上 下
268 / 393
番外編 盗賊に愛されて 第1章

第2話

しおりを挟む
 海賊の船長ザイコスキーと一緒に寝る、一緒にお風呂、キスをする(最初は浅いキスだったけど、そのうちディープなキスとなった)、ほのめの体に触る。

 そんなことが続いた。



 そういえば、家族は今更どうしているだろう?

 家族が恋しくなった。

「家族に会いたいよ‥‥」

 ほのめはザイコスキーにお願いしてみた。

「あなたに帰る場所はないわ」

「どうして?」

「何者か邪心に襲われたから」

「邪心?」

「あなたを守るためにここから避難させたのよ」

 邪心が何なのかわからない。

「考えさせてちょうだい」



 ほのめには姉がいた。父さんに母さんもいた。

 姉さんは「ほのめ君」といつもほのめを呼んでいた。

 背が高い俺と違い、姉さんは150センチ未満で、ほのめより小柄だった。

「ほのめ君」

「姉さん」

「ほのめ君、勇石神《ゆいか》は、心配したんですよ?」

 姉さんもほのめと同じように自分のことを名前呼びする。

 ただ、ほのめは時々「俺」になるけど、姉さんは時々「僕」と言う。

「どうして、ほのめはどっか行くのですか?

パパもママも心配しますわ」

「していいもん。

どうせ、ほのめが帰って来ると思ってるから」

「勇石神もそう思ってました。

だけど、帰りましょう?」

「どうして、姉さんはそんなにいつも明るいの?」

「うーん、どうしてですか‥‥

勇石神は、明るくないと誰も励ませれないから」

 姉さんは不思議な人だった。

 そのときはおかしな人ぐらいしかなかったけど、今としては恋しくなる。



「会いに行きましょう、ご家族に」

「本当?」

 ほのめは嬉しくなった。

「ただ、危険なので要注意よ」

 家族に会いに行くぐらいで、何が危険なんだが。

「行くわよ」



 船で行った矢先

 ザイコスキーとほのめの二人で、炎道家に向かう

 やっと帰れる。

 だけど、見つけたのは、父さんと母さんの倒れているところ

「父さん、母さん」

 二人とも息がない。

 姉さんは?姉さんがいない。

「姉さんは?」

「二人とも殺されているわね。

 今は逃げましょう」

「嫌だ、姉さんがいない‥‥」

「生きている保証はないわよ」

 ほのめの腕を掴むザイコスキーの手を振り払って、家の奥へと進む。

 そこで見たのは‥‥

「姉さん‥‥?」

 姉さんじゃない。

 姉さんの姿をしているけど、歯は青いし、左目からは黄色の液体が流れているし、胸は大きくなってるし(こんな短期間で育つか?)、爪は紫になってるし、唇は黒かった。ただ、身長は変わらないようだ。

「ぐううう」

 姉さんの姿に似たものが威嚇している。

「姉さん?」

 ほのめは呼び掛けた。

 すると‥‥

「ほお‥‥」

 何か喋ろうとしている。

「の‥‥」

「姉さん」

 ほのめは抱きついた。

 そしたら、姉さんの姿をした者は、右目からも黄色の液体を流した。

「あ‥‥え‥‥」

 何かを言いたそうだった。

「姉さん、ほのめだってわかる?」

「う‥‥‥‥ん」

 後ろからザイコスキーが「そいつから離れてよ」と叫んだ。

「嫌だ、姉さんだから」

「あなたの両親を殺した犯人かもしれないわ」

「姉さんはそんなことしない!」

 姉さんはザイコスキーに威嚇をした。

「これは、何があったのかしら?」



 ほのめは姉さんを連れて、海賊船に乗った。

 父さんも母さんも死んだけど、姉さんは生きててよかった‥‥。

「姉さんが犯人じゃないよね?」

「う‥‥‥‥ん」

「犯人は誰なの?」

「あ‥‥‥‥‥‥え‥‥‥‥」

 姉さんは言葉になってない。

 喋れてない。

「諦めなさい。これはもうすでに人間じゃないの」

「まさか、姉さんは生まれた時から人間だった」

「生まれた時はそうだったかもしれないけど、今は人間じゃないの」

 姉さんは両目から黄色の涙を流した。

 涙の色も、血の色も、爪の色も、唇の色も、歯の色も違うけど‥‥

「人間だよ」

「明らかに見た目でわかるでしょう?」

「人間だから、泣くんだよ。

ほのめは姉さんを信じる」

「そんなに大事?」

「大事」

「あたしよりも?」

「え?」

「あたしもほのめを愛してる。ほのめが好き」

「わかったよ‥‥」

 ザイコスキーがほのめを抱きしめたから、ほのめは抱きしめ返した。

 姉さんはその様子を見て「よ‥‥‥‥‥‥か‥‥‥‥あ」と喋った。

 多分、よかったと言う意味だと思う。姉さんなら言いそうだ。

 どうして、姉さんがそうなったのか、父さんや母さんを殺した犯人が誰か突き止めること、姉さんを人間に戻す方法をほのめが探すんだ。

 こうして、ほのめは前へ進むことができるようになった。

 こいつが本当に姉さんかどうかはわからない。だけど、姉さんのような気がする。

 本当は姉さんは人間のままで、どこかにいるという期待をしている自分がいた。

「姉さん、自分の名前わかる?」

「う‥‥‥‥ん」

「自分の名前言える?」

「ゆ‥‥‥‥‥‥い‥‥‥‥あ」

 ゆいあ?勇石神には近いしなあ。

「本当にゆいあ?」

「ち‥‥‥‥が‥‥‥‥」

 否定してる。自分の名前わかるのか?

 だけど、本当に姉さんかどうか確かめないと‥‥。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ
ファンタジー
高宮 春人(タカミヤ ハルト)は転生した地にて、武人としての才能が開花する。転生された場所は遺跡の宝を発見し、一攫千金を夢見る冒険者の街、アーカーシャ。 攻撃を避ける必要のない圧倒的な身体能力が春人の長所であり、強力なモンスター相手でもそれは変わらない。パートナーであるアメリアも最強クラスの魔導士であった。 2人組なのに協力しない。戦闘スタイルは各個撃破。切り込み隊長の春人と遠距離攻撃のアメリア。   1人で十分すぎる能力を発揮する為、2人で戦うということは想定されていないが、2人で協力して戦えばまさに無敵。個々の能力とコンビネーションでどんな怪物をもねじ伏せる! 遺跡の探索、モンスターの討伐、偶にデートやハーレム展開など……富と名声を上げつつ、街の人々とのふれあいも大切にしながら春人は異世界に君臨し始めた。 各国の思惑なんて何のその。第二の故郷であるアーカーシャの街を汚す輩は国家であろうと許さない! がんばれ春人! 彼の圧倒的な才能は大陸全土に響き渡る!

婚約者の番

毛蟹葵葉
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

時々、僕は透明になる

小原ききょう
青春
影の薄い僕と、7人の個性的、異能力な美少女たちとの間に繰り広げられる恋物語。 影の薄い僕はある日透明化した。 それは勉強中や授業中だったり、またデート中だったり、いつも突然だった。 原因が何なのか・・透明化できるのは僕だけなのか?  そして、僕の姿が見える人間と、見えない人間がいることを知る。その中間・・僕の姿が半透明に見える人間も・・その理由は? もう一人の透明化できる人間の悲しく、切ない秘密を知った時、僕は・・ 文芸サークルに入部した僕は、三角関係・・七角関係へと・・恋物語の渦中に入っていく。 時々、透明化する少女。 時々、人の思念が見える少女。 時々、人格乖離する少女。 ラブコメ的要素もありますが、 回想シーン等では暗く、挫折、鬱屈した青春に、 圧倒的な初恋、重い愛が描かれます。 (登場人物) 鈴木道雄・・主人公の男子高校生(2年2組) 鈴木ナミ・・妹(中学2年生) 水沢純子・・教室の窓際に座る初恋の女の子 加藤ゆかり・・左横に座るスポーツ万能女子 速水沙織・・後ろの席に座る眼鏡の文学女子 文芸サークル部長 小清水沙希・・最後尾に座る女の子 文芸サークル部員 青山灯里・・文芸サークル部員、孤高の高校3年生 石上純子・・中学3年の時の女子生徒 池永かおり・・文芸サークルの顧問、マドンナ先生 「本山中学」

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...