いじめられっ子の異世界転移

野うさぎ

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第1章 幼稚園から始まる悲劇

第12話 修行場にて

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 私は、何のことをいわれているのかわからなかった。
 ギルドに下級なんて、ものがあるの?

「リティラシー出身だな?」

「どうして、ギルドの名前を?」

「無名なギルドだけど、あのアコーソと集団が壊滅させたギルドだからさ。

おいらは、ニュースになった時に初めて知ったんだがな。

メンバーの教育もせず、魔力を磨かず、ひたすら武器だけの修行をさせる。

これで、セリオがこの世界のことを知らないということにも合点がいくな」

 私は、異世界に来て、すぐにリティラシーに入団した。
 だけど、そこでは本当に武器以外の修行をしたことがないし、魔力とか、この世界の常識とか言われても、何のことだかわからなかった。

「セリオよ、ギルド選びを間違えたな。

これからは、お師匠様に常識をたたき込んでもらうのだ」

 ここで、扉を開く音がした。

「外が騒がしいんだが、何を話しているのですじゃ?」

 道場の扉を開けたのは、老人だった。
 声は低く、縁なしの眼鏡をかけていた。

「おー、お主はペングウィーではないか?」

「お師匠様、久しぶりですね。

そして、今回は修行で鍛えなくてはならない人がおります」

「またか。

今度は、どんなのだ?」

「おいらの隣にいる彼女は、魔力を一切持たない幼女です。

クライム地方での戦闘ができるようになるために、鍛えてほしいのです」

「初めまして」

 老人は、私の顔をまじまじと見た。
 あんまり、真剣に見られるのはやだな。

「わしは、マイスターと言いますのじゃ。

お主は?」

「私は、セリオと言います」
 
 なんか、わからないけど、厳しそうな人だな。
 私は緊張と恐怖のあまり、怖気づいてしまう。

「セリオか。

クライム地方に行くことを、希望しているのか?」

「はい」

「魔力を感じないのだが、そんな状態で本当に行こうとか思っているのか?」

「え?」

「クライム地方は、世界で一番治安が悪いところだ。

素人が、修行のためとか言って、行くところじゃない。

そこは、内乱とかも普通に起きるところだ」

「私も内乱に巻き込まれる危険があるということですか?」

「まともに戦える状態ならな。

クライム地方は、爆発事故も多いから、巻き込まれたら、そこで人生が終了したものとなる。

」わしの弟子も何人か、クライム地方に行ったものの、連絡がつかなくなった人も少なくはない。

そして、魔法精霊は、各地方にいるのだが、クライム地方だけは一匹しかいない。

その名も、サルヴァトーレ。

彼だけがクライム地方に向かうことができて、有名な魔法精霊だ。

だが、今となっては音信不通だがな」

「警察とかは頼りにならないんですか?」

「警察はいるみたいだが、何人か事件に巻き込まれて、
警察も被害者になってしまうか、
犯罪者の仲間入りになってしまって、
誰を信用していいのかわからなくなる。

また、警察は異動願いを出して、クライム地方を出てしまうことがあるくらいだ。

セリオは、その地方のことを何もわかっていないな」

「はい・・・・」

 まさか、こんな危険な場所にいるなんて知らなかった。

「セリオは、今まで何をしてきたんだ?

どんな生活を送ってきた?」

「私は3年前にギルドについて、槍での修行をひたすらしていて、外の交流を持ってなくて・・・・」

「お師匠様、彼女はリティラシー出身みたいです」

「リティラシー?

リティラシー地方か?」

「はい。

ギルド名が、リティラシーということは、その地方で間違いないと思われます」

 そこで、マイスターさんはため息をつく。

「リティラシーとは、そこに下級ギルドがあり、落ちこぼれだけが通う学校があり、宗教はあるが、魔法学園はない」

「お師匠様、魔法学園がない地方なんてあるんですか?」

「そんな地方はたくさんある。

実際、クライム地方にもないしな。

リティラシーは、わし達の住む隣の地方だ。

そこに住んでいる者は、教育が受けられず、世界で二番目に治安が悪いが、魔法を使えない者も少なくはない」

「私がいた地方が、世界で二番目に悪いんですか?」

 まさか、私がそんなところにいたなんて。

「クライム地方が魔力で支配をする場所なら、リティラシーは暴力で支配する所だ。

そこは、食料困難や、家がない人が多く、ギルドや施設、宗教内で生活する人が多い。

または、わざと犯罪を犯し、警察に捕まり、牢獄での生活を選ぶなんてこともある。

教育を受けられないために、知識もない」

 私は、どんな反応をすればいいのかわからなかった。
 だけど、これだけはわかった。

 この人を師匠として迎えてしまえば、自分が壊れてしまいそうだ。

「ペングウィー、私は帰るわ」

「急にどうしたんだい?」

「とにかく、帰るものは帰る」

「ほう?」
 
 マイスターさんは、顔をしかめていた。

「マイスターさん、ありがとうございます。

ですが、私は君の弟子になれません」

「これでよい」

「え?

いいの?」

 ペングウィーは驚いていた。

「弟子と師匠は、ウィンウィンでなくてはならないかな。

誰かに強制されての教育は、何も進歩しないですじゃ。

魔法を鍛えることが、正しいわけじゃないからな」

「ペングウィー、私はクライム地方へ行くわ」

「そんな、無謀な!」
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