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アルジェルドside
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「もし、そこのお人。ここらで薄い茶髪に、空色の瞳をした女性を見なかったか」
白龍が通りがかりの女性に素晴らしい笑顔を見せる。
後ろに美しい花が飛んでいるように見えるし、女性は男性に優しくされることは少ない。
普通は人の特徴を述べれば多少なりとも怪しまれるものだが、ポッと顔を赤らめ、女性はサラリと教えてくれた。
「た、確か二日前に一瞬だけ……」
「誰かと一緒にいました?」
「は、はい。金髪の方と一緒にいました。茶髪も金髪もこの国じゃ珍しいし、二人ともとっても綺麗だったので、よく覚えています」
金髪。
また新しいのが出てきた。
一人でげんなりしていると、女性が俺に構わず続ける。
「どこに行ったかわかる?」
「す、すみません。そこまでは……」
「そう。ありがとう」
ヒラリと女性に手を振れば、女性はチラリチラリと白龍を見ながら去って行った。
「……すごいな」
「お主はあまりに話が下手すぎる。お主くらいの顔なら、人族の女などすぐになびくというのに」
「なびかない」
「ああ、そうだったな。好きな女一人ですら捕まえていられないヘタレだったな」
白龍の嫌味のような小言も、今は甘んじて受け入れる。
白龍に頼っているという現状は覆せない。
それから白龍は、俺を連れて何人もの人に聞き込みをした。
ほとんどの人間が白龍のその容姿に見惚れ、何も考えずに覚えていることを全て話した。
俺は一度白龍と同じようにやってみようと試みたが、会話を試みて数秒後、凄く嫌そうな顔をされて去られた。
「顔がよかったのに、あれじゃムリ」という声が聞こえてきたので、やっぱり俺はダメらしい。
それを白龍に伝えれば、腹を抱えて白龍は笑う。
「お主、やっぱり人間やめたほうが良いと思うぞ。唯一の障害が人間との会話だなんて」
「うるさい」
白龍の言葉を遮るような形でそう言えば、ふと白龍が足を止める。
そしてゆっくりと、とある店へと目を向けた。
「……ここから乙女の気配がする」
「なに?」
「いや、正しくは残り香……?」
白龍が足を止めたのは、風魔の整備屋だった。
盲点だった。
風魔の整備屋に寄るのは当たり前だろう。
俺は本当にバカなのか。
もう自分に嫌気が差しながらも店に入れば、整備士達が一斉にこちらを向いた。
「風魔の整備ですか?」
「……いや。ここに薄い茶髪に空色の瞳の女性は見なかったか」
白龍が同じように繰り返せば、整備士達は「ああ」と声を上げる。
「来ましたよ。大分前ですけど」
「本当か!!」
白龍ではなく俺が声を張り上げたせいか、整備士達は目を丸くした。
「あ、ああ。来た。彼女は確か、領主様と一緒にここを去ったよ」
「領主だと?」
一体どういう繋がりだ。
領主だろうが貴族だろうが、俺のラティアンカを連れていかれては困るというのに。
今すぐその領主とやらの屋敷に突撃して、まずは締め上げーー
「おい」
ゴン、と白龍が俺の頭を握り拳で叩く。
どういうことだと振り返れば、白龍は俺が口に出そうとしていたことをツラツラと返した。
「締め上げるだのどつくだと、お主はどこぞの悪党だ」
「………」
「お主の言いたいことなど、顔を見ればわかるわ」
何度目かわからない白龍のため息。
そんな様子の俺達を見て怪しく思ったのか、整備士達は後ずさる。
「おい」
「な、何でっせぇ。不当な目的の輩には情報はやれんぞ?」
「ほら」
ぽーい、と雑に白龍が金を整備士に投げる。
それを俊速で受け取り、いくらかを数えて整備士は鼻で笑った。
「10ゴルツとは、しけてるな」
「む? 足りぬか。なら15はどうだ」
「それを超えて18」
「よかろう」
勝手に旅資金をポンポンやる白龍に、「何やってる」と声をかければ、俺の方には見向きもせずに答えた。
「出し惜しみしている場合か。こいつらだって、領主様大事さにこんなことを言ったのではない。こいつらにはこいつらの生活があるんだ」
「わかってる」
「それに、18などお主にとってはした金だろう」
……事実だ。
俺は素直に引っ込んでいることにした。
「いいでしょう。教えます。領主様と旅仲間とあろう人達は、屋敷に向かわれましたよ。どうやら第二王子様の縁談があったのにもかかわらず逃げ出した娘がいたらしい。それの代わりが、そのお嬢さんだったみたいです」
「代わり、だと?」
そんなよくもわからない娘などの代わりに、ラティアンカを据えたのか。
俺のラティアンカを。
「このことは他言無用とか言われてるから、俺達が言ったとかいうなよ。俺達が殺されるからな」
「ムサい男の死体がいくつ転がろうが構わぬが……黙っておいてやろう」
どうしてやろうか。
とりあえず燃やしてやればいいのだろうか。
いや、燃やすだけでは足りない。
まずはーー
「ほら、行くぞ。なーにをブツブツ言っておるんだ」
白龍が通りがかりの女性に素晴らしい笑顔を見せる。
後ろに美しい花が飛んでいるように見えるし、女性は男性に優しくされることは少ない。
普通は人の特徴を述べれば多少なりとも怪しまれるものだが、ポッと顔を赤らめ、女性はサラリと教えてくれた。
「た、確か二日前に一瞬だけ……」
「誰かと一緒にいました?」
「は、はい。金髪の方と一緒にいました。茶髪も金髪もこの国じゃ珍しいし、二人ともとっても綺麗だったので、よく覚えています」
金髪。
また新しいのが出てきた。
一人でげんなりしていると、女性が俺に構わず続ける。
「どこに行ったかわかる?」
「す、すみません。そこまでは……」
「そう。ありがとう」
ヒラリと女性に手を振れば、女性はチラリチラリと白龍を見ながら去って行った。
「……すごいな」
「お主はあまりに話が下手すぎる。お主くらいの顔なら、人族の女などすぐになびくというのに」
「なびかない」
「ああ、そうだったな。好きな女一人ですら捕まえていられないヘタレだったな」
白龍の嫌味のような小言も、今は甘んじて受け入れる。
白龍に頼っているという現状は覆せない。
それから白龍は、俺を連れて何人もの人に聞き込みをした。
ほとんどの人間が白龍のその容姿に見惚れ、何も考えずに覚えていることを全て話した。
俺は一度白龍と同じようにやってみようと試みたが、会話を試みて数秒後、凄く嫌そうな顔をされて去られた。
「顔がよかったのに、あれじゃムリ」という声が聞こえてきたので、やっぱり俺はダメらしい。
それを白龍に伝えれば、腹を抱えて白龍は笑う。
「お主、やっぱり人間やめたほうが良いと思うぞ。唯一の障害が人間との会話だなんて」
「うるさい」
白龍の言葉を遮るような形でそう言えば、ふと白龍が足を止める。
そしてゆっくりと、とある店へと目を向けた。
「……ここから乙女の気配がする」
「なに?」
「いや、正しくは残り香……?」
白龍が足を止めたのは、風魔の整備屋だった。
盲点だった。
風魔の整備屋に寄るのは当たり前だろう。
俺は本当にバカなのか。
もう自分に嫌気が差しながらも店に入れば、整備士達が一斉にこちらを向いた。
「風魔の整備ですか?」
「……いや。ここに薄い茶髪に空色の瞳の女性は見なかったか」
白龍が同じように繰り返せば、整備士達は「ああ」と声を上げる。
「来ましたよ。大分前ですけど」
「本当か!!」
白龍ではなく俺が声を張り上げたせいか、整備士達は目を丸くした。
「あ、ああ。来た。彼女は確か、領主様と一緒にここを去ったよ」
「領主だと?」
一体どういう繋がりだ。
領主だろうが貴族だろうが、俺のラティアンカを連れていかれては困るというのに。
今すぐその領主とやらの屋敷に突撃して、まずは締め上げーー
「おい」
ゴン、と白龍が俺の頭を握り拳で叩く。
どういうことだと振り返れば、白龍は俺が口に出そうとしていたことをツラツラと返した。
「締め上げるだのどつくだと、お主はどこぞの悪党だ」
「………」
「お主の言いたいことなど、顔を見ればわかるわ」
何度目かわからない白龍のため息。
そんな様子の俺達を見て怪しく思ったのか、整備士達は後ずさる。
「おい」
「な、何でっせぇ。不当な目的の輩には情報はやれんぞ?」
「ほら」
ぽーい、と雑に白龍が金を整備士に投げる。
それを俊速で受け取り、いくらかを数えて整備士は鼻で笑った。
「10ゴルツとは、しけてるな」
「む? 足りぬか。なら15はどうだ」
「それを超えて18」
「よかろう」
勝手に旅資金をポンポンやる白龍に、「何やってる」と声をかければ、俺の方には見向きもせずに答えた。
「出し惜しみしている場合か。こいつらだって、領主様大事さにこんなことを言ったのではない。こいつらにはこいつらの生活があるんだ」
「わかってる」
「それに、18などお主にとってはした金だろう」
……事実だ。
俺は素直に引っ込んでいることにした。
「いいでしょう。教えます。領主様と旅仲間とあろう人達は、屋敷に向かわれましたよ。どうやら第二王子様の縁談があったのにもかかわらず逃げ出した娘がいたらしい。それの代わりが、そのお嬢さんだったみたいです」
「代わり、だと?」
そんなよくもわからない娘などの代わりに、ラティアンカを据えたのか。
俺のラティアンカを。
「このことは他言無用とか言われてるから、俺達が言ったとかいうなよ。俺達が殺されるからな」
「ムサい男の死体がいくつ転がろうが構わぬが……黙っておいてやろう」
どうしてやろうか。
とりあえず燃やしてやればいいのだろうか。
いや、燃やすだけでは足りない。
まずはーー
「ほら、行くぞ。なーにをブツブツ言っておるんだ」
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