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第一章 勇者は親友、俺は平均魔法使い

第十話 水不足の原因

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「長老様…」

訪れたのは、長老様の家。
皆が暗く沈んだ表情をしていたのが気になったのか、リューリャさんは、カストルさんに聞いた。

「何か…あったのですか?」
「…………」

静かに、答える。

「また井戸潰しだ…」
「!!」

ハッと息をのみ、手を口にあてた。
長老様も、顔を伏せ、俺に言った。

「すまないの…客人。この村には税を払えるほどの余裕はない。それでよくあの者に井戸を潰されるのじゃ…」

井戸潰し。
なるほど…そういうことだ。
最初この村に来たとき、リチャードさんは水不足にひどく苦しげな様子だったのにも関わらず、井戸はちゃんと役目を果たしていた。
あの、マクスリル様という奴が、毒の魔法で井戸を使えなくしていたのか。

「よくされるの。喉がカラカラになっても水がないし、家の中に水を配置するのも禁止されてる…」

ナナカの絞り出した声は、今までとは違い震えていた。

「また、死にかけるの?」
「そんなの嫌よ…!」

村人たちがざわめきはじめる。
これは、なんとかしないと…

「取得、なんとかなる?」
『…はい。ある条件を満たせば』
「条件?」

いつもより時間をかけて話す取得に、俺は違和感を抱いた。

『それは…青龍を召喚することです。青龍は普通、人には懐かない者。それはとても難しいもので…』
「ん?ちょっと待てよ。青龍だって?」

聞き覚えのあるワードに俺の耳は反応した。
青龍。
無詠唱の魔法を使う時に力をかしてくれたやつ!

「俺、知ってる!」
『なんと、そうですか!ではきっと大丈夫です!では、外に出てもらえます?』









「えっと…ここらへんでいい?」
『はい。充分です』

俺は、青龍召喚の為に外に出た。
村人たちは、一体何がこれから行われるのかを固唾をのんで見守っていた。

『では…召喚をするため、召喚陣を描きます』
「召喚陣?」
『タクヤ様と、ツカサ様が召喚された時にあった、あれです』

ああ!あれ!
なんか文字が書いてある丸い光るあれ!
召喚陣だったのか。

『では、このとうりに書いてください』

ヒュオッと目の前に現れたのは、難しそうな円に文字が色々書いてあるやつ。
思ったより時間はかかりそうだ。

「あの…これから、何をされるので?」

リチャードさんが、聞いてきた。

「これから、青龍を召喚するんですよ」
「青龍!?」

驚いてリチャードさんは、俺を見た。

「まさか青龍を…いえ、手伝います」

そして俺たちは、召喚陣を描き始めた。









「出来たっ!!」

出来上がった召喚陣を、村人はまじまじと見る。

「これで、青龍を召喚するのか?」
「そうだよ」

ナナカも興味深そうに俺と召喚陣を見比べる。

「次はどうすればいいの?」
『呪文を唱えるのです。呪文は、「召喚の加護」のおかげで頭に勝手に浮かびますよ』

召喚の加護。
そのためにあったのか。

「………下がってください」

村人たちに下がるよう促し、呪文を唱えだした。

「古の魔法よ!古き戦龍よ!
 我を助けたまえ!我を守りたまえ!
 雨よ、恵みよ、地にすべての輝きをもたらす安らかなる光よ!
 いまここに集結せよ!
 青龍、召喚!!」

次の瞬間、召喚陣からまばゆい光が溢れだし、俺たちを包んだ。

『ほほう…また会ったな。小さき者よ』

…この声は。
やはり。

「…青龍。さっきぶりだね」

召喚陣の上には、フヨフヨと浮く立派な龍がいた。
青龍にふさわしい空色の鱗に、金色のツノ。長く伸びる髭。
何よりも深い青の瞳。

「これが青龍…」
「なんて大きいんだ」

村人が目を見開いて見守る。

『さて、なんのようがある?』
「この村の毒を消し去って欲しいんだ。井戸に毒が放り込まれて水が飲めない」
『ほう』

青龍は大きい爪のついた手を顎にあて、さすった。

『…よかろう。だが、おぬしも協力してもらおう』
「協力?」

ふむ、と頷き答える。

『契約を』
「契約…リンディとしたやつか」

確か、相手の名前を呼ぶやつね。

『だが、我には名がない。おぬしがつけよ』

俺が?
う~ん…?
ダサいのしか思いつかない。
青~、青~、あお~、せい~…

「じゃあタツで」
『たつ』
「俺の友達の名前だよ」

昔飼っていた犬の名前をつけるのもどうかと思うが、いたしかたない。

『では…我が名は、タツ。いまここでタクヤ。おぬしと契約しよう』

とたん、ものすごく魔力が吸い取られた。

「…ぁ」

意識が薄れた。

「タクヤ!!」
「タクヤ様!」

その声を最後に、俺の意識は途切れた。
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