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旅に出ましょう。
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「よし。そうと決まれば旅の準備だ」
エリクル様がその場から立ち上がると、私に向かって頼み事をしてきます。
「ラティアンカ嬢、うちの食糧庫の場所わかるかい?」
「何度かお邪魔したことがありますので」
「それなら、適当に見繕ってきてくれないか?」
はい、と、エリクル様が食べ物を入れる袋を差し出してくれました。
それを受け取り、食糧庫へ急ぎます。
「ありました」
銀の扉ですので、よくわかります。
そこを開けば、大量の食糧が眠っていました。
干し肉は一応買ったのですが、あまり意味がなかったかもしれません。
とにかくそこからまずは水筒を三人分頂戴し、水を詰めます。
それから……腐りやすいものは避けましょう。
時間が置いても食べられるようなものを選び、私は食糧庫を出ました。
「っと……」
三人分なだけあって、相当重いですわね。
足元がおぼつきません。
これは少し、マズいかもしれません。
ガッ
「あっ」
案の定引っ掛かり、私の体は地面に向かって傾いていきます。
もう少しで体を地面に打ち付けるか、といったところで、何かに支えられました。
「ら、ラティ様!? 大丈夫ですか?」
「ロール」
支えてくれたのはロールでした。
見れば後ろにはエリクル様もいます。
「こっちの準備が整ったから、様子を見にきたんだ。大丈夫かい?」
「はい。ロールが助けてくれましたので」
「私が持ちます!」
「え、でも、重いですわよ?」
「なおさらラティ様には任せられません!」
ロールは私から荷物を受け取り、軽々と持ち上げてみせます。
「さあ、行きましょう」
「…………」
彼女、私が知る獣人よりも凄いですね。
私の転ぶ寸前に助けることのできる瞬発力に、かなりの力持ちです。
ひょっとしたら、エリクル様以上ではないでしょうか。
「ラティアンカ嬢、まだ女の子には負けないからね?」
おや、どうやら顔に出ていたようです。
エリクル様がそうおっしゃられたので、私は思わずクスリと笑ってしまいました。
◆ ◆ ◆
風魔は別名、空飛ぶ船と呼ばれています。
理由は簡単で、風魔が船の形をしているからです。
人によって形状は少し異なりますが、エリクル様の所有する風魔は木彫りのものです。
大抵の魔術師は、風魔を自分のアイテムボックスに収納しています。
アイテムボックスとは、四次元ポケットのようなもので、多少制限はありますが大体のものが入るような仕組みとなっています。
「さ、行こうか」
外に出ますと、エリクル様が袋を取り出します。
あれの中に風魔が入っているのでしょう。
「ちょっと離れてて……」
私達が離れるのを確認すると、エリクル様は袋の口をシュルリと緩めると、まるで瞬間移動のように風魔が現れました。
「わあっ……!」
ロールは風魔を見て、かなり驚いたみたいです。
ウサギの耳が震えております。
「さ、乗ろう」
エリクル様に促され、私達は風魔に乗り込みました。
風魔に設置された各部屋があるのですが、そのうちの一つにまずは向かいます。
そこが魔石入れのところです。
「ほっ」
そこにエリクル様が魔石を投げ込むと、魔石がまるで溶けるようにして消えていきました。
すると、風魔が浮き上がる重たい音が響きます。
「ら、ラティ様!」
外で待っていたロールが歓声を上げます。
見に行ってみれば、地面がどんどん遠くなっていっているところです。
「本当に、本当に空を飛んでるんですね!」
「風魔は初めて乗ると不思議な感覚ですよね」
「ラティ様はお乗りになったことがあるんですか?」
「ええ。何度かですけど」
旦那様は風魔を所有してはいませんでした。
自分で空が飛べてしまうからです。
そんな魔術師滅多にいませんので、皆風魔を使うんですけどね。
私が乗ったことがあるのはエリクル様のものだけです。
「ラティアンカ嬢」
エリクル様に呼ばれ振り返ると、エルクル様は地図を持っていました。
「今からアストロへ向かうけど……アルがどのあたりで結界を張っているかわかるかい?」
「確か、西の付近だった気がします」
「だったら隣国のフォルテから行ったほうがいいね。ひとまずそこを目指そう」
フォルテは東に位置する国です。
西付近に行って旦那様と鉢合わせるのは嫌ですからね。
◆ ◆ ◆
「エリクル様」
「……寝ないのかい?」
深夜。
上空を飛ぶせいか外に出るととても肌寒いのですが、エリクル様が風魔を操作していらっしゃいました。
「エリクル様こそ」
「僕は少し、調整をしに来ただけだよ。常にやってなきゃいけないわけじゃないし」
フォルテまでは三日かかるそうです。
三日といえば、ちょうど旦那様が帰ってきます。
私の手紙を見つけて、旦那様は何を思うでしょう。
せいせいした、とでも考えるのでしょうか。
「………」
何だかムカムカしてきましたね。
考えるのはやめましょう。
「エリクル様。毛布です」
「!」
エリクル様の格好があまりにも寒そうでしたので、私は毛布を渡しに来たんでした。
部屋にも窓が設置されているから、外の様子が見えるんですよね。
ふと目覚めて窓の外を見ればエリクル様が寒そうに立ってらっしゃるので、何だか申し訳なくなって毛布を届けにと外に出ましたから。
「君は……優しいね」
「いえ。ただのお節介です」
「でも、嬉しいよ。ありがとう」
毛布を受け取り体を包むと、エリクル様は私に笑いかけました。
普通のお嬢さんだったらこれにコロリと落ちるのですが、私は旦那様を見慣れていたのでノーダメージです。
「アストロまでどれくらいかかりますかね」
「うーん、確定できないな。どのくらい魔石の調達に手間取ってしまうか、わからないからね。まあ、そもそもアストロにつけるか自体がわからないのだけど……」
「?」
エリクル様が小声で何かを囁きました。
私が首を傾げると、「何でもない」と言ってエリクル様がこちらに向かってきます。
「さ、もう寝よう」
「はい」
そうして、空の旅が始まりました。
エリクル様がその場から立ち上がると、私に向かって頼み事をしてきます。
「ラティアンカ嬢、うちの食糧庫の場所わかるかい?」
「何度かお邪魔したことがありますので」
「それなら、適当に見繕ってきてくれないか?」
はい、と、エリクル様が食べ物を入れる袋を差し出してくれました。
それを受け取り、食糧庫へ急ぎます。
「ありました」
銀の扉ですので、よくわかります。
そこを開けば、大量の食糧が眠っていました。
干し肉は一応買ったのですが、あまり意味がなかったかもしれません。
とにかくそこからまずは水筒を三人分頂戴し、水を詰めます。
それから……腐りやすいものは避けましょう。
時間が置いても食べられるようなものを選び、私は食糧庫を出ました。
「っと……」
三人分なだけあって、相当重いですわね。
足元がおぼつきません。
これは少し、マズいかもしれません。
ガッ
「あっ」
案の定引っ掛かり、私の体は地面に向かって傾いていきます。
もう少しで体を地面に打ち付けるか、といったところで、何かに支えられました。
「ら、ラティ様!? 大丈夫ですか?」
「ロール」
支えてくれたのはロールでした。
見れば後ろにはエリクル様もいます。
「こっちの準備が整ったから、様子を見にきたんだ。大丈夫かい?」
「はい。ロールが助けてくれましたので」
「私が持ちます!」
「え、でも、重いですわよ?」
「なおさらラティ様には任せられません!」
ロールは私から荷物を受け取り、軽々と持ち上げてみせます。
「さあ、行きましょう」
「…………」
彼女、私が知る獣人よりも凄いですね。
私の転ぶ寸前に助けることのできる瞬発力に、かなりの力持ちです。
ひょっとしたら、エリクル様以上ではないでしょうか。
「ラティアンカ嬢、まだ女の子には負けないからね?」
おや、どうやら顔に出ていたようです。
エリクル様がそうおっしゃられたので、私は思わずクスリと笑ってしまいました。
◆ ◆ ◆
風魔は別名、空飛ぶ船と呼ばれています。
理由は簡単で、風魔が船の形をしているからです。
人によって形状は少し異なりますが、エリクル様の所有する風魔は木彫りのものです。
大抵の魔術師は、風魔を自分のアイテムボックスに収納しています。
アイテムボックスとは、四次元ポケットのようなもので、多少制限はありますが大体のものが入るような仕組みとなっています。
「さ、行こうか」
外に出ますと、エリクル様が袋を取り出します。
あれの中に風魔が入っているのでしょう。
「ちょっと離れてて……」
私達が離れるのを確認すると、エリクル様は袋の口をシュルリと緩めると、まるで瞬間移動のように風魔が現れました。
「わあっ……!」
ロールは風魔を見て、かなり驚いたみたいです。
ウサギの耳が震えております。
「さ、乗ろう」
エリクル様に促され、私達は風魔に乗り込みました。
風魔に設置された各部屋があるのですが、そのうちの一つにまずは向かいます。
そこが魔石入れのところです。
「ほっ」
そこにエリクル様が魔石を投げ込むと、魔石がまるで溶けるようにして消えていきました。
すると、風魔が浮き上がる重たい音が響きます。
「ら、ラティ様!」
外で待っていたロールが歓声を上げます。
見に行ってみれば、地面がどんどん遠くなっていっているところです。
「本当に、本当に空を飛んでるんですね!」
「風魔は初めて乗ると不思議な感覚ですよね」
「ラティ様はお乗りになったことがあるんですか?」
「ええ。何度かですけど」
旦那様は風魔を所有してはいませんでした。
自分で空が飛べてしまうからです。
そんな魔術師滅多にいませんので、皆風魔を使うんですけどね。
私が乗ったことがあるのはエリクル様のものだけです。
「ラティアンカ嬢」
エリクル様に呼ばれ振り返ると、エルクル様は地図を持っていました。
「今からアストロへ向かうけど……アルがどのあたりで結界を張っているかわかるかい?」
「確か、西の付近だった気がします」
「だったら隣国のフォルテから行ったほうがいいね。ひとまずそこを目指そう」
フォルテは東に位置する国です。
西付近に行って旦那様と鉢合わせるのは嫌ですからね。
◆ ◆ ◆
「エリクル様」
「……寝ないのかい?」
深夜。
上空を飛ぶせいか外に出るととても肌寒いのですが、エリクル様が風魔を操作していらっしゃいました。
「エリクル様こそ」
「僕は少し、調整をしに来ただけだよ。常にやってなきゃいけないわけじゃないし」
フォルテまでは三日かかるそうです。
三日といえば、ちょうど旦那様が帰ってきます。
私の手紙を見つけて、旦那様は何を思うでしょう。
せいせいした、とでも考えるのでしょうか。
「………」
何だかムカムカしてきましたね。
考えるのはやめましょう。
「エリクル様。毛布です」
「!」
エリクル様の格好があまりにも寒そうでしたので、私は毛布を渡しに来たんでした。
部屋にも窓が設置されているから、外の様子が見えるんですよね。
ふと目覚めて窓の外を見ればエリクル様が寒そうに立ってらっしゃるので、何だか申し訳なくなって毛布を届けにと外に出ましたから。
「君は……優しいね」
「いえ。ただのお節介です」
「でも、嬉しいよ。ありがとう」
毛布を受け取り体を包むと、エリクル様は私に笑いかけました。
普通のお嬢さんだったらこれにコロリと落ちるのですが、私は旦那様を見慣れていたのでノーダメージです。
「アストロまでどれくらいかかりますかね」
「うーん、確定できないな。どのくらい魔石の調達に手間取ってしまうか、わからないからね。まあ、そもそもアストロにつけるか自体がわからないのだけど……」
「?」
エリクル様が小声で何かを囁きました。
私が首を傾げると、「何でもない」と言ってエリクル様がこちらに向かってきます。
「さ、もう寝よう」
「はい」
そうして、空の旅が始まりました。
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