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第51話 銀月大虎の旅立ち

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『○○高等学校の1クラスの生徒が一斉消失』

『目撃者は!会話の最中にとある生徒が光に包まれ消えた?』

『謎の最新兵器の餌食に?』

『異世界に召喚されたのではwwww』

突然起こったこの事件は日本中、いや世界中に広まった。

深夜、立入禁止となっている教室に一人の男が来ていた。

『月島・・・白河・・・『悪魔が使う邪気』の痕跡も『天使が使う聖気』の痕跡も『人間が使う仙気』も感じられない?そんな馬鹿な!一体何が起きた!」

男はしゃがみこんで掌を床につけて僅かな痕跡でもないか男は『邪法』を用いて探知しようとするが見つけられない。

「んんん?おめえは確か『魔獣王』の息子の・・・あ~、と、あっ!そうそう『大虎(タイガ)』だったか?大きくなったな」

教室を調べていると突然後ろから話し掛けられた。

『大虎』と呼ばれた男は直ぐ様、その場から飛び退く。

「おいおい、そんなに怖がるなよ。まあ、『人払い』してたのに後ろから話し掛けられたらビックリしても仕方がないか?」

「『ダークロード(闇の帝王)』!!貴方は今魔界にいるはずしゃ!」

「そりゃあ、『息子が消えた』と感じたからな。魔界より息子の方が優先順位は上だし。とりあえず現場を見に来た」

「魔界から人界いる1人の人間の気を感じとったのか!」

「はははは、驚くほどの事じゃない。親が子を思う愛の深さの為せる技さ・・・と言いたいが突然消えたとしか分からねえんだよなあ」

「・・・俺は休んでいたので、実際に見たわけではないのですが、ある生徒は光に包まれて消えたと・・・」

「しかし何の痕跡もなしか・・・わかった。この件は俺が調べとくからお前は調べようとするな。下手したら二次災害に繋がる」

「貴方は魔界の件がまだ片付いていないんじゃ、」

「魔界が滅ぶか息子かと問われたら、俺は息子をとる!それだけだ」

「もしこの件が何者かの仕業だったなら貴方を人界に留めて置くことが目的かもしれない!」

「まあ、魔界にはお前の親父もいるから大丈夫だろ?」

「しかし・・・・」

「ん?どうした?うんこか?」

「いえ、微かにですが、感じるんです、何か」

「んんん?俺は何も感じないが?俺の息子の邪気か?」

「いえ、その、消えた生徒の一人の気、というか、気配、じゃなく存在?を何となくですけど、」

「ニヤニヤ、もしかしてなおんか?なおんなのかね?」

「は?」

「だ~か~ら!女なの!女!ん~、そうかそうか、お前もそういう年頃なのね!」

「・・・あの、お願いがあるんですが!」

「ん?何だ?女を落とす口説き文句でも教えてやろうか?」

「俺を貴方の『ディメンションジャンプ(次元跳躍)』で跳ばしてもらえませんか?」

「は?どこに?」

「俺が今感じている微かな気配を感じる場所です!」

「そんなあやふやな情報だけで行くつもりか?もしかしたら『天界』かもしれないぞ?今のお前の実力じゃあ『下級天使』にすら
勝てないぞ?『天界』にいる連中は悪魔が入り込む事を絶対に許さない。向こうに着いた途端に総攻撃をくらうかもしれないんだぞ?」

「まだ・・・・決着をつけていませんから」

「二度と帰って来れないかもしれないぜ。お前の親父やお袋さんも悲しむぜ、きっとな」

「それでも行かなきゃいけないんです・・・」

「わかった、お前を跳ばしてやる・・・・」

銀月の体が光に包まれていく。

「あの、あと一ついいですか?」

「なにっ!もう転送を中断することは出来ないぞ!」

「いえ、本当に一つだけなんで・・・っ!」

銀月は日本刀で『ダークロード』の胸を貫いた。

「がはっ!何を・・・する・・・」

「お前こそ誰だ?『本物』の闇の帝王なら俺の攻撃程度で膝を地面につけるわけないだろ。上手く偽装したつもりだろうが、あの人は時々家に来て親父と酒を飲んだりしてるんだよ!それにあの人は俺の事をガキ扱いしていて『小虎(コトラ)』って呼んでるんだよ!」

偽物は口から血を吐き出した。

「ぐそっ!でき同士のぐぜに!」

「それだけじゃない!お前は天使の住む場所を『天界』と言ったがそれは間違いだ。天使の住む場所は『境界』と呼ばれる『天界』に最も近い場所と言われる世界だ。そんな事魔界に住んでいる者なら誰もが知っている!天使だってそんな事わかっている!そして『天界』はまだ誰も到達した者はいないと言われてんだよ!そんな事も知らないから、最初は人間かと思ったがどうやら違うようだな?貴様は何者だ!」

銀月は刀を振るうが偽物の体を通り抜けた。

「がははははは、もう時間切れのようだな!」

偽物に先ほど与えた傷がもう修復されていた。

「はははははは、俺が偽物とわかっていて何故『跳ばしてくれ』と頼んだ!」

「『アイツ』の元に行ける可能性があるならと試してみようと思っただけだ!」

「はははははは、それで敵とわかっている奴の力を借りようとするか普通!」

「そうね、やはり『魔獣王』と同じで脳筋なのかしら?」

ズガアアアアアアアアアアアアアン!!!

突然聞こえた声と共に学校の校舎が崩れ落ちた。

銀月は転送中の制限で手を出せなくなった分、こちらも透けて無傷だが偽物のダークロードは校舎の崩壊に巻き込まれた。

「くそ!何が起きた!!」

が、さすがに巻き込まれた程度では死なないくらいには頑丈のようだ。

偽物と俺は同じタイミングで上空を見上げた。

そこには『天使』がいた。

しかも『ただの天使』ではない。

「だ、だい、『大天使』!!!」

腰の部分よりも長い黒髪で優しげな表情をしている高身長の美しい女性。美しさは置いておいて、それだけならその辺の人間と大差ないが、その女性は浄化の炎のドレスを身に纏い、女性の背中には12枚の純白の翼が生えていた。

銀月は初めて見る上級天使をマジマジと見てしまう。

「あれが大天使?」

「『幻界の幽鬼』まだ生き残りがいたの?『霊気』を感じたから来てみたけど」

「いきなり大天使がご登場とは・・・そんなに『我等』が怖いか?」

「『私』と『ダークロード(闇の帝王)』の二人に滅ぼされたくせによくそんな態度がとれるわね?」

なっ!最強の天使と悪魔が手を組んで滅ぼした?いや、手を組まないと滅ぼせない相手?そんな奴が存在するのか?

「ははははは、少なくとも俺は生きているぞ大天使!仕留め損ねておいてよく言える!」

「今から消えるんだから変わりないでしょ?・・・それより魔獣王の息子の・・・名前は?」

「ぎ、銀月、大虎、」

天使と悪魔は相容れない。とはいえ大天使相手に強気には出れない。

「そう、申し訳ないけど頼めるかしら?」

頼み?大天使の?

「私の娘である『射光矢 月下美人(イルミ ハニー)』を守りなさい。あの子はただの人間だから自身を守る力を持っていないのよ」

「え?えええええ!『大天使の娘』!」

「『奴』を本当に仕留め損ねていた場合、全ての『駒』が『奴』の手に渡ってしまったわ。『あの世界』は私では手を出せない。貴方が守りなさい!いいわね!」

「え?いや俺は・・・・」

「このままだと何もかも消えてしまうわよ」

「っ!わかりました!」

「あと!『ダークロード(闇の帝王)』の息子に伝えなさい。『思い出しては駄目』よ。そして『全力を出すな』よ。必ず伝えなさい」

そして銀月大虎は光に包まれ消えた。
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