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7 王子の秘密と大問題
しおりを挟むいつものようにクリスティーナと放課後に帰ろうとしていると、周りがザワザワし始めた。
クリスティーナがいるので、周りから悲鳴わざわめきが聞こえるのはいつもなのだが、明らかにいつもと違う。
「やあ」
「お、王子…!」
いつも、王子の動向や性格を合わせて計算してから動いているので、予想外の王子にクリスティーナが動揺した。まぁ、王子も人間だし、完全な予測は無理だと思うってクリスティーナに言おうと思ってたけど、あまりにもドヤァっとするクリスティーナには言えなかった。可愛いんだもん。
普通に賢いんだけど、ポンがたまに出現するんだよなぁ。
そんな事を考えていると、二人の雰囲気険悪になって来たので急いでスッと王子とクリスティーナの間に立って入る。
「何かあるんですの?」
「いや、クリスティーナには用事はない。俺の用事はこっちだ」
そう言って、私の腕を掴んだ。
その行動にクリスティーナの纏う空気が一瞬で禍々しい恐ろしいものになった。
流石元悪役令嬢。怒ると雰囲気からこうも変われるのか。
「女性の腕を掴まないでくださいませ。王子」
クリスティーナが語気強く言う。私は関係ないので、安心して後ろでクリスティーナを応援する。
(いいぞ!クリスティーナ!!王子に言ったれ!王子が礼儀作法を出来ていなくてどうすると!!!)
「は?こいつは男だろ?現に、お前のお墨付きだろう、下手な嘘はやめろ」
あぁ…そうだった。私にも関係あった…。
確かに、今の私はヒールで背が高く、髪の毛は結ばずに若干ボサボサ。肩くらいまでの長さはそう言われるのも納得はいく。女子感ゼロだから。
それに、クリスティーナを公衆の面前でお前呼びだなんて。私のような平民ならまだしも、クリスティーナは高位貴族で、お前の婚約者だぞ。
「いえ、女性ですわ」
「そんなわけ」
「それに、この方は私を勉強の面等で助けていただいている大切な方ですの」
クリスティーナの話を無視し、鼻で笑って私の顔をジロジロと見る。何て奴だ。
こうまでしても、私がこの前お前がナンパした奴だとは気づかないのか。
女を取っ替えひっかえしているから、顔を覚えて無いんだろ。
「まぁ、それはどうでもいい。とにかく、お前について来てもらおう」
掴まれた腕を強く引っ張られる。王子の力の強さ並びに乱暴さは、普通の令嬢だったら悲鳴をあげているであろうものだった。私は元から半獣なのもあって体は強いほうだし、力の強さもかなりあるのであまり大した事はないが。
「ふうん……これで女子はかなり無理がないか?」
ボソッと王子が呟く。何だこいつ、本当に失礼だな。
「やめて下さいませ、王子!!」
声を荒げるクリスティーナを無視して王子は私を連れて行った。
◇
連れて行かれた場所は裏庭。人気のない場所。
正直、まずい。何かあってもどうしようも無い。こいつに私が手を挙げたなどと宣われれば一貫の終わりである。
「急に連れて来てすまない」
初っ端から突然謝られた。驚いてつい目を大きく開いてしまう。
「ははっ、そんな目をしないでくれというのも無理があるな」
「え…っと、どちら様ですか?」
つい本音が出てしまう。
「僕は正真正銘、王子だよ。まあ、言うなればもう一人の王子だな」
「もう一人…二重人格っていう事ですか」
「ああ、そうだ」
王子が二重人格なら、クリスティーナが今までずっと会って来たのは乱暴な方の王子という事か。
「そんな事もあるものなのですね。じゃあ、今から王子の事を裏の王子っていいます」
「え、あ、ああ。ありがとう、適応が早いね…」
「まぁ、それなりに非現実的なことに結構会ってるので」
前世の記憶持ってたりだとか、親が消えるだとか、侯爵令嬢と仲良くなるだとか……経験豊富だからな。
「私の方が裏の王子なのか?普通、悪いほうが裏じゃないのか?裏ボスとか……」
「いや、偶々思いついただけ何で…って、え?裏ボス?」
「あ」
嘘だろ、まさか。
「ごめん、変な事を口走った」
「いえ、大丈夫ですけど…」
「信じてもらえないだろうけど、小さい頃から僕の中にいるもう一人の僕が持っていた記憶でね。別世界、日本という国の記憶が時たまに出て来てしまうんだ」
やはり、そうか。私やクリスティーナと同じ転生者なんだ。
この人とは別の、表の王子が。
「日本…あの、その表の王子ってゲームとか言っていませんでしたか?」
「ああ、言っていたよ。ゲームの世界だ、やら俺は主人公だから勝ち組だとか…ってまさか」
「そうです。クリスティーナも一緒です」
それを聞いた王子は妙に納得したような顔をする。
「それも驚きだけど、今は急がなけければいつまで僕がこうして居れるか分からないから、また話そう。それで本題なのだが、もう一人の僕が君の婚約者を断罪しようとしている」
「それは、クリスティーナから聞きました」
「いや、また違うんだ。その、ゲームの中の私がする断罪よりももっと早くにしようとしている」
「それだと…断罪するには、卒業パーティーか」
「ああ、そうだ。話が早くて助かるよ」
これは、早くクリスティーナに伝えて相談しなければ。
「君がいて本当によかった。クリスティーナには無闇に伝えられないからな」
そう言って、颯爽と王子は去っていった。私に迷惑がかからないようにしているのはとてもありがたい。
「あの人も大変だなぁ……」
私は、クリスティーナを探しに走り出した。
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