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番外編 ベッドの上の花婿

エピローグ

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 僕には、名前がない。
 僕には、自由がない。

 僕には、希望がない。
 僕には、絶望もない。

 僕には、過去がない。
 僕には、未来もない。

 自分が何者なのか知らずに生きて、
 生まれてきた意味も、場所も、何もかもわからずに死んでいく。

 きっと、そんな人生なんだって、諦めていたのか、受け入れていたのか、自分でもよくわからなかった。

「この個体は、イケメンになるかと思われます」

 僕は、ベッドでただ時が過ぎるのを待つだけの花婿。
 正式に言うと、子孫繁栄のための道具。

 この施設では、6歳からの子供を理想の花婿に育てる。
 何故かと言うと、これも少子高齢化のせい。
 女性の理想が高くなり、男が理想の花婿になるしかなくなったせい。

 花婿の名前は、花嫁が決めることになっていた。
これも、女性のためだ。

 6歳未満の子供だと、発達障害があるかもしれないからと、6歳の誕生日に発達障害の検査があるらしい。
 詳しい内容は、憶えていない。

 女性の理想は、こうだった。
 身長170センチから185センチまで。
 長男以外。
 塩顔のイケメン。
 大卒以上。

 他にも、たくさんあるみたい。

 政府の議論の結果、男性が女性の理想に答えることで、少子化問題の解決に繋がるという答えになった。
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