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番外編 山賊暮らし

第2話

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 頭痛がする。目眩も‥‥。
 何がどうなっているかよくわからないし、状況を理解する気力もない。

 頭痛も目眩もおさまった。
 誰かに頭を殴られたかな?
 そんな記憶はどこにもないけどな‥‥。

 僕がどうなったのか、必死に思考を回らさなきゃ。

 確か、僕は家にいたはず‥‥。
 普通に考えれば、家にいるはずだ‥‥。

 家じゃない‥‥?
 ここはどこ?

 電気を消しているのかな?
 にしては、違和感がある。

 手探りで電気を探してみる。
 あれ?壁がないような‥‥
 いたっ!
 え?これ、本当に壁?
 なんか、ごつい‥‥。

 手探りで歩く‥‥歩く‥‥。
 自分がどこに向かおうとしているかなんてわからない。
 とにかく出口を探すんだ。

「悪い子なのです。どこに行くんですか?」
 この声は‥‥子ども?
 考える間もなく、その子に腕をひっぱられて連れていかれた。

 明るい‥‥、ランプがついている。
 僕よりも背が高い男の子がいる。
 僕はあまり背が高い方ではないから、そうなるだけかもしれないけど。

「君は‥‥?」
「おらは、ガナークと言うのです」
 不思議な名前だな。
 クラスにキラキラネームでいたけど、その名前が原因でいじめられて不登校になったんだよな。
 その子と同一人物というわけではなさそう。
 話し方といい、外見も名前以外一致してないから。

「僕は帰りたいんだが‥‥」
「帰らせないのです」
「どうして?」
「ガナークが帰らせなくない、と言うのです。従うのです」
 
 困ったことになった。
 僕より背が高いけど、童顔で話し方も幼い雰囲気があるガナークは中身までもが子どものようだ。
 声も男の人と思えないくらい、普通に話していてもソプラノが出せるんじゃないかってくらい声が高い。
 僕より年上なら声変わりが始まってもいいとは思うけど、声変わりが始まってなきゃおかしい。
 背が高くても僕より年下というのはある話だろう。

「なのです」口調はアニメではよく聞く話だけど、会ったことはない。
 まさか、現実にいるとは思わなかった。
 そもそもここは現実世界なのか?もしかしたら、ゲームの電脳世界に迷い婚でいるかもしれない。

 相手がもし、子どもならここは慎重に話して、帰るための口実を作ればいい。
 嘘なんて幼い子どもに見破れるわけない。
 見破らなくても、気にいらない返答ならあるかもしれないが。

「ガナーク、僕は家に帰らなくては誰か心配するかもしれないし、警察が来るかもしれないよ?」
 説得できたかな?
「来ないのです。来ないというか来れない方が正しいのです。
ヤマトちゃまの存在は抹殺されたのです」

 空想的なことを言ってくるとは、現実の話を持ち出しても意味がないようだ。
 僕は自己紹介なんかしてないけど、何で僕の名前を知っているんだ?

「というと?」
「ヤマトちゃまを助けないのです」
 正義のヒーロー気取りか?
「大丈夫だよ。子どもじゃないんだし」
「遅いのです。ヤマトちゃまは今日からここがマイホームなのです」
 
 いきなり言われても気が進まない。
 いくら思っていても、今の僕にどうすることもできない。 
 ここが、この洞窟が僕の住み場になり、山賊たちとの生活が始まった。
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