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番外編 山賊に愛されて

第2話

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 ヤンスさんと生活を始めて数日。

 僕はここから脱出することを諦めて、素直にヤンスさんとの生活を受け入れてもいいかなとさえ思えてしまった。

 僕に戦う力はどう考えてもないし、力ならヤンスさんの方があると思う。

 ヤンスさんは僕より小さくてもおさえつける力は強かったし、強引にキスもハグも、お姫様抱っこもされる。

 なら、このままどうにでもなれ。

 ヤンスさんの自由なままにさせておこう。

 どうせ、僕の居場所なんてないから。



「食った、食った」

 ヤンスさんが肉とか食べて、満足していた。

 よくヤンスさんや他の山賊たちが食料をとってくるらしいけど、僕は外出禁止らしい。

 僕のやることは、ヤンスさんの癒し。ヤンスさんが帰ってくる時に家にいて、ヤンスさんさんと一緒に寝る。

 最初は抵抗があったけど、すぐに慣れた。



 僕の生活が変わることが起こった。

 山賊のアジトに一人の少女が侵入してきて、アジトの物を次々破壊していくらしい。

「ヤンスさん」

「せめて、らいだけは守ってやる」

「守らなきゃいけないのは、自分でしょ?」

 女の子が飛び出し、ヤンスさんを蹴った。ヤンスさんはぶっ飛んだ。

「君は‥‥?」

 見知らぬ黒い髪に翡翠色の瞳

‥‥。

 手には槍を持っている。

「うち?うちは、水湖《みこ》だよ」

「水湖?」

「よろしくね」

「君は、何者なの?」

「水の使い手、盗賊退治三姉妹の二女で、山賊専門の破壊神‥‥」

「ここまでだ、らい、離れろ」

「でも‥‥」

「大丈夫、君に何かするきはないから」

 そうやって水湖は槍を振りかざし「ゆけ!我が槍よ」とものすごいスピードで、槍をヤンスさんに突きつけた。

「確からいだっけ?」

「はい」

「君、誘拐された子だよね?」

「そうなの?じゃあ、うちと行く?」

「どこへ?」

「どこへでもいいよね?」

「へ?」

 水湖は、僕の腕を引っ張った。



 水湖は不思議な子だ。

 話を聞くと、水湖は三姉妹の二女。

 長女は氷の使い手で、海賊専門の退治としているらしい。

 幼い三女は炎の使い手で、空賊専門の退治をしているらしい。

 

 アジトから出た。初めて出た。

 山だ。寒い。こわい。

 しかも、山と言っても高い。ここは頂上らしい。

「降りるか」

「こんな高いところ‥‥」

「こわいの?」

「こわいって‥‥」

「こわいなら、抱っこしてあげるよ?」

「持てないよ、きっと」

「うちを何だと思ってるの?」

「何って?」

「これぐらい大丈夫って、盗賊退治なんて有名な職業だよ?」

「知らない‥‥。僕は、もしかしたらこの世界出身じゃないかもしれないから‥‥」

「異世界出身?」

「かもしれない」

「詳しいことはわからないけど、ヤンスならやりかねないよね」

「ヤンスさんをどうして知ってるの?」

「有名だからよ。山賊の生き残りだよ」

「生き残り?」

 アジトである洞窟から山賊たちが出て来て「いたぞ、山賊専門退治だ!」と叫んだ。

「こうなったらもう‥‥飛び降りるしかないかな?」

「無理でしょ、死んじゃうよ?」

「そんな飛び降りるくらいよくあるでしょ」

「ないよ!」

「そんなこと言ってる時間があるなら‥‥」

 水湖は、僕の腕をつかんではお姫様抱っこをして、迷いなく飛び降りた。

 僕は怖さのあまり、水湖にしがみついたー



 案の定、僕と水湖は助かった。

「ほら、助かったよね?」

「ありがとう‥‥」

「村に戻るよ?任務の報告しなくちゃ」

「任務?」

「そうだよ。仕事のひとつだから」

 僕は、水湖にこれまでの経緯を話した。

 気がついたらアジトにいたこと、アジトでヤンスさんとの生活を送ったこと。

「前世かあ、それは気になるところだね」

「水湖にもわからないの?」

「ヤンスの言うことだから信用はできないけど、話を聞く限りは本当ぽっいよね」

 そして、水湖は街の中に入り、幼い男の子がいた。

「チビ様」

「チビではない」

 幼い男の子は僕にきずき、「こいつは誰だ?」

「らいだそうよ」

「らいか。俺は切田《きるだ》きるとだ。きるとと呼んでくれ」

「はい」

「きると様は、これでも10年ベテランなんだよ」

「10年!?」

 どう見ても、幼い子どもにしか見えないけど‥‥

「君、俺はこれでも20代だぞ?」

「20代?」

 見えない、そんなふうには‥‥。

「お兄様」と出てきた女はでかっ!

「これは俺の妹だ。身長が180越えててな」

「私はきるとお兄様の妹幹《みき》と申します。

ちなみにお兄様は身長が150センチ未満で‥‥」

「そこまで言わなくていいわっ」

「そもそもどうして兄が低くて、妹が高いの?」と水湖。

「知らんわっ」ときるとさん。

 こうして、今度はギルドでの生活が始まることとなった。
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