いじめられっ子の異世界転移

野うさぎ

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第1章 幼稚園から始まる悲劇

第6話 残酷な真実

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「ついてこなくてもいいのよ。

私には目的とかないんだし、迷子になるだけだよ」

「大丈夫さ。

おいらは、君の父親にパートナーになるように言われたから」

 私は、その瞬間足を止めて、後ろにペングウィーがいるために振り返った。

「私の父親を、知ってるの・・・・?」

「多分。

なんとなく、君がその男の娘だった気がしたから。

佐藤っていうのも、聞いたし、おいらは一部始終の様子を見てたんだぞ。

ここで、確信を得たんだ」

「佐藤なんて、苗字はいっぱいいるのに、どこで確信を得たの?」

「人間でありながら、魔力を持ってないのにかかわらず、槍だけで戦い切るのは、間違いなくあの人の娘だって」

 彼の言っていることが、本当かどうか確証がない。
 だけど、私は真偽が気になる。

 人のことは、簡単に信用しないように生きてきた。
 生きてきたけど、そんな私でも、本当だと信じたい時もある。

「私の父のいる場所を、教えて・・・?」

 私は半信半疑ながらも、ペングウィーと名乗る生物に歩み寄った。

「いいとも。

そのための異世界案内人だからね」

「異世界案内人って、何の話?」

「そのままの意味だよ」

「言っていることが、変わっている。

君はさっき、魔法精霊っていう話をしていたんだよね?」

「何も矛盾することはないはずだ。

おいらは魔法精霊であり、異世界案内人。

もしかして、君は異世界に来た時のことを憶えていないのかい?」

 私はそう言われ、自身の記憶をたどった。

 幼い頃に精神病棟に入院した時に、看護師に「異世界に行かないか?」と言われて、気がつけば異世界に来ていた。
 だけど、どうやって来たとかは憶えていない。
 気がつけば、見知らぬ場所にとどりついていたんだ。

 はっきりとではないけど、具体的にではないけど、私は憶えている。
 幼い頃の記憶だから、もしかしたら何かと混濁しているかもしれない。

「・・・・・・・。

私は、人間の看護師に提案されたんだ。

君じゃない。

君はどこからどう見ても、人間じゃない」

「おいらの言うことを、忘れちゃったの?

異世界案内人って」

 私は、必死に思考をめぐらした。

 魔法精霊、異世界案内人。

 ということは・・・・。

「人間と、精霊の姿をふたつ持っているということ・・・・?」

「まあ、魔法精霊であるこのペンギンの姿がおいらの本来の姿だけど、実は人間の姿にもなれるんだ。

この通りにね」

 こうして、ペングウィーは人間の姿になり、看護師の格好をした女性に変身した。

「え?

ということは、つまり・・・・?」

 あの時の看護師は・・・・?

「あの時の、看護師はおいらだったということだ。

久しぶりだね。

君は、確か今はセオリっていう異世界ネームなんだよね」

 今、考えれば、看護師が異世界に転移させる能力を持っているわけがなかった。
 だけど、今の説明で合点がいった。

「さ、君の伯父のところに行こう。

君の父親からしてみれば、実の兄ってことになるけどね。

君も残酷な真実かもしれないけど、そろそろ話していい年頃だろうって」

「なんでもいいけど、私は父に会いたい。

だけど、どうして伯父なの?」

「何でもいいじゃないか~」

 この先、ずっと会うことがないと半ば諦めかけていたところに、ようやく父のことがわかると安堵した。
 その残酷な真実が何なのかに頭が引っかかるけど、今はそんなことどうだってよかった。

 ペングウィーに案内されて向かった先は、酒場だった。

「これが君の実の伯父だよ」

 だけど、目の前にいたのは、異種族の森に行くことを提案した酒場のオーナーだった。

「酒場のオーナー?

どういうこと?」

 私は、頭が追いつかなかった。
 だって、明らかに目の前にいるのは、酒場のオーナーだから。

「君は理解できないのかい?

もう一回言うよ。

これが、君の実の伯父だよ」

 私は、すでに伯父に会っていたということ?

「セリオ。

信じられないかもしれないけど、君の伯父なんだ。

今まで、隠していてごめん。

だけど、これには事情があるんだ」

「事情?」

 どういうことだろう?

「セリオにそのことを何度も話そうと思っていたんだけど、悩んでいたんだ。

幼い君に、残酷な真実を背負えるのかって。

受け入れられるのかって」

「何の話をしているの・・・・?」

「とにかく、聞いてほしいんだ。

三人にはそれぞれに、運命があるんだ。

いじめ寄せ、不幸寄せ、死に寄せ。

それぞれが、かなりの不幸な運命を背負うことになる。

いじめ寄せとは、いじめっ子を引き寄せてしまう運命。

不幸寄せは、その名の通りに不幸を呼び寄せてしまうんだ。

最後に、死に寄せとは、自分以外の人が次々と死んでしまうことだ。

つまり、身近で殺人事件、自殺事件、事故死、病死が起きるんだ」

 こんな運命は、初めて聞いた。
 だけど、もし、私がこの三つのどれかに当てはまるとしたら・・・・。

「私は、いじめ寄せだと思う。

私には、いじめられて、執着されて、ストーカーに会っているんだ」

「そうか。

ごめんな。

それなら、もっと早くに話しておけばよかったか・・・」

「ええ。

そういうことなら、早くに話してほしかったわ」
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