96 / 102
Aルート月島
第20話 とある中学生の『走馬灯』その3
しおりを挟む
ムシャムシャムシャムシャ!
ゴキュゴキュゴキュゴキュ!
「ウィ~、焼き肉には赤ワイン!白米が焼き肉によく合うぜ~」
白井家の朝の食卓は焼き肉。使用される全ての肉は安い肉ではない。鹿児島黒毛和牛であり白井家の家長である白井鷯の好物である。しかも朝から酒をガブガブと飲んでいる。飲んでいるのは値段のする赤ワインをまるで安い発泡酒のようにグラスに注がずらっぱ飲みしている。酒の価値も食材の味も全くわかってない典型的な成金野郎である。
「お前等もそう思うだろ~、んん?」
白井鷯が三人の娘に視線を向ける。
白井蜜柑(13) に双子の白井林檎(12)白井梨晏(12)の三人である。しかし三人は床に正座させられている。真ん中に座っている白井蜜柑にいたっては全裸で座らされており、その身体には無数の痣がある。
次の瞬間、白井鷯はテーブルの上のまだ食べ残しがある皿を床にぶちまける。
「食っていいぞ、ただし手は使うなよ」
白井鷯の合図で双子が床に落ちた肉やご飯にかぶりつき床にこぼれた酒を舌を出して舐める。
まるで野良犬のようだ。
ただし長女の蜜柑は動かない。
「おい、蜜柑~、何を物欲しそうに見てんだ?涎まで垂らしやがって!卑しいんだよ!・・・・悪い子はしっかりと躾なきゃな~」
完全に言い掛かりである。蜜柑は涎を垂らしてないし動いてもいない。
鷯は視線を向ける。
天井の梁から垂らされたロープ。
これは『毎朝』の恒例行事である。
「ぐぎぃ!あがっ!助けっ!!!」
「暴れないで姉さん!じっとしててよ!」
「お願いお姉ちゃん!暴れないで!」
「しっかり持ちなさいよ梨晏!!!」
「林檎だってもっと力を入れてよ!!!」
首吊りを強いられる蜜柑、その蜜柑の足を喚きながら必死に支える林檎と梨晏を下衆な笑みを浮かべながら缶ビールをあおる鷯。
双子の林檎と梨晏に父の鷯はいつも言い聞かせている。
『蜜柑が生きてる限りはお前等には暴力は振るわないが、蜜柑が死んだら・・・・次はお前等の、どちらかに蜜柑の代わりをやってもらおうか』
蜜柑に父の鷯はいつも言い聞かせている。
『お前が一人で引き受けるなら妹達に暴力は振るわない。約束してやる』
長女の蜜柑は双子の妹を守る為に必死に耐えているのに対して双子は自分達の身を守る為に姉を生け贄に捧げ続ける。その為に必死になって姉を救おうとしている。三姉妹の滑稽な姿を見て鷯は下衆な笑みを浮かべる。
その後、父の鷯は夜の仕事に備えて就寝。三人姉妹は春夏秋冬、ベランダに正座で待機させられる。当然施錠されており自由に部屋に出入りすることはできない。鷯はペットボトル一本分の水のみを与える。
ちなみに三人の母親は娘達を見捨て数年前に逃げ出していた。
鷯はヤクザの構成員であり自前のマンションで闇カジノを経営し空いている部屋に市役所に潜り込ませた部下と協力して生活保護者を住まわせて最低限のギリギリの生活しかおくれない生活保護費を搾りとる。
闇カジノが行われている部屋に三姉妹の姿もあった。
双子の格好はお客のリクエストに答えて毎日異なる。今日は林檎は水着にエプロン、梨晏は体操服(ブルマ)。林檎はお客の注文した酒を運び、梨晏は室内の清掃をしている。そして蜜柑はカジノが行われている部屋の隣でお客の相手をしている。
林檎と梨晏はお触りありで客は二人が近づくとイヤラシイ目で太腿や胸を撫でるが撫でるだけでそれ以上の事はしない。
だが蜜柑は違う。
蜜柑はここでも全裸で部屋の片隅に正座させられていた。そして大金を注ぎ込み負けのこんだ客の苛立ちの捌け口をさせられる。
今日も負けのこんだ客が蜜柑の髪を乱暴に掴みオーナーである鷯に料金五万円を投げつけ奥の部屋に引きずっていく。そこでは性的なサービスが行われる。
林檎と梨晏の仕事には蜜柑の使用後の掃除も含まれている。乱暴に扱われ気を失っている蜜柑を風呂場に抱えて冷水を貯めた浴槽に投げ込む。それでも蜜柑の意識が戻らない。林檎が溺れないように上半身を支えて梨晏は蜜柑の身体をブラシで隅々まで擦る。
双子は姉を汚物を見るかのような目で見ながら作業を行う。
自分より『下』がいる。
そう思うことで双子は自分を慰める。
いずれは自分達もやらされるとわかっていても。
ドガアアアアアアアアアン!!!
それが姉妹の日常、地獄のような日々が永遠に続くと思っていた。そんな日常をブチ壊されるとは思いもしなかった。
「オラッ!白井ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!
姉妹にとって父である鷯は絶対的な存在だった。過去に逆らった事はある。他の大人に助けを求めた事も寝ている隙に鷯を殺そうとしたこともあった。父が部下に暴力を振るう光景を何でもみせられており自身の身体にも味わったこともある。父殺害が悉く失敗に終わり過度な仕置きを何度も何度も、現在は心を完全にバキバキに折られている。
だが突然マンションのドアを蹴破って入ってきた男に父は怒鳴ることも暴力を振るうわけでもなく機嫌を損なわせないために愛想笑いを浮かべて側に駆け寄っていく姿を目を大きく開かせ双子は驚いた。
「おい、あれって『知和和輪 八行(チワワワ ハチコウ)』だろ?『堂島の暴れ竜』月島竜一の金貸し屋の代理社長じゃねえか?なんでこんなところに?」
「あれが『忠犬』知和和輪か・・・噂に聞いたことがある。御主人の月島竜一の命令を絶対忠実の犬か、人を殺す事も厭わない男だとか本当かは知らんけど。借金を踏み倒して広大な土地である中国に逃げた客を何の手掛かりがないのに一週間ちょっとで見つけ出したとかネットも繋がらないド田舎に逃げていたのにも関わらずにな」
「まさか、あそこから金借りたのか?容赦のない取立てをされることで有名じゃないか」
カジノに訪れた客達が男の話をしていた。双子は怖くて近づけなかったが気になったのでこっそりと覗き込む。
「てめえ、今月分がまだだが言い訳があるなら聞こうか?まあ聞いたところでボコボコにするのは変わらんがな」
「なっ!そんなはずは、すみません電話かけてもよろしいでしょうか?」
知和和輪の許可をもらい携帯電話を取り出す父。どうやら女の所に掛けているようだ。
『ごめ~ん鷯ちゃん!忘れちゃってた!明日に払っておくからデートしようよ~』
「馬鹿野郎!明日じゃ間に合わないんだよ!」
「・・・・今日中に支払う気がないと?」
「あります!払う気はあるんです!!!金がないわけじゃないです!明日必ずお支払いします!お願いします!待ってもらえないでしょうか!待ってもらう分は色をつけてお返ししますから!このとおり!!!」
双子はあの鷯は偽物なんじゃないかとも思い始めた。父はよく人に土下座を強要させるので他人の土下座はよく見たことがある。双子はよく動画や写真を撮らされているからだ。今まで見てきた中でも一・二を争うであろう見事な土下座をする父。
土足で部屋にヅカヅカと入ってきた八行は土下座をする鷯の頭を磨きあげられたピカピカの革靴で踏みつける。
「お前の借りた金は三千万円、残り四百万円。返済期限はあと十分と三十秒、二九、二八、二七」
「カウントダウンが始まってる!!!おい!今すぐ四百万円用意して持って来てくれ!頼む!明日のデートの時に返す!なんなら倍にして返す!欲しいもん何でも買ってやるから!」
「もう鷯ちゃんたら~、そんなに私の気を引きたいの~、きゃはははは!けどもうお酒飲んじゃたから車出せないのよ~。ちゃんと明日持っていってあげるわよ~、きゃはははははははは!」
「明日じゃ間に合わないって言ってるだろ!水飲んで酔い覚ませ!!!誰かに頼めないか?お願いだ!!!」
「・・・・愛してるって言って」
「はああああああああ!!!今それどころじゃねえんだよ!!!メンヘラ女が!!!」
「あ~、電話が切れちゃう~」
「愛してるぜ雅美!!!」
「気持ちがこもってない・・・・」
「アアアアアアアアイ!!!!!!ラアアアアアアアブ!!!!!!ユウウウウウウ!!!!!!マッサミイイイイイイイイ!!!!!!」
「きゃはははははははははははは!!!もう~鷯ちゃんたら~わかったわかったわよ~。じゃあ明日9時にいつもの所に来てね!私も愛してる!!!じゃあね~」
「わかってねえええええええええ!!!待ってえええええええええ!!!」
ブツン!!!
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
「さて・・・包丁くらいは置いてあるだろ?」
「待ってください!電話させてください!まだ何人か金払いのいい女を囲ってるんで!そいつに支払わせますから!」
「あと、五分九秒、八、七、六・・・・・」
八行のカウントが突然止まった。何事かと鷯は八行の視線を向けている方向を見る。隣の部屋からフラフラと歩いてくる蜜柑だった。
一糸纏わぬ裸で顔の腫れは時間が経過し酷くなっておりパンパンに、身体に無数の痣、手足首に縄で縛られたかのような跡、股から先程の客の洗い残しか精液が垂れ流れている。
「お客様?いらっしゃいませ・・・どうぞ私を殴って下さい・・・お客様の苛立ちをぶつけて下さい・・・私は死んでも構いません・・・だって私は人間じゃないんだから・・・お客様は神様・・・神様の暴力は暴力じゃない・・・むしろ施し・・・どうか私に恵んで下さい・・・」
光が宿らぬ虚ろな瞳、脂ぎったボサボサの髪、痩せ細ったガリガリの身体。身体は拭かれておらずビショビショだ。
まるで幽鬼のようにユラユラと歩いていた蜜柑は八行にぶつかり八行の着ていた高級なロングコートを濡れた身体と股から垂れ流れてきた精液で汚す。
「この馬鹿が!!!」
鷯は慌てて立ち上がり蜜柑を引き剥がすと蜜柑の頭を床に叩き付ける。
ゴシャ!グシャ!ゴスッ!バキッ!
「すいません馬鹿娘が!!!もちろんコートは全額弁償します!!!どうか無礼を許してください!!!」
「娘?そいつはお前の娘か?」
「はい!いや、けど血が繋がってるだけです!こんなデキの悪すぎるガキなんて本当に俺の子供なんてありえないですね!」
鷯はヘラヘラと愛想笑いを浮かべて蜜柑の顔を床に叩きつけながら八行の質問に答える。蜜柑を叩き付ける力には八行の制裁されるかもという恐怖と鷯の苛立ちも加わり力強いものになって蜜柑の鼻は折れたのかだばだばと凄い勢いで鼻血を流す。
ドガアアアアアアアアアン!!!
次の瞬間、鷯がブッ飛んでいった。八行の蹴りによってだ。
そして優しく蜜柑を抱き抱える。
「支払いを待ってやるよ。その代わり・・・このガキは俺が引き取る。いいな」
釈迦が垂らした糸を手繰りよせた蜜柑。それに便乗しようと飛び出そうとした林檎と梨晏だったが。
「とりあえずここを出ようか。服は?」
蜜柑は弱々しく首を横に振る。八行は自分の着ていたコートを脱ぎ蜜柑を優しく包みお姫様抱っこをして部屋から出ていく。
「そうだ、何か持っていくものはあるか?あるなら後で送らせるか今持っていくか?」
「『何もないです』。どうか私をこの地獄から連れ出して下さい」
林檎と梨晏の双子は一瞬だけ、一瞬だけ見た。優しく抱き上げられ八行の胸に顔を埋める蜜柑は自分達の姿を見て笑みを浮かべた。
蜜柑は双子を見捨てる事にしたようです。
ゴキュゴキュゴキュゴキュ!
「ウィ~、焼き肉には赤ワイン!白米が焼き肉によく合うぜ~」
白井家の朝の食卓は焼き肉。使用される全ての肉は安い肉ではない。鹿児島黒毛和牛であり白井家の家長である白井鷯の好物である。しかも朝から酒をガブガブと飲んでいる。飲んでいるのは値段のする赤ワインをまるで安い発泡酒のようにグラスに注がずらっぱ飲みしている。酒の価値も食材の味も全くわかってない典型的な成金野郎である。
「お前等もそう思うだろ~、んん?」
白井鷯が三人の娘に視線を向ける。
白井蜜柑(13) に双子の白井林檎(12)白井梨晏(12)の三人である。しかし三人は床に正座させられている。真ん中に座っている白井蜜柑にいたっては全裸で座らされており、その身体には無数の痣がある。
次の瞬間、白井鷯はテーブルの上のまだ食べ残しがある皿を床にぶちまける。
「食っていいぞ、ただし手は使うなよ」
白井鷯の合図で双子が床に落ちた肉やご飯にかぶりつき床にこぼれた酒を舌を出して舐める。
まるで野良犬のようだ。
ただし長女の蜜柑は動かない。
「おい、蜜柑~、何を物欲しそうに見てんだ?涎まで垂らしやがって!卑しいんだよ!・・・・悪い子はしっかりと躾なきゃな~」
完全に言い掛かりである。蜜柑は涎を垂らしてないし動いてもいない。
鷯は視線を向ける。
天井の梁から垂らされたロープ。
これは『毎朝』の恒例行事である。
「ぐぎぃ!あがっ!助けっ!!!」
「暴れないで姉さん!じっとしててよ!」
「お願いお姉ちゃん!暴れないで!」
「しっかり持ちなさいよ梨晏!!!」
「林檎だってもっと力を入れてよ!!!」
首吊りを強いられる蜜柑、その蜜柑の足を喚きながら必死に支える林檎と梨晏を下衆な笑みを浮かべながら缶ビールをあおる鷯。
双子の林檎と梨晏に父の鷯はいつも言い聞かせている。
『蜜柑が生きてる限りはお前等には暴力は振るわないが、蜜柑が死んだら・・・・次はお前等の、どちらかに蜜柑の代わりをやってもらおうか』
蜜柑に父の鷯はいつも言い聞かせている。
『お前が一人で引き受けるなら妹達に暴力は振るわない。約束してやる』
長女の蜜柑は双子の妹を守る為に必死に耐えているのに対して双子は自分達の身を守る為に姉を生け贄に捧げ続ける。その為に必死になって姉を救おうとしている。三姉妹の滑稽な姿を見て鷯は下衆な笑みを浮かべる。
その後、父の鷯は夜の仕事に備えて就寝。三人姉妹は春夏秋冬、ベランダに正座で待機させられる。当然施錠されており自由に部屋に出入りすることはできない。鷯はペットボトル一本分の水のみを与える。
ちなみに三人の母親は娘達を見捨て数年前に逃げ出していた。
鷯はヤクザの構成員であり自前のマンションで闇カジノを経営し空いている部屋に市役所に潜り込ませた部下と協力して生活保護者を住まわせて最低限のギリギリの生活しかおくれない生活保護費を搾りとる。
闇カジノが行われている部屋に三姉妹の姿もあった。
双子の格好はお客のリクエストに答えて毎日異なる。今日は林檎は水着にエプロン、梨晏は体操服(ブルマ)。林檎はお客の注文した酒を運び、梨晏は室内の清掃をしている。そして蜜柑はカジノが行われている部屋の隣でお客の相手をしている。
林檎と梨晏はお触りありで客は二人が近づくとイヤラシイ目で太腿や胸を撫でるが撫でるだけでそれ以上の事はしない。
だが蜜柑は違う。
蜜柑はここでも全裸で部屋の片隅に正座させられていた。そして大金を注ぎ込み負けのこんだ客の苛立ちの捌け口をさせられる。
今日も負けのこんだ客が蜜柑の髪を乱暴に掴みオーナーである鷯に料金五万円を投げつけ奥の部屋に引きずっていく。そこでは性的なサービスが行われる。
林檎と梨晏の仕事には蜜柑の使用後の掃除も含まれている。乱暴に扱われ気を失っている蜜柑を風呂場に抱えて冷水を貯めた浴槽に投げ込む。それでも蜜柑の意識が戻らない。林檎が溺れないように上半身を支えて梨晏は蜜柑の身体をブラシで隅々まで擦る。
双子は姉を汚物を見るかのような目で見ながら作業を行う。
自分より『下』がいる。
そう思うことで双子は自分を慰める。
いずれは自分達もやらされるとわかっていても。
ドガアアアアアアアアアン!!!
それが姉妹の日常、地獄のような日々が永遠に続くと思っていた。そんな日常をブチ壊されるとは思いもしなかった。
「オラッ!白井ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!
姉妹にとって父である鷯は絶対的な存在だった。過去に逆らった事はある。他の大人に助けを求めた事も寝ている隙に鷯を殺そうとしたこともあった。父が部下に暴力を振るう光景を何でもみせられており自身の身体にも味わったこともある。父殺害が悉く失敗に終わり過度な仕置きを何度も何度も、現在は心を完全にバキバキに折られている。
だが突然マンションのドアを蹴破って入ってきた男に父は怒鳴ることも暴力を振るうわけでもなく機嫌を損なわせないために愛想笑いを浮かべて側に駆け寄っていく姿を目を大きく開かせ双子は驚いた。
「おい、あれって『知和和輪 八行(チワワワ ハチコウ)』だろ?『堂島の暴れ竜』月島竜一の金貸し屋の代理社長じゃねえか?なんでこんなところに?」
「あれが『忠犬』知和和輪か・・・噂に聞いたことがある。御主人の月島竜一の命令を絶対忠実の犬か、人を殺す事も厭わない男だとか本当かは知らんけど。借金を踏み倒して広大な土地である中国に逃げた客を何の手掛かりがないのに一週間ちょっとで見つけ出したとかネットも繋がらないド田舎に逃げていたのにも関わらずにな」
「まさか、あそこから金借りたのか?容赦のない取立てをされることで有名じゃないか」
カジノに訪れた客達が男の話をしていた。双子は怖くて近づけなかったが気になったのでこっそりと覗き込む。
「てめえ、今月分がまだだが言い訳があるなら聞こうか?まあ聞いたところでボコボコにするのは変わらんがな」
「なっ!そんなはずは、すみません電話かけてもよろしいでしょうか?」
知和和輪の許可をもらい携帯電話を取り出す父。どうやら女の所に掛けているようだ。
『ごめ~ん鷯ちゃん!忘れちゃってた!明日に払っておくからデートしようよ~』
「馬鹿野郎!明日じゃ間に合わないんだよ!」
「・・・・今日中に支払う気がないと?」
「あります!払う気はあるんです!!!金がないわけじゃないです!明日必ずお支払いします!お願いします!待ってもらえないでしょうか!待ってもらう分は色をつけてお返ししますから!このとおり!!!」
双子はあの鷯は偽物なんじゃないかとも思い始めた。父はよく人に土下座を強要させるので他人の土下座はよく見たことがある。双子はよく動画や写真を撮らされているからだ。今まで見てきた中でも一・二を争うであろう見事な土下座をする父。
土足で部屋にヅカヅカと入ってきた八行は土下座をする鷯の頭を磨きあげられたピカピカの革靴で踏みつける。
「お前の借りた金は三千万円、残り四百万円。返済期限はあと十分と三十秒、二九、二八、二七」
「カウントダウンが始まってる!!!おい!今すぐ四百万円用意して持って来てくれ!頼む!明日のデートの時に返す!なんなら倍にして返す!欲しいもん何でも買ってやるから!」
「もう鷯ちゃんたら~、そんなに私の気を引きたいの~、きゃはははは!けどもうお酒飲んじゃたから車出せないのよ~。ちゃんと明日持っていってあげるわよ~、きゃはははははははは!」
「明日じゃ間に合わないって言ってるだろ!水飲んで酔い覚ませ!!!誰かに頼めないか?お願いだ!!!」
「・・・・愛してるって言って」
「はああああああああ!!!今それどころじゃねえんだよ!!!メンヘラ女が!!!」
「あ~、電話が切れちゃう~」
「愛してるぜ雅美!!!」
「気持ちがこもってない・・・・」
「アアアアアアアアイ!!!!!!ラアアアアアアアブ!!!!!!ユウウウウウウ!!!!!!マッサミイイイイイイイイ!!!!!!」
「きゃはははははははははははは!!!もう~鷯ちゃんたら~わかったわかったわよ~。じゃあ明日9時にいつもの所に来てね!私も愛してる!!!じゃあね~」
「わかってねえええええええええ!!!待ってえええええええええ!!!」
ブツン!!!
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
「さて・・・包丁くらいは置いてあるだろ?」
「待ってください!電話させてください!まだ何人か金払いのいい女を囲ってるんで!そいつに支払わせますから!」
「あと、五分九秒、八、七、六・・・・・」
八行のカウントが突然止まった。何事かと鷯は八行の視線を向けている方向を見る。隣の部屋からフラフラと歩いてくる蜜柑だった。
一糸纏わぬ裸で顔の腫れは時間が経過し酷くなっておりパンパンに、身体に無数の痣、手足首に縄で縛られたかのような跡、股から先程の客の洗い残しか精液が垂れ流れている。
「お客様?いらっしゃいませ・・・どうぞ私を殴って下さい・・・お客様の苛立ちをぶつけて下さい・・・私は死んでも構いません・・・だって私は人間じゃないんだから・・・お客様は神様・・・神様の暴力は暴力じゃない・・・むしろ施し・・・どうか私に恵んで下さい・・・」
光が宿らぬ虚ろな瞳、脂ぎったボサボサの髪、痩せ細ったガリガリの身体。身体は拭かれておらずビショビショだ。
まるで幽鬼のようにユラユラと歩いていた蜜柑は八行にぶつかり八行の着ていた高級なロングコートを濡れた身体と股から垂れ流れてきた精液で汚す。
「この馬鹿が!!!」
鷯は慌てて立ち上がり蜜柑を引き剥がすと蜜柑の頭を床に叩き付ける。
ゴシャ!グシャ!ゴスッ!バキッ!
「すいません馬鹿娘が!!!もちろんコートは全額弁償します!!!どうか無礼を許してください!!!」
「娘?そいつはお前の娘か?」
「はい!いや、けど血が繋がってるだけです!こんなデキの悪すぎるガキなんて本当に俺の子供なんてありえないですね!」
鷯はヘラヘラと愛想笑いを浮かべて蜜柑の顔を床に叩きつけながら八行の質問に答える。蜜柑を叩き付ける力には八行の制裁されるかもという恐怖と鷯の苛立ちも加わり力強いものになって蜜柑の鼻は折れたのかだばだばと凄い勢いで鼻血を流す。
ドガアアアアアアアアアン!!!
次の瞬間、鷯がブッ飛んでいった。八行の蹴りによってだ。
そして優しく蜜柑を抱き抱える。
「支払いを待ってやるよ。その代わり・・・このガキは俺が引き取る。いいな」
釈迦が垂らした糸を手繰りよせた蜜柑。それに便乗しようと飛び出そうとした林檎と梨晏だったが。
「とりあえずここを出ようか。服は?」
蜜柑は弱々しく首を横に振る。八行は自分の着ていたコートを脱ぎ蜜柑を優しく包みお姫様抱っこをして部屋から出ていく。
「そうだ、何か持っていくものはあるか?あるなら後で送らせるか今持っていくか?」
「『何もないです』。どうか私をこの地獄から連れ出して下さい」
林檎と梨晏の双子は一瞬だけ、一瞬だけ見た。優しく抱き上げられ八行の胸に顔を埋める蜜柑は自分達の姿を見て笑みを浮かべた。
蜜柑は双子を見捨てる事にしたようです。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる