初恋〜推しの弟を好きになったみたいです〜

美並ナナ

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♯11

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はぁ~~~。

蒼太くんと百合さんとの食事から帰宅すると、ベッドに勢いよくダイブする。

そして深い深いため息を漏らした。

あのあと、私は内心動揺しながらも平然を保って、2人におかしく思われることもなく楽しく食事を終えた。

食事の最中は深く考えないようにしていたが、家に着いて1人になると嫌でも色々なことが頭の中をグルグルと回る。

私はまた無意識にため息を吐き出した。

(よし、ここはちゃんと整理しよう!いつまでも見て見ぬふりをしたり、混乱してあたふたしているのは私らしくない!)


ガバっと身体を起こすと、ベッドの上で姿勢を正し、私は脳内で一人会議を開催し始めた。

脳内では、由美1号と由美2号が議論を繰り広げ出す。

由美1号:「今日の議題は、最近の由美の異常事態についてよ!何か意見はある?」

由美2号:「それについては、食事の最中に由美自身が自覚し始めたように、症状が恋と一致してるわ!だから由美は蒼太くんに恋しちゃったってことよ!」

由美1号:「そこは私も同意だわ!利々香の言ってたことに当てはまるものね。ドキドキしたり、胸がキュンとしたり、ギュッとしたり。完全にここ最近の由美の状態だもの」

由美2号:「あの新年の時、由美は利々香から蒼太くんを紹介してって言われて、なんとなく嫌だと感じてたわよね?あれもきっと自覚はまだなかったけど、蒼太くんを取られたくなかったのよ!」

由美1号:「なるほど!的を得てるわ!そういえばあの時、利々香が何か言いたそうにしてたけど結局言葉を飲み込んでたわね。あれは利々香がそれに気付いてたのかもね」

由美2号:「絶対にそうよ!だからそのあとにデートのための服を見繕ったんだわ。利々香ったら先読みがスゴイわね!」


どうやら、利々香は私の気持ちをお見通しだったようだ。

あの時の不思議に思った利々香の言動に納得がいった。

由美1号と2号の議論はまだまだ続いていく。


由美1号:「じゃあ由美が蒼太くんに恋したんじゃないかって思う具体的な出来事はどう?」

由美2号:「まずはあれよね、美術館デート。あれを誘われた時に急に意識し出したわよね。それに当日は休日仕様の蒼太くんにドキドキしっぱなしだったし!」

由美1号:「柄にもなく緊張してたわよね。展示室で耳元で話しかけられた時なんて、心臓の鼓動が爆速だったわ!」

由美2号:「そうそう!それにケーキで迷う自分を見て違うものを注文してくれてたり、自分を見ていてくれていることにはとても喜びを感じてたわね!」

由美1号:「そりゃ、好きな人に見てもらえてるなんて嬉しいものね!」

由美2号:「一方で嫉妬もしてたわよ!ほら、百合さんと3人で食事に行った時に蒼太くんが予約したお店を見て、女の人と行ったのかなって思って苦しくなってたわよね?」

由美1号:「あれは胸がギューってなるってやつだわ!百合さんとの食事と言えば、やっぱり決定打はあれよね?」

由美2号:「そうそう、あれ!」

由美1号&2号:「「姉思いで優しいところ!」」

由美1号:「あの姉を大切にする姿を見て、完全に心を持って行かれたわよね!」

由美2号:「間違いないわ」

由美1号&2号:「「ということで結論!由美、あなたは蒼太くんに恋してます。好きになっちゃったんです。いい加減に認めなさい!!」」

「‥‥‥!」

なんと、私は蒼太くんに恋をしてしまったらしい。

25年生きてきて、今まで恋愛になんて興味なかった私に好きな人ができたのだ。

しかもその相手が、超イケメンでモテる人であり、飲み友達であり、私の崇拝する推しの弟だなんて!

今まで飲み友達として散々取り繕うことなくぶっちゃけ発言してる相手である。

しかも相手からは女として見られていないのはほぼ確実だ。

(恋を自覚した瞬間に、たぶんこの想いが成就することはないだろうということまで分かってしまうなんて‥‥!)

遅ればせながら自覚した恋に、私は思わず頭を抱えてしまった。

ブーブーブー。

その時、ちょうどスマホのバイブ音が部屋に鳴り響いた。

音の長さからして、メッセージではなく電話だ。

ベッドから立ち上がり、鞄からスマホを取り出して着信の相手を見て、私は固まってしまった。

(そ、蒼太くんだ‥‥!どうしようーー!?)

まさに今、恋を自覚した相手だ。

どんな態度で電話に出たら良いのかとパニックになってしまう。

何度も言うが、25年生きてきて初めて、つまり私にとって初恋なのだ。

だからこんな気持ちになる経験がなくて、どうコントロールすればいいのか手に余っていた。

(無視するのは申し訳ないよね?出るしかないよね!?)

誰も答えはくれないけど、誰かに同意を得たい気分で問いかけると、私は静かに通話のボタンを押す。

スマホを耳にあてると、蒼太くんの低くて耳触りの良い声が聞こえてきた。

「もしもし、由美ちゃん?」

「は、はいっ!」

「ははっ。そんな声出してどうしたの?家着いた?」

「あ、うん、着いたよ!今日はありがとね!」

やっぱり動揺が声に現れてしまったようで、蒼太くんに笑われてしまった。

(今の私、顔が真っ赤だよね。対面じゃなくて良かった‥‥!!)

「こちらこそ姉ちゃんの誘いに付き合ってくれてありがとね。電話したのはさ、誕生日のことなんだけど」

「た、誕生日のことがどうかしたの?」

「いや、なんかあの時はあの場のノリで誘っちゃったけど本当に大丈夫だったのかなと思って。由美ちゃんは姉ちゃんの前だと嫌でも断れないでしょ?」

どうやら心配して電話をかけてきてくれたらしい。

私のことを思いやってくれる優しさに胸がキュンとする。

「全然嫌じゃないよ!!むしろ、予定もなかったしラッキーなくらいだよ!」

私は力説するように、嫌ではないことをアピールする。

自覚した今の私からすれば、誕生日に好きな人と過ごせるなんてラッキー以外のなにものでもないのだ。

「それなら良かった。せっかくだし、ちょっとお高いところで食事しようか?誕生日だし」

「賛成!誕生日が同じなんてすごい偶然だしね!!」

最初こそ緊張したが、いざ話し出すと普通に会話ができて一安心する。

顔が見えない電話だからというのも緊張をほぐしているのかもしれない。

私たちは誕生日のことを簡単に決めると、「おやすみ」とお互いに挨拶をして電話を切った。

電話の後にふと気づく。

(あ、着ていく服がない!!それに誕生日プレゼントも準備しなくっちゃ!!)

急いでスマホのメモに「新しい服を買う」「蒼太くんへのプレゼントを買う」とto doリストに書き込んだ。

今年の誕生日は、私史上一番波乱の誕生日となりそうだったーー。

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