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番外編 左目に隠された不思議な力は~佐藤家の場合~

第2話

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 これは、兄のエイトの過去の話。

 女顔であるため、女の子に間違われることがある。
 僕としては、女の子に間違われることは日常茶飯事なので、慣れ切っている。
 僕はショートセミロング。 一応、髪を縛ることもできなくもない。

 黒髪に青メッシュで、黒目。
    童顔のところは父さんに似ていると思われていて、
 性格は母さんやおばあちゃんに(母方の祖母や父方の祖母)似ていると思われている。

 僕の母さんは右目を髪で隠している。昔は髪を腰まで伸ばしていたみたいだけど、今はボブヘア―となっている。
 僕は呪いを左目に、母さんは呪いを右目に受け継いでいる。
 それが関係しているかはわからないけど、遺伝子的に力を受け継ぎ、そこで覚醒することになった。
 どんな力かは、後で説明しておくよ。

 僕は父さんが王子様で、二人兄弟の長男だった。
 だけど、母さんの愛を優先して、国王になることを放棄した。
 だから、父さんの弟が国王になっている。

 僕の父方の祖父は高身長で髪は金髪の老け顔だった。
 父方の祖母は小柄で、黒髪、黒目、童顔だった。

 父さんは昔は短髪だったのに、今は髪を伸ばしている。
 一人称は「俺」。
 僕は父さんの身長を抜かせているようで、抜かせていない。
 大体同じくらいじゃないかな。

 僕はドラゴンに変身できる能力もあるし、人間の姿でも、ドラゴンの姿でも、空を飛ぶこともできる。
 それは、僕が異人種と人間のハーフだから。
 父さんは人間だ。母さんは人間ではなく、人間の姿をしているけれど、異人種。 竜神族だ。
 僕は今まで母方の祖父に育てられていたけれど、家出を決意した。
 僕は、姿を消すことにしたんだ。

 闇の塔に向かったことがあって、闇の門番っていうのに、いろいろ聞かされたんだ。
「君の両親も、君の母方の祖母とか、父方の祖母も、みんな生きている」
「生きているって・・・・」
「そう、貴様もその世界に行けば会える。
 その代わり、今の世界にいる人たちと会うことはできなくなるがな」
「それなら、いいんじゃない?」
 軽い受け答えだった。
 僕は元々の世界が好きになれなくて、今いる人たちと離れることになっても、自分を捨てたかった。
 元いる世界で散々な思いをしたのなら、ここにいる必要がないように感じてもくる。

「心の弱みが見えておるぞ」
 心の弱み? 言っている意味がわからなかったけれど、僕に弱みなんてないと思うので、「何のことかな?」と言った。
「ほう。自分の弱さに気づいてないな」
 そこで、景色は変わり、僕は見たくもないものを見せられた。

 僕は記憶喪失になっていた。
 僕は両親もいなくて、人間とのハーフで、普通の人と違う生活となった。
 生まれ故郷でも、拾われたところでも、苦労した。
 僕には、同い年の幼馴染と、血の繋がらない両親がいた。
 数々の記憶が蘇ってきた。
 そう、肉親がいない。
 エイトっていう自分の名前しかわからなかった。それ以外の記憶を失っていて、他の記憶を思い出そうとすることがいやで、僕は自分で封じていた。

 この名前も嫌い。捨てたい。名前を変えたい。自分なんて嫌いだ。
 過去に戻してよ。違う自分になりたい。

 憎い。憎い、憎んじゃだめだ。

 こうして、僕は自分が何でここにいるのか、何で戦っているのか、何をしたいかも、わからなくなっていた。
 別の世界に行けるのなら、そうしたい。
 そして、死にたい。

 ここで、闇の門番が「死にたいなら、殺してあげるよ」と剣を持って、僕を殺した。
 僕が転生したのは、呪いを持つ死神だった。
 闇の門番での闇を乗り越えての試験、不合格だった。
 不合格は、それなりの代償があると聞いたけれど、それが死刑となり、異世界転生して、呪いの死神になるとは思わなかったな。
 僕はあと何年生きるのだろう?ずっとかな。
 闇の門番って、結局何者だったのかな。

 闇の門番が僕の後ろに立ち、「君はもう逃げられない」と囁いた。

 この世界は光とか闇とかという概念がなくて、人間と異人種が暮らしていた。
 ここで死神の少女に出会う。

「もうしかして、闇の門番の試験に不合格だったの?」
「うん」
 そんなに悔しくもないけれど、「不合格」という言葉は僕を複雑な気持ちにさせた。
「そうなの。私はユリマって、憶えてる?本当に久しぶりね」
「うん、本当に久しぶり。僕はこの世界では黒竜こくりゅうって呼ばれている」

 黒竜っていうのは僕の本名ではないけれど、黒い竜に変身できるから、人間たちがつけた名前だ。
 特別好きってわけでもないけれど、本名よりはよかった。
 ユリマは僕の元いた世界と今、いる世界を行ったり来たりできる。
 ユリマは生きているからそうゆうことができるけれど、僕は殺されたので、もう帰っては来られない。生き返る方法を見つけない限りはね。

 ユリマは茶色の髪を一本のみつあみにして、翡翠色の宝石のような瞳を持つ美人だった。
 ユリマの両親も向こうの世界では死んだことになっているけれど、こちらの世界では生きているらしい。
 僕も、ユリマの両親が誰なのか気にならなくもない。
 僕はこんな僕でも怖がらずに受け入れてくれて、優しくしてくれるユリマのことを好きになりつつあったけれど、自分に自信はなかった。
 僕なんかが、ユリマを好きになってもいいのかっていつも思っていたから。
 僕も自分の両親がいなくて、見つけられて嬉しかった。
 ユリマも嬉しかったらしい。死んでいた自分の両親に会えて。

 死神になっていた僕は、人を呪える存在になった。
だけど、ユリマはそんな僕を死神としてではなくて、      僕として接してくれているのがわかる。
だから、僕にはこの人しかいないように感じてもくる。

「黒竜、私もドラゴンに変身したいわ」
「変身できても、何もいいことはない」
「あるわ。もっとポジティブになりましょう」

 ネガティブな僕とポジティブなユリマは、正反対だった。
 僕は一人ではかなり寂しかったりするし、どうしていいのかわからなかったりするけれど、ユリマでも、誰でもだれかいてくれるとありがたかった。
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