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#08. Marriage Preparation
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「やぁ、片桐くん。よく来てくれた。久しぶりではないかね」
「ご無沙汰しております。本日はお招きありがとうございます」
「私としては片桐くんはもう身内みたいなものだと思っているからね。そう気負わず、楽にしてくれたまえ」
父のお気に入りの美術品が飾られた自慢の応接室で、父と恭吾さんが握手を交わす。
挨拶が終わると席を勧められた恭吾さんは、重厚感のある革張りのソファーに腰掛けた。
その隣に私も腰を下ろす。
父は私たちの向かい側だ。
母はこの場におらず、今日はこの三人で私の実家にて会合の席を設けていた。
私たちが席に着いたのを確認した使用人たちがすぐさま淹れたてのコーヒーを給仕する。
全員に飲み物が行き渡ると、彼らは素早く応接室をあとにし、その場は三人だけになった。
「それで今日は具体的に結婚の話を詰めるのだったな。婚約から一年が過ぎ、ようやく結婚の話が進められるというわけか。片桐くん、香澄のワガママに付き合わせて悪かったね。なにぶん可愛い一人娘で私は香澄には敵わないんだよ」
「とんでもないことです。僕も香澄さんの希望は聞いて差し上げたかったので」
「そう言ってもらえると救われる。香澄、お前も片桐くんの懐の広さに感謝するのだぞ」
「はい。もちろんです。私の願いを聞き届けてくださってありがとうございます」
娘を溺愛している父親を人前で演じている父の言葉に従いながら、私は恭吾さんにお礼を述べる。
父に愛情をたっぷり与えられて育った素直なお嬢様を演じるのは慣れたものだ。
私は楚々とした笑顔を浮かべた。
「当初の予定通り、結婚後は片桐くんがうちに婿入りしてくれるという点は変わりないかね?」
「ええ、もちろんです。僕の両親も同意しております」
「片桐くんの家は、地方で病院を開業しておられるのだったかな。そちらの後継は良いのかね?」
「はい。歳の離れた弟が現在医大生でして。弟がいるので問題ありません」
「そうか、それは良かった。心置きなくうちへ婿へ来られる。東條家は君を歓迎する」
「ありがとうございます」
時折コーヒーに口をつけながら、父と恭吾さんの会話は進んでいく。
今のところ私に発言を求められるような場面はなく、私は大人しく恭吾さんの隣でコーヒーを啜るだけだ。
「ただね、できれば結婚までに君に箔付したい。もちろん片桐くんの優秀さや実力を私は知っているがね。親族に紹介するにあたり、分かりやすいものが欲しいと思っている。なにしろ私は香澄の婿として君を東條総合病院の後継にと考えているのだから」
「ええ、東條先生のおっしゃる通りかと思います」
「話が早くて助かるよ。で、どうかね? 何か良い考えはないかい?」
「実はそういうこともあろうかと、現在論文の執筆に取り組んでおります」
「ほう、論文ね」
「特異な症例に対する新しい術式についての論文のため、世界的な雑誌にacceptされる見込みも高いと思っております」
「なるほど。それは良い。片桐くんの確かな実績とキャリアに繋がるだろう」
父は満足そうに顎を撫でて頷いた。
私と恭吾さんの結婚の話のはずなのに、当の本人である私についてはまるで触れられない。
まるで恭吾さんが東條家と結婚するようだ。
いや、真実そうだ。
恭吾さんは東條家に婿入りして父の後継になるために結婚するのだ。
それが恭吾さんの人生にとってメリットがあるから。
相手は別に私でなくても、東條家の娘なら誰でも構わないのだと私はちゃんと理解している。
「して、その論文はいつ掲載見込みなんだね?」
「執筆は現在追い込みに入っておりますので、8ヶ月後くらいを目標としております」
「では、結婚はその後が良いだろう。余裕を持って10ヶ月後の4月としてはどうかね? その頃なら気候も良いだろう」
「相違はございません」
「親族へのお披露目が必要だから結婚式は必ずしてもらう。入籍も同日にするといい。香澄、今の話は聞いていたね? いいね?」
「はい。分かりました」
ようやく私に声がかかったのは、すべてが決まったタイミングだった。
結婚式の時期が決められ、「片桐くんは忙しいのだから式の準備は香澄がしなさい」と指示される。
式場を決め、列席者を検討する段階に入ったら報告することを約束させられ、この日の話し合いは一段落だ。
一通りの話を終え、私たちは改めてコーヒーに口をつける。
「そういえば、東條総合病院ではここ数年、看護師や女性事務職員の離職率が高いと耳にしました。東條先生も経営者としてご苦労されているのではないですか?」
「ああ、そうなんだよ。困ったものだ」
ふと思い出したように恭吾さんが口を開き、病院経営をする父の苦労を偲ぶ。
父はそれに対して肩をすくめた。
少子化で働き手が減り、なおかつ転職が一般的になった現代において働き手を確保するのはとても難しい。
経営者なら誰しも直面する問題の一つなのだろうと、私は横で話を耳にしていてそう推察した。
その後も主に父と恭吾さんを中心に少しの雑談が繰り広げられ、頃合いを見て話し合いはお開きとなる。
応接室を後にした私と恭吾さんは、その足でそのまま玄関へと向かった。
恭吾さんは忙しい中、なんとか時間を作って父との話し合いのために今日ここに来てくれている。
そのためこれからすぐにまた病院へ戻るらしい。
「慌ただしくてすまない」
「いえ、恭吾さんがお忙しいのは分かっていますから。ちゃんと身体を休められていますか?」
「仮眠室で寝てはいるから大丈夫だ。……それより、先程の話は聞いていただろう?」
「先程の話、ですか?」
「ああ、論文の話だ。論文執筆が佳境に入っているから、おそらくしばらく君と会うのは難しくなる。今以上に時間を取られるからな」
「……そう、ですか」
「また連絡する」
「はい。分かりました」
恭吾さんは予め呼び寄せておいたタクシーに乗り込む。
私はその姿を玄関先で見送った。
……しばらく恭吾さんと会うことはないのね。良かった……。
婚約者から会えないと言われ、普通なら悲しむ場面だ。
なのに、私は内心ホッとしていた。
恭吾さんが今日そのまま病院へ戻る予定になっていて、身体を重ねる時間がなかったことに対しても心底安堵している自分がいる。
それはなぜか。
思い当たる理由は一つ、春臣さんのせいだ。
春臣さんとあんな情事を繰り広げた後にいざ恭吾さんを前にして、今は恭吾さんには抱かれたくないとつい思ってしまった。
そんな自分の心の動きに戸惑う。
それに私はもっと最低なことも一瞬考えた。
恭吾さんから会えないと言われて、それなら春臣さんと会う時間を作れる……と。
……私、最低だ。自分がこんなに快楽に弱い人間だと思わなかった……。
罪悪感が押し寄せてきて、私はその場でそっと目を伏せた。
◇◇◇
それから恭吾さんと会わない日々が続いた。
もともと会う頻度はかなり少なかったのだが、それに拍車を掛ける形だ。
この3ヶ月は一度も会っていない。
メッセージアプリで簡単なやりとりをするか、恭吾さんの隙間時間に少し電話で話すくらいだった。
ワンシーズンが過ぎていき、気が付けばもう夏の終わり――8月末だ。
その間に私は結婚情報誌を購入し、式場にいくつか当たりをつけて見学に一人で行った。
私なりに候補を絞って恭吾さんにメッセージで報告したところ「任せる」と言われたため、式場の決定や予約も私がこなした。
医師の妻になると、多忙な夫に代わり、こうやって妻が動き回ることが多い。
親戚付き合いはもちろんのこと、患者やお世話になった名士が亡くなった時に葬儀に足を運ぶのは妻の役目だ。
そのほかにも、大学病院の教授の妻とランチを共にしたりして良好な信頼関係を築くのも医師の妻の大事な役割だと聞き及んでいる。
だから、この結婚式準備もその予行練習みたいなものだろう。
そう思って、生徒さんのレッスンがない日は、一つ一つタスクを進めていった。
恭吾さんの論文執筆の関係で、当初私が予想していたよりも結婚のタイミングが遅くなったため、幸いなことに時間的な余裕は十分にある。
だけど結婚式は思いのほか、細々と決めることが多い。
周囲の友人に既婚者がおらず、相談できるような相手もいなくて、正解が分からなくて度々頭を悩ませた。
列席者の選定、ドレス決め、式の演出やプログラム、引き出物……などなど、TO DOリストを目にするだけで頭がパンクしそうだった。
精神をギリギリ削られていく。
そんな時に私が唯一安らげたのが、春臣さんの腕の中だった。
この三ヶ月、彼とは少なくとも1~2週間に一度は会っていた。
毎回何も考えられなくなるほど抱かれ、とろけさせられた。
以前してしまったことを反省し、避妊は毎回きちんとするようになった。
春臣さんもその点は申し訳なかったと謝ってくれて、それ以来気を付けてくれている。
行為の最中はイジワルな言葉で散々私を弄ぶのに、普段はとても優しく大切にしてくれるのが嬉しい。
「可愛い」「好き」と甘く囁かれ、名前を呼ばれると心が震えた。
どんどん自分が深みにハマっていくのが分かったけど、それを止められない。
春臣さんもこの関係にやはり思うところがあるのか、ふとした時に目に暗い光が宿っていることがある。
だからこんな関係はお互いのために良くないと頭では重々理解している。
なのに、春臣さんが与えてくれるものをどうしても手放せなかった。
身体が満たされ、心が満たされ、束の間でも誰にも愛されない寂しい心の隙間を埋められる時間を知ってしまったから。
でも、どんなに長くても結婚までだ。
不倫をするわけにはいかない。
だから4月までのあと約7ヶ月の間に、しっかりと春臣さんとの関係にけりをつけなければと思っている。
だが、そんな決意とは裏腹に、私の心はこの後さらに春臣さんに掻き乱されていくことになる――。
「ご無沙汰しております。本日はお招きありがとうございます」
「私としては片桐くんはもう身内みたいなものだと思っているからね。そう気負わず、楽にしてくれたまえ」
父のお気に入りの美術品が飾られた自慢の応接室で、父と恭吾さんが握手を交わす。
挨拶が終わると席を勧められた恭吾さんは、重厚感のある革張りのソファーに腰掛けた。
その隣に私も腰を下ろす。
父は私たちの向かい側だ。
母はこの場におらず、今日はこの三人で私の実家にて会合の席を設けていた。
私たちが席に着いたのを確認した使用人たちがすぐさま淹れたてのコーヒーを給仕する。
全員に飲み物が行き渡ると、彼らは素早く応接室をあとにし、その場は三人だけになった。
「それで今日は具体的に結婚の話を詰めるのだったな。婚約から一年が過ぎ、ようやく結婚の話が進められるというわけか。片桐くん、香澄のワガママに付き合わせて悪かったね。なにぶん可愛い一人娘で私は香澄には敵わないんだよ」
「とんでもないことです。僕も香澄さんの希望は聞いて差し上げたかったので」
「そう言ってもらえると救われる。香澄、お前も片桐くんの懐の広さに感謝するのだぞ」
「はい。もちろんです。私の願いを聞き届けてくださってありがとうございます」
娘を溺愛している父親を人前で演じている父の言葉に従いながら、私は恭吾さんにお礼を述べる。
父に愛情をたっぷり与えられて育った素直なお嬢様を演じるのは慣れたものだ。
私は楚々とした笑顔を浮かべた。
「当初の予定通り、結婚後は片桐くんがうちに婿入りしてくれるという点は変わりないかね?」
「ええ、もちろんです。僕の両親も同意しております」
「片桐くんの家は、地方で病院を開業しておられるのだったかな。そちらの後継は良いのかね?」
「はい。歳の離れた弟が現在医大生でして。弟がいるので問題ありません」
「そうか、それは良かった。心置きなくうちへ婿へ来られる。東條家は君を歓迎する」
「ありがとうございます」
時折コーヒーに口をつけながら、父と恭吾さんの会話は進んでいく。
今のところ私に発言を求められるような場面はなく、私は大人しく恭吾さんの隣でコーヒーを啜るだけだ。
「ただね、できれば結婚までに君に箔付したい。もちろん片桐くんの優秀さや実力を私は知っているがね。親族に紹介するにあたり、分かりやすいものが欲しいと思っている。なにしろ私は香澄の婿として君を東條総合病院の後継にと考えているのだから」
「ええ、東條先生のおっしゃる通りかと思います」
「話が早くて助かるよ。で、どうかね? 何か良い考えはないかい?」
「実はそういうこともあろうかと、現在論文の執筆に取り組んでおります」
「ほう、論文ね」
「特異な症例に対する新しい術式についての論文のため、世界的な雑誌にacceptされる見込みも高いと思っております」
「なるほど。それは良い。片桐くんの確かな実績とキャリアに繋がるだろう」
父は満足そうに顎を撫でて頷いた。
私と恭吾さんの結婚の話のはずなのに、当の本人である私についてはまるで触れられない。
まるで恭吾さんが東條家と結婚するようだ。
いや、真実そうだ。
恭吾さんは東條家に婿入りして父の後継になるために結婚するのだ。
それが恭吾さんの人生にとってメリットがあるから。
相手は別に私でなくても、東條家の娘なら誰でも構わないのだと私はちゃんと理解している。
「して、その論文はいつ掲載見込みなんだね?」
「執筆は現在追い込みに入っておりますので、8ヶ月後くらいを目標としております」
「では、結婚はその後が良いだろう。余裕を持って10ヶ月後の4月としてはどうかね? その頃なら気候も良いだろう」
「相違はございません」
「親族へのお披露目が必要だから結婚式は必ずしてもらう。入籍も同日にするといい。香澄、今の話は聞いていたね? いいね?」
「はい。分かりました」
ようやく私に声がかかったのは、すべてが決まったタイミングだった。
結婚式の時期が決められ、「片桐くんは忙しいのだから式の準備は香澄がしなさい」と指示される。
式場を決め、列席者を検討する段階に入ったら報告することを約束させられ、この日の話し合いは一段落だ。
一通りの話を終え、私たちは改めてコーヒーに口をつける。
「そういえば、東條総合病院ではここ数年、看護師や女性事務職員の離職率が高いと耳にしました。東條先生も経営者としてご苦労されているのではないですか?」
「ああ、そうなんだよ。困ったものだ」
ふと思い出したように恭吾さんが口を開き、病院経営をする父の苦労を偲ぶ。
父はそれに対して肩をすくめた。
少子化で働き手が減り、なおかつ転職が一般的になった現代において働き手を確保するのはとても難しい。
経営者なら誰しも直面する問題の一つなのだろうと、私は横で話を耳にしていてそう推察した。
その後も主に父と恭吾さんを中心に少しの雑談が繰り広げられ、頃合いを見て話し合いはお開きとなる。
応接室を後にした私と恭吾さんは、その足でそのまま玄関へと向かった。
恭吾さんは忙しい中、なんとか時間を作って父との話し合いのために今日ここに来てくれている。
そのためこれからすぐにまた病院へ戻るらしい。
「慌ただしくてすまない」
「いえ、恭吾さんがお忙しいのは分かっていますから。ちゃんと身体を休められていますか?」
「仮眠室で寝てはいるから大丈夫だ。……それより、先程の話は聞いていただろう?」
「先程の話、ですか?」
「ああ、論文の話だ。論文執筆が佳境に入っているから、おそらくしばらく君と会うのは難しくなる。今以上に時間を取られるからな」
「……そう、ですか」
「また連絡する」
「はい。分かりました」
恭吾さんは予め呼び寄せておいたタクシーに乗り込む。
私はその姿を玄関先で見送った。
……しばらく恭吾さんと会うことはないのね。良かった……。
婚約者から会えないと言われ、普通なら悲しむ場面だ。
なのに、私は内心ホッとしていた。
恭吾さんが今日そのまま病院へ戻る予定になっていて、身体を重ねる時間がなかったことに対しても心底安堵している自分がいる。
それはなぜか。
思い当たる理由は一つ、春臣さんのせいだ。
春臣さんとあんな情事を繰り広げた後にいざ恭吾さんを前にして、今は恭吾さんには抱かれたくないとつい思ってしまった。
そんな自分の心の動きに戸惑う。
それに私はもっと最低なことも一瞬考えた。
恭吾さんから会えないと言われて、それなら春臣さんと会う時間を作れる……と。
……私、最低だ。自分がこんなに快楽に弱い人間だと思わなかった……。
罪悪感が押し寄せてきて、私はその場でそっと目を伏せた。
◇◇◇
それから恭吾さんと会わない日々が続いた。
もともと会う頻度はかなり少なかったのだが、それに拍車を掛ける形だ。
この3ヶ月は一度も会っていない。
メッセージアプリで簡単なやりとりをするか、恭吾さんの隙間時間に少し電話で話すくらいだった。
ワンシーズンが過ぎていき、気が付けばもう夏の終わり――8月末だ。
その間に私は結婚情報誌を購入し、式場にいくつか当たりをつけて見学に一人で行った。
私なりに候補を絞って恭吾さんにメッセージで報告したところ「任せる」と言われたため、式場の決定や予約も私がこなした。
医師の妻になると、多忙な夫に代わり、こうやって妻が動き回ることが多い。
親戚付き合いはもちろんのこと、患者やお世話になった名士が亡くなった時に葬儀に足を運ぶのは妻の役目だ。
そのほかにも、大学病院の教授の妻とランチを共にしたりして良好な信頼関係を築くのも医師の妻の大事な役割だと聞き及んでいる。
だから、この結婚式準備もその予行練習みたいなものだろう。
そう思って、生徒さんのレッスンがない日は、一つ一つタスクを進めていった。
恭吾さんの論文執筆の関係で、当初私が予想していたよりも結婚のタイミングが遅くなったため、幸いなことに時間的な余裕は十分にある。
だけど結婚式は思いのほか、細々と決めることが多い。
周囲の友人に既婚者がおらず、相談できるような相手もいなくて、正解が分からなくて度々頭を悩ませた。
列席者の選定、ドレス決め、式の演出やプログラム、引き出物……などなど、TO DOリストを目にするだけで頭がパンクしそうだった。
精神をギリギリ削られていく。
そんな時に私が唯一安らげたのが、春臣さんの腕の中だった。
この三ヶ月、彼とは少なくとも1~2週間に一度は会っていた。
毎回何も考えられなくなるほど抱かれ、とろけさせられた。
以前してしまったことを反省し、避妊は毎回きちんとするようになった。
春臣さんもその点は申し訳なかったと謝ってくれて、それ以来気を付けてくれている。
行為の最中はイジワルな言葉で散々私を弄ぶのに、普段はとても優しく大切にしてくれるのが嬉しい。
「可愛い」「好き」と甘く囁かれ、名前を呼ばれると心が震えた。
どんどん自分が深みにハマっていくのが分かったけど、それを止められない。
春臣さんもこの関係にやはり思うところがあるのか、ふとした時に目に暗い光が宿っていることがある。
だからこんな関係はお互いのために良くないと頭では重々理解している。
なのに、春臣さんが与えてくれるものをどうしても手放せなかった。
身体が満たされ、心が満たされ、束の間でも誰にも愛されない寂しい心の隙間を埋められる時間を知ってしまったから。
でも、どんなに長くても結婚までだ。
不倫をするわけにはいかない。
だから4月までのあと約7ヶ月の間に、しっかりと春臣さんとの関係にけりをつけなければと思っている。
だが、そんな決意とは裏腹に、私の心はこの後さらに春臣さんに掻き乱されていくことになる――。
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