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番外編 山賊暮らし

第1話

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 僕は、山田ヤマト。

 ごく平方な一般人かとは思われるかもしれない。
 あるきっかけに、その日常は崩れることになるが。

 僕はたまたま、帰り道に聞いてしまう。
「地球人たちの様子はどうだ?」
「閉鎖空間やと、何もわからへんでえ」
「ふむ 」
「地球人はあからさまな、テリトリーをようはるようなっとた」
「ゆえとるな」

 地球人?
 君たち、どう見ても地球人としか思えないが、宇宙人らしく見えない。

 人間の姿を偽ってる?
 それとも、ドラマの撮影?にしては、カメラマンがいないんだが。
 あるいは、どこかにカメラがあるとか?

 どちらにしても、普通ではない気がする。
 何か特別なことがない限り、「地球人たち」なんて発言しない。
 するとしたら、ドラマやアニメの話をしている時だろう。

「おい、そこに誰かおるんかい?」

 やばい、きずかれた?
 僕は隠れたまま出てこない。

「いますとも」

 見知らぬ男が現れた。

 え?僕じゃない?
 僕がいることにきずいてない?

「お前を退治しに来た」
「退治やと?」

 二人の男に向かい、剣を向ける一人の男。
 おいおい、今の時代、剣なんか人に向けたら犯罪が成立するぞ?

「ただ者ではなかへんな」
 君もだよ。

「いざ、尋常に勝負」

 巻き込まれる予感がしたので、
 僕は足音を立てないように立ち去ることにした。


 何だったんだ?
 とにかく、家に帰ろう。

 あの事を学校で話してやる。
 きっと、みんなの笑いのネタになるだろうな。
「地球人」とか発言するやつ、なかなかいないからな。

「おい」
 え?
 いきなり、誰かにフードを掴まれた。

 後ろを振り返ると、さっきの剣をふるっていた男。
 僕は、ぞっとした。

「見ただろ?」
「それは‥‥」
「正直に言うよろし。
命はとらん」
「見てた‥‥かな?」
「見てたんだな?」
「はい‥‥」

 男は、掴んでいたフードを離した。

「そのことは、黙っておけ」
「は、はい‥‥」
「小僧、顔を覚えとくぞ?
ちなみに、見たからには‥‥」
 僕は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「小僧に言《ゆ》うても、わからんか。
まあいいだろう」
 男は去った。

 何だって言うんだ?
 聞いたとしても、意味がわからないんだから、誰かに言ってもわかるはずない。
 何故、隠す必要がある?
 言われたことを破ったらどうなる?
 だけど、破ってみたい。

 
 だめだ、寝れない。
 気になって寝れない。
 何故だか、わからないけど寝ちゃいけない気がする。
 夜中の1時。日付け、既に変わってやがる。

 よし、猫と遊ぶか。
 猫は大体起きてるし、誰もきずかないよな?

 猫と‥‥
 意識が歪んでく‥‥。
 さっきまで眠くなかったし、逆に元気だったはず‥‥。
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