いじめられっ子の異世界転移

野うさぎ

文字の大きさ
上 下
9 / 18
第1章 幼稚園から始まる悲劇

第8話 守らなくてはならない存在

しおりを挟む
 だけど、これだけはわかる。
 私は、目の前にいる伯父さんを失いたくないということだ。

 これ以上、誰も犠牲にしたくない・・・!

「セリオ、何を呆然としている?」

 ペングウィーが、私の左肩に乗る。

「私も戦う・・・・」

「これ以上、無理な行動をすることはよくないと思うな。

君を失えば、いじめが終わるということはないはずだ。

どうせ、こういうタイプは新たなターゲットを見つけるだけだ」

「私が戦う目的を、考えてみたの」

「それは?」

「自分を犠牲にするためじゃなくて、自分も自分以外の誰かも含めて、犠牲を増やさないために戦うって」

「それは、復讐心から来ていたりしないか?」

「それもあるかもしれない。

それよりも、私は守りたいものができた。

たくさんの人を失ってきた。

ママも、児童養護施設の人々も、魔法学園のみんなも、恋人も、全てあいつに奪われた。

だけど、私はなぜ救えないのか考えてみたの。

私は、どこかで自分だけを大切にしている気持ちがあったから。

この気持ちに気づいたら、二度と同じことはしない。

だから、ペングウィー、一緒に戦おう・・・」

 ペングウィーは、私の話を真剣に聞いてから、返事をした。

「・・・・いいだろう。

魔力を持たない君と、無数の魔力を保有しているおいらが戦えば、きっとあの怪物に勝てるだろう」

 私は槍をかまえて、アコーソに襲いかかった。

「セリオ、危ない。

今からでも、間に合う。

挑発するようなことはやめるんだ」

「挑発でもいい。

アコーソはこれらかも、いろいろな人を犠牲にしてまで、佐藤ってやつを探すと思う。

いるか、どうかわからな存在をね・・・・」

「セリオ、わし一人でなんとかなる相手かもしれない・・・」
「ここで、おいらの出番ということだ」

 ペングウィーが、口をはさんだ。

「どっちにしても、セリオも、酒場のオーナーも、体内に魔力を持っていない。

怪我でも、したらどうするの?

補助魔法は?

不利な状況を、有利にするためだけにおいらがいる。

だから、二人とも、おいらに身を任せるつもりで戦えばいい」

「ペングウィー。

そういうことなら、わかった。

なら、二人とペンギンで、共闘しよう」

 伯父さんは手足を使った素手のみで戦い、私は槍を振り回し、パングウィーが私と伯父さんの力を補助魔法で強化してくれた。

 ついでに、ペングウィーは魔法で、アコーソの力を弱体化させた。

「力が抜けていく・・・・」

 アコーソは、その場で倒れた。
 ここで、とどめだ!と思った矢先、吸血鬼さんがどこからか現れた。

「吸血鬼さん!」

「おや、セリオじゃないか?」

 吸血鬼さんは、私に会釈をした。

「倒すことを考えていませんでしたか・・・?」

「考えていたわ。

だけど、それが何か問題がある?」

「問題おおありですよ」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「さあ、どうしたらいいんでしょうかね。

牢屋にでも、ぶち込んで、終身刑にしますか?」

 ここで、伯父さんが答えた。

「そういう事情なら、それが一番だろう」

「了解です」

「吸血鬼さんは、どうしてここがわかったの?」

「わかったわけじゃないですが、魔法学園の生徒の大量虐殺の件が耳に届きまして、こうして犯人を探していたところに、偶然ですが、発見しただけです。

アコーソを目撃した人もいるくらいですからね、ここらへんでは有名なんですよ。

指名手配犯ぐらいのレベルになると、知らない人はいないというレベルになりますがね。

さ、おしゃべりはこの辺にして、これで失礼いたします」

 吸血鬼さんは、こうして黒いマントにアコーソを包み込んで、空高く飛んで、去って行った。 

 私はその様子を見て、全身の力が一気に抜けていくのを感じ、その場に座りこんだ。

「終わった・・・・」

「セリオよ、まだ終わっておらん」

「まだあるの・・・?」

「わしには、まだ救わなくてはならない人が二人もいる」

「それは、もしかして・・・・」

 大体、予想がつく。

「不幸寄せと、死に寄せを持つ者がおる。

そして、セリオにお願いがあるんだ」

 私は、伯父さんの言うことを聞き逃さないようにと、必死に耳を傾けた。

「姪を助けてくれないか?」

「姪?」

「そうだ。

その子を守ってほしいんだ。

彼女も人間世界で暮らしていたのだが、保育園の頃にいじめにあってな、いじめっ子から離れるたために幼稚園に入園したんだ。

だけど、そこで死に寄せというものが発動してしまってな、保育園時代のいじめっ子が幼稚園や家にもやってきて、大量殺人にあい、精神病棟に入院しても、そこでも、数々の殺人事件に巻き込まれてしまった。

保育園でのいじめっ子は、やはり幼い子供だからという理由で見過ごされてしまったと知った時は、人間世界は少年法も含めて、犯罪者を軽視しすぎていると感じたよ。

そんな彼女に残された選択肢は、ひとつだった。

幼い4歳になるかならないかぐらいの彼女の決断だ。

異世界に逃げることだ。

逃げるということは、死に寄せの呪いを持った者からしてみれば、根本的な解決にはならないのだが、それが当時の彼女が一生懸命に考えてだした答えなのだろうな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。 そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。 だけどその条件がなかなか厄介だった。 何故ならその条件というのが────

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...