狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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5章 洗礼

67話 *血の気

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「あ゛っ……や、…め……はぁ、うっ…」


晴柊の意識はとうに限界を迎えていた。しかし、体の火照りは治まるどころかむしろ増していく。怖いはずなのに、体は緊張感を持たないまま弛緩しきっていく。


頭がおかしくなる。晴柊は未知の感覚にただただ耐えることしか許されなかった。男は勝手がわかっていないのか、晴柊の堪えるような反応につまらなそうにしながら雑に震え続けているバイブを出し入れする。それが強制的に晴柊に快感を与えていた。


「ぁ、んっ………ひゃぅ˝っ!?!?……あ、あ゛っ……やめろっ…いや、ぁっ…!!!」

「へぇ、ここか~。だらしない声出てきたね、イイ子イイ子。」


男が興味無さそうに、適当に動かしていたバイブが、急にある一点を掠めた。晴柊の前立腺である。身体が極度の興奮状態に陥っている晴柊には、その刺激はとてつもない快感として襲ってきたのだった。突然のことで声すら我慢できないまま快感から少しでも逃れようと身を捩らせようとするが、力が入らない。男はさっきまでのつまらなそうな表情から一変、楽しそうにそこをグリグリと押しあてるように責め立てた。


自分の口を手で塞ぎたい。こんな声、こんな男に聞かれたくはない。しかし拘束具がそれを許さない。晴柊はぎゅっと口を固く閉じた。唇が切れそうなほど、歯で食いしばる。しかし、晴柊のモノは前で射精したいと言わんばかりにバイブがナカで動かされる度ぴくぴくと動いて先端から涎を垂らしていた。


「あ、声抑えないで。ほら、あーん………あは♡生意気だったのに、今はとろとろでカワイイ顔♡確かにそこら辺の女よりいいなぁ。ねぇ、ナカの具合もさ、マンコより優秀なの?」


男は反抗する声が聞こえなくなった晴柊に気付き、ずっと面白そうに晴柊の下半身ばかりみていた視線を晴柊の顔に戻した。そこには顔を赤く染め目に今にでも零れ落ちそうなほどの涙を溜めている晴柊の姿があった。その目はまだ正気を保っているような意志を感じたが、あと少し、何かが弾ければ理性が吹っ飛んでしまいそうな、脆い物に見えた。


これは良い。さっきまで威勢のよかった少年が薬漬けになりぐずぐずにされている。この少年を犯してしまいたい。男になどさぞ興味のなかったはずなのに、男――若狭景光は、晴柊のナカで動かし続けていたバイブをずるっと抜き、そのまま揉みしだき甲斐のある尻を触った。


この華奢な身体に、薊琳太郎のモノを咥えこんで淫らに喘いでいたのだろう。面白おかしいはずだったその想像は、今の若狭にとって格好の良い「オカズ」であった。もっと自分の手でこの少年を滅茶苦茶にしてしまいたい。こんな玩具では物足りない。


男は蛇の様に目を細め、晴柊を見た。刺激が止まり収まった快感の波に、ひと時の安堵を感じながら虚ろな表情を浮かべる晴柊の頬を掴み顔を上げさせる。視線が交わった。


「俺の名前は若狭景光。「景光さん、ちんこぶち込んで」ってオネダリして犯されてるところも撮りたくなったからさ、頑張ろうね、晴柊チャン。」


若狭は不敵な笑みを浮かべると、天井に吊るすようにしていた拘束具を外した。しかし、腕含む上半身を固定しているものは取らないまま、晴柊をベッドに寝かせる。腕を使えない状態で一度倒されてしまえば、若狭を目の前にして起き上がろうとすることもままならない。晴柊はもはや抵抗する元気もなくなったのか、ただ必死に意識を手放さない、飲まれないようにと正気を保つことに神経を集中させていた。


若狭がベルトを緩め、スーツのファスナーを下ろす。下着のナカから自分のモノを取り出すと、仰向けに寝転がった晴柊に跨り口元に持って行った。晴柊は顔を背ける。


「舐めて。」

「…ぃ、やっ……」


若狭のモノには、裏筋に沿うように、数個のピアスが付いていた。おぞましい形相のそれと、嫌悪感で晴柊は顔を逸らす。琳太郎以外のモノに触れることも咥えることも、気持ち悪くれて仕方がなかった。口を閉ざす晴柊を冷たい視線で見下ろし、若狭はため息を付くと、晴柊の鼻をぎゅっと摘まむ。


「ぅっ!?………………ぷはっ…んん゛っ~~~~!!」

「ああ~いいね。歯ァ立てたら一発、重いの入れちゃうからね。」


鼻からの呼吸が塞がれたことで、しばらくの我慢も虚しく口で息を吸い込もうと開けたとき、若狭は容赦なくその開いた晴柊の口内へ自分のモノを捻じ込んだ。加減など知らないとでもいうように、いきなり喉奥にまで到達し、嗚咽しそうになるが顔を背けることも身体を動かすこともできない。陰茎についた若狭のピアスが、晴柊の舌と喉元をごりごりと抉る。


噛みちぎってしまおうか。晴柊は乱暴に扱われ、まるで性処理道具と化したような自分に嫌気がさしていた。口内を犯されているだけで、自分の体がまた熱を持ち始めていることも心底嫌だった。全部、全部、薬のせいだ。目の前の男が憎くてしょうがないという感情になり、奥歯を閉めるようにして歯を立てた。


「っ!?……おい、淫乱。歯立てんなって言っただろ。次やったらお前のちんこ噛みちぎるからな。」


若狭は一瞬苦痛で顔を歪めたが、すぐに顔を無表情に戻し晴柊の鼻目掛けて一発拳を振り下ろした。男の指にはリングが嵌められていたようで、鈍い痛みと共に鼻が熱くなる。ポタポタと晴柊の頬を伝い鼻から血が漏れ出た。若狭は最早冗談とも聞こえるような言葉で脅す。これが、冗談ではないのだからこの世界は恐ろしい。


若狭はもういい、というように口からずるっと自身のモノを抜くと、晴柊の太ももを持ち開かせる。下半身が露になった晴柊を見下ろすと、若狭は胸の高鳴りが抑えきれなかった。綺麗な晴柊の顔が、鼻血で汚れている。今にでもトリップしそうな混沌とした視線と赤い鮮血は、若狭の加虐心を刺激する。血の気の多い若狭にとっては最大の興奮材料である。


「ぃ、や…………やだっ……ゃ……」


晴柊が取り乱し始めた。足を開いた姿にされたことが、「本当に犯されてしまう」という意識にさせたのか、途端に足が震えはじめる。拘束された上半身は震えすら許されなかったが、指先が痙攣したように恐怖に打ちのめされていた。若狭のグロテスクなモノが入口に当たる。


琳太郎以外のモノが、自分の身体に入り込むことが嫌で嫌で仕方がなかった。でも、身体はそんな心を無視して若狭を求めている。そんな自分が一番気持ちが悪い。晴柊は絶望ともいえる感情に滅茶苦茶になり、涙をぽろぽろと流しながらか細く口で拒否をした。


若狭は生意気そうな表情をしていた晴柊の血にまみれながら涙を流している姿に、自身のモノを大きくさせると、わざと意識させるように、ゆっくりゆっくり晴柊のナカに自分のモノを入れ始めた。


晴柊のナカに、琳太郎以外の男が入り込んで行った。
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