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番外編 ベッドの上の花婿

第4話

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 ヨミタンには可哀想な気もしなくなかったので、
手芸用ハサミで傷だらけになったヨミタンをベッドに、縛りつけた。

 やられたらやり返す。
 それが僕の持論。

 因果応報?
 やり方がよくない?
 好きなだけ言えばいいさ。

  俺は、自分の気持ちを誤魔化すつもりはないし、好きになるやつが悪い。

 詐欺師を好きになるやつも、詐欺師を好きになっておきながら、詐欺師のせいにするよね?

 なら、ヨミタンだって同等だよね?

 俺にストーカーしてさ、揚げ句にベッドに拘束。
 結果的にはいいかな?
 何故なら、「ベッドの上の花婿」という少女漫画を新連載することができたから。

 そう、新しい漫画のネタやタイトルが、思い付かなくて困っていたところだから
 ここはヨミタンに感謝よね。

「ヨミタン、漫画のネタになってもらうよ」

「貴様に愛されるのなら、我はこれでいい」

「恋は盲目ってそうゆうことを言うんだね。

だけど、その恋はいつまで続くかな?

試してみよう‥‥」

 俺は、ハサミでヨミタンの服を切り裂いた。

 ヨミタンも誰も知らない。
 俺が何者かについて。

 何で、ヨミタンに対抗するぐらいの力が備わっていたか
 何故、魅力の力があるのか
 誰も知ることはなかった。

 俺の目から、緑の不気味な液体が流れた。

「守羽、人間ではないな」

「今更きずいても遅いよ」

「守羽‥‥人間じゃないなら何なんだ?」

「さあ、何なんだろう?
教える義務もないし、教えてもらえる権利も残ってないよね‥‥」

 俺の持っている手芸用ハサミは、普通のハサミより切れ味がいい。

「だけど、逃がさない‥‥
漫画家としての道を歩みたいから」

 俺には、自分の描いた少女漫画を読んでほしいという夢がある。
 あとは、「ベッドの上の花婿」がどこまで売れるかだ。

「せめて、種族ぐらい言ってくれ‥‥」

「種族?種族的には人間だと思う‥‥。
ただ、何なのか教えないだけ‥‥。

ヨミタン、今も僕を愛してるのなら、俺の全てを受け止めてほしいな」

 俺は手芸用ハサミを変形させて、怪物を出した。
 手芸用ハサミの正体は、一匹の緑の大きな怪物だから。

「なっ、これは‥‥?」

「恐がっても、怖がってもいいのよ。
痛がってもいいんだよ。
漫画のネタになれば、いいんだから」

 誰にでも、知られたくない秘密がある。
 誰にでも、告白したくない罪がある。
 誰にでも、隠したいことがある。

「ヨミタン、愛してよ‥‥俺の芸術を‥‥」

 怪物は、ヨミタンの体を食いつくし、顔だけ残した。
 だけど、ヨミタンは人外だから顔だけでも生きている。
「やめてくれ‥‥」
 だけど、失った体は戻ってこないと思う。

 本当に、恋は盲目だったのね。
 ヨミタンは今では顔が青ざめていた。

「何が貴様をそうした?」
「俺は性格悪いんだよ」

 怪物を手芸用ハサミに変形させた。

「次は、何をしようか?
そうだ、ヨミタン。
向こうの棚を見てよ」

 俺は、ヨミタンの重い顔を両手で持ち、
 手芸用ハサミは、ジャケットのポケットにしまって、
 ヨミタンを棚の近くに持っていく。

 棚には、沢山の顔がある。
「うわあああああああ」
「見て?みんな、俺にしつこく告白したり、ストーカーした人たちよ。
一回だけでませればよかったのに、振られても、またリベンジするから、
俺を愛せるかどうか試したら、
もう生きてないね。

これじゃ、わかんないよね。

これで前作『顔コレクション』という漫画描いたけど、思ったより売れなくて、

顔コレクションが完結したら、次なる漫画を考えなくてはいけないから、

ベッドの上の花婿の連載が終了するまで生きててもらうからね」

 俺は最初、「顔コレクション」で漫画家デビューを果たし、
 今は、ベッドの上の花婿を描いている。
 ベッドの上の花婿の連載がいつまで続くかな?

「ヨミタン、俺を好きになってくれて
ありがとう‥‥」


 我は動けん。
 体を移植してもらった。
 移植してもらった体は本当ではないからだ。

 守羽は、何者なのかもらったわからない。
 守羽は異質だ。
 人格も、体質も、笑うツボ、尋常とは思えなかった。
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