上 下
321 / 393
番外編 恋のライバルはいちえちゃん~異世界編~

第1話

しおりを挟む
「 宇佐木《うさぎ》君」
  あたしの幼馴染みの宇佐木君に会った。
  
 今は、恋に悩みたいお年頃。
 あたしの理想とする王子様を発見したいな。
 発見できなくても、作ればいいの。
 
 鼻くそほじっても、あぐらかいても、爪かんでも、お風呂1日くらい入らなくても、
 あたしらしく生きれればいいの。
 結婚なんて楽勝。
 嘘ついてればできてしまうの。
 
 だけど、幼なじみだけは騙せない。
 幼なじみなんて、あたしの本性とか知ってるもの。
 幼なじみの牛縞うしじま君。

 嫌な思い出とかあったよ。
 あたしに「デブ」「最近、太ってきてね?」とか言ってきたり、
 お団子ヘアーにした時なんか「おばさんみたい」とケラケラ笑われた時には、堪忍袋の尾が切れていた。

 「思うんだけどさ」
「何?」
 あたしは、不機嫌そうに返事をした。
 どうせ、あたしのことを馬鹿にしたいだけでしょ?

「髪が可愛いと思うんだけどさ…」
 へ?
 あたしの顔は真っ赤になっていた。
 牛縞君の口から、そんな言葉が出るとか思ってなかったから。

「どんなヘアースタイルがいいかな…?」
「どんなヘアースタイルだっていいんだよ。
とにかく、お団子以外にしろよな」
「どんなって何よ?」

 牛縞君とあたしは、一緒にいればすぐに喧嘩ばかりしていた。
 喧嘩だけで、1日過ごせるんじゃないかってくらい。

 牛縞君があたしを好きとか絶対にないよ。
何でも知ってる幼なじみだし、
会えば喧嘩ばかりだし、
あたしのことをからかうけど、
褒めたことはないし、
優しくされたこともないし、
ピンクと赤は嫌いな色と聞いたことあるし、
嫌いな食べ物はいちごみたいだし、
あたしとは趣味が合わないもん。

 だけど、不思議なくらい一緒にいるのはどうしてだろう?
 あいつのことは大嫌いなはずなのに。
 嫌いなら、無視していけばいいのに。

 嫌いで無視する人、
 嫌いだから喧嘩する人、
 どんな違いがあるのかな?

 どんな髪型にしようかな?
 鏡の前で、自分自身を見つめる。
 別に、牛縞君のためじゃないからね。

 ツインテールがいいかな?
 可愛い…。
 よしっ、明日この髪型と決めたら、ダイエットのために軽く筋トレして早めに寝るか。
 
 そして、ツインテールで牛縞君に会いに行った。
 靴下はワンポイントなし、いちごはどこにもない。
 あたし、変わるって決めたの。
 いちごとか、ピンクとか、赤とか、お団子とはさよならするって決めたの。

 牛縞君が顔を真っ赤にしながら、「お前、可愛いじゃん」と呟いた。
 本当に牛縞君なの? 信じられない。

 嬉しすぎて、跳びはねそうだった。
あたしはそこで、牛縞君が好きだと自覚するようになった。

 ある時、森の中で見てしまったんだ。
牛縞君が市江ちゃんに告白されるところを見てしまった。
「牛縞君が好き」
「ごめん、好きな人がいるんだ」

牛縞君の好きな人って、誰だろう?
そんな人いたら、嫉妬しちゃうな。

「好きな人って誰のこと?」
「それは誰にも言えない」

牛縞君の好きな人は、あたしも気になる。
あたしは小学生の時からずっと牛縞君といるけれど、好きな人のことは教えてくれない。
小学生のころは純粋に、恋バナがしたくて、好きな人が誰なのか聞いていたけれど、今は好きな人があたしであるかどうかの確認のために知りたかった。

牛縞君はうるさいやつという認識くらいで、恋愛感情とかなかったから。

牛縞君のことを改めて見ると、かっこいいかも。
 小さい頃から仲良しで、全然そんなに意識したことなかった。

「好きな人って、もしかして、苺野さん?
いつも、一緒にいるし、他の女子のことは避けるのに、苺野さんとはずっと一緒にいるから」
「関係ない。あいつと俺はただの幼なじみでしかないから」

牛縞君は、他の女の子と話とかしなくなって、避けるようになっていた。

「じゃあな」
「待ってよ」

やばい。
あたしは、その場を離れた。
 だけど、すぐに見つかった。

「さあ、帰ろうか」
「うん」

 よかった。
 話、聞いたことばれてない。

「また、お風呂入ってないだろ?」

一日くらい、入らなくてもいいかなって思っていたのに。

「そんなこと、めんどくさいし」
「女の子なんだから、それくらいしろよ」

   あたしには、実はもう一人幼馴染がいて、宇佐木《うさぎ》君だ。

   私には牛縞君に対する思いもある。
   だけど、その頃には、あたしは宇佐木君が好きになっていた。
   真面目で、優しいところに惹かれていった。

   あたしは自分の気持ちにけじめをつけるために、
   どんなあたしも受け入れてくれるかどうか試すために、
   肩まで長かった青い髪を、ショートカットにした。

   牛縞豊君の答えは、ひとつ。
「似合ってんじゃん」
「じゃあ、あたしと付き合ってくれる?」
「そこまで言うなら」

   あたしと幼馴染みの豊君は、めでたくカップルになれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

間違っていますわ!

みこと
ファンタジー
グランシェル侯爵家の次女、ロレッタ。現在16歳、貴族学園の1年生。 ロレッタは、たとえ一般的な常識であっても「間違っている」と思う事は「間違っている」とハッキリと声を上げる人物である。 はたして、ロレッタの指摘の結果は... 現在進行形での婚姻や恋愛要素はありません。 ご都合主義、ゆるゆる設定なので、色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

グーダラ王子の勘違い救国記~好き勝手にやっていたら世界を救っていたそうです~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、ティルナグ王国の自堕落王子として有名なエルクは国王である父から辺境へ追放を言い渡される。 その後、準備もせずに木の上で昼寝をしていると、あやまって木から落ちてしまう。 そして目を覚ますと……前世の記憶を蘇らせていた。 これは自堕落に過ごしていた第二王子が、記憶を甦らせたことによって、様々な勘違いをされていく物語である。 その勘違いは種族間の蟠りを消していき、人々を幸せにしていくのだった。

宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~

よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。 しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。 なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。 そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。 この機会を逃す手はない! ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。 よくある断罪劇からの反撃です。

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

処理中です...