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番外編 海賊に愛されて

第1話

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 炎道《えんどう》ほのめ。

 そんなに情熱のある熱血な性格には、自分からして思えないし、むしろ何でこんな名前かと思えてしまう。

 男子の中でも、高身長の部類に入る。

 

 ほのめは、歩いていた。

 身長が高くて、名前にも炎がつくのに、ほのめは意気地なしだ。

 ほのめは臆病で一人じゃ何もできない。

 その時後ろから人が来る気配がして、ほのめは意識を失ったー。



 目を覚ますとここはどこ?

 海賊船と思われるような‥‥まさか、海賊なんて現実にいるわけないよ。

 多分、木で作られた船の中?どこなのか想像が難しいなあ。

 まわりを見渡せば、樽がいっぱい。

 樽なんて初めて見たな。

 これが監禁誘拐としたら、何されるかわからないし、こわい。

 でも、今は誰もいないし、脱出を考えることもできる。

 世の中脱出ゲームみたいにうまくいくかな?脱出ゲームを過去にして、失敗したトラウマがあるんだよなあ。脱出ゲームに失敗したら、ひどいお仕置きが待ってるらしいからね。

 待てよ、状況がまだわからないのに、これは誘拐監禁なのか?

だけどさ、誘拐監禁にしては不自然だよ。体どこも縛られてないし、どこかに押し出されてもいない。現実ならそれをやりかねない。

 やりかねないことがされていない。

 足音がキシキシとする。誰か来た‥‥!

 隠れなきゃ、あっ、樽の中に、早く。

 ほのめは樽の中に急いで隠れようとする。だけど蓋を開けると中には、ビールだの、宝石だの、お金だの(何故樽の中に大量のお金?ゲームみたいだな)、どの樽を探しても中に入れるものが見つからない‥‥。



「ほのめちゃーん、起きたー?」

 誰かがほのめを呼ぶ声がする。

 ほのめは運良く空っぽの樽を見つけ、その樽の中に蓋を閉めて入った。

「ほのめちゃーん」

 ほのめちゃん?

 この呼ぶ声には身に覚えもないし、声だけではだれなのか想像もつかない。

「いるなら、返事してよー」

 こわくて返事なんかできるわけない。

 ほのめちゃんなんて呼ぶ人知り合いにいたか?

 ほのめは記憶を張り巡らしてみたけど、いなかった気がする。

 大体みんな「ほのめ」と呼ぶなら、呼び捨てか、君づけか、さん付けぐらいだ。

 ちゃん付けで呼ぶ人が誰一人として思い当たらない。

 この人は誰だろう?

 ほのめの名前を知っているということは、知り合いだよね?

 キシキシと床を歩く足音と「ほのめちゃん」とひたすら呼ぶ声だけがするからぞっとする。

 お願い、おさまって‥‥。

 おさまった?

「いーた」

 上を向くと‥‥見知らぬ顔があった‥‥。

 細い顔に、白い肌の男‥‥。

 ほのめは突然のことに叫び声すらあげれなかった。



「ほのめちゃん、心配したわよ」

 こいつは男かと言うぐらい女らしく喋る。

「ここはどこですか?」

「いやね、敬語なんか使わなくてもいいのよ」

「どうして、俺の名前を?」

 そう、何故ほのめの名前を知っている?

「うーん、今は言えないわね」

「言えないなんてことあるか‥‥。

 俺は、見知らぬ場所に連れてかれた‥‥」

「見知らぬ場所なんて失礼ね。ここは異世界よ」

「異世界?」

 異世界なんてあるわけ‥‥。

「とにかく、あなたは一生ここで暮らしましょうね」

 冗談にしては、冗談らしく思えなかった‥‥。
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