って係の人の元まで戻れば、係の人は何も言えないまま呆然と私を見ていた。
「あの?」
「……っ、すみません。とんでもなく重要なことを言い忘れてっ」
「木が光ること?」
「それもそうなんですが……果実をむしれば、木がそのまま根を張る地面と共に劣化するんです。だから足場である地面も崩れました。言わずに本当に申し訳ありません」
「まあ、いいですけど……全部終わりましたし」
反応を見る限り、わざとじゃないだろうけど……そんなに珍しいことだったんだろうか。
「獣人を見るのは初めてで?」
「い、いえ。我が国は、獣人の国アストロと関係の深い国です。貴方様の能力が他の獣人よりも圧倒的に優れていたので……驚いてしまいました」
「? まあ確かに、身体能力はあるほうですけれど、そこまでですか?」
「はい。とても、素晴らしいです」
そこまでベタ褒めされれば悪い気はしないけど、変な感覚がついてくる。
私、そんなに優秀じゃないと思うんだけど。
「次、お願いします」
「まだあるんですか……あ、いや、いいんですよ」
係の人がとても申し訳なさそうな顔をしたので、首を横に振ってみせる。
少し長引きそうだな。
ラティ様、何してるのかしら。
◆ ◆ ◆
ラティアンカside
「ヒイロへようこそ! 私達はあなた方を歓迎いたします!」
ロールと離れてから、私達はまず高級そうな宿へと案内されました。
まるで貴族の方が使うような宿に、歓迎してくださっていることが本当に伝わってきます。
「ところで、これからのご予定はお決まりでしょうか」
「ああ、風魔の整備をしてもらいたいね」
「了解しました! 風魔の整備場へ案内しますね!」
宿に荷物を置いて、続けて整備場へ向かいます。
「職人さーん!」
「ああ、いらっしゃい!」
「!!」
そこでとても驚きました。
エリクル様も大きく目を開いています。
だって、整備員として出てきたのは。
「お客さんかい? アタシに任せな!」
女の人だったんですから。
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