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番外編 空賊暮らし

第3話

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「ガツ‥‥」
 一人で夜空?を眺めるガツがいた。

「おう、少年」
「ちゃんと名前があるんだから、名前で呼んでよ」
「ソラ」
 俺は、顔が赤くならないように必死だった。

「こんなところで何をしているのさ?」
「昔を思い出しているのだ」
「昔?」
「我にも、家族がいた‥‥」
 人間なのかどうかわからないガツにも、家族がいたとは。
 そんなことを思っていることがばれないようにしなくちゃ。

「我は、バツニでな」
 バツニ?
 バツイチはたまに聞いたことあるけど、バツニは聞いたことないな。

「子どももいてな、我が孤独になっても、仲間以外は当てにならん。
家族は信用していいのか、家族を新しく作るとかしたくないのだ」
 ガツ‥‥。
 こんな悲しい過去があるなんて、思わなかった。

「我の元妻や子は、今頃どうしていることか。

今も心に決着が着いとらん。

もう少しだけ、一緒に過ごしたかった‥‥。

何故、二回もトラウマになるような離婚をして、
もう女と恋愛するものか、結婚するものか、
そんな自暴自棄だった‥‥。

離婚になる理由を知ることが、今でもできるなら、 
すぐに駆けつけたいぞ。

空賊なんかやめて、家族に戻りたい時もある。

人生何年生きるかわからんし、
もしかしたら何百歳や何千歳も生きるかもしれん」

 そんな長生きするか?

「ガツ‥‥俺でよければ、ガツを元気つけたい‥‥ガツの家族になりたい‥‥」
 気がつけば、俺は抱きしめられていた。
「嬉しいぞ」
 照れくさい‥‥。

 ガツとラブラブの関係になれた俺。
 ガツと抱き合ったり、キスしたり、そういった関係にはまだなれていないけど、近いうちになれたらいいな、なんて思い始めた。
 だけど、距離を縮めるには時間がかかるだろうし、 
 恋愛経験がない俺からしたら、何もかもが初めてだった。
 いきなり男と付き合いだすとか、異性よりはいいかな?
 女心なんてわからないし、
 女の子は付き合えば記念品はねだるし、
 デート代で割り勘は引かれるし、
 ルックスを求めるし、
 すぐに感情的になるし、
 お喋りだし、
 噂話を初めるし、
 群れたがるし、
 気分の浮き沈みは激しいし、
 そう考えれば男の方が付き合いやすいかもしれないよな。

 付き合うなら、キスしたりの関係は最低限築きたいよな。

「ガツ‥‥キス、いつになったらするの?」
「今すぐかな」 
 俺はガツからキスをされた。
 俺は反射的にガツの腕を掴んだ。
「ん‥‥」
 顔があまりにも近すぎたから、思わず目を閉じた。

 舌で口内を弄んで、やっと唇を離してくれた。
 次の瞬間、抱きしめられた。
「もう、離さないから」
「俺も‥‥」
 
 世界で好きになれるのは、ガツだけなんだ。

 「あれー、ガツ君じゃない?」
「ガツちゃまじゃないですかー?」

「ガナークとジェシーではないか」

「ガナークは失恋したのです」
「ガナーク君、そんなのガツ君に言っても仕方ないよ。
僕は恋愛とかしたことないけどさ」
「ジェシーちゃまにはわからないのです」

 こうして久しぶりにみんなでお話をした。
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