私の瞳に映る彼。

美並ナナ

文字の大きさ
8 / 47

《閑話》弟から見た姉

しおりを挟む
俺、並木蒼太は25歳の会社員だ。

大学を卒業後、大学の先輩に誘われてベンチャー系のIT企業に就職し、営業の仕事をしている。

仕事は至って順調。

彼女はいないけど、仕事が充実してるから今は特に欲しいとも思っていない。

人間関係にも恵まれているし、ストレスフリーな日々を送っている。



そんな俺が最近気になっているのは、姉の百合だ。

姉は俺より2つ年上で、子供の頃から仲が良い。

思春期も特に喧嘩することなく過ごしてきた。

弟の俺から見ても姉は美人だと思う。

だから姉と会った俺の友人からは「紹介してくれ」といつも頼まれることばかりだ。



ただ、まぁ俺の姉は友人には紹介しづらい女である。

高校の頃は春樹くんという彼氏がずっといたから紹介できなかったし、する必要もなかった。

春樹くんが家に遊びに来ることも多く、俺も仲良くしてもらっていた。

見た目も性格もカッコよく、姉を大事にしてくれていたから俺は好きだった。

そんな春樹くんが事故で帰らぬ人となった時、もちろん俺もかなりショックだった。

だけど、姉の明るく振る舞う姿は痛々しくて正直みているのが辛かった。

姉に途切れなく彼氏ができるようになったのは、大学に入ってからで、それは今現在まで続いている。

本人は告白されて好きな気持ちがあったから付き合ったと言うが、俺から見ると、気持ちを紛らわすためのただの逃避だ。

続かなくてすぐ別れるのも当たり前だ。

「俺のこと本当に好き?」と言われて毎回振られるらしいが、もっともだと思う。

こんな現状を知ってるから、友達には姉を紹介できないし、したくない。



まぁ俺は姉が苦しんでるのも分かってるし、どうこうしようとは思わない。

いつか姉にも、何かきっかけがあって、現状を乗り越える時が来るだろう。

そんなふうに思っていたら、先日電話で話した姉の様子がおかしかった。

久しぶりに春樹くん絡みで動揺しているらしい。

会社に春樹くんそっくりな男が現れたとか。



俺はなんかいいきっかけになるんじゃないかなと思った。

春樹くんに似た男と対峙して、いい加減に過去を乗り越えて欲しい。

割と普段からマイペースであまり感情を表に出さず飲み込む姉だから、こんなに動揺して感情を揺らすのは良い傾向だ。


とりあえず、これから姉・百合の周りは何か変化がありそうだ。

抱え込みがちな姉だから、ちょっと頻繁に気にしてやった方がいいかな~。

10月には姉の誕生日もあるしな。

最近は電話ばっかりで会ってなかったから、久々に外に出掛けようと誘ってみるか。

そんなふうに姉を気にかける良き弟の俺であるーー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

取引先のエリート社員は憧れの小説家だった

七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。 その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。 恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

君がたとえあいつの秘書でも離さない

花里 美佐
恋愛
クリスマスイブのホテルで偶然出会い、趣味が合ったことから強く惹かれあった古川遥(27)と堂本匠(31)。 のちに再会すると、実はライバル会社の御曹司と秘書という関係だった。 逆風を覚悟の上、惹かれ合うふたりは隠れて交際を開始する。 それは戻れない茨の道に踏み出したも同然だった。 遥に想いを寄せていた彼女の上司は、仕事も巻き込み匠を追い詰めていく。

氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。 お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、 “氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。 最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、 実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき―― 舞子の中で、恋が芽生えはじめる。 でも、彼には誰も知らない過去があった。 そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。 ◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか? ◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか? そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。 笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。 関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。 仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。 「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...