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#30. Break off the Engagement
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「私との婚約を破棄してください」
佐々木さんと面会した日から数日後、私は大学病院の近くにあるカフェの個室で恭吾さんと向き合っていた。
ここは記憶を失くす前、恭吾さんから春臣さんのことを知らされた場所だ。
あの時は動揺してしまって婚約破棄の話が結局うやむやになってしまっていた。
だから、今日この場所で再びやり直す。
そして父によって敷かれたレールから脱して自分の道を行く。
そう強い決意を胸にした今日の私には何の動揺もなく、心は恐ろしいくらい凪いでいた。
反対に、いつも動じない恭吾さんがわずかに瞳を揺らす。
「……君、記憶が戻ったのか……?」
「はい。すべて思い出しました」
冒頭の一言だけで恭吾さんは私の状況を察したようだった。
私がはっきり肯定すると、目に見えて気落ちした様子になる。
「そうか、それは良かった……と言うべきなんだろうな。……せめてあと数週間遅ければ。あともう少しだったのだが」
「あともう少し? どういう意味ですか……?」
恭吾さんは私が記憶を取り戻したことを喜ぶどころか悔しげだ。
このよく分からない恭吾さんの態度と言葉に私は首を傾げさるを得ない。
一体どういうことなのだろうか。
恭吾さんは沈黙したままテーブルの上にあるコーヒーで喉を潤した後、やや躊躇うように次の言葉を口した。
「結婚式の招待状を発送してしまえば、もう後戻りはできないだろう? お父上がお許しにならないだろうから」
「恭吾さん、それって……」
「……君の記憶が戻らなければこのまま君と結婚できると思っていた。だが、やはりそう上手くはいかないな」
そう言って恭吾さんは自虐的な笑みを口元に浮かべた。
笑っているけどどこか悲しげで目が離せない。
そもそも恭吾さんがこんなふうに感情を揺らすのは初めて見た気がする。
それに恭吾さんがなぜそこまで私との結婚に固執するのか分からない。
「……あの、恭吾さんはなぜそこまで結婚したかったんですか? やっぱり東條家の婿になって父の後継者になりたかったから、ですか?」
「いや。ただ君と結婚したかっただけだ」
「えっ、私とですか……? なぜ私と?」
「君を愛しているからに決まってるだろう」
……えっ? 愛してる? 恭吾さんが私を?
当たり前のことをだと言わんばかりにサラリと言い切られて私は目を瞬いた。
思わず自分の耳を疑ってしまう。
そんなこと今まで一言も恭吾さんの口から聞いたことはない。
言葉どころか態度からだって感じたことはなかった。
「……割り切った政略結婚だと思っていました。恭吾さんも同じ気持ちだと思っていたのですが、違ったんですか?」
「お父上を通した結婚の方が確実に君を手に入れられると思ったからそうしただけだ。僕は政略結婚だと思ったことはない。……むしろ一目惚れだった」
「一目惚れ……? お見合いの時のことですか?」
「いや、もっと前のことだ」
「えっ……?」
またしても恭吾さんの口から飛び出した驚きの発言に私は激しく瞬きを繰り返す。
私は恭吾さんとお見合い以前には会ったことがない。
お見合いの時が初対面だったはずなのに、もっと前とはどういうことだろうか。
疑問符を頭に浮かべていると、それを見越したように恭吾さんが話を続ける。
「君が大学生の頃、誠司を訪ねて病院に来ていたことがあっただろう? その時にたまたま見かけて一目惚れしたんだ。あとで誠司に君が誰かを聞いて、従姉妹だと知った。同時に君のお父上が大学卒業の頃に君の見合いを考えていると聞いて、紹介して欲しいと頼んだんだ」
言われて過去を振り返ってみると、確かに大学生の頃に所用があって誠司くんのもとを訪ねたことは何度かあった。
まさかその時に恭吾さんに目撃されていて、一目惚れまでされているとは驚きだった。
「君の伴侶は婿入りで東條病院の後継者になると聞いて、君のお父上のお眼鏡に叶うように努力した。念願叶って認められ、君とお見合いできることになったというわけだ」
あのお見合いにそんな背景があったとは想像もしなかった。
だから一度会っただけですぐ婚約が決まったのかと妙に納得がいく心地だ。
「お見合い後、すぐに結婚をと思ったが君が時間が欲しいと言って、それならそれでいいと思って了承した。婚約者になれたからもう確実だと思っていたからな。……今思えばあの時に無理にでも結婚しておくんだったな」
「……恭吾さんがそんな風に思っていたなんて全然知らなかったです……。言ってくださったら良かったのに」
「言えるわけがないだろう? 必死すぎてかっこ悪い」
恭吾さんは私の視線から逃れるようにふっと目を逸らす。
そして苦々しい表情を顔に浮かべ、まるで罪を告白するような口ぶりでつぶやいた。
「……今さら言っても信じてもらえないだろうが、君と交際するようになって、正直愛しすぎてどう接していいか分からなかった。だからそっけない態度をとってしまっていたと思う。君が誤解するのも致し方ないのかもしれない」
……自分のキャリアや将来の利のために私と婚約したと思っていた恭吾さんが、まさかこんなに私を想っていてくれたなんて。
それに気が付かなかった私は、やはりとことん周囲をきちんと見ていなかったのだ。
恭吾さんのことだって、私がもっと注意深ければ気付けていたかもしれない。
ただ、一方でこうも思う。
こと恋愛に関しては、経験不足の私は相手にハッキリ言葉にしてもらわないと分からなかっただろうと。
深い気持ちを秘めているも表に出せず、実は不器用だった恭吾さんと、恋愛未経験な上に盲目的な私は、相性が悪かった。
「僕は君との結婚を望んでいる。ここまでの話を聞いても、婚約破棄を考え直すつもりはないか……?」
「……ごめんなさい。気持ちは変わらないです」
「……分かってた。君がそう言うのは。君が記憶喪失になってあわよくばと思ってたけど、もうこうなっては無理だろう……君の想いを尊重して婚約破棄を受け入れよう」
再び意思を問われた私は、この前とは違い心を揺らすことはなかった。
恭吾さんの目を見据えて思いのままに答えると、彼はようやく決心がついたようで婚約の破棄を受け入れてくれた。
「ただし、君のお父上が受け入れるかは分からないし、僕から取りなしはしない。君が自分で説得してくれ。僕は今でもこのまま君が僕の妻になってくれたらと思っているから手は貸さない」
「はい。もちろんです。前にお伝えした通り、恭吾さんに不利益がないようにします」
私はゆっくりと恭吾さんに向かってお詫びと感謝の気持ちを込めて頭を下げた。
恭吾さんは黙ってそれを眺めていたが、最後にここまで一度も触れなかった春臣さんのことについて口にした。
「……君は婚約破棄をして久坂春臣と一緒になるつもりなのか?」
問いかけられた瞳には「あの事実を知った今も?」と疑問が浮かんでいる。
恭吾さんは春臣さんの客観的な事情は知っているが、彼の本当の想いを知らない。
私は騙されていただけだと思っているのだろう。
だから私は自分の気持ちをありのままに告げる。
「私の彼への気持ちは変わっていないです。でも一緒になるとか、そういうことは正直今は分かりません。……彼はいなくなってしまったので」
「そうか。君はそんなに彼を愛してるのか」
「はい。愛しています」
「久坂春臣が姿を消したのは僕のせいだろうな」
「えっ?」
……恭吾さんのせい? どういうこと?
恭吾さんの口から思いがけず飛び出した言葉に意表を突かれて私は小さく声を上げた。
恭吾さんと春臣さんには接点がないはずなのに、なぜ恭吾さんのせいだというのだろうか。
「君が緊急搬送された時、久坂春臣と待ち合せしていたんだろう? 彼から電話がかかってきて、事情を話したら病院へ駆け付けてきたんだ。それで彼と顔を合わせた」
「そう、だったんですか」
「その時に僕が彼に告げた。君の前から消えて欲しい、もう関わらないで欲しいと」
「……!」
知らされた内容に私は息を飲んだ。
その場面の春臣さんの心を思うと、胸が押し潰されたように苦しくなる。
……だから春臣さんはいなくなったんだ。入院中あえて眠っている時しか会っていかなかったのもそのせい? もしかしてあれは最後の挨拶だったの……?
自分との待ち合せに向かう途中で私が刺され、しかも刺したのが自分を想う女性だったと知った時の春臣さんの衝撃はいかほどだっただろうか。
しかも私に復讐のために意図的に近づいたと罪悪感を抱えている最中での出来事だ。
さらなる罪の意識が覆い重なり、悔恨に苛まれたことは容易に想像がつく。
そこに恭吾さんからのストレートな言葉を受け、きっとその通りだと受け入れたに違いない。
手紙にも「すべての元凶は俺だ。俺が香澄に近づかなかったら、こんなことにはならなかったのではないか」と謝罪の言葉とともに自責の念が切々と綴られていた。
……どんなに苦しんだのだろう。ううん、今も苦しんでいるのかもしれない。
春臣さんはただでさえ、幼い頃にご両親のことでツライ思いをしたのに。
そしてその無念を晴らそうとして私に近づき、結果的に諦めることにして、そしてこんな事態になって。
春臣さんの今を思うと胸が張り裂けそうだった。
……せめて私が春臣さんの代わりに無念を晴らしてあげたい。
いずれにしても私も正式に婚約破棄をしようと思えば対峙しなければいけない――父と。
私は恭吾さんに時間を取ってくれた礼を述べ、席を立ち上がる。
その視線の先はまっすぐと前を向いていた。
自分の人生の舵を自分で握るため、
春臣さんの復讐を代わりに成し遂げるために、
乗り越えなければならない相手を見据えて――。
佐々木さんと面会した日から数日後、私は大学病院の近くにあるカフェの個室で恭吾さんと向き合っていた。
ここは記憶を失くす前、恭吾さんから春臣さんのことを知らされた場所だ。
あの時は動揺してしまって婚約破棄の話が結局うやむやになってしまっていた。
だから、今日この場所で再びやり直す。
そして父によって敷かれたレールから脱して自分の道を行く。
そう強い決意を胸にした今日の私には何の動揺もなく、心は恐ろしいくらい凪いでいた。
反対に、いつも動じない恭吾さんがわずかに瞳を揺らす。
「……君、記憶が戻ったのか……?」
「はい。すべて思い出しました」
冒頭の一言だけで恭吾さんは私の状況を察したようだった。
私がはっきり肯定すると、目に見えて気落ちした様子になる。
「そうか、それは良かった……と言うべきなんだろうな。……せめてあと数週間遅ければ。あともう少しだったのだが」
「あともう少し? どういう意味ですか……?」
恭吾さんは私が記憶を取り戻したことを喜ぶどころか悔しげだ。
このよく分からない恭吾さんの態度と言葉に私は首を傾げさるを得ない。
一体どういうことなのだろうか。
恭吾さんは沈黙したままテーブルの上にあるコーヒーで喉を潤した後、やや躊躇うように次の言葉を口した。
「結婚式の招待状を発送してしまえば、もう後戻りはできないだろう? お父上がお許しにならないだろうから」
「恭吾さん、それって……」
「……君の記憶が戻らなければこのまま君と結婚できると思っていた。だが、やはりそう上手くはいかないな」
そう言って恭吾さんは自虐的な笑みを口元に浮かべた。
笑っているけどどこか悲しげで目が離せない。
そもそも恭吾さんがこんなふうに感情を揺らすのは初めて見た気がする。
それに恭吾さんがなぜそこまで私との結婚に固執するのか分からない。
「……あの、恭吾さんはなぜそこまで結婚したかったんですか? やっぱり東條家の婿になって父の後継者になりたかったから、ですか?」
「いや。ただ君と結婚したかっただけだ」
「えっ、私とですか……? なぜ私と?」
「君を愛しているからに決まってるだろう」
……えっ? 愛してる? 恭吾さんが私を?
当たり前のことをだと言わんばかりにサラリと言い切られて私は目を瞬いた。
思わず自分の耳を疑ってしまう。
そんなこと今まで一言も恭吾さんの口から聞いたことはない。
言葉どころか態度からだって感じたことはなかった。
「……割り切った政略結婚だと思っていました。恭吾さんも同じ気持ちだと思っていたのですが、違ったんですか?」
「お父上を通した結婚の方が確実に君を手に入れられると思ったからそうしただけだ。僕は政略結婚だと思ったことはない。……むしろ一目惚れだった」
「一目惚れ……? お見合いの時のことですか?」
「いや、もっと前のことだ」
「えっ……?」
またしても恭吾さんの口から飛び出した驚きの発言に私は激しく瞬きを繰り返す。
私は恭吾さんとお見合い以前には会ったことがない。
お見合いの時が初対面だったはずなのに、もっと前とはどういうことだろうか。
疑問符を頭に浮かべていると、それを見越したように恭吾さんが話を続ける。
「君が大学生の頃、誠司を訪ねて病院に来ていたことがあっただろう? その時にたまたま見かけて一目惚れしたんだ。あとで誠司に君が誰かを聞いて、従姉妹だと知った。同時に君のお父上が大学卒業の頃に君の見合いを考えていると聞いて、紹介して欲しいと頼んだんだ」
言われて過去を振り返ってみると、確かに大学生の頃に所用があって誠司くんのもとを訪ねたことは何度かあった。
まさかその時に恭吾さんに目撃されていて、一目惚れまでされているとは驚きだった。
「君の伴侶は婿入りで東條病院の後継者になると聞いて、君のお父上のお眼鏡に叶うように努力した。念願叶って認められ、君とお見合いできることになったというわけだ」
あのお見合いにそんな背景があったとは想像もしなかった。
だから一度会っただけですぐ婚約が決まったのかと妙に納得がいく心地だ。
「お見合い後、すぐに結婚をと思ったが君が時間が欲しいと言って、それならそれでいいと思って了承した。婚約者になれたからもう確実だと思っていたからな。……今思えばあの時に無理にでも結婚しておくんだったな」
「……恭吾さんがそんな風に思っていたなんて全然知らなかったです……。言ってくださったら良かったのに」
「言えるわけがないだろう? 必死すぎてかっこ悪い」
恭吾さんは私の視線から逃れるようにふっと目を逸らす。
そして苦々しい表情を顔に浮かべ、まるで罪を告白するような口ぶりでつぶやいた。
「……今さら言っても信じてもらえないだろうが、君と交際するようになって、正直愛しすぎてどう接していいか分からなかった。だからそっけない態度をとってしまっていたと思う。君が誤解するのも致し方ないのかもしれない」
……自分のキャリアや将来の利のために私と婚約したと思っていた恭吾さんが、まさかこんなに私を想っていてくれたなんて。
それに気が付かなかった私は、やはりとことん周囲をきちんと見ていなかったのだ。
恭吾さんのことだって、私がもっと注意深ければ気付けていたかもしれない。
ただ、一方でこうも思う。
こと恋愛に関しては、経験不足の私は相手にハッキリ言葉にしてもらわないと分からなかっただろうと。
深い気持ちを秘めているも表に出せず、実は不器用だった恭吾さんと、恋愛未経験な上に盲目的な私は、相性が悪かった。
「僕は君との結婚を望んでいる。ここまでの話を聞いても、婚約破棄を考え直すつもりはないか……?」
「……ごめんなさい。気持ちは変わらないです」
「……分かってた。君がそう言うのは。君が記憶喪失になってあわよくばと思ってたけど、もうこうなっては無理だろう……君の想いを尊重して婚約破棄を受け入れよう」
再び意思を問われた私は、この前とは違い心を揺らすことはなかった。
恭吾さんの目を見据えて思いのままに答えると、彼はようやく決心がついたようで婚約の破棄を受け入れてくれた。
「ただし、君のお父上が受け入れるかは分からないし、僕から取りなしはしない。君が自分で説得してくれ。僕は今でもこのまま君が僕の妻になってくれたらと思っているから手は貸さない」
「はい。もちろんです。前にお伝えした通り、恭吾さんに不利益がないようにします」
私はゆっくりと恭吾さんに向かってお詫びと感謝の気持ちを込めて頭を下げた。
恭吾さんは黙ってそれを眺めていたが、最後にここまで一度も触れなかった春臣さんのことについて口にした。
「……君は婚約破棄をして久坂春臣と一緒になるつもりなのか?」
問いかけられた瞳には「あの事実を知った今も?」と疑問が浮かんでいる。
恭吾さんは春臣さんの客観的な事情は知っているが、彼の本当の想いを知らない。
私は騙されていただけだと思っているのだろう。
だから私は自分の気持ちをありのままに告げる。
「私の彼への気持ちは変わっていないです。でも一緒になるとか、そういうことは正直今は分かりません。……彼はいなくなってしまったので」
「そうか。君はそんなに彼を愛してるのか」
「はい。愛しています」
「久坂春臣が姿を消したのは僕のせいだろうな」
「えっ?」
……恭吾さんのせい? どういうこと?
恭吾さんの口から思いがけず飛び出した言葉に意表を突かれて私は小さく声を上げた。
恭吾さんと春臣さんには接点がないはずなのに、なぜ恭吾さんのせいだというのだろうか。
「君が緊急搬送された時、久坂春臣と待ち合せしていたんだろう? 彼から電話がかかってきて、事情を話したら病院へ駆け付けてきたんだ。それで彼と顔を合わせた」
「そう、だったんですか」
「その時に僕が彼に告げた。君の前から消えて欲しい、もう関わらないで欲しいと」
「……!」
知らされた内容に私は息を飲んだ。
その場面の春臣さんの心を思うと、胸が押し潰されたように苦しくなる。
……だから春臣さんはいなくなったんだ。入院中あえて眠っている時しか会っていかなかったのもそのせい? もしかしてあれは最後の挨拶だったの……?
自分との待ち合せに向かう途中で私が刺され、しかも刺したのが自分を想う女性だったと知った時の春臣さんの衝撃はいかほどだっただろうか。
しかも私に復讐のために意図的に近づいたと罪悪感を抱えている最中での出来事だ。
さらなる罪の意識が覆い重なり、悔恨に苛まれたことは容易に想像がつく。
そこに恭吾さんからのストレートな言葉を受け、きっとその通りだと受け入れたに違いない。
手紙にも「すべての元凶は俺だ。俺が香澄に近づかなかったら、こんなことにはならなかったのではないか」と謝罪の言葉とともに自責の念が切々と綴られていた。
……どんなに苦しんだのだろう。ううん、今も苦しんでいるのかもしれない。
春臣さんはただでさえ、幼い頃にご両親のことでツライ思いをしたのに。
そしてその無念を晴らそうとして私に近づき、結果的に諦めることにして、そしてこんな事態になって。
春臣さんの今を思うと胸が張り裂けそうだった。
……せめて私が春臣さんの代わりに無念を晴らしてあげたい。
いずれにしても私も正式に婚約破棄をしようと思えば対峙しなければいけない――父と。
私は恭吾さんに時間を取ってくれた礼を述べ、席を立ち上がる。
その視線の先はまっすぐと前を向いていた。
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