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欺いてみせます……?
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魔術師と貴族の地位は、ほぼ同等と言えます。
ひょっとすると、魔術師の方が高い場合もあります。
なぜなら魔術師は王家に優遇され、貴族も迂闊に手を出そうものなら火傷ではすまないからです。
私達はエリクル様がいらっしゃったので、領主様とまともに口をきくことができました。
エリクル様がいらっしゃられなかったら、無理やり命じられても厄介事を避けるために従うしかなかったでしょう。
幸か不幸か、魔石を譲っていただけることになったので、現在私はさらにお嬢様に容姿を近づけるよう、化粧をしている真っ最中です。
「動かないでください、お嬢様」
「もう少しでできますから」
私のドレスアップをしてくださるメイドさん達が、私のことを「お嬢様」と呼んできますが、もちろん彼女達も私がお嬢様でないことぐらいは理解しております。
咄嗟にボロがでないよう、事前に呼んでおられるだけです。
こうして一時間くらい彼女達の言う通りにしていれば、鏡の前には立派なお嬢様が立っていました。
「お似合いです、お嬢様」
「……これが私なのでしょうか」
「とっても綺麗ですよ」
この国風の化粧なのでしょうか。
少し濃いめな気がしますが、これはこれで凛とした雰囲気が出るのでいいですね。
随分と変わった自分をじっと見つめていれば、メイドさん達が急かしてきます。
「さあ、お約束の時間でございます」
「領主様と、王子様がお待ちです」
彼女達に促されるままに向かえば、豪勢な部屋へ案内されました。
そこの扉を開くと、領主様が緊張した顔を私へ向けてきます。
「おお、ユリア。準備が整ったかい?」
「……はい、お父様」
黙っているだけとは言いましたが、さすがにずっと口をつぐめば不自然でしょう。
返事をすれば、王子様が私に微笑んでくれました。
「ユリア嬢。改めてご挨拶をさせてもらおう。私はこの国の第二王子の、ルシフェルという者だ」
「……ユリアです」
ちなみに下の名前は知りません。
こういう時はフルネームを名乗るのでしょうけど、王子様が上の名前だけ名乗られたので一安心です。
自分だけ簡略化された返事ですと、失礼に当たりますからね。
「ではユリア、こっちにーー」
「ゴッドル殿」
王子様が、領主様の言葉を阻むような形で名前を呼びます。
下の名前はゴッドルといったのですね。
呑気にそんなことを考えていると、王子様はとんでもないことを言い出しました。
「彼女と二人きりにさせてくれないか? ぜひ話がしたいんだ」
「……二人きり、ですか」
領主様のお顔が真っ青です。
ついでに言えば、私も大変焦っています。
二人きりにされれば、絶対にバレてしまうでしょうから。
「し、しかし。娘はあらかじめ伝えていたように、病弱でして……」
「その病弱が治ったと聞いたから今回の縁談が発生したのではないか」
「………」
「私は、彼女と話がしたいんだ」
ニコリと、黒い笑みで王子様が笑ってみせます。
まさか、行ってしまわれるのですか?
私を置いて?
「……承知しました」
嘘でしょう!?
非難するように領主様を見つめれば、彼も縋るような目で見返してきます。
彼も彼で、王族には逆らえません。
無情にも扉はパタンと閉まり、私と王子様の二人きりとなってしまいました。
「さて。久しぶりだな、ユリア嬢」
王子様とユリア様はもうお会いになっていたのでしょうか。
とにかく、ここは話を合わせるしかありません。
「お、お久しぶりです」
「もう三年ぶりだろうか? 随分長い間見なかったが、とても美しくなられた」
「光栄です」
王子様、私はユリア様ではありませんのよ。
心の中で訴えますが、このことがバレてはいけません。
不自然のないよう、会話を繋げていきます。
「領民達の様子はどうだ?」
「皆、活気の溢れる領民達です。彼らのお陰で、私達は生きていけるといっても過言ではないでしょう」
「そうか。君は昔から領民を愛していたね」
「彼らは家族も同然ですから」
考えてもいないことをスラスラと言えば、王子様はフッと愉快げに口元を緩めます。
「で……いつまで演技を続けるんだい?」
「ーーーーー」
………大変です。
そもそも、バレないわけないですよね。
二人きりにされた時点で、もうアウトだったと考えてもいいでしょう。
無駄な抵抗とわかりつつも、適当にシラを切ります。
「な、何のことでしょうか」
「ユリア嬢は領民を好いてなどいない。彼らが無能だから、自分が好きな物を買えないという発言をしたらしいぞ。父に似ず、傲慢な娘だ」
「………」
「それにユリア嬢と私は会ったことがない」
どうしましょう。
顔を青くする私に、王子様が更に詰め寄ってきます。
「本来ならゴッドル殿に重い罰を受けてもらうところだが……それも許そう。君と言う存在に出会えたのだから」
……流れが変わった気がします。
王子様は私の手を掴むと、真剣な瞳で告げました。
「私と結婚してくれ」
……どういうことですか。
ひょっとすると、魔術師の方が高い場合もあります。
なぜなら魔術師は王家に優遇され、貴族も迂闊に手を出そうものなら火傷ではすまないからです。
私達はエリクル様がいらっしゃったので、領主様とまともに口をきくことができました。
エリクル様がいらっしゃられなかったら、無理やり命じられても厄介事を避けるために従うしかなかったでしょう。
幸か不幸か、魔石を譲っていただけることになったので、現在私はさらにお嬢様に容姿を近づけるよう、化粧をしている真っ最中です。
「動かないでください、お嬢様」
「もう少しでできますから」
私のドレスアップをしてくださるメイドさん達が、私のことを「お嬢様」と呼んできますが、もちろん彼女達も私がお嬢様でないことぐらいは理解しております。
咄嗟にボロがでないよう、事前に呼んでおられるだけです。
こうして一時間くらい彼女達の言う通りにしていれば、鏡の前には立派なお嬢様が立っていました。
「お似合いです、お嬢様」
「……これが私なのでしょうか」
「とっても綺麗ですよ」
この国風の化粧なのでしょうか。
少し濃いめな気がしますが、これはこれで凛とした雰囲気が出るのでいいですね。
随分と変わった自分をじっと見つめていれば、メイドさん達が急かしてきます。
「さあ、お約束の時間でございます」
「領主様と、王子様がお待ちです」
彼女達に促されるままに向かえば、豪勢な部屋へ案内されました。
そこの扉を開くと、領主様が緊張した顔を私へ向けてきます。
「おお、ユリア。準備が整ったかい?」
「……はい、お父様」
黙っているだけとは言いましたが、さすがにずっと口をつぐめば不自然でしょう。
返事をすれば、王子様が私に微笑んでくれました。
「ユリア嬢。改めてご挨拶をさせてもらおう。私はこの国の第二王子の、ルシフェルという者だ」
「……ユリアです」
ちなみに下の名前は知りません。
こういう時はフルネームを名乗るのでしょうけど、王子様が上の名前だけ名乗られたので一安心です。
自分だけ簡略化された返事ですと、失礼に当たりますからね。
「ではユリア、こっちにーー」
「ゴッドル殿」
王子様が、領主様の言葉を阻むような形で名前を呼びます。
下の名前はゴッドルといったのですね。
呑気にそんなことを考えていると、王子様はとんでもないことを言い出しました。
「彼女と二人きりにさせてくれないか? ぜひ話がしたいんだ」
「……二人きり、ですか」
領主様のお顔が真っ青です。
ついでに言えば、私も大変焦っています。
二人きりにされれば、絶対にバレてしまうでしょうから。
「し、しかし。娘はあらかじめ伝えていたように、病弱でして……」
「その病弱が治ったと聞いたから今回の縁談が発生したのではないか」
「………」
「私は、彼女と話がしたいんだ」
ニコリと、黒い笑みで王子様が笑ってみせます。
まさか、行ってしまわれるのですか?
私を置いて?
「……承知しました」
嘘でしょう!?
非難するように領主様を見つめれば、彼も縋るような目で見返してきます。
彼も彼で、王族には逆らえません。
無情にも扉はパタンと閉まり、私と王子様の二人きりとなってしまいました。
「さて。久しぶりだな、ユリア嬢」
王子様とユリア様はもうお会いになっていたのでしょうか。
とにかく、ここは話を合わせるしかありません。
「お、お久しぶりです」
「もう三年ぶりだろうか? 随分長い間見なかったが、とても美しくなられた」
「光栄です」
王子様、私はユリア様ではありませんのよ。
心の中で訴えますが、このことがバレてはいけません。
不自然のないよう、会話を繋げていきます。
「領民達の様子はどうだ?」
「皆、活気の溢れる領民達です。彼らのお陰で、私達は生きていけるといっても過言ではないでしょう」
「そうか。君は昔から領民を愛していたね」
「彼らは家族も同然ですから」
考えてもいないことをスラスラと言えば、王子様はフッと愉快げに口元を緩めます。
「で……いつまで演技を続けるんだい?」
「ーーーーー」
………大変です。
そもそも、バレないわけないですよね。
二人きりにされた時点で、もうアウトだったと考えてもいいでしょう。
無駄な抵抗とわかりつつも、適当にシラを切ります。
「な、何のことでしょうか」
「ユリア嬢は領民を好いてなどいない。彼らが無能だから、自分が好きな物を買えないという発言をしたらしいぞ。父に似ず、傲慢な娘だ」
「………」
「それにユリア嬢と私は会ったことがない」
どうしましょう。
顔を青くする私に、王子様が更に詰め寄ってきます。
「本来ならゴッドル殿に重い罰を受けてもらうところだが……それも許そう。君と言う存在に出会えたのだから」
……流れが変わった気がします。
王子様は私の手を掴むと、真剣な瞳で告げました。
「私と結婚してくれ」
……どういうことですか。
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