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第28話 秘密の話し合いを楽しむ

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 夕食が終わり、私が倒れた原因についてのヴァルレットからの意見を聞き終わったところで今日の話し合いの本題へ入る。
 理由としては、私が今回倒れたように今後もイレギュラーな問題が異世界から来た私や、その周りに起こらないように。そして、私が魔法をどのように扱うのかの問題になる。

 「では、そろそろ本題に入ろう。人払いと魔術具をここに。」

 ヴァルレットが後ろに控えている執事と思われる人に合図をすると、魔術具と呼ばれた緑色の石が上にはまっている装飾のされた箱をヴァルレットに手渡し、先程よりも少し離れて立った。周りを見ると先程まで皆の後ろにいた召使い達が数歩後ろに下がっている。もちろん私の後ろにいたリジも。
 私が何をするのだろうと先程箱を受け取っていたヴァルレットの方へ視線を向けると、手を箱にはめられた緑色の石に軽くかざしていた。すると、緑色の石が小さく光ったかと思うとフワッと風が私の頬を擽る。あたりを見回すと薄っすらと黄緑色の壁がヴァルレットを起点として長方形に広がり一番離れた場所に座っている私の所で壁が閉じられている。後ろを見るとリジや他の召使いは入っておらず、完全に私と王族一家だけが黄緑色の壁で周りと遮断されていた。

 「これは…」

 「これは音を遮断する壁を作る魔術具じゃ。
 この風属性の魔石がはまった魔術具で作ることができて、注ぐ魔力量で壁の大きさも変わる。
 ここの中で話した声は外には聞こえんし、ここの中にいる限り外の声も聞こえないというものじゃ。
 魔術具は部屋にもあるからミシェルにやり方を教わってから試してみると良い。」

 魔術具、いい響きだな…今度の魔法の訓練の時に教えてもらおう。
 ていうかそんなものを使わなきゃ話せないようなこと聞かされるんじゃない?

 私が内心ドキドキしていると、ヴァルレットが話を切り出した。

 「今回の事のように問題が起こる前にレンの扱いについて決めたいのだが皆異論はないな。」

 普段家族の前で見せる優しいものとは変わり国王としての顔に変わる。

 「他の国にもレンのような異世界人がいるという話はしたであろう?
 その者たちも大きな魔力を持っていると思う。だが、その力を活かす事が出来ているのか。また、その力を活かせるような特殊な力の持ち主かはわからない。
 …これから話すことは我が国では王族とその側近しか知り得ない情報で、口外してほしくないのだが、未来の王族として、話を聞き入れてくれるか?」

 ヴァルレットから見定めするような視線が送られる。
 私は少し身構え頷く。私にはもうその選択肢しかない。

 私が頷いたのを見てヴァルレットが話を続ける。

 「ミランダから教わったかもしれないがこの世界の西側に人間界と言われる5つの国に分かられた我々の住む大陸が、大きな割れ目を挟み東側に魔界と呼ばれる魔王が支配している大陸がある。
 過去には2つの大陸で戦争が起こっていたが、人間側が魔王を討伐することにより争いが終わった。
 しかし、また魔王誕生の兆しが見えてきたのだ。近頃外で彷徨う魔物が活性化してきて冒険者達が対処しても湧き出てくるらしい。そして、それと同時期に大きな力を持った君たち異世界人が現れた。この出来事がすべて偶然ということはありえないと思うのだ。」

 そう言えば私がここの世界へ来たばかりのときも東には魔界しかないって言われたっけ?それに、大きな力を持ったって私そこまでステータスも微妙だったよね… 

 「大きな力と言っても私、ステータスも普通でしたよね?」

 私の疑問を受けヴァルレットは首を横に振る。

 「そもそもステータスというものはこの世界にはなかったのだ。
 ここ数年になり、"魔素"が濃くなり始めたときにいきなり現れたものだ。」

 「魔素?」

 「魔素とは空気中を漂う魔力のことでその量に比例して魔物が活性化していくものだ。人間の体にはかすかにだが害があり異常な現象が起こることもある。
 我が国の杣工が魔木を伐採する際に発見したようだ。」

 魔木というのは魔力を持った木の事だよね。
 簡単に言えば木こりが木を伐っていたら魔力が反応したってことかな?
 でも、それと私の強さに一体どのような関係があるのだろうか。私が視線を向けるとヴァルレットは頷き話を続ける。

 「まだ新しく出始めたシステムを簡単に信用するものではないということだ。
 まだどのような原理で数値化されているのかもわからない。ステータスを重要視しているのは冒険者くらいだ。
 それにレンは鑑定したとき以上の力を持っているはずだ。こちらの世界に馴染んできたのであろう。これからもどんどん魔力を上げるであろう。
 …ここまで長々と話したがお主にはお願いがあるのだ。」

 そうして話を切る。
 それよりも私の力が大きくなってるって言った?よし、このままどんどん強くなれ私!
 私が口元が緩んでいくことを感じているとフーと息を吐きヴァルレットが私にお願いする。

 「単刀直入に言おう。お主には全属性であることは隠してほしい。
 正確に言うと使える魔法は風属性だけということにして欲しいのだ。」

 「ど、どうしてですか?」

 私の唯一のアドバンテージが…

 「先ほども言った通り今は世界の情勢が不安定なのだ。我が国を守るためには力はどれだけあってもいいからな。いざというときの為に自国はともかく他国には力のことは隠しておきたい。」

 私の力が国の切り札として使われるってことかな…戦争とかはイヤだよ?

 「私、人同士の争いごとは…」

 「もしもの話だ。我が国は平和の国と呼ばれているのだぞ?大層なことがない限り戦争にはならん。」

 本当かな…

 「…わかりました。」

 「心配することはないわ。私達もできる限りサポートするもの。
 元々魔力量も多いから王族としても冒険者としても問題なく生活できるわ。」

 私が残念そうな顔をしていたのかアリシティアがフォローに入る。
 私は廻りに気を遣わせないように微笑んで言葉を返す。

 「そう言って頂けると安心できます。」

 私の微笑みがぎこちなかったのかアルフレッドは心配そうな顔で私を見た。
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