31 / 33
第29話 妹の帰還の知らせを楽しむ
しおりを挟む
他言無用の話し合いが終わり、ヴァルレットが音を遮断する魔術具をしまい、後ろに控えていたマイクロフトに声をかけ渡す。
「今日の話し合いで決まった事は必要次第側近に伝えるように。
ではこれで…」
ヴァルレットが話し合いを終わらせようと切り出した時、何処かから白い鳥がヴァルレットの前に降り立った。
この部屋は窓も閉まっているのにどこから来たのだろうか?
「む?中央からのボーテタォベか。
ツリューク。」
ヴァルレットは目の前に降り立った白い鳥を一瞥し、装飾のついたいかにも魔法の杖のような金色の棒を取り出し鳥の頭にコツンと当てる。すると、鳥の体が濃いめの緑色で淡い光を放ち1枚の紙へと姿を変える。
周りにいるアリシティアやアルフレッド、その側近たちも当たり前かのようにその光景を見ているが、私は全然ついて行けてない。
驚きに固まっている私を置いてヴァルレットは目の前に現れた紙を手に取り、目を通す。
「中央からの連絡で、今の各国の情勢を考えて留学をしている子を明日国に返すようだ。」
その言葉にいち早く反応したのはアルフレッドだった。
「では、リリアーナが帰ってくるということですか?」
「ああ。そうなるな。」
リリアーナ。アルフレッドの妹で私の義理の妹になる子だよね?どこかに行ってるとは聞いていたけど留学か…私もエルメイア以外の国に行ってみたいな~
まぁこの国のこともろくにわかってないけど。
「リリアーナの部屋は整っているのかしら?」
「恙無く。」
私が考えているうちにアリシティアやリザを中心に話がまとまっていく。
「明日の朝に帰ってくるようなので準備をしておくように。
それから、留学に出ている子がいる家には文官から連絡を入れておくように。」
そう言うとヴァルレットは先程の杖を紙の上で軽く振り、最後にトンと叩くと『ボーテタォベ』と唱える。すると、紙ははじめにこの部屋に入って来た時と同じように白い鳥になる。それを確認したヴァルレットが杖を横に振るとその鳥は飛び立ち、壁を貫通していった。
私が呆然とその光景を眺めていると、ヴァルレットから解散の声がかかり、皆が席を立っていく。私も後ろに立っていたリジに声をかけられ逃げるように自室へ帰った。
「レン様、どうされたのですか?話し合いの途中からずっと固まっておられましたが?」
部屋に戻った途端リジが心配したように問いかけてきた。
私はドキドキとする胸を落ち着かせながら椅子に座り質問する。
「その…さっき飛んできた鳥は何だったんですか?
ボー何とか…みたいな。」
リジは私の質問にレン様の世界には無かったのですねと呟くと説明をしてくれる。
「ボーテタォベは連絡のために貴族の間で使われる魔術具です。
私は持っていないのですが、魔紙と魔石を合成し、風属性を付与することにより作る事ができるようです。」
「壁を通り抜けてたけど…」
「魔術具ですから。」
魔術具だからで押し切ろうとしてる?
まあこれ以上問い詰めても答えは帰ってこないだろうし納得したことにしよう。
「そう言えばレン様。先程の話し合いで決定したことの中で私共に伝えねばならないことはありますか?」
伝えること…
そう言えば鳥が入ってくる前にヴァルレットがそのようなことを行っていた気がする。必要次第伝えろ~って。
リジは私が全属性だってこと知ってるから伝えておいたほうがいいよね?
「魔術具の中で話したことなんだけど私が扱える魔法の属性を風だけって事にするんだって。理由は…」
私が続きを話そうとするのをリジは首を振って制する。
「それ以上は伝えて頂かなくて大丈夫です。防音の魔術具の中で話したことですから私達のようなものには決定事項だけを伝えればよいのですよ。」
そういうものなのか…?
私、何だか今日は話を飲み込んでばっかりな気がする…
と思いつつ私は縦に首を振る。
「では、そろそろお休みにいたしましょうか。私は…」
「そうだね。今日もありがとうリジ。
また明日。」
私が笑いかけるとリジは寂しそうにこちらを見つめ返事を返す。
「…はい。では、失礼いたします。」
最近いつも部屋で分かれるときに寂しそうにしてるよね…私と離れるのが悲しいのかな?なーんてね。
私は部屋に付いているお風呂に入り、借り物の寝巻きを着る。
明日は義妹に会えるのか…フフン楽しみだなぁ~実はずっと妹が欲しかったんだよね。
私は躍る気持ちで布団に潜ったが、すぐに眠れるはずもなく、まるで遠足の前の日のようだなと思いながらしばらく立った後眠りについた。
「今日の話し合いで決まった事は必要次第側近に伝えるように。
ではこれで…」
ヴァルレットが話し合いを終わらせようと切り出した時、何処かから白い鳥がヴァルレットの前に降り立った。
この部屋は窓も閉まっているのにどこから来たのだろうか?
「む?中央からのボーテタォベか。
ツリューク。」
ヴァルレットは目の前に降り立った白い鳥を一瞥し、装飾のついたいかにも魔法の杖のような金色の棒を取り出し鳥の頭にコツンと当てる。すると、鳥の体が濃いめの緑色で淡い光を放ち1枚の紙へと姿を変える。
周りにいるアリシティアやアルフレッド、その側近たちも当たり前かのようにその光景を見ているが、私は全然ついて行けてない。
驚きに固まっている私を置いてヴァルレットは目の前に現れた紙を手に取り、目を通す。
「中央からの連絡で、今の各国の情勢を考えて留学をしている子を明日国に返すようだ。」
その言葉にいち早く反応したのはアルフレッドだった。
「では、リリアーナが帰ってくるということですか?」
「ああ。そうなるな。」
リリアーナ。アルフレッドの妹で私の義理の妹になる子だよね?どこかに行ってるとは聞いていたけど留学か…私もエルメイア以外の国に行ってみたいな~
まぁこの国のこともろくにわかってないけど。
「リリアーナの部屋は整っているのかしら?」
「恙無く。」
私が考えているうちにアリシティアやリザを中心に話がまとまっていく。
「明日の朝に帰ってくるようなので準備をしておくように。
それから、留学に出ている子がいる家には文官から連絡を入れておくように。」
そう言うとヴァルレットは先程の杖を紙の上で軽く振り、最後にトンと叩くと『ボーテタォベ』と唱える。すると、紙ははじめにこの部屋に入って来た時と同じように白い鳥になる。それを確認したヴァルレットが杖を横に振るとその鳥は飛び立ち、壁を貫通していった。
私が呆然とその光景を眺めていると、ヴァルレットから解散の声がかかり、皆が席を立っていく。私も後ろに立っていたリジに声をかけられ逃げるように自室へ帰った。
「レン様、どうされたのですか?話し合いの途中からずっと固まっておられましたが?」
部屋に戻った途端リジが心配したように問いかけてきた。
私はドキドキとする胸を落ち着かせながら椅子に座り質問する。
「その…さっき飛んできた鳥は何だったんですか?
ボー何とか…みたいな。」
リジは私の質問にレン様の世界には無かったのですねと呟くと説明をしてくれる。
「ボーテタォベは連絡のために貴族の間で使われる魔術具です。
私は持っていないのですが、魔紙と魔石を合成し、風属性を付与することにより作る事ができるようです。」
「壁を通り抜けてたけど…」
「魔術具ですから。」
魔術具だからで押し切ろうとしてる?
まあこれ以上問い詰めても答えは帰ってこないだろうし納得したことにしよう。
「そう言えばレン様。先程の話し合いで決定したことの中で私共に伝えねばならないことはありますか?」
伝えること…
そう言えば鳥が入ってくる前にヴァルレットがそのようなことを行っていた気がする。必要次第伝えろ~って。
リジは私が全属性だってこと知ってるから伝えておいたほうがいいよね?
「魔術具の中で話したことなんだけど私が扱える魔法の属性を風だけって事にするんだって。理由は…」
私が続きを話そうとするのをリジは首を振って制する。
「それ以上は伝えて頂かなくて大丈夫です。防音の魔術具の中で話したことですから私達のようなものには決定事項だけを伝えればよいのですよ。」
そういうものなのか…?
私、何だか今日は話を飲み込んでばっかりな気がする…
と思いつつ私は縦に首を振る。
「では、そろそろお休みにいたしましょうか。私は…」
「そうだね。今日もありがとうリジ。
また明日。」
私が笑いかけるとリジは寂しそうにこちらを見つめ返事を返す。
「…はい。では、失礼いたします。」
最近いつも部屋で分かれるときに寂しそうにしてるよね…私と離れるのが悲しいのかな?なーんてね。
私は部屋に付いているお風呂に入り、借り物の寝巻きを着る。
明日は義妹に会えるのか…フフン楽しみだなぁ~実はずっと妹が欲しかったんだよね。
私は躍る気持ちで布団に潜ったが、すぐに眠れるはずもなく、まるで遠足の前の日のようだなと思いながらしばらく立った後眠りについた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる