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番外編 いじめられっ子からの復讐

第5話

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 俺は夢を見た。母さんと妹に会う夢。

「勝恋の気持ちにきずいてあげられなかった」と泣いている母さん。何だこれ?いつもの母さんと違う。しかも妹も大人びていて怖かった。

「お兄ちゃん、勝恋お姉ちゃんは繊細なの」

「姉貴は無表情だろ?」

「あたしも生きている時はそう思っていたの。だけど違っていたの。お姉ちゃんは何でも我慢しては自分の気持ちを言わない」

「きっと我慢させてしまったのね」と母さん。「一番最初に生まれた子どもだから厳しくしてしまうの。だけどあの子が一番弱かった。だからいじめ殺しに殺されてしまった」

「お兄ちゃん、あたしたちは何もできないかもしれないけど」

「いじめ殺しなんかにも負けないで」

「殺人はどんな理由があっても」

 二人が声を揃えて「絶対にしては駄目よ」

「どんなに憎くてもその人を傷つけていいわけじゃない。いじめをなくしたいならいろんな方法がある。」と母さん。

「あぶきのやっていることはいじめをなくさない。なくすどころか増やすだけ。戦争が起こっていいわけない」

「だけど母さん、俺には止めれないよ」

「大丈夫よ。納得しない人たちがいるし、あぶきのやることに誰も協力なんかしない。あぶきのやることは政治命令でも何でもないし、いじめ殺しなんていつでもいるわけない。あぶきのやり方に納得のいかないいじめ殺しが現れるはずよ」

「母さん、俺は耐えられない。苗字は変えられてしまうし、姉貴のことはいまだにわからない。
姉貴も父さんが代わりにいなくなれば良かったんだ」

「お兄ちゃん、あたしたちのこと忘れちゃったの?あたしたちが生きていた頃は重要なかんじではなかったよね」

「だとしても姉貴や父さんよりはまだいい。
とにかく3人で一緒に暮らしてみてわかったんだ。
姉貴と父さんにはもう会いたくない、顔も見たくない」

「いつかまた会えるわ」

「どうやって会うんだよ?」

「いじめ殺しのいない世界に戻れたらいいわよね。そして離婚する時に勝恋だけに親権を譲れば良かったわね。
離婚するときに親権で揉めてそれで子ども3人引き取ったのよ」

「過去に戻りたい。戻れるならそうしたい」

 陸野とは高校に入学してから出会った。
 それよりも先の過去に戻りたい。

 いじめ殺しなんてもう嫌だ。
 こんな悲劇二度と味わいたくない。
 頼む、夢から覚めないでくれ。
 覚めたとしても過去に戻った上で目覚めたい。

  夢から覚めると願いが叶ったのか俺は中学三年生になっていた。
 妹と母さんがいる。
 母さんと父さんは俺が小学1年生の頃に離婚していて俺と妹の親権を母さんが、姉貴の親権は父さんになっていて、姉貴や父さんともそれ以来会っていない。

 いじめ殺しなんて生き物は存在しない。
 だけどこれから存在するようになるんじゃないかってヒヤヒヤしていたけど2年後にも3年後にも存在することなく、俺は高校卒業になった。

 風の話を聞く限り、黒船あぶきは19歳の頃に亡くなったらしい。
 黒船あぶきさえいなければいじめ殺しなんていなかったのでだから。

 そして俺は夢を見た。
 陸野の家で気絶して倒れた俺が黒船あぶきに誘拐され、監禁される夢だった。
 ここで俺は姉貴のことを聞かされた。
 姉貴は母さんが嫌いだそうだけど一緒に暮らしていて、小学4年生の頃からだんだん無表情になったとのこと。

 そして目覚めたら何もかも日常だった。
 だけど時々いじめ殺しの世界にいた頃の夢を見る。

「お兄ちゃん」

 妹の光恋《みつこ》が俺を呼ぶ。

「あたし、前にいじめ殺しとやらに殺された夢を見たの。聞いてみたら母さんも同じ夢を見たことがあるらしいの」

 今では本当にただの夢とは思えなくなった。
 いじめ殺しが発動した世界から世界を変えるのは難しいそうだし、夢によると第三次世界大戦も起こらなかったし、警察なんて職業もなくならなかった。黒船あぶきは人々から嫌われても本人は嫌われた意味を理解することはなかった。

「これは不思議な夢だね」

 俺は光恋が安心するように頭を撫でた。

 時がたち、俺は漫画家となり、夢にある出来事を元にして「いじめ殺し」の漫画を描いたら予想以上に売れた。何人かが「夢で見たことある」とファンレターから送られてきた。

 ある時インターホーンが鳴り、覗いてみると姉貴だった。だから家のドアを開けた。

「いじめ殺しの漫画見たわよ」

「うん」

「私も経験した気がするの。何度か夢で見た。だけど夢では母さんが嫌いなのに現実では父さんの方が嫌いなの」

「どうゆうこと?」

「離婚してから父さんと暮らしてて、私小学4年生の頃から父さんの前で怒ったり、友達の前で無理に笑ったり、自分の部屋で泣いたりを繰り返してるの」

 姉貴は悲しそうだった。夢での姉貴はいつも無表情だった。だけど目の前にいる姉貴は表情をころころと変えた。

「私、夢が本当なら父さんと母さんどっちと暮らした方が幸せだったかな?」

 姉貴は今にも泣き出しそうだった。

「どっちを選んでもだよ」

「どうして?」 

「繊細なのは変わらないんだし、ただいじめてる側はいじめたつもりなんてないかもしれない」

「世界‥‥あなたは世界を変える力を持っているんだわ」

「そんなことないよ」

「そんなことある。あなたは世界の時間を戻したし、世界的に有名な漫画家にもなった」

「戻したってそんな‥‥‥」

「戻したかもしれないわ」

 何を言い出すんだが。

 いつかいじめが本当になくなりますように。

 俺はそう願った。

 黒船あぶきのようなやり方はないかもしれないが世の中にいじめをなくしたい人はきっとどこかにいる。
 それが政治にも影響するかもしれない。
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