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番外編 天罰を受けた者たち

第6話

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 ユウヅキが帰ってこない?
 だけど俺には関係のない話しか思えなかった。
 ラストリーは心配してたけど、俺にとっては大事じゃない。
 キシキは相変わらずで、太っているし、生意気だし、可愛げがないし、あいつは空気が読めないからみんながユウヅキがいなくて心配してるところに、関係のない話を持ち出したり、背が伸びただの自慢話をしては嫌われていた。
 だけど、キシキ本人は自分がなぜ避けられているのかわからない様子だった。
 キシキは孤立した。
 ラストリーはキシキを心配したり、慰めようとそばに寄っていこうとするものだから「そんなやつ気にしたところでどうしようもない」と止めた。
「だけど、キシキが‥‥」
「キシキがああいうやつだ」
「そこまで言わなくても‥‥」
「世の中優しさだけじゃどうしようもならない、救えないやつもいる」
「それでも、助けてあげたいから」
「偽善か?」
「偽善でもいい」
 頑固だ。あいつは気弱なわりには頑固だし、行動力もある。
 いじめを抵抗もなく止めるとかしたりする。
 俺とは正反対だ。
 俺は怒りぽっくて、控えめなところはなくても、本当はこわかったりする。
 キシキはこわい、年下ってわかっていても。
 本当は俺には恋人がいた。
 天罰の水を飲まされたから、恋人から振られるのもこわいし、振るのもこわいから、自分から恋人の元を離れることにしたんだ。
 告白する勇気もないから、告白したのは相手の方‥‥。
 そう、いつも俺は自分から何かを成し遂げたことがない。
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