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番外編 空賊暮らし

第2話

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 なんとなく、この性格に慣れてきたかな?

 蛾通の発音や喋り方に違和感がなくなってきたし、
 朝なのか夜なのかわからないことに恐怖していていたけどさ、
 今では朝早く起きなくてはならないというプレッシャーもなくなってきた方けど、
 いまだに俺の高所恐怖症は直ってないので、
 空を飛んでるなんて思うとこわくなる。

 飛野ソラなんて、名前はあるけど、
 高所恐怖症だし、
 飛行士なんかには絶対なりたくない。

 飛行機、ヘリコプターなど空飛ぶ関連については苦手とする。
 箒《ほうき》にまたがって、夜空を飛ぶ昔話の魔女の思考がよくわからない。

 飛行操縦士なんか、いまだになりたくはない。

 俺は確実に地で生活していない。

 俺は、これからどうして行けばいい?
 まだ家族を信じてもいいと帰る方法を探すか、
 ガツのいうことを信じて(最近、漢字にするとわからなくなるので、カタカナにしてる)、この生活を継続させた方がいいのか。

 どちらを選ぶにしても、どれが本当がだなんてわからない。

 帰れば平和なのか?
 そうとも言い難い。 
 帰れば何故いなくなったかも話題になりそうだし、
 ニュースや新聞でも取り上げられて、
「探しています」なんて駅近でポスターが貼られていた際は、俺は有名となる。

 探しているかもしれないし、
 探していないかもしれない。

 まず、情報入手が先だろうな。
 本当かどうかわからないことを考えても、どうしようもないし、前に進まない。

 まず、これは空飛ぶ船で、向かう先がどこかもわからない。
 景色は、真っ黒。

 人間の姿をしている方が何人もいるけど、よく見れば微妙に人間でない気がする。
 肌が不気味なくらい白すぎたり、
 発音がずれていたり、
 四字熟語やことわざはすぐ出てくる、
 中には左手で飯食う奴もいるもんな。

 出される食事も奇妙だ。
 タンポポだけでスープ作るとか、
 蛙の唐揚げとか信じらんない。
 美味しいのかよ?

 英語は一切学習しないくせに、
 ドイツ語やフランス語とか、
 誰も使いそうにない朝鮮語とか、
 そんなこと勉強するくらいなら英語学べよ?
 英語を全く知らない奴も珍しくない。

 血液型に、A、B、O、ABはいないらしいけど、
 C型とかZ型はいるらしい。
 おかしな血液型だな。

 普段着はチマチョゴリ、チャイナ服、
 ウェディングドレス、和服、
 もっとまともな服着ろよ?
 ウェディングドレスなんて結婚式以外着ないだろ?

 結婚風景は、通い婚。
 無断で家に入る。
 犯罪だろ?
 平成みたいな風潮があるのか?
 もしかしたら、こいつら平安時代からいたりしてな。

 そういえば、ガツは薄い白にも見えるようなピンクの男性用チャイナ服を着ている。
 靴は、素足で履いている。足、大丈夫か?
 髪は、前髪はあるけど、後ろ髪が‥‥。ストレス反応かな?
 指はこわくなるくらい細くて長いし、
 爪も不潔なぐらい伸びている。

 ガツとの生活は、最初ガツを警戒するも、
 次第に警戒が薄れていく。
 同じ感情を持つことは難しい。

 俺がガツのことを好きじゃないかって思うようにもなる。
 恋愛としての意味かどうかはわからないけど。

 ガツのことを気に入っちゃいけないはず。
 俺は、ガツを警戒しなくてはならない立場に置かれているんだよ。
 ガツ‥‥。
 料理に何か仕込まれていたんだろうか?
 感情が薄れていくし、自分が何を思っているかわからなっていく。
 そして、その感情が今までに体験したことないもので、何なのかわからない。
 俺がわからないなら、みんなわからないよな?

 ふわふわしているような、
 じんじんしているような、
 自分の感情を制御できそうにない。

 俺はこのままどうなるんだろうか?
 このまま、ガツのことを好きになろうか?

 お姫様抱っこされたり(俺がお姫様抱っこする側は無理がある)、
 キスしたりされたり、
 頬を赤らめたり、
 鼻と鼻をくっつけ合ったり、
 一緒にお風呂やトイレとか、
 なんて妄想していた。

 俺、確実におかしい‥‥。
 おかしいとしか言いようがない。

 どうか、誰かおかしな俺の妄想を止めてくれ。
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