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第0章

第5話

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「憤怒のいじめ殺しの黒幕・・・」
 マリは、ゆっくりと静かにそう答えた。

 何を言っているんだろう?
 いじめ殺しかそうじゃないかを知りたいだけだけど、黒幕ってことはどちらになるんだ?

「何を言いたいのさ?」

「つまりね、いじめ殺しには7つの罪があるの。
憤怒、強欲、色欲、嫉妬、怠惰、暴食、傲慢のいじめ殺しのリーダーがいて、実際にはただの人間かもしれないけど・・・。
あたしは、いじめ殺しの指揮者。
イエスかノーの二択で聞かれたら、イエスが正解かもしれない」

「つまり、どうしたらいい?」

「どうしたらいいって?」

「身柄を拘束した方がいいのか、その場で始末するか」

「こんな選択肢出すんだ。

だけど、その選択肢を出されても、どちらかを選ぶと思っているの?」


「正直に言えば、選ぶとは思っていない。
だけど、マリは大事な友達だから、強引なことをしたくないんだ。
だから、君をなるべく傷つけない方法で・・・」

「そんなの詭弁にしか聞こえない。
本当に、それがあたしのためだと思っているの?」

「それは・・・」

 僕は、言葉に詰まってしまった。
 
 いじめ殺しを退治しなきゃいけない使命と、マリを救いたい気持ちが混同したから。
 情を持っちゃいけないことはわかっているけど、自分の感情をコントロールできそうになかった。

「評価を落としたくないっていうまわりを気にする気持ちと、あたしを救う善人になりたいか、その二択を出しているの?」

「それは、誤解っすよ。
指揮者だかなんだかよくわからないけど、いじめ殺しに加担している時点で、君は立派な犯罪者だ。
マリを救う方法なんて、ない。

身柄を拘束されて、別の誰かに処刑されるか、
その場で俺に倒されるか、
この二択でしか存在しないんだ」

 自分でも、かなり残酷なことを言っているとは思っている。
 だけど、ほかに何ができる?

 僕は法律を変える政治家でもなければ、可能なことを探す天才の弁護士でもない。
 なれ、俺にできることは限られている。

「あたしを救いたくないの?
いじめられても、誰も助けてくれなくて、いじめる側に加担する」

「そんなこと言っていない」

「君がその現場にいたら、そんなことが言えるの?」

「高校時代、何があったのかは知らないけど、ひどいいじめにあったとか、命を狙われたという噂しか知らない。
だけど、マリ、だからって殺しに走るとは、話が違う」

「どうしてよ・・・。
痛かったの、辛かったの。
友達にも、恋人にも裏切られて、誰を信用していいのかわからなくなって・・・・」

 マリは、泣いていた。
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