11 / 25
♯10
しおりを挟む
今季一番の冷え込みだと今朝ニュースで報じられていた2月半ばのある日。
私は朝から百合さんと会議室に籠って、ひたすらキャンペーン当選品の発送作業を行っていた。
当選者へ送るために、当選品をパッキングして、宛名書きをしているのだ。
本来この作業は外注しているのだが、手配ミスが発覚してスケジュールの関係上、自分達で手作業することになったのだ。
当選人数が1,500名と結構な人数なので、手作業となると、なかなか骨の折れる仕事だった。
「なんかこうやってひたすら手を動かしてると無心になれますね~!」
「本当だね。たまにはこういう仕事も息抜きになるしいいよね」
百合さんと私は手の動きは止めずに、作業をしながら雑談に興じる。
私にとってはたとえ骨の折れる仕事でも、推しと会議室に籠っての作業なので、なかなか贅沢な時間だった。
「あ、そうだ。そういえばちょうどこの前、蒼太から聞いたんだけど、由美ちゃんと蒼太って飲み友達になったんだってね。蒼太、由美ちゃんに迷惑かけてない?大丈夫?」
突然、百合さんの口から蒼太くんの名前が飛び出して少しびっくりした。
私と蒼太くんが一緒に飲むようになって数ヶ月経つが、今まで百合さんからそれについて何も触れられたことがなかったのだ。
私も百合さんに話していなかった。
どうやら蒼太くんも話題にしていなかったようで、最近になって百合さんは伝え聞いた様子だった。
「そうなんですよー!実はコラボの打合せの前に偶然会って。その時は百合さんの弟さんだとは知らなかったんですけどね。その後、なんか飲み友達になっちゃいました!全然迷惑とかはないですよー!百合さんの神々しさについて語り合ってます!!」
私はニッコリと笑って答えた。
百合さんは神々しさというワードに反応してか、どう返すべきか困ってちょっと曖昧な微笑みを浮かべている。
「蒼太くんの話を聞いてると、蒼太くんと百合さんって本当に仲良んだなって思いましたよ!」
「蒼太が変なこと話してなければいいけど。そうだ、せっかくだし、今度3人でゴハンでも行かない?ちょうど蒼太から近々お誘いがあったから、由美ちゃんもぜひ一緒に」
「え、いいんですか!?姉弟水入らずのゴハンなんじゃないんですか??」
「そんなことないよ。由美ちゃんが来てくれると楽しいと思うから私も嬉しいし」
そんなふうに推しに言っていただけたのなら、断るという選択肢は私にはない。
こうして、後日百合さんと蒼太くんと私という3人で食事に行くことになった。
3人での食事は、それからすぐ日程が決まり、翌週の金曜の夜になった。
お店は蒼太くんが予約してくれたらしい。
私と百合さんは仕事を終えると一緒に会社を出て直接お店へと向かった。
「今日のお店はパスタが美味しいらしいよ。蒼太が予約してくれるお店はいつもハズレがないから、由美ちゃんも期待していてね」
「はい!楽しみです!」
百合さんから向けられる麗しい微笑みに、私は元気よく答える。
お店は駅から近いオフィスビルの中に入っているところで、迷うことなく到着することができた。
オシャレな大人の男女が集いそうなお店で、いかにも女性が好みそうな雰囲気だった。
(こういうお店を知ってるのは、以前に女性と来たからなのかな?蒼太くんはモテるもんね)
ふとそんなことを思い、なんだか胸がぎゅっと締め付けられる。
こんな苦しい感覚は初めてで、私の身体がおかしくなってしまったのかと不安になった。
この前の美術館の時から、私の身体はなにかいつもと違って変なのだ。
お店の入り口で予約名を告げると、すぐに店員さんにテーブルへと案内される。
蒼太くんはすでに席に着いて私たちを待っていたようだった。
「姉ちゃん、由美ちゃん!お疲れ!」
「蒼太、早かったんだね。待たせちゃった?」
「いや、俺もさっき着いたとこだよ」
姉弟は、いつもの通りといった感じで会話を始める。
百合さんも蒼太くんも、コラボの打合せの時は私情は一切挟まずにビジネスライクに接しているので、こうしてフランクに話す2人を見るのは初めてだった。
「おふたりが姉弟の感じで話してるのを見るのが初めてなんで、すごく新鮮です!」
「確かに仕事の時は姉ちゃんが完全に割り切って取引先の人として接してくるから、俺もそれに合わせてるしね」
あれは蒼太くんが百合さんに合わせていたらしい。
姉思いの蒼太くんらしい発言だった。
「仕事なんだし当たり前でしょ?」
「百合さんは亮祐常務と仕事で接する時もそんな感じですもんね!私は公私混同しない百合さんすごく良いと思います!!」
そんなところも百合さんが素敵である所以なのだ。
私は尊敬の念を込めた眼差しで百合さんを見つめた。
「はいはい、由美ちゃんの話は長くなりそうだから、先に注文しない?これがおすすめらしいよ」
蒼太くんは私の推し賛辞が始まりそうなのを察して、手元のメニューを広げて話を切り替えた。
ちなみに、百合さんのことを崇めているのは隠してないしご本人にも堂々と伝えているが、「推し」と思っていることはご本人には秘密だ。
百合さんの性格からして困惑されそうだから、蒼太くんにも秘密にして欲しいと伝えてあった。
私たちは蒼太くんのおすすめに従って、店員さんに料理とお酒を注文すると、また会話に興じる。
「さっきは私と蒼太が姉弟として話してるのが新鮮って由美ちゃんは言ってたけど、由美ちゃんと蒼太が友達として話してるのも初めて見るから新鮮だね」
百合さんはさっきの話題を挙げつつ、私と蒼太くんを見比べるように交互に視線を向けた。
なんの邪推もない単純な興味が宿った眼差しだった。
「年も近いし、百合さんっていう共通の知り合いがいるから話しやすいんですよ~!」
「本当に姉ちゃんの話ばっかりだよ」
「ちょっと、蒼太、変なこと由美ちゃんに話してないよね?」
「変なことって?例えば?」
「‥‥‥もう!」
蒼太くんはニヤニヤとした笑みを浮かべ、百合さんをからかっている。
それに対して百合さんは言葉に窮して、不満を訴えるように蒼太くんを軽く睨んでいる。
(なにこれ!こんな2人見たことない!ジャレてるみたい!!可愛いっ!!)
2人の意外なやりとりに私は大興奮だ。
「ごめん、ごめん。別に変なことなんて言ってないよ。ね、由美ちゃん?」
「もちろんですよー!百合さんの素敵さを語り合ってるだけですから!」
「‥‥それならいいけど」
百合さんを見る蒼太くんの眼差しが本当に優しくて、お姉さんを大切にしていることがその視線だけでとても伝わってくる。
食事をしている最中も、飲み物がなくなりそうだったら声をかけたり、寒そうだったら自分の上着を貸したり、蒼太くんは百合さんの様子を見て察して世話を焼いていた。
(こういうところを見たら、そりゃ彼女はシスコンって思うだろうな~)
過去に彼女を百合さんと会わせたことがあると話していたことを思い出した。
彼女に百合さんと会ってもらえば安心するのでは?と私が聞いた時にそう言っていたのだ。
確かあの時も会ってもらって以降、余計に話題にすると嫌がられると言ってたけど、実際に2人を見てその理由が何か分かった気がする。
なのに、不思議なのはそんな彼女たちの反応とは相反して、私はなぜか胸がキュンとしているのだ。
こんなに姉を大切にしている姉思いなところが素敵だなと感じてしまっている。
(え、私今、蒼太くんのこと素敵だと思った!?あの優しい眼差しにキュンときてる!?うそでしょーー!?)
一体全体、私は本当にどうしてしまったのだ。
胸が苦しくなったり、キュンとしたり、ドキドキしたり、ここ最近ものすごく心臓が忙しい。
ーーその人のことを考えるとドキドキしたり、胸がギューってしたり、一緒にいると嬉しかったり、キュンとしたりしない?
そこでふと年始に利々香に言われたことを思い出す。
あの時、利々香は恋をするとどうなるかを語っていた。
しかし、この言葉はまるで予言のようではないだろうか。
なぜなら今の私の状態にぴったりなのだ。
(え、え、え、えええーーー!!つまり、これが恋ってことなの!?うそでしょ!?)
私の頭の中は突然のことに大パニックだ。
しかも恋してるかもしれない相手と、その姉であり私の推しが目の前にいるのだ。
こんなに私が取り乱してるなんて決してバレるわけにはいかない。
私は人知れずそっと息を吐くと、平常心を保つために気合を入れ直した。
そんな私の状態なんて想像もしていないであろう百合さんは、かわらずニコニコ微笑みながら私と蒼太くんに話を振ってくる。
「2人の年齢は1コ違いだっけ?そういえば、もうすぐ蒼太の誕生日だよね」
「あ、そっか。確かにそうだね」
どうやら蒼太くんは3月生まれのようだ。
そこで百合さんは私の誕生日についても思い出したようだ。
「あれ?確か3月って由美ちゃんも誕生日じゃなかったっけ?」
「そ、そうです!覚えていてくださったなんて嬉しいですー!!」
「由美ちゃんも3月なの?ちなみに3月の何日?」
「に、21日だよー!」
平常心を保っている私だけど、やっぱり若干声が上擦ってしまっていた。
私から誕生日の日付を聞いた蒼太くんは、びっくりしたように目を丸くしている。
「マジで!?俺も21日なんだけど!まさか誕生日が一緒なんて驚きだなぁ」
「すごい偶然だね。せっかくなんだから2人でお祝いすればどう?蒼太、彼女いないんでしょ?」
「それいいね。由美ちゃん予定なかったら一緒にケーキでも食べようよ。もちろんお酒も」
「い、いいアイディアだねー!」
なんと誕生日が同じ日だったことが発覚し、百合さんの口添えもあって、怒涛の速さで誕生日を一緒に祝うことが決まってしまった。
私の心臓はこれでもか!というくらいバクバクと脈打ち始める。
(こんな状態で、私は誕生日に蒼太くんと2人で心臓は持つんだろうか‥‥??)
そんな心配が私の頭をよぎったのだったーー。
私は朝から百合さんと会議室に籠って、ひたすらキャンペーン当選品の発送作業を行っていた。
当選者へ送るために、当選品をパッキングして、宛名書きをしているのだ。
本来この作業は外注しているのだが、手配ミスが発覚してスケジュールの関係上、自分達で手作業することになったのだ。
当選人数が1,500名と結構な人数なので、手作業となると、なかなか骨の折れる仕事だった。
「なんかこうやってひたすら手を動かしてると無心になれますね~!」
「本当だね。たまにはこういう仕事も息抜きになるしいいよね」
百合さんと私は手の動きは止めずに、作業をしながら雑談に興じる。
私にとってはたとえ骨の折れる仕事でも、推しと会議室に籠っての作業なので、なかなか贅沢な時間だった。
「あ、そうだ。そういえばちょうどこの前、蒼太から聞いたんだけど、由美ちゃんと蒼太って飲み友達になったんだってね。蒼太、由美ちゃんに迷惑かけてない?大丈夫?」
突然、百合さんの口から蒼太くんの名前が飛び出して少しびっくりした。
私と蒼太くんが一緒に飲むようになって数ヶ月経つが、今まで百合さんからそれについて何も触れられたことがなかったのだ。
私も百合さんに話していなかった。
どうやら蒼太くんも話題にしていなかったようで、最近になって百合さんは伝え聞いた様子だった。
「そうなんですよー!実はコラボの打合せの前に偶然会って。その時は百合さんの弟さんだとは知らなかったんですけどね。その後、なんか飲み友達になっちゃいました!全然迷惑とかはないですよー!百合さんの神々しさについて語り合ってます!!」
私はニッコリと笑って答えた。
百合さんは神々しさというワードに反応してか、どう返すべきか困ってちょっと曖昧な微笑みを浮かべている。
「蒼太くんの話を聞いてると、蒼太くんと百合さんって本当に仲良んだなって思いましたよ!」
「蒼太が変なこと話してなければいいけど。そうだ、せっかくだし、今度3人でゴハンでも行かない?ちょうど蒼太から近々お誘いがあったから、由美ちゃんもぜひ一緒に」
「え、いいんですか!?姉弟水入らずのゴハンなんじゃないんですか??」
「そんなことないよ。由美ちゃんが来てくれると楽しいと思うから私も嬉しいし」
そんなふうに推しに言っていただけたのなら、断るという選択肢は私にはない。
こうして、後日百合さんと蒼太くんと私という3人で食事に行くことになった。
3人での食事は、それからすぐ日程が決まり、翌週の金曜の夜になった。
お店は蒼太くんが予約してくれたらしい。
私と百合さんは仕事を終えると一緒に会社を出て直接お店へと向かった。
「今日のお店はパスタが美味しいらしいよ。蒼太が予約してくれるお店はいつもハズレがないから、由美ちゃんも期待していてね」
「はい!楽しみです!」
百合さんから向けられる麗しい微笑みに、私は元気よく答える。
お店は駅から近いオフィスビルの中に入っているところで、迷うことなく到着することができた。
オシャレな大人の男女が集いそうなお店で、いかにも女性が好みそうな雰囲気だった。
(こういうお店を知ってるのは、以前に女性と来たからなのかな?蒼太くんはモテるもんね)
ふとそんなことを思い、なんだか胸がぎゅっと締め付けられる。
こんな苦しい感覚は初めてで、私の身体がおかしくなってしまったのかと不安になった。
この前の美術館の時から、私の身体はなにかいつもと違って変なのだ。
お店の入り口で予約名を告げると、すぐに店員さんにテーブルへと案内される。
蒼太くんはすでに席に着いて私たちを待っていたようだった。
「姉ちゃん、由美ちゃん!お疲れ!」
「蒼太、早かったんだね。待たせちゃった?」
「いや、俺もさっき着いたとこだよ」
姉弟は、いつもの通りといった感じで会話を始める。
百合さんも蒼太くんも、コラボの打合せの時は私情は一切挟まずにビジネスライクに接しているので、こうしてフランクに話す2人を見るのは初めてだった。
「おふたりが姉弟の感じで話してるのを見るのが初めてなんで、すごく新鮮です!」
「確かに仕事の時は姉ちゃんが完全に割り切って取引先の人として接してくるから、俺もそれに合わせてるしね」
あれは蒼太くんが百合さんに合わせていたらしい。
姉思いの蒼太くんらしい発言だった。
「仕事なんだし当たり前でしょ?」
「百合さんは亮祐常務と仕事で接する時もそんな感じですもんね!私は公私混同しない百合さんすごく良いと思います!!」
そんなところも百合さんが素敵である所以なのだ。
私は尊敬の念を込めた眼差しで百合さんを見つめた。
「はいはい、由美ちゃんの話は長くなりそうだから、先に注文しない?これがおすすめらしいよ」
蒼太くんは私の推し賛辞が始まりそうなのを察して、手元のメニューを広げて話を切り替えた。
ちなみに、百合さんのことを崇めているのは隠してないしご本人にも堂々と伝えているが、「推し」と思っていることはご本人には秘密だ。
百合さんの性格からして困惑されそうだから、蒼太くんにも秘密にして欲しいと伝えてあった。
私たちは蒼太くんのおすすめに従って、店員さんに料理とお酒を注文すると、また会話に興じる。
「さっきは私と蒼太が姉弟として話してるのが新鮮って由美ちゃんは言ってたけど、由美ちゃんと蒼太が友達として話してるのも初めて見るから新鮮だね」
百合さんはさっきの話題を挙げつつ、私と蒼太くんを見比べるように交互に視線を向けた。
なんの邪推もない単純な興味が宿った眼差しだった。
「年も近いし、百合さんっていう共通の知り合いがいるから話しやすいんですよ~!」
「本当に姉ちゃんの話ばっかりだよ」
「ちょっと、蒼太、変なこと由美ちゃんに話してないよね?」
「変なことって?例えば?」
「‥‥‥もう!」
蒼太くんはニヤニヤとした笑みを浮かべ、百合さんをからかっている。
それに対して百合さんは言葉に窮して、不満を訴えるように蒼太くんを軽く睨んでいる。
(なにこれ!こんな2人見たことない!ジャレてるみたい!!可愛いっ!!)
2人の意外なやりとりに私は大興奮だ。
「ごめん、ごめん。別に変なことなんて言ってないよ。ね、由美ちゃん?」
「もちろんですよー!百合さんの素敵さを語り合ってるだけですから!」
「‥‥それならいいけど」
百合さんを見る蒼太くんの眼差しが本当に優しくて、お姉さんを大切にしていることがその視線だけでとても伝わってくる。
食事をしている最中も、飲み物がなくなりそうだったら声をかけたり、寒そうだったら自分の上着を貸したり、蒼太くんは百合さんの様子を見て察して世話を焼いていた。
(こういうところを見たら、そりゃ彼女はシスコンって思うだろうな~)
過去に彼女を百合さんと会わせたことがあると話していたことを思い出した。
彼女に百合さんと会ってもらえば安心するのでは?と私が聞いた時にそう言っていたのだ。
確かあの時も会ってもらって以降、余計に話題にすると嫌がられると言ってたけど、実際に2人を見てその理由が何か分かった気がする。
なのに、不思議なのはそんな彼女たちの反応とは相反して、私はなぜか胸がキュンとしているのだ。
こんなに姉を大切にしている姉思いなところが素敵だなと感じてしまっている。
(え、私今、蒼太くんのこと素敵だと思った!?あの優しい眼差しにキュンときてる!?うそでしょーー!?)
一体全体、私は本当にどうしてしまったのだ。
胸が苦しくなったり、キュンとしたり、ドキドキしたり、ここ最近ものすごく心臓が忙しい。
ーーその人のことを考えるとドキドキしたり、胸がギューってしたり、一緒にいると嬉しかったり、キュンとしたりしない?
そこでふと年始に利々香に言われたことを思い出す。
あの時、利々香は恋をするとどうなるかを語っていた。
しかし、この言葉はまるで予言のようではないだろうか。
なぜなら今の私の状態にぴったりなのだ。
(え、え、え、えええーーー!!つまり、これが恋ってことなの!?うそでしょ!?)
私の頭の中は突然のことに大パニックだ。
しかも恋してるかもしれない相手と、その姉であり私の推しが目の前にいるのだ。
こんなに私が取り乱してるなんて決してバレるわけにはいかない。
私は人知れずそっと息を吐くと、平常心を保つために気合を入れ直した。
そんな私の状態なんて想像もしていないであろう百合さんは、かわらずニコニコ微笑みながら私と蒼太くんに話を振ってくる。
「2人の年齢は1コ違いだっけ?そういえば、もうすぐ蒼太の誕生日だよね」
「あ、そっか。確かにそうだね」
どうやら蒼太くんは3月生まれのようだ。
そこで百合さんは私の誕生日についても思い出したようだ。
「あれ?確か3月って由美ちゃんも誕生日じゃなかったっけ?」
「そ、そうです!覚えていてくださったなんて嬉しいですー!!」
「由美ちゃんも3月なの?ちなみに3月の何日?」
「に、21日だよー!」
平常心を保っている私だけど、やっぱり若干声が上擦ってしまっていた。
私から誕生日の日付を聞いた蒼太くんは、びっくりしたように目を丸くしている。
「マジで!?俺も21日なんだけど!まさか誕生日が一緒なんて驚きだなぁ」
「すごい偶然だね。せっかくなんだから2人でお祝いすればどう?蒼太、彼女いないんでしょ?」
「それいいね。由美ちゃん予定なかったら一緒にケーキでも食べようよ。もちろんお酒も」
「い、いいアイディアだねー!」
なんと誕生日が同じ日だったことが発覚し、百合さんの口添えもあって、怒涛の速さで誕生日を一緒に祝うことが決まってしまった。
私の心臓はこれでもか!というくらいバクバクと脈打ち始める。
(こんな状態で、私は誕生日に蒼太くんと2人で心臓は持つんだろうか‥‥??)
そんな心配が私の頭をよぎったのだったーー。
10
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。
★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★
☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆
※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。
お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!

転生令嬢、シスコンになる ~お姉様を悪役令嬢になんかさせません!~
浅海 景
恋愛
物心ついた時から前世の記憶を持つ平民の子供、アネットは平凡な生活を送っていた。だが侯爵家に引き取られ母親違いの姉クロエと出会いアネットの人生は一変する。
(え、天使?!妖精?!もしかしてこの超絶美少女が私のお姉様に?!)
その容姿や雰囲気にクロエを「推し」認定したアネットは、クロエの冷たい態度も意に介さず推しへの好意を隠さない。やがてクロエの背景を知ったアネットは、悪役令嬢のような振る舞いのクロエを素敵な令嬢として育て上げようとアネットは心に誓う。
お姉様至上主義の転生令嬢、そんな妹に絆されたクーデレ完璧令嬢の成長物語。
恋愛要素は後半あたりから出てきます。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる