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第29話 馬鹿どもがやって来た

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「で、意外だね。まさか三日月や秋月だけじゃなく釈迦峰、碧海、七瀬、マイヤーズ、白河までいるなんて思わなかった」

「それはこっちのセリフだね浅田君、君と月島君が繋がっているとは思わなかったよ」

「ね?なんか馬車がこっちくるんだけど?」

「「「「「「 え? 」」」」」」

教会の外で談話しながら月島が戻るまで待機していた一行の前に豪奢すぎる馬車が現れた。

「あれって?ユステリカ王国の国旗だよね?」

馬車に掲げられた国旗は青色と白色を斜めに分けられ、左上に赤色で三日月が描かれ、更に真ん中に赤色で馬に乗った鎧兜を身にまとっている騎士。騎士はランスに丸盾を装備している。

「うん、忍ぶ気ゼロだな?罠かな?罠だよね?罠って言ってよ?こんな夜更けに?」

「馬車がくるとは聞いていたけど、王家専用の馬車でくるとか馬鹿だろ?まさかあれに第2王子が乗ってる・・・なんてないよな?王家の馬車と質素な馬車の2台か?どうする?月島ならぶっ殺せって言いそうだけど?」

「じゃあ、多数決とるかい?殺すか捕まえるか?」

「それより捕まえて竜一に判断して貰えばいい?」

「じゃあ、そうしようか。とりあえず捕縛ってことで、秋月と白河はラクシャータちゃんを連れて下がってなよ」

王家専用の馬車が一行の前に止まった。

降りてきたのはまぎれもなくユステリカ王国第2王子『サンライズ=ユステリカ』だった。
身長は170cmくらいの金髪で乙女ゲームの攻略キャラばりの超イケメンでキラキラオーラが全開。一目で一般人ではないと分かる。

「うん、マジだな。馬鹿なの?こんな夜の人気のない森の奥にくるとか馬鹿だろ?もしかして護衛が周囲に隠れているんじゃないのか?」

「ん、それはない」

「え?なんで分かるんだい三日月君?」

「『レーダー』に反応は馬車に乗っている連中だけ」


三日月が持っているのは『リアル小鬼(ゴブリン)ごっこ』というエロゲーのアイテムである。

このゲームは主人公(ゴブリン)はある日、人間が作った魔道具を拾う所から始まる。

その魔道具は『ヒューマンレーダー』と呼ばれる兵器だ。

最大直径10kmの範囲にいる人間を探知出来る。

敵の隠密行動完全無効化能力をもつ。

他にもレーダーとしての機能だけではなく『色々な仕掛け』と『特殊能力』組み込まれた魔道具である。

この魔道具を駆使して主人公(ゴブリン)は自身の隠密スキルを上昇させつつ、数々の村や町に潜入してホームレスや町娘から商人の娘、挙げ句貴族の女や王族の女を犯していくエロゲーなのだ。

時に逃げる女を(鬼ごっこ)で捕まえレイプし孕ませたらステージクリア。
時に隠れた女を(かくれんぼ)で見つけ出しレイプし孕ませたらステージクリア。
護衛に囲まれ守られている女を(サイレントアサシン)で護衛を殺していき、守り手がいなくなって一人になった女をレイプし孕ませたらステージクリアしていく等のゲーム。
最後には主人公が(ゴブリンキング)に進化してとある国の王都を支配してゴブリンが溢れさせた都でゴブリンの国を建国宣言して、王族の女達を生き残った人間の民衆の前で公開セックスして孕ませたらゲームクリアといった流れのエロゲーだ。



「この『レーダー』には王家の馬車に二人。質素な馬車に三人乗っている。計七人しかいない」

「バレたらマズイと思うなら、まず王家の馬車でくるなよって話だよな?」

王子の次に少女が出てきた。
うん、見た目は普通だね。明らかに王子とは不釣り合いな少女が出てきた。豪華なドレスや装飾品を身につけていなかったら平民で通るくらいに普通だ。ブスではない、胸や腰やお尻といった体つきも・・・・普通だ。

質素な馬車からも三人の男が出てきた。二人はユステリカ王国内の正規の鎧兜を着た者、そしてもう一人は道化師の格好をした丸々太った大男が出てきた。はっきり言って道化師が不気味すぎる。

王子と少女の二人がこちらに近づいてくる。

「ちょっとラクシャータはどこにいるの!さっさと連れてきなさいよ!早く!早く!早く!早く!連れてきなさい!」

「落ち着きなよ。『シャープル』・・・と言っても無理かな?おい何をしている。さっさとあの小娘を連れてこい」

コイツら凄いな。氷漬けの教会やトラックに一行の姿や服装にツッコミを入れずに自分達の欲する物を要求してくる。

「悪いがあの嬢ちゃんは渡せねえな」

「うっさいこのハゲ!!何逆らってんの!!塵平民の風情が!!」

釈迦峰のセリフに間髪入れずに返すシャープル。

「私はこの国の王の妻になる女なのよ!ハゲの分際で何逆らってんの?このハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!死刑よ!死刑!」

「ハゲ、ハゲ言うなよ!『能力』を使えば生やせるは!!」

「きゃあああ、汚らわしい平民が私に口答えを!サンライズ様助けて下さい!」

「私の妻に!次期王妃になんたる態度だ!このハゲが!シャープルの言う通りに死刑にしてやるからな!ハゲ野郎!!」

「だからハゲって言うなああああ!!」

「もういいからハゲ、じゃなかった釈迦峰君は下がってくれ」

「ななせええええ!お前今ハゲったよね!ハゲって言ったよね!」

「話が進まないんだよ!ハゲはひっこんでな!」

「マイヤーズ!てめえええええええ!!」

血涙を流しながらツッコミを入れる釈迦峰。それを無視して浅田が前に出てサンライズに問いかける。

「サンライズ=ユステリカ殿、貴方の婚約者はラクシャータではなかったですかねえ?横にいる女は誰ですか?ああ、シャープルさんでしたっけ?これって浮気ですよね?あと貴方は第2王子ですよね?貴方の兄上が次期国王にと言う声は内外ともに多いですよね?それに今王はまだご健在ですよね?それに世襲制ですよね?貴方は可能性は皆無とまで町中の噂ですよね?」

「誰だ貴様は?まあいい答えてやろう。父上はもうとっくに『死んでいる』。異世界の住人が現れた時にな!ようやく帝国とケリをつけられるというものだ!異世界人の力を利用すれば世界すら支配できる!なのに父上は反対されたのだ!」

『彼等は異世界人だ。この世界の争いに干渉させるべきじゃない。お前には言ってなかったが、ゴルディエス帝国とは秘密裏に交渉は進んでいる。こちらの領地を引き換えに支援してくれると言っている。いい加減に先代達が始めたくだらん争いを終わらせなければな。土地と引き換えに民が救えるなら問題ない』

「なんて情けない事を言うものでな。死んでもらったよ!あとは兄上が死ねば私の天下だ!」

「マジですか。え?異世界人が来た時?なら異世界人が会っていた王様は?」

「ははは、私の手駒には幻術使いがいるのだよ!宰相が私の為に用意してくれたのだ!」

・・・・利用されてんじゃね?

浅田達の心中は一致した。

宰相に利用されてんじゃん!かなりの確率で黒幕宰相だよね!影から王子を操ろうとしてるよね!

「ふふふ、何故私がこれほどの秘密を喋ったのか分かるか?」

「『貴様等はここで死ぬから喋っても問題ない』以外の気のきいたセリフがあるなら聞きますけど?あと貴方の婚約者はラクシャータではないんですか?という質問に答えてないんですけど?」
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