狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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5章 洗礼

66話 *強制快楽

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晴柊の鳩尾が男の拳で抉られる。晴柊の言葉に苛立った男の表情が先ほどからの楽しそうな顔から一変、冷たい表情へとすり替わっていた。


「あぁ~イライラする~今すぐ殺してえ~……でもなぁ…今殺したらなぁ…」


男が聞こえるか聞こえないかの声でボソボソと一人呟き始めた。地雷を踏んだか?いや、地雷を踏もうと思って発言したわけだが。しかし一人でなんとか自己完結した様子である男は、再び黒いバッグを漁り始めた。すると、手に取ったのは注射器であった。中には何やら怪しげな液体が入っている。晴柊の体が強張った。


「仕方ないから、コレ使ってあげるね。結構高いんだからね?」

「な、に…それ……」


さっきまでなんとか虚勢を張り続けていた晴柊の顔が強張る。晴柊は一度、脱走を図った際に琳太郎に精力促進剤を打ち込まれたことがある。本人はそれに気付いてはいない。その時の薬はまだ程度も低いもので副作用も無かったからだった。


しかし、今この男が用意した薬物は、その時の物とは比にならないくらいの作用を持つモノであった。鶴ケ崎組に莫大な利益をもたらしているものこそ、この薬である。一度使えばその効果の強さに誰もが依存し夢中になっていく。快楽を前にすると人は弱い。そこに付け入った強い性欲促進剤であった。


晴柊はその真相を知らずとも、その注射器の中身が自分を害するものだということは重々承知していた。


「気持ちよくなれるお薬だよ。これを打てばあら不思議!どんな淑女も売女に成り下がる。あー、暴れないで暴れないで。」

「やめろ!離せ!…ぁ、いやっ……っ˝~~!!!」


男は晴柊の首元に注射器を思いっきり刺した。晴柊は顔を動かし何とか逃れようとするも男に顔を掴まれ固定されたため抵抗も無意味であった。首から注射針が抜かれると、これからどうなってしまうのか、不安で目の前が真っ暗になりそうだった。


少しして、晴柊の息が上がり始めた。動悸が酷い。バクバクと、苦しい程に跳ねている。苦しかったはずの縛られている拘束具の締め付けが、まるで心地いいと感じるほど身体が弛緩しきっていた。無理矢理突っ込まれ痛みしか感じていなかったはずのバイブも、慣らされていないのにもかかわらず軽々と飲み込み始めていた。


「あはは、相変わらずすげぇ効き目!意識はトばすなよ。少しは可愛げあるとこ見せてみな。あの人に触られてる時みたいにさ。」


男は晴柊のモノを徐に扱き始めた。雑で力も強く、普通なら痛みを伴うようなやり方だ。でも、今の晴柊の体はそれを快楽と飲み込み始めた。こんなの嫌だ。そう思うのに、体は言うことを聞かない。体温が上がる。歯を食いしばり声を漏らさんとばかりに堪えた。男は必死に負けまいと抗う晴柊を見て、楽しそうにまたあの笑顔を向けていた。蛇が獲物を捉えたように、舌なめずりをする。


「は、ぁ………ふっ………きも、ち…わるいっ…」

「ええ?でも、見てホラ。勃起してんじゃん。頭もクラクラして、考えられなくなってんでしょ?身体委ねてみなよ。そしたら今まで感じたことないほど気持ちよくなれるからさ。」


男が晴柊の後ろにただ突っ込んで待っていたバイブの電源を入れる。バイブレーションの音と共に晴柊のナカで玩具が震えはじめた。晴柊のナカの壁がうねり始める。気持ちが悪い。そう思いたいはずなのに、簡単に受け入れてしまう。晴柊の頭はぐちゃぐちゃと混乱して、男の言葉が正しいのではないかと思わせ始めた。そうすれば、楽になれるのではないか、と。


しかし晴柊の僅かな理性と男に対する怒りがそれを一歩手前で踏みとどまらせる。男の手が無慈悲に晴柊のモノを扱き続けていた。射精感が迫っていることに気付くと、嫌な汗が滲む。こんな奴の手でイきたくはない。晴柊にとってこの上ない屈辱であった。


「ぃ、や……あ、とめ……ぁ…!」

「え、もうイきそう?」


晴柊の亀頭を男の指が霞める。太腿がガクガクと震え、悲鳴をあげていた。悪態をつこうと口を開くものなら、だらしなく喘ぎ声が漏れてしまう。耐えることしかできないこの苦痛とも呼べる快感に、晴柊は早くも限界を迎えそうになっていた。血液の廻りがおぞましい程に早い。それに伴うように、精子がせり上がってくる。


「むり、むりっ…ぁ、ん……はなせっ……あ゛、っ~~~!!」


晴柊はぎゅっと目を瞑って身体を強張らせると、男の手の中で果てた。ぜえぜえと肩で息するも、一度の射精感だけでは異常なほどに興奮している身体は治まりを見せない。晴柊にとってこれは地獄の始まりにしか過ぎなかった。身体が言うことを聞かない。意識さえ混濁していく。尻のナカでは、ただ煽るようにバイブが震えていた。ただ適当に入れられただけで、晴柊の弱点に当たってはいないことだけが唯一の救いであった。


「イけたねぇ。どう?まだまだ足りないでしょ?うわ、きったね。ねえ、次は後ろでイクとこ見せてよ。そういうの得意でしょ?」


男は手のひらに付いた晴柊の出した精液を晴柊の頬に擦り付けるようにして拭った。まだ正気を保とうと抗っている様子が晴柊の目から見て取れる。男は女と違って頑丈だから良い。すぐに壊れないから、多少荒治療したって問題はない。男は楽しくなってきた、と晴柊の尻に無造作に突っ込んでいたソレを抜き差ししてみた。


「ふ、ぅっ……ぅっ…」

「面白いから声出してよ。はい、あーん。どう?下手くその手でイかされた気分は。あはは、またちんこ勃起してきてる。これじゃぁ発情したお猿さんだねぇ。」


晴柊の奥歯に添わせるように男が親指を突っ込んだ。そして晴柊の口を閉じられなくすると、抑えようとして抑えきれなかった声が漏れ出る。尻の具合も良くなってきたのか、薬の効果も合わさって晴柊のモノはまたゆるゆると立ち上がり始めていた。上の服は脱がされないまま拘束されたため、立ち上がった自分のモノで、晴柊はだらしなく自分の服を汚していた。


気持ち悪い。苦しい。気持ちい。もっと。琳太郎、琳太郎。


どれが本当の自分か見失いかける。晴柊は自我を保つためと言うように、愛しい人の名前を必死に頭の中で連呼した。
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