私の瞳に映る彼。

美並ナナ

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エピローグ

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「ええええーー!うそでしょ!亮祐常務が結婚!?」

「しかも相手が広報部の並木さん!?」

「全然そんな素振りなかったのに、いつの間に!?」

「でもお似合いすぎて、悔しいけど何も言えないっ!」


そんな女性社員の大絶叫が駆け巡ったのは、その年の10月。

私と亮祐さんが出会って1年ちょっと、付き合って1年が経った頃のことだった。

社内は蜂の巣を突いたような騒ぎとなり、どこにいってもこの話題で持ちきり状態だ。



私、並木百合は、あのニューヨークでのプロポーズから約半年後、10月の私の誕生日に亮祐さんと入籍して大塚百合となった。

半年待ったのは私が亮祐さんを止めたからだ。

亮祐さんはあのあと2週間後にはニューヨークから戻ってきて、すぐにでも入籍しようと言ってきた。

でも仕事が忙しい時だったし、亮祐さんが常務に着任してからまだ半年だったから、もう少し落ち着いてからでも充分だと思ったのだ。

それに社内の女性陣のことを考えても、いきなりよりは期間が空いている方が衝撃が少ないだろうというのもあった。

いずれにしても衝撃は大きかったようで、その目算は外れたかもしれない。



「ただいま、百合」

「おかえりなさい。夜ごはん準備できてますよ!」


入籍は半年後だったけど、私たちは半年前から一緒に住んでいる。

一緒にいたいという想いは同じだったので、結婚を前に亮祐さんのマンションに私が引っ越した。

一緒に住みつつも、社内では関係を隠したまま他人のふりを貫き、そして入籍を機にオープンにしたのだった。

特に大々的に発表をしたわけではないのだが、なぜか入籍翌日には社内でその事実は知れ渡っていたのは今でも謎である。

とりあえず先に籍を入れたけれど、さらに半年後の春には海外での結婚式を予定している。

「また一緒に来ようね」という約束を叶えて、ニューヨークで式を挙げるつもりだ。



高校の頃に彼を亡くし、約10年も時が止まったままだった私。

その後付き合う男性からは口々に「本当に俺のこと好き?」と言われて振られてきた。

だけど、亮祐さんと出会い、私の時間は動き出したのだ。

受け身だった私が自分から動く大切さを知ったし、将来に向けて考えたり、努力するようにもなった。

そして続けられなかった恋にきちんと別れを告げることもできた。

もう私の瞳に亮祐さんは亮祐さんとしてしか映っていない。

「本当に俺のこと好き?」というセリフを言われることもない。

「百合は本当に俺のこと好きだね」と言われる日々を私は彼と今送っている。

これからもいつまでもトナリで一緒に。


~END~
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