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どうしてこうなったのでしょうか。
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「君が、好きなんだ」
「………はぁ」
「こんなに人を魅力的に思ったのは初めてだよ。どうか、私と」
どうしてこうなったのでしょうか。
そして、どうすれば良いのでしょう。
私は判断を決めかねて、口をつぐみました。
◆ ◆ ◆
「助けて欲しいんだ、あなたに」
「いきなりなんなんですか」
縋り付く勢いでそう言ってきた男性を訝しむように、ロールが目を細めます。
そこまで警戒しなくてもよろしいでしょうに。
エリクル様は冷静に、その男性に声をかけます。
「ひとまず、話を聞かせてくださいませんか?」
「あ、ああ」
我に返った男性は、ごほんと咳払いをしてみせます。
そういえば、この方の身に纏う服はとても質の良いものですね。
貴族の方でしょうか。
「取り乱してしまい、大変申し訳ない。私はこの土地の領主を勤めている、レイラーという者だ」
「領主様ですか」
「失礼だが、旅の方か?」
「はい。私達はアストロを目指して旅をしています」
「そうか……」
領主様は言いづらそうに、要件を伝えてきました。
「ここだけの話なんだが……私の娘に、王家からの縁談が来たんだ」
「凄いですわね」
「ああ。相手はこの国の第二王子。大変名誉なことだったんだが……娘には恋人がいた」
「まあ」
「娘が縁談を嫌がり、どこかへ行方をくらませてしまったんだ。我が家は一人娘だったから、姉妹に変わりをさせることもできない」
……家庭の事情に口を出すつもりはありませんが、いくらなんでも娘さんは無責任ではありません?
王家からの縁談なんて、断れるはずがないのに。
「このことが知られれば、大恥ものだ。私はここにいるであろう風魔の整備士に、魔術師の方を紹介してもらおうと来たんだ」
「なぜでしょうか」
「魔術師の方なら、娘の姿に偽装できる魔術でも持ってると思ってな……」
「残念ながら、そのような魔術を使う魔術師はおりませんよ」
エリクル様の言葉に、めげることなく「だが!」と領主様は続けます。
「そんな時、あなたに会ったんだ!」
「私ですか?」
「そうだ。あなたは娘と同じ背格好に、同じ髪と瞳の色をしてらっしゃる! こんな偶然はない! 恥を忍んで頼む! どうか一日だけ、娘の代わりになってくれないだろうか!」
随分と無茶振りをおっしゃられるものです。
そもそも平民の私に、貴族の娘さんの代わりが勤められるとは思いませんが。
「私に貴族らしい立ち回りはできませんが」
「ただ黙っているだけでいいんだ!」
「ちょっと。ラティアンカ嬢が手を貸す必要はないんじゃないの?」
エリクル様がそこで口を挟みます。
ロールもこくこくと頷いています。
すると、領主様が早口で提案をしてきます。
「な、なら! 見てのところ、魔石がほしいのでしょう? 魔石を所持する貴族に言伝して譲ってもらうから、頼む!」
「魔石をですか」
それなら、受けた方がいいかもしれませんね。
「……わかりました」
「ラティ様!?」
「ただし、黙っているだけでいいなら」
「あ、ああ! ありがとう、ありがとう!」
領主様は物凄い勢いで感謝しています。
私に向かって、ガバリと頭を下げます。
「いいのかい? ラティアンカ嬢。王子様を欺くってことだろ? 責任は多分領主様に行くだろうけど、万が一にでも君に被害が被る可能性も……」
「どの道、魔石が手に入らねば進めませんから」
「ラティ様……私は……」
「ロール。大丈夫よ」
不安げにするロールの頭を撫でてみせます。
それでも落ち着かないのか、ウサギ耳がピクピクと上下しています。
「王子との縁談は明日。どうか今日は、我が屋敷でお休みください」
「………はぁ」
「こんなに人を魅力的に思ったのは初めてだよ。どうか、私と」
どうしてこうなったのでしょうか。
そして、どうすれば良いのでしょう。
私は判断を決めかねて、口をつぐみました。
◆ ◆ ◆
「助けて欲しいんだ、あなたに」
「いきなりなんなんですか」
縋り付く勢いでそう言ってきた男性を訝しむように、ロールが目を細めます。
そこまで警戒しなくてもよろしいでしょうに。
エリクル様は冷静に、その男性に声をかけます。
「ひとまず、話を聞かせてくださいませんか?」
「あ、ああ」
我に返った男性は、ごほんと咳払いをしてみせます。
そういえば、この方の身に纏う服はとても質の良いものですね。
貴族の方でしょうか。
「取り乱してしまい、大変申し訳ない。私はこの土地の領主を勤めている、レイラーという者だ」
「領主様ですか」
「失礼だが、旅の方か?」
「はい。私達はアストロを目指して旅をしています」
「そうか……」
領主様は言いづらそうに、要件を伝えてきました。
「ここだけの話なんだが……私の娘に、王家からの縁談が来たんだ」
「凄いですわね」
「ああ。相手はこの国の第二王子。大変名誉なことだったんだが……娘には恋人がいた」
「まあ」
「娘が縁談を嫌がり、どこかへ行方をくらませてしまったんだ。我が家は一人娘だったから、姉妹に変わりをさせることもできない」
……家庭の事情に口を出すつもりはありませんが、いくらなんでも娘さんは無責任ではありません?
王家からの縁談なんて、断れるはずがないのに。
「このことが知られれば、大恥ものだ。私はここにいるであろう風魔の整備士に、魔術師の方を紹介してもらおうと来たんだ」
「なぜでしょうか」
「魔術師の方なら、娘の姿に偽装できる魔術でも持ってると思ってな……」
「残念ながら、そのような魔術を使う魔術師はおりませんよ」
エリクル様の言葉に、めげることなく「だが!」と領主様は続けます。
「そんな時、あなたに会ったんだ!」
「私ですか?」
「そうだ。あなたは娘と同じ背格好に、同じ髪と瞳の色をしてらっしゃる! こんな偶然はない! 恥を忍んで頼む! どうか一日だけ、娘の代わりになってくれないだろうか!」
随分と無茶振りをおっしゃられるものです。
そもそも平民の私に、貴族の娘さんの代わりが勤められるとは思いませんが。
「私に貴族らしい立ち回りはできませんが」
「ただ黙っているだけでいいんだ!」
「ちょっと。ラティアンカ嬢が手を貸す必要はないんじゃないの?」
エリクル様がそこで口を挟みます。
ロールもこくこくと頷いています。
すると、領主様が早口で提案をしてきます。
「な、なら! 見てのところ、魔石がほしいのでしょう? 魔石を所持する貴族に言伝して譲ってもらうから、頼む!」
「魔石をですか」
それなら、受けた方がいいかもしれませんね。
「……わかりました」
「ラティ様!?」
「ただし、黙っているだけでいいなら」
「あ、ああ! ありがとう、ありがとう!」
領主様は物凄い勢いで感謝しています。
私に向かって、ガバリと頭を下げます。
「いいのかい? ラティアンカ嬢。王子様を欺くってことだろ? 責任は多分領主様に行くだろうけど、万が一にでも君に被害が被る可能性も……」
「どの道、魔石が手に入らねば進めませんから」
「ラティ様……私は……」
「ロール。大丈夫よ」
不安げにするロールの頭を撫でてみせます。
それでも落ち着かないのか、ウサギ耳がピクピクと上下しています。
「王子との縁談は明日。どうか今日は、我が屋敷でお休みください」
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