52 / 102
第52話 銀月大虎 異世界に到着する
しおりを挟む
「うっ!ここは・・・?」
身体の激しい痛みを感じて目を覚ます銀月大虎。
起き上がれないほどの激痛に顔を歪ませる。
「ぐっ!自己回復しないだと?」
銀月大虎は『邪法』を行使しようとして気付いた。
「自分の邪気を感じない?そんな馬鹿な」
再度発動させようとするが全く反応がない。
「これは『幻界の幽鬼』とかいう奴の呪いか何か?」
銀月大虎は動かせる首だけ動かし周りを見渡す。
「少なくともどこかしらには転移はしているようだな」
転移する前は崩壊した校舎の中だったのが、周りには木々に覆われた場所、切り刻まれて倒壊しているそれほど大きくない建物。
辺りに無数の死体が転がっている。
「ぐっ!この程度の傷で動けなくなるなんて、これじゃあ、まる、で、」
俺は半分悪魔で半分人間だ。それでも心臓を貫かれた程度では死なないくらいの身体を持っていたはず。なのにこの程度の傷で動けなくなるなんて、まるで人間の体になってしまったかのように。
そう考えた時、自分の心にざわめきを感じたが今は無視する。
「はあ、誰か生き残りはいないのか?」
力が入らず寝そべっていると地面から体に振動が伝わってくる。
「これは車・・・じゃないな、人か?いや馬か?複数こちらに近づいてきているのか?」
とりあえずある程度の事情を説明して手を借りよう。
できれば盗賊のような話が通じない連中でない事は祈って。
しばらくすると全員が同じ白い鎧を身に纏い統制の取れた動きをする集団がやって来た。
少なくとも盗賊のような連中には出来ない動きだ。
俺は最後の力を振り絞り手を上げて生きている事をアピールする。
この場で起こった事件を引き起こした犯人の仲間かと疑われるかもしれないがいきなり殺される事はない。
傷を治療して貰ってから事情を説明するか逃げ出せばいい。
・・・そんな悠長な事を考えていた自分を殴りたくなる!
気が付くと治療どころか衛生管理の行き届いてない汚れた牢にブチ込まれていた。
確か、生きている事をアピールした時に集団の中の三人が近寄って、それで気を失う前に見た最後の光景は、その三人組が鞘に収まったままの剣を振りかぶっている姿だった。
それから毎日取り調べという名の暴力を受け続けた。
日の光も入ってこない牢で手錠も一日中外される事もなく、トイレも穴も何もない、ただ牢の端で垂れ流せと言われ、食事も牢の中に投げ込まれて汚い床に落ちたパン一つ。寝る時は目隠し、耳栓、足に追加の枷を嵌められ、牢の床に体を固定される。風呂はなし。
毎日毎日、『お前は帝国の人間だ!』『お前が殺したんだ!』と決めつけられていて、こちらの意見を聞いてくれないどころか、何かを喋ろうとすると『口答えするな』と言われ殴られる。
何日も何日も暴力を受け続ける。
『全人類の皆さん馬鹿にして申し訳なかった!人間の体の耐久力結構あるな!』
こんな扱いを受ければ二、三日持たずに死んでしまうと思っていたが、しぶとく生き残れている。
何日?何週間?
そんな暴力を受け続ける毎日を送っていたある日、いつも暴力を振るってきた兵士に『お前の処刑日が決まった』と一方的に告げられた。
まずい!!!このままでは・・・殺される!!!
しかし、逃げ出そうにも今の俺は歩くのもキツい。身体がこちらの世界に来てから思うように動かない。どうやら身体に受けた傷だけが原因ではないようだ。
そして、何も出来ないまま、処刑日が来てしまった。
最後の食事だと言われて、いつもはパン一つだが二つになっていた。
目隠しをされ、首輪を嵌められ、首輪につけられた鎖を兵士に引っ張られて移動する。
その後、何故か兵舎にある風呂場に案内され、風呂に入らされた。どうやら『処刑人』が汚ならしい今の俺に触れたくないと言ってきたらしい。
体を洗い終えると処刑場にそのまま連れて行かれた。
逃げ出す隙がない!助けも・・・あるわけないか。
そして目隠しだけを外されると一本道の通路に立たされていた。
後ろには槍を構える複数の兵士、前に進むしかない。
俺は思うように動かない体で懸命に進んでいく。通路を抜けると、広い空間に出た。
そして数万人以上の人間が視界に入ってきた。
『これは、ドームか?』
銀月大虎が思考していると、
「久し振りだな~、銀蝿野郎~、まさかてめえも『こっちの世界』に来ているとは思わなかったぜ」
気が付くと正面に一人の男が立っていた。そしてその男の着ている服が自分も通っている学校の制服である事に気づく。
「お前・・・地球から来た人間か?なら、月島の居場所を、『アイツ』の居場所を知っているんだろ!教えてくれ!」
正面に立っていた男の顔が今までニヤニヤと笑っていたのがドンドン表情が変わっていく。
あれ?何かおかしな事でも聞いたか?
「てめえ!俺を!この田島 獅子王丸(タノシマ シシオウマル)を知らない訳じゃねえだろ!」
何故か自己紹介された???
そっちも名を名乗れと言いたいのか???
「俺は隣のクラスの銀月 大虎(ギンゲツ タイガ)だ。すまないが月島 竜一(ツキシマ リュウイチ)と射光矢 月下美人(イルミ ハニー)・・・そしてアプリコット=C=白河(シラカワ)に会いたいんだ!今どこにいる?会わせてくれ!」
田島がプルプルと体を震わせている。顔は下を向いて見えないがどうしたんだろうか?笑われたのか俺?
「まさか俺を覚えていないのかあああああああ!!!ぶっ殺すぞ!!!てめえええええええ!!!」
あれ?なんか怒らせた?
身体の激しい痛みを感じて目を覚ます銀月大虎。
起き上がれないほどの激痛に顔を歪ませる。
「ぐっ!自己回復しないだと?」
銀月大虎は『邪法』を行使しようとして気付いた。
「自分の邪気を感じない?そんな馬鹿な」
再度発動させようとするが全く反応がない。
「これは『幻界の幽鬼』とかいう奴の呪いか何か?」
銀月大虎は動かせる首だけ動かし周りを見渡す。
「少なくともどこかしらには転移はしているようだな」
転移する前は崩壊した校舎の中だったのが、周りには木々に覆われた場所、切り刻まれて倒壊しているそれほど大きくない建物。
辺りに無数の死体が転がっている。
「ぐっ!この程度の傷で動けなくなるなんて、これじゃあ、まる、で、」
俺は半分悪魔で半分人間だ。それでも心臓を貫かれた程度では死なないくらいの身体を持っていたはず。なのにこの程度の傷で動けなくなるなんて、まるで人間の体になってしまったかのように。
そう考えた時、自分の心にざわめきを感じたが今は無視する。
「はあ、誰か生き残りはいないのか?」
力が入らず寝そべっていると地面から体に振動が伝わってくる。
「これは車・・・じゃないな、人か?いや馬か?複数こちらに近づいてきているのか?」
とりあえずある程度の事情を説明して手を借りよう。
できれば盗賊のような話が通じない連中でない事は祈って。
しばらくすると全員が同じ白い鎧を身に纏い統制の取れた動きをする集団がやって来た。
少なくとも盗賊のような連中には出来ない動きだ。
俺は最後の力を振り絞り手を上げて生きている事をアピールする。
この場で起こった事件を引き起こした犯人の仲間かと疑われるかもしれないがいきなり殺される事はない。
傷を治療して貰ってから事情を説明するか逃げ出せばいい。
・・・そんな悠長な事を考えていた自分を殴りたくなる!
気が付くと治療どころか衛生管理の行き届いてない汚れた牢にブチ込まれていた。
確か、生きている事をアピールした時に集団の中の三人が近寄って、それで気を失う前に見た最後の光景は、その三人組が鞘に収まったままの剣を振りかぶっている姿だった。
それから毎日取り調べという名の暴力を受け続けた。
日の光も入ってこない牢で手錠も一日中外される事もなく、トイレも穴も何もない、ただ牢の端で垂れ流せと言われ、食事も牢の中に投げ込まれて汚い床に落ちたパン一つ。寝る時は目隠し、耳栓、足に追加の枷を嵌められ、牢の床に体を固定される。風呂はなし。
毎日毎日、『お前は帝国の人間だ!』『お前が殺したんだ!』と決めつけられていて、こちらの意見を聞いてくれないどころか、何かを喋ろうとすると『口答えするな』と言われ殴られる。
何日も何日も暴力を受け続ける。
『全人類の皆さん馬鹿にして申し訳なかった!人間の体の耐久力結構あるな!』
こんな扱いを受ければ二、三日持たずに死んでしまうと思っていたが、しぶとく生き残れている。
何日?何週間?
そんな暴力を受け続ける毎日を送っていたある日、いつも暴力を振るってきた兵士に『お前の処刑日が決まった』と一方的に告げられた。
まずい!!!このままでは・・・殺される!!!
しかし、逃げ出そうにも今の俺は歩くのもキツい。身体がこちらの世界に来てから思うように動かない。どうやら身体に受けた傷だけが原因ではないようだ。
そして、何も出来ないまま、処刑日が来てしまった。
最後の食事だと言われて、いつもはパン一つだが二つになっていた。
目隠しをされ、首輪を嵌められ、首輪につけられた鎖を兵士に引っ張られて移動する。
その後、何故か兵舎にある風呂場に案内され、風呂に入らされた。どうやら『処刑人』が汚ならしい今の俺に触れたくないと言ってきたらしい。
体を洗い終えると処刑場にそのまま連れて行かれた。
逃げ出す隙がない!助けも・・・あるわけないか。
そして目隠しだけを外されると一本道の通路に立たされていた。
後ろには槍を構える複数の兵士、前に進むしかない。
俺は思うように動かない体で懸命に進んでいく。通路を抜けると、広い空間に出た。
そして数万人以上の人間が視界に入ってきた。
『これは、ドームか?』
銀月大虎が思考していると、
「久し振りだな~、銀蝿野郎~、まさかてめえも『こっちの世界』に来ているとは思わなかったぜ」
気が付くと正面に一人の男が立っていた。そしてその男の着ている服が自分も通っている学校の制服である事に気づく。
「お前・・・地球から来た人間か?なら、月島の居場所を、『アイツ』の居場所を知っているんだろ!教えてくれ!」
正面に立っていた男の顔が今までニヤニヤと笑っていたのがドンドン表情が変わっていく。
あれ?何かおかしな事でも聞いたか?
「てめえ!俺を!この田島 獅子王丸(タノシマ シシオウマル)を知らない訳じゃねえだろ!」
何故か自己紹介された???
そっちも名を名乗れと言いたいのか???
「俺は隣のクラスの銀月 大虎(ギンゲツ タイガ)だ。すまないが月島 竜一(ツキシマ リュウイチ)と射光矢 月下美人(イルミ ハニー)・・・そしてアプリコット=C=白河(シラカワ)に会いたいんだ!今どこにいる?会わせてくれ!」
田島がプルプルと体を震わせている。顔は下を向いて見えないがどうしたんだろうか?笑われたのか俺?
「まさか俺を覚えていないのかあああああああ!!!ぶっ殺すぞ!!!てめえええええええ!!!」
あれ?なんか怒らせた?
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる