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空の旅です。
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「わあ、凄いですね……」
ロールはエルクル様のお宅へ上がると、感嘆の声を上げました。
それはそうでしょう。
外装も立派ながら、中は豪邸です。
おまけに彼は風の魔術に特化した方なので、風の魔術に関する資料がそこら中にあります。
一枚一枚の紙から小さな模型まで、凄い完成度です。
「さすがはエリクル様ですね」
「いや、僕は普通の魔術師だよ。アルなんかもっと凄いだろ?」
「アルジェルド様ですか……」
思い直せば、旦那様は研究資料などは自分の部屋に溜め込むお方でした。
だからアルジェルド様の部屋はとても広く、ご自分が執筆された本や買い占めた資料が散乱していました。
でも、自分の部屋の外には持ち出さなかったのであまりまじまじと見たことはありませんね。
「アルジェルド様は、溜め込むタイプでしたから」
「ああ、なるほど。万が一の盗難防止だろうな。あいつほどの魔術師の知識が盗まれたら大変だ」
と、そうこうしている内に、エリクル様の部屋へつきました。
そこへ案内され、私とローズが椅子に腰を下ろします。
こういったアンティーク風の家具もいいものです。
集めてみましょうか。
「さて。獣人の国、アストロに行く件だがーー風魔を、使いたいんだね?」
「はい」
「ふうま?」
聞き覚えのない単語にロールは首を傾げてみせます。
ウサギの耳も一緒に垂れてとても可愛らしいです。
エリクル様がロールに説明をします。
「風魔っていうのは、魔石を燃やして飛ぶ大きな気球みたいなものだよ」
「はえー、そんなものがあるんですか……」
「一般の人の中ではあまり出回ってないよ。珍しいものだから」
エリクル様を頼った理由は、その風魔を所有しているからでもありました。
風の魔術を使う分風の読み方も一流ですので、彼は風魔を扱うのはとても上手なのです。
ただ……
「アストロがそもそも遠すぎますわね」
「ラティアンカ嬢の言う通りだ。魔石を何回か入れ替えなきゃならないし、風魔も各地で休ませなきゃならない」
風魔は出回っていない分、なかなか手間のかかるものでもあります。
魔石自体が珍しいので高いし、繊細なものなので手入れが度々必要となります。
「こんなに大変なことを申し込んでしまい、申し訳ありません」
「あの、ラティ様……」
私がエリクル様に謝罪をすると、言いづらそうにロールが私の名前を呼びました。
「その、アストロ、別に私は行かなくて大丈夫です。大変だってわかりましたし」
「………」
「ラティ様はもちろん、エリクル様に迷惑がかかってしまいます」
ロールは私達に気を遣ってくれたのでしょう。
行かなくていいとは言ったものの、その瞳が残念そうにうつむいています。
すると、私が何か言う前に、エリクル様が口を挟みました。
「そんなことないさ。ロールちゃんは、僕やラティアンカ嬢に迷惑だと思うのかい?」
「は、はい」
「僕、最近誰かと出かけるなんてことなかったんだ。正直凄くワクワクしてる。だって空の旅だよ? 楽しくないわけがない」
歌うようにそう言うと、「ね?」とエリクル様は茶目っ気たっぷりにウインクしてみせます。
ロールはそれを聞いて、少しだけ瞳を期待の色へと変えます。
「で、でも、魔石は調達できるのですか?」
「うん。高いけど、僕は魔術師だよ? 魔術師ならお金はあまるくらいあるさ」
「決まりですね」
私はぺこりとエリクル様に頭を下げ、これからの空の旅を想像して笑いました。
「お世話になります。きっと楽しい旅になるでしょう。このお礼は忘れませんわ」
「わ、私も! 忘れません!」
「やだなぁ。そんなの忘れてくれたっていいのに」
にしても、本当に楽しみです。
遠出すること自体が久しぶりですから。
ロールはエルクル様のお宅へ上がると、感嘆の声を上げました。
それはそうでしょう。
外装も立派ながら、中は豪邸です。
おまけに彼は風の魔術に特化した方なので、風の魔術に関する資料がそこら中にあります。
一枚一枚の紙から小さな模型まで、凄い完成度です。
「さすがはエリクル様ですね」
「いや、僕は普通の魔術師だよ。アルなんかもっと凄いだろ?」
「アルジェルド様ですか……」
思い直せば、旦那様は研究資料などは自分の部屋に溜め込むお方でした。
だからアルジェルド様の部屋はとても広く、ご自分が執筆された本や買い占めた資料が散乱していました。
でも、自分の部屋の外には持ち出さなかったのであまりまじまじと見たことはありませんね。
「アルジェルド様は、溜め込むタイプでしたから」
「ああ、なるほど。万が一の盗難防止だろうな。あいつほどの魔術師の知識が盗まれたら大変だ」
と、そうこうしている内に、エリクル様の部屋へつきました。
そこへ案内され、私とローズが椅子に腰を下ろします。
こういったアンティーク風の家具もいいものです。
集めてみましょうか。
「さて。獣人の国、アストロに行く件だがーー風魔を、使いたいんだね?」
「はい」
「ふうま?」
聞き覚えのない単語にロールは首を傾げてみせます。
ウサギの耳も一緒に垂れてとても可愛らしいです。
エリクル様がロールに説明をします。
「風魔っていうのは、魔石を燃やして飛ぶ大きな気球みたいなものだよ」
「はえー、そんなものがあるんですか……」
「一般の人の中ではあまり出回ってないよ。珍しいものだから」
エリクル様を頼った理由は、その風魔を所有しているからでもありました。
風の魔術を使う分風の読み方も一流ですので、彼は風魔を扱うのはとても上手なのです。
ただ……
「アストロがそもそも遠すぎますわね」
「ラティアンカ嬢の言う通りだ。魔石を何回か入れ替えなきゃならないし、風魔も各地で休ませなきゃならない」
風魔は出回っていない分、なかなか手間のかかるものでもあります。
魔石自体が珍しいので高いし、繊細なものなので手入れが度々必要となります。
「こんなに大変なことを申し込んでしまい、申し訳ありません」
「あの、ラティ様……」
私がエリクル様に謝罪をすると、言いづらそうにロールが私の名前を呼びました。
「その、アストロ、別に私は行かなくて大丈夫です。大変だってわかりましたし」
「………」
「ラティ様はもちろん、エリクル様に迷惑がかかってしまいます」
ロールは私達に気を遣ってくれたのでしょう。
行かなくていいとは言ったものの、その瞳が残念そうにうつむいています。
すると、私が何か言う前に、エリクル様が口を挟みました。
「そんなことないさ。ロールちゃんは、僕やラティアンカ嬢に迷惑だと思うのかい?」
「は、はい」
「僕、最近誰かと出かけるなんてことなかったんだ。正直凄くワクワクしてる。だって空の旅だよ? 楽しくないわけがない」
歌うようにそう言うと、「ね?」とエリクル様は茶目っ気たっぷりにウインクしてみせます。
ロールはそれを聞いて、少しだけ瞳を期待の色へと変えます。
「で、でも、魔石は調達できるのですか?」
「うん。高いけど、僕は魔術師だよ? 魔術師ならお金はあまるくらいあるさ」
「決まりですね」
私はぺこりとエリクル様に頭を下げ、これからの空の旅を想像して笑いました。
「お世話になります。きっと楽しい旅になるでしょう。このお礼は忘れませんわ」
「わ、私も! 忘れません!」
「やだなぁ。そんなの忘れてくれたっていいのに」
にしても、本当に楽しみです。
遠出すること自体が久しぶりですから。
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