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番外編 恋のライバルはいちえちゃん

第4話

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  あたしは二階のアパートに住んでいるけれど、
牛縞君は、あたしの住むアパートの隣のマンションに住んでいた。
   近所というほどでもないけれど、近くに、歩いていけるくらいの距離には住んでいた。

   小学まではよく、牛縞君の家に泊まりに行くこともあったけれど、
   中学になってからは、そうゆうことはしなくなってきて、
   お互いに恥ずかしいという感情が芽生えるようになった。

   幼なじみといえ、異性の友達であることに変わりはない。

   いまだに一緒に帰ってくれるから、それはそれでいいのかもしれない。
   だけど、市江ちゃんと仲良くなると、市江ちゃんと帰ってばかりだから、それ以来は牛縞君と疎遠になっているかもしれない。

   あたしは一年五組で、牛縞君は一年四組で、隣のクラスというのもあるかもしれない。

   次の日に学校に行けば、市江ちゃんから、
「牛縞君ととったわね」
「とったも、何も付き合ってないけど」
「そんなの幼なじみという特権を使って、一緒にいるんじゃないの」
「幼なじみなんて、あたし一人じゃないから」
「え?」
「一年三組の方に、牛縞君のもう一人の幼なじみがいるよ」

   そう、あたしと牛縞君と、多磨湖《たまこ》ちゃんは、三人で幼なじみ。
   出会いは、小学一年生のころから。
   あたしと多摩湖ちゃんと牛縞君は、三人でよく遊んでいたりしたし、一年生の頃は三人で同じクラスだった。

  中学に進学した時に、多摩湖ちゃんは、一年三組になった。

   多磨湖ちゃんは、牛縞君が好きで、小学六年生の頃に告白したけれど、振られてしまった。だけど、友達関係は続いている。
   多磨湖ちゃんはいまだに、牛縞君が好き。
   だから、あたしは告白できない。あたしの大切な幼なじみを傷つけたくないし、あたしにとって、本音で語れる唯一の人だから。

「そんな話、聞いてない」

   多磨湖ちゃんは中学に進学してから、部活にり、二人で一緒に帰ることが増えたけれど、部活がない日は多摩湖ちゃんとも一緒に帰っている。

   多磨湖ちゃんは、マンションの一階に住んでいて、
牛縞君がマンションに二階に住んでいるから、
確かに多摩湖ちゃんの方が近所っていうのかもしれない。

「言う必要ないから」

   今回は、市江ちゃんはその場を去ったけれど、次はどうなるのかな。

   あたしと多摩湖ちゃんと牛縞君はきょうだいがそれぞれいる。
  牛縞君は兄が一人いて、多摩湖ちゃんは弟が一人いて、あたしには姉が一人いる。

   あたしは姉一人、父一人、母一人、祖父一人の五人家族。

  あたしには美人できれいな姉がいるから、それがコンプレックスとなる。
  姉はファッション雑誌の読者モデルをしている。
  中学一年生の頃にスカウトされて、あたしとは大違いだよね。

    あたしには、実はもう一人幼馴染がいて、幼稚園の頃に一緒だった寅野《とらの》君だ。小学校は別だったけれど、中学は一緒になれた。
    詳しい理由はわからないけれど、住所の関係らしい。

    そこで、寅野君に「幼稚園の頃から、お前が好きだった」と告白されてしまった。
    ドキドキした。
    こんなあたしのことを好きになる人がいたなんて。

    だけど、私には牛縞君に対する思いもある。
    だけど、市江ちゃんは、牛縞君は好きだけど、寅野君は苦手なタイプらしい。
    あたしも、市江ちゃんが苦手で、関わりたくないなら・・・。

「お前のことは、離れてからも忘れたことがなかった」
「うん。あたしも。付き合おう」

   そこで、あたしと寅野君は付き合うようになり、牛縞君と疎遠になり、気がついたら、牛縞君と市江ちゃんは付き合うようになっていた。
   そう、市江ちゃんの片思いは叶ったみたい。

   だけど、その頃には、あたしは寅野君が好きになっていた。
   真面目で、優しいところに惹かれていった。
   そう、恋は違う形で、成就して、最高に幸せ。
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