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第62話 諸星真智子と悪童(月島)との出逢い その2

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「えええええ!何?何で、ロシア人の娘にならないといけないのよ!」

ジャキッ!

「え?ならないの?」

月島は真智子の眉間に銃口を押し付ける。

「何でもやるって言ったよな?あれ嘘か?ちょうどいい、海に沈めてやろうか?それとも『魚の餌』になるか?それか『深海探査機』になりたいか?なんなら『テトラポット』になるか?ああん?」

結局全部沈められてるんじゃないの!・・・・ごくり。

「わ、わ、わ、わあああああい!嬉しいなあ! マリアさんでしたよね?よろしくお願いします!」

もう自棄になったのか、真智子は喜びの舞?を踊る。

「オオ、ホントウニ、イインデスカ?」

「イエエエス!オッケー、オッケー!」

「うん、うん、よかったよかった!・・・じゃ、荷物受け取って俺帰るわ」

えええええ!はやっ!もうちょっとアンタからの説明があってもいいんじゃないの!

「あ、そうそう」

ジャキッ!

再び月島が真智子の眉間に銃口を押し付ける。

「逃げたら地の果てまで追い回してやるからな?」

真智子はブンブンと首を縦に振る。

そして月島は船から降りてきた男のロシア人から小さい木箱を受け取ると本当に帰った。

『マジで帰ったよ!どうするの?初対面の人と二人きりでどうすればいいの?』

「マチコチャン、デシタヨネ?」

「はいいいい!そうです!」

「・・・ゴメンナサイネ」

「え?」

「リュウイチノ、イッテイタ、コトハ、キニシナクテ、イインデスヨ。ホントウニ、ゴメンナサイネ」

「あ、あの、」

「リュウイチ二、キオツカワセテ、シマイマシタ」

「・・・・あの、マリアさん?には旦那さんはいないんですか?」

マリア=クズネェツオは真智子の問いに悲しそうな表情をして空を見上げる。

「ジツハ、ワタシニハ、アイスルオットニ、ムスコガ、イマシタガ、コロサレテ、シマイマシタ」

「・・・・え?」

「ワタシハ、モトモト、マフィアデハ、アリマセンデジタ。ケッコンシタ、オットガ、マフィアデシタ。ケド、ワタシハ、シッテイマシタ。ケッコンシテ、コドモガ、デキテ、シアワセナ、セイカツヲ、オクッテイマシタ」

マリアは首飾りに収められた写真を真智子に見せる。

「ケド、ナガクハ、ツヅキマセン、デシタ」

マリア=クズネェツオの夫、マキシム=クズネェツオは『皇帝のマキシム』と呼ばれていて、腕っぷしがあり、いくつもの会社を経営しており、多くの者に慕われ、組織に敵対した者達もひれ伏し部下にしてくれと懇願してくるほどのカリスマ性を持ち、ボスを差し置いて『皇帝』と呼ばれながらも、ボスの一番のお気に入りであり、組織内外に次のボスに間違いなく選ばれると言われていた。

実際にボスも『俺の後を継げるのはマキシム以外にいない』と公言していた。

だが、それを面白く思わない人間がいた。

古参の幹部の一人、『イヴァン』という男だった。

はっきり言って、このイヴァンはボスの幼馴染というだけで幹部になっているだけの凡人だった。

喧嘩が弱い、金勘定が出来ない、人望もない、寧ろ何が出来るの?と聞きたいくらいだった。

それでもボスはイヴァンを幹部に迎え入れたのは、子供の頃にイヴァンに命を助けられたからだそうだ。その話を聞いた奴は、ああ肉壁にする為ね!と思っていた。

だが、イヴァンだけは違った。

『ボスの後継者は自分以外にあり得ない』と思い込んでいた。

ボスに『いや、お前に継がせる気はマジでないから、全くその気はないから。お前に継がせるくらいなら飼い犬のオスシちゃんに継がせるから』と言われていたにも関わらずに。

だからイヴァンはマキシムを殺した。
名前だけの幹部職だったが金ならあった。金で十分な戦力を集めて襲ったが、完全包囲されていながらマキシムは瀕死の重症を負いながらもその場からは逃げ切り、マキシムはマリアの元に帰って来た。
マリアは急いで、病院に連れて行こうとしたが止められた。
組織の内部争いは、敵対組織に隙を見せる事になる。
だから、自分一人が死んで収まるなら死のうと、マリアにそして息子に最後の別れに告げに来た。
そしてマキシムはマリアと息子に看取られ死んだ。

だが、終わりにはならなかった。

マキシムが死んで数日後にイヴァンはマリアを襲ったのだ。
もしマリアがマキシム殺害を知っていて、それをボスに告げ口されるんじゃないかと疑心暗鬼に陥っていた。
その襲撃でマリアは生き残ったが、息子は爆発に巻き込まれて亡くなった。

マリアは生き延びてしまった。

マリアの胸の奥から沸々とどす黒い感情が沸き上がってくる。

『二人の仇を討ちたい、イヴァンを殺したい』

しかしマリアはただの主婦であり彼女自身は戦闘能力なんてほとんどない一般人。マキシムはマフィア関係の人間をマリアに近付けなかったのでツテもない。
どうすればいいかとマリアが途方にくれているとある事を思い出す。前に夫のマキシムに言われた言葉を。

『もし、俺に何かあった時は、地下室の黒電話を使ってある男に連絡しろ。必ず力になってくれるはずだ』

マリアは急いで爆破された家に戻って地下室に入っていき、黒電話を発見。マキシムが言っていた番号を打ち込む。

プルルルル、プルルルル、プルルルル、

出ない!そう思った時、

『おお、兄弟!アンタから連絡してくるなんて珍しいじゃねえか!奥さんと喧嘩して逃げられたか?それとも二児目が出来たのか?仕込むの速すぎだろ!ハハハハハ』

日本語!そういえばマキシムは日本大好きだった。私は何となく聞き取れるくらいで日本語は話せない!どうしよう!

「え、えっと、あの、」

「ハハハハハ・・・・・・・・女?」

「あ、あの、えっと、」

「誰だてめえ?事によっちゃあ、ぶち殺すぞ?(ロシア語)」

「ッ!!あの私はマリアと申します!マキシムの妻の!」

「んんんん?おお!そうなんですか?いやあ綺麗な声ですね、ハハハハハ、で?何で貴女がこの番号を知っているんですか?」

「夫が自分に何かがあったら、頼れときっと力になってくれると言っていたので、」

「・・・・何か、だと」

マリアは電話越しの男に説明した。夫が死に、息子も殺された。仇を討ちたいがどうすることも出来ない。どうか力を貸して欲しいと。

「・・・・兄弟、何故俺を呼ばなかった・・・・分かりました。マリアさんは俺が行くまで隠れていて下さい。けして一人では無茶をしないで下さい」

電話越しの男がそう言うと電話が切れてしまった。

マリアは二時間ほど地下室を探索し外に出た。マキシムの隠していた武器を見つけるが使い方が分からないので使用を断念。ナイフは懐に忍ばせておく。
マリアは地下室から出てすぐに後悔した。
そこにはイヴァンがマリアの捜索に雇ったゴロツキ共に遭遇してしまったのだ。
マリアは必死に逃げるが相手は二十人以上いて、すぐに捕まり車に押し込まれようとしていたその時、

キィィィィィィィィィィィィィィィン!!

チュドオオオオオオオオオオオオオオ!!

突如、『戦闘機』が飛んできて地面に墜落して爆発したのだ。

その衝撃で近くにいたマリアとゴロツキ共は爆風で吹き飛ばされてしまった。

「が、クソッ!一体何が起きやがった!」

「おい!しっかりしろ!死ぬんじゃねえ!」

「あああ、腕が!足が!」

マリアは偶然にもかすり傷程度で済んだが、ゴロツキ連中の中には死者が出たり、爆風と一緒に飛んで来た鉄片で手足が千切れたり、体に突き刺さったりと怪我を負っていた。

そこにメラメラと燃え盛る炎の中から全裸の少年が出てきた。

「・・・・ふう、初めて乗ったから操作ミスっちまった。失敗失敗!アハハハハハ、ああ、さすがに体がズキズキする。やべっ!服が燃えちまった!」

その少年がマリアを見つけると、

「マリアさんそこいたんですか!お怪我は?」

いや、貴方の方が心配されるべきでは! 

「な、何だてめえは?」

「てめえか!あの戦闘機に乗ってやがったのは!」

「クソッ!よくもやりやがったな!」

「何で生きてんだよ!普通は死ぬだろ!」

ゴロツキ共の問いに、

「死なねえよ、ゴムだから・・・いや、冗談だから誰かツッコミいれろよ。俺の体は人より頑丈なんだよ」

怪我が比較的軽く済んだゴロツキ共が全裸の少年に銃器を向ける。

全裸の少年はビビるどころか下半身が『自己主張』し始めた。

「何だと!これだけの武器を突き付けられていながら勃起させただと!」

「ビビってんじゃねえぞ!あんなガキに、」

「デカっ!馬並みじゃねえか!いや、男の価値はチンコのでかさで決まるもんじゃねえ!」

「やっちまえ!あんなふざけた奴は!さっさとぶち殺せ!」

ゴチャ!バキン!バキッ!ゴッ!バキャ!

1分も掛からずにゴロツキ共を始末した全裸の少年は、服を剥ぎ取り、それを着用してマリアの元にやって来て中腰の姿勢になる。

「お初にお目に掛けます。自分は月島竜一と申します。マキシムとは五分の盃を交わした仲、安心して下さい。俺が来たからにはイヴァンという男の好きにはさせません。兄弟の代わりに貴女は俺が必ずお守りします」

こうして月島と名乗る少年が、イヴァンが率いる千人の傭兵に五百の特殊部隊を素手で壊滅させ、そしてマリアはマキシムのナイフでイヴァンを始末した。

その働き全部が何故かマリアの功績として残り、マリアはマキシムのいたマフィアに迎え入れられ、『撃滅のマリア』として内外に恐れられるようになった。
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